笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

少女と少年

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 「皆……何処にいるんでしょう?」



 「まさか……魔王城がこんな迷宮になっているだなんて……」



 時は遡り、先に新魔王城の門から足を踏み入れていた真緒とサタニアの二人組は、皆とはぐれてしまった事に困り果てていた。



 「取り敢えずここを出ましょう。ここにずっと留まっていても、仕方がありませんからね」



 「そうだね…………」



 真緒とサタニアの二人が足を踏み入れた大浴場には誰もおらず、湯槽から湯気が立っているだけだった。そんな場所に留まっていても、意味が無いと考えた真緒は、サタニアと一緒に大浴場から出る事にした。



 「この先はどうなっているんですか?」



 「えっと……確か、脱衣場だった筈だけど…………」



 魔王城の主であるサタニアに、大浴場から本来続く部屋を確認した真緒は、大浴場の扉に手を掛けて静かに開けた。



 「ここは……“倉庫”?」



 大浴場の扉を開けるとその先は、魔王城の倉庫だった。剣、槍、斧、弓などの武器や盾、兜、鎧などの防具が取り揃えられていた。



 「ここは、魔王軍の一般兵士が使っている倉庫だね。大抵の兵士がここで、自分に合った武器や防具をえらんでいるんだ」



 「成る程…………あっ、それならここから盾を一つだけ貰ってもいいですか?……私の盾、壊れちゃったので……」



 「えっ……あっ……!!」



 真緒の言葉によってサタニアは、真緒と本気の殺し合いをしていた時に、“ティルスレイブ”で真緒の盾を壊してしまった事を思い出した。



 「ぜ、全然大丈夫だよ!!盾の一つや二つ位…………あの、ごめんね…………僕のせいだ……僕がもっと早くエジタスの計画に気づけていれば……こんな事態には陥らなかっただろうし、マオの盾だって壊れずに済んだと思う…………」



 「あまり自分を責めないで下さい……私だって師匠の側にいたにも関わらず、全く気がつく事が出来ませんでした。それに……戦ったあの時、私達はお互いに真剣勝負だった。盾が壊れるのは必然だったんですよ」



 「…………マオ……」



 今回の出来事にサタニアは、自身に全ての責任があると嘆くが、真緒はこちらにも責任があると言って、罪の意識を緩和させた。



 「さてと……どうせ貰えるんだったら、一番良い盾にしようかな……」



 「マオ……ありがとう……」



 サタニアは小さな声で、真緒の優しさにお礼を述べた。そんな中、真緒は“生け贄の盾”に代わる盾を選び出すのだった。



 「よし、これにします!!」



 そう言いながら、真緒が選び出した盾は“生け贄の盾”と比べると少し大きいが、性能的にはかなり劣っている為、若干の不安は拭いきれない。しかし、無いよりはあった方が良いだろうと思う他無かった。



 「どうですか?」



 「凄く似合っているよ」



 「そうですか?えへへ、ありがとうございます」



 サタニアのこの言葉に偽りは無かった。性能など関係無しに、心の底から似合っていると思ったから、真緒に対しての本心が出たのだ。



 「それじゃあ、先へと進みましょう。恐らく皆もこの魔王城に足を踏み入れている筈ですから、上手く行けば皆と合流できるかもしれません」



 「そうだね、この部屋を出たら確かエントランスホールに出る筈だけど……」



 真緒は新たな盾を手に入れ、先に進もうと提案する。それにサタニアは賛成し、この倉庫から本来続く部屋を口にした。



 「でも、さっきの大浴場から倉庫みたいに、全く別の部屋に出る可能性もある…………」



 「そうだとしたら、僕にもお手上げだ……とにかく、手当たり次第に進むしかエジタスに会う方法は無い……」



 「……そうですね……私達は師匠と一緒にいたい……その想いで、この魔王城に足を踏み入れたんですものね」



 愛。純粋な愛。愛する人と一緒にいたい。離れたくない。そんな曇り無き純粋な想いが、真緒とサタニアの原動力になっている。例え相手に全否定されようとも、例え一方的な片想いだとしても、この愛する想いは誰にも止める事は出来ない。何とも恐ろしくも美しいのだろう。



