笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

聖剣フォアリーフ(前編)

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 それは、真緒達とサタニア達が新魔王城に突入する前の出来事だった。



 「ジョッカーさ~ん、ちょっとよろしいですか~?」



 「我が神、何かご用でしょうか?」



 迎え撃つ準備を整えていたジョッカーの元に、エジタスが声を掛けながら歩み寄る。



 「実は、あなたに渡したい物がありましてね~」



 「わ、私にですか!?」



 「今回転移して来た勇者の一人が持っていた、国宝級の聖剣です。あなたなら使いこなせると思いまして~」



 そう言うと、エジタスは指をパチンと鳴らした。すると、エジタスの右手には聖一の遺品である、聖剣フォアリーフが握られていた。



 「いいですか。万が一、マオさん達やサタニアさん達に勝てないと悟ったら、この剣を引き抜いて下さい。きっと、あなたを助けてくれるでしょう~」



 「我が神…………ありがたき幸せ!!必ずや、ご期待に添えて見せましょう!!」



 あまりの嬉しさから、震えながら丁寧に両手で受け取るジョッカー。震えながら取ったせいか、エジタスからジョッカーに手渡される際、フォアリーフが少し揺れた事に、ジョッカーは気付かなかった。



 「何でジョッカーだけ……ズルいわ……」



 フォアリーフを手渡される様子を見ていたエピロは、不満の独り言を呟いた。



 「ははは、残念だったなエピロ。私は貴様と違って、我が神を常に崇めている。その想いが生んだ決定的な差だ」



 「な、何ですって!?」



 ジョッカーは、そんなエピロの独り言を聞き逃さない。自身が敬愛する主への嫉妬を煽った。



 「ジョッカー……どうやら死にたい様ね……」



 そう言うと、エピロの片手から電気が発せられる。完全な戦闘体制である。



 「ふっ、貴様如きの魔法など私の前では無力だ」



 「へぇ、それじゃあ……試してみる?」



 「いいだろう……この際だ。どちらが上か、ハッキリさせようではないか?」



 エピロの挑発に触発される様に、ジョッカーも剣を引き抜いた。勿論、エジタスから手渡されたフォアリーフとは別の剣である。



 「二人供、その辺にしておきなさい。我が王の前なのですよ」



 「「あっ…………」」



 二人の険悪な雰囲気を察し、ラクウンが止めに入る。



 「「も、申し訳ありません!!」」



 「別に気にしていませんよ~。お二人の殺る気が、充分に伝わりましたからね~。ですが、そろそろマオさん達とサタニアさん達がやって来ると思うので、準備を整えて下さい」



 「「か、畏まりました……」」



 エジタスの命令に従い、ジョッカーとエピロの二人は、各々の準備へと向かった。



 「…………」



 「どうしましたか、ラクウンさん?もしかして、あなたもジョッカーさんに嫉妬ですか~?」



 準備を整えているジョッカーを見つめるラクウンに対して、エジタスが声を掛けて来た。



 「いえ、只何故ジョッカーを配下に引き入れたのか……とても不思議で……」



 「そんなに不思議ですか~?」



 「…………正直、ジョッカーのステータス……実力を見る限りでは、私達や魔王軍の四天王、あの勇者達よりも低いと見受けられます……そんなジョッカーを何故引き入れたのか……」



 ラクウンの最大の疑問。何故、ジョッカーの様な弱者を配下に加えたのか。まるで理解出来なかった。



 「そうですね~。ジョッカーさんには、無限の可能性を感じられるのです。自身のスキルを進化させるなど、本来何十年も掛かってしまう芸当を、たった一年で成し遂げてしまった。そう言った点を含めて、彼を配下に加えました」



 「確かに……スキルや魔法は素晴らしいかもしれません……それに関しては、私やエピロは敵わないかもしれません…………ですが、それ以上に実力が伴っていません。このままでは、意図も簡単に殺られてしまいます」



 正論。確かに、ジョッカーは無限の可能性を秘めている。それこそ、じっくりと育て上げれば、ラクウンやエピロよりも強くなるであろう。しかし、今現在ジョッカーの実力は真緒達よりも下。このままでは無駄死にしてしまう。