 「行こう……エジタスの元へ!!」



 「はい!!」



 真緒とサタニアは、気を引き締め直して倉庫の扉に手を掛けて、今度は勢い良く開いた。



 「……何だか……薄暗いですね……?」



 「ここは……どうやら“地下牢”みたいだね……」



 続いて真緒とサタニアの二人が足を踏み入れたのは、薄暗く少しカビ臭い地下牢であった。



 「こんな所に、師匠がいる筈がありませんね。先に進みましょう」



 「そうだね……それじゃあ……ちょっと待って……何か聞こえる……」



 「えっ!?」



 魔族は人間離れした視覚、嗅覚、そして聴覚を兼ね備えている。特に魔族の長であるサタニアは、その感覚神経が尋常ではなかった。常人では聞き逃してしまう、僅かな物音を感じ取ったのだ。



 「……今現在、地下牢には囚人はいない筈…………こっち!!」



 「ちょ、ちょっとサタニアさん、待って下さいよ!!?」



 物音がした方向へと走り出したサタニア。その後を真緒が必死に追い掛ける。



 「確か……この辺の筈なんだけど…………!!」



 「サ、サタニアさん……急に走らないで下さいよ…………えっ?」



 サタニアは、物音がした牢屋の前で歩みを止めた。そして、その牢屋に閉じ込められている人物に目を疑った。また、真緒も同じ様に牢屋に閉じ込められている人物に目を疑った。何故なら、そこにいたのは二人のよく知る人物だったからだ。



 「「アーメイデさん!!?」」



 「…………んっ、あぁ……あんた達かい……」



 そこに閉じ込められていたのは、アーメイデだった。アーメイデはまるで生気を吸い取られたかの様に、気迫を失っていた。



 「どうしてこんな所に、アーメイデさんがいるんですか!?」



 「……あんた達を追って、私達もこの魔王城に足を踏み入れたんだけどね。見ての通り、私は運悪くこの牢屋に閉じ込められてしまったのさ…………」



 「それなら出ればいいんじゃ……「無理なんだよ!!」……えっ?」



 真緒が、アーメイデに牢屋から出る様に言うが、アーメイデは無理だと声を荒げた。



 「この鉄格子は……魔法を完全に吸収しちまうんだよ……“ファイアランス”!!」



 「!!!」



 そう言いながらアーメイデは、右手を突き出して魔法を唱えた。すると、アーメイデの右手から炎の槍が生成され、そのまま鉄格子目掛けて放たれた。そして、見事に鉄格子へと命中した。しかしその瞬間、鉄格子が炎の槍を取り込んでしまった。



 「……こんな風に魔法を完全に吸収してしまうから、出るに出られないのさ…………」



 「そんな……いったいどうすれば…………」



 「あのー、悩んでいる所悪いんだけど……この牢屋からなら簡単に抜け出せるよ?」



 「「えっ?」」



 魔法を完全に吸収してしまう。そんな牢屋からどうやって抜け出せばよいのか、真緒とアーメイデの二人が頭を悩ませていると、サタニアがその牢屋からなら簡単に抜け出せると言い出した。



 「ど、どう言う意味だい!?」



 「サタニアさん、何か知っているんですか!?」



 「えっと……うん、確かにこの牢屋は魔法には圧倒的な強さを誇っているけど…………」



 そう言いながらサタニアは、アーメイデの牢屋の前に立ち、両手で鉄格子を握り締める。そして…………。



 「こうして……ふん!!」



 「「!!」」



 鉄格子を、それぞれ逆方向へと引っ張った。すると鉄格子は大きく曲がり、アーメイデが通れる程のスペースが出来上がった。



 「魔法には圧倒的な強さだけど……こうしたある程度の物理には弱いんだよね」



 「「…………」」



 真緒とアーメイデは思った。この筋肉が全く付いていない少年の何処から、これほどの力が出ているのだろう。



 「さて、アーメイデさんも無事に抜け出せた事だし、そろそろ先に進もうか」



 「「そ、そうですね…………」」



 真緒とアーメイデは思った。これが三代目魔王サタニア・クラウン・ヘラトス三世の力なのだと、そして決して力では勝つ事は出来ないであろう。
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