 「…………実力が伴っていない……つまり“弱い”……という事ですか?」



 「……えぇ、ストレートに言ってしまえばそうなります……」



 「…………だからこそ良いのではありませんか…………」



 「…………えっ?」



 エジタスのまさかの返答に、ラクウンは思考が追い付かなかった。



 「だからこそジョッカーさんに、フォアリーフを授けたのですよ……“弱い”事が……“彼女”を強くする……」



 「“彼女”?」



 「もしかしたら……これからの戦いにおいて……最強になるかもしれませんね…………」



 その時の言葉を、ラクウンは完全に理解する事が出来ず、フォルスとシーラに殺られてしまうのであった。







***







 「聖剣フォアリーフ……つまり、その握られている剣自体があなたで……今現在は、ジョッカーの体を乗っ取っている……という認識でいいのかしら?」



 「えぇ、その通りよ。今までは握った人物を、無差別に依存させていたのだけれど、エジタス様のお陰で自我を持つ事が出来た。私自身初めてだったけど、こうして上手く自分の意思で、対象の人物を乗っ取る事が出来る様になったわ」



 ジョッカーの体を乗っ取ったフォアリーフは、自慢気に語り始めた。



 「それで……聞きたいのだけれど……あなたは……“味方”?それとも……“敵”?」



 「ふふふ……そんなの決まっているじゃない……エジタス様の計画を邪魔するあなた達の………“敵”よ」



 「「!!!」」



 フォアリーフの不適な笑みに、ハナコとアルシアは咄嗟に戦闘体制に入った。



 「ハナコちゃん、油断しちゃ駄目よ!!?」



 「分がっでいるだぁ!!いづ攻撃を仕掛げられでも大丈夫だよぉ!!」



 「攻撃を仕掛ける?あはは、何を言ってるの?もう攻撃は仕掛け終えたわよ…………」



 「「えっ?」」



 ふと、自身の体に視線を向けると、全身が斬り刻まれていた。



 「な、何ですってぇええええ!!?」



 「ぐぁああああああ!!!」



 アルシアの体は、骨の何本かを綺麗に斬られており、ハナコの体は大量出血をしていた。



 「い、いったい……いつの間に……!?」



 「いつの間にと言われても……只こう……」



 するとその瞬間、フォアリーフの姿が消えてしまった。



 「き、消えた!?……ど、何処……に……!!!」



 「……普通に歩いて斬っただけですよ?」



 気が付くとフォアリーフは、目の前に現れており、いつの間にか握っていた剣で、アルシアのあばら骨を斬っていた。



 「なっ!?」



 「アルシアざん!!」



 「あら、もしかして……速すぎて見えなかった?」



 「アルシアざんがら……離れろ!!」



 鼻で笑うフォアリーフ目掛けて、ハナコは力任せに拳を振るう。しかし、振るった時には既に姿は無く、空振りとなってしまった。



 「遅すぎるわよ……“子熊”ちゃん」



 「!!!」



 すると、いつの間にか後ろへと回り込まれていた。ハナコは完全な不意を突かれ、フォアリーフに斬られてしまう。



 「がぁああああああ!!!」



 ハナコは悲鳴を上げながら、その場に倒れ込んでしまった。



 「ふふふ……まぁ、こんな物よね。私自身の能力がこの男に働いている時点で、あなた達には勝ち目は無いわよ」



 「の、能力ですって……?」



 「私の能力はね、所有者と相対した者が、所有者よりも高いステータスだった場合、相手のステータス分、自身のステータスに上乗せさせる事が出来るのよ。つまり現状、この男のステータスはあなたと子熊ちゃん、二人分のステータスが上乗せされているという事よ」



 「「!!!」」



 それは実質、ハナコとアルシア二人の実力を兼ね備えているという事になる。つまり、どう足掻いてもフォアリーフを倒す事は出来ない。



 「…………それじゃあ始めましょうか。一方的な蹂躙を…………」



 絶望。ハナコとアルシアの二人に、絶望が降り掛かるのであった。
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