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最終章 笑顔の絶えない世界
ネームドチェンジ
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「……ごほっ!!げほっ!!げほっ!!」
「マオぢゃん!!大丈夫だがぁ!?」
真緒の首を絞め上げていたエジタスの片腕が、リーマの魔法によって吹き飛んだ事で、何とか一命を取り留めた。苦しそうに咳き込む真緒の元にハナコ、リーマ、フォルスの三人が駆け寄って来る。
「…………っ!!」
突然片腕を吹き飛ばされ、動揺を隠せないエジタスは冷静さを取り戻す為に跳躍をして、一旦その場から離れた。
「み、みん……ごほっ!!げほっ!!ごほっ!!ごほっ!!」
「マオさん、無理しないで下さい。さっきまで死にかけていたんですから…………」
「リーマの言う通りだ。落ち着いて息を整えろ」
「はぁ……はぁ……はぁ……あ、ありがとう……はぁ……はぁ……」
一命は取り留めたとは言え、先程まで首を絞め上げられ、息を吸う事が出来なかった。元の調子を取り戻すのは、しばらく時間が掛かるだろう。
「ぞれにじでも……どうじでリーマぢゃんの魔法が当だっだんだぁ?」
「えっ?」
「それは俺も気になっていた。どうしてなんだ?」
「えっ……と……それは……」
「ねぇ!!大丈夫だった!?」
三人が話合っていると、残りの三人であるサタニア、シーラ、アルシアが駆け寄って来た。
「魔王か。あぁ、命に別状は無い」
「よかった……それで、吹き飛んだエジタスの片腕の件なんだけど……」
「あぁ、それについて今聞こうとしていた所だ……」
その場にいる全員の視線が、リーマに注がれる。
「えっと……その……」
しかし言葉がハッキリとしておらず、脈絡が感じられなかった。
「…………どうなんだ?」
「……リーマぢゃん」
「「「…………」」」
「そ、その……わ、分かりません」
「な、何!?分からないだって!?」
一同の視線が集まる中、リーマは何故エジタスの片腕を吹き飛ばせたのか。全く理解していなかった。
「ほ、本当に分からないのか?」
「はい……只、マオさんを助けたいという想いで、覚えてる限りの魔法を無我夢中で唱えていました……」
「その時、唱えた魔法は覚えてる?」
「えっと……確か……」
アルシアに言われたリーマは、両腕を組みながら顔を天井に向けて、必死に思い出そうとする。
「“トルネード”、“ウィンドカッター”、“ウォーターキャノン”、“ネームドチェンジ”、“スネークフレイム”……この五つです」
「ちょっと待って!!その“ネームドチェンジ”って何!?」
「聞いた事の無い魔法ね……」
リーマが挙げた五つの魔法。その中でサタニアは、“ネームドチェンジ”という魔法に反応を示した。アルシアも初めて聞く魔法であった。
「えっと……この魔法は……私が初めてレベルアップした時に覚えた魔法で……確か主な能力が……」
***
「…………」
一方、エジタスは吹き飛ばされた自身の片腕を再生させる中、同じ様に何故吹き飛ばされたのか、考えていた。
「……“ネームドチェンジ”」
そして“ネームドチェンジ”の名前に辿り着くと、ある記憶も蘇って来た。それは真緒達と旅を始めて間もない頃、真緒とリーマの二人がレベルアップを果たした時であった。
“では、次はリーマさんの番ですね”
“はい、よろしくお願いします”
改変魔法
ネームドチェンジ
ネームドチェンジ
物理 魔法 スキル それぞれの、名称カテゴリーを変更できる。
“……えっと、つまりどういうことですか?”
“つまり、それぞれ他の枠組みに変えられる、ということです。たとえば、マオさんのスキル“ロストブレイク”をスキルの技としてではなく、魔法としての技に変えられる、そんな感じです”
“それって、何か意味があるんですか……?”
“いや~、それはちょっと分かりませんね~、私も初めて見る魔法ですから……”
“そんなー、せっかく覚えたのに……”
“まぁ、まだ覚えたばかりの魔法ですからね、今後のレベルアップの際に、新しく追加されるのを期待しましょう”
“…………はい”
「まさか……あんな糞の役にも立たなそうな魔法が…………!!」
攻撃系でも、補助系でも無い。何故存在するのかさえ不明であった魔法。そんな魔法が今現在、エジタス最大の天敵になろうとしている。
「……なら、先に潰すまでだ……」
そう言いながらエジタスは、治った片腕の手を開いたり閉じたりするのであった。
***
「行ける!!その“ネームドチェンジ”を上手く扱えば、エジタスを止められる!!」
希望の光。絶望的だった状況に、一筋の光が差し込んで来た。
「ここが正念場よ。絶対にエジタスちゃんを止めるわよ……例え手足が千切れ様とも……諦めるんじゃねぇぞぉおおおおおおおおおおおお!!!」
「「「「「おぉ!!」」」」」
「……いや、お前達はここで諦める事となるんだよ」
「「「「「「「!!!」」」」」」」
見えて来た勝利の可能性。その可能性を胸に戦おうとしたその時、いつの間にかリーマの背後を取っていたエジタス。一同は、言葉にもならない驚きの表情を浮かべた。
「くそっ!!出来ればもう一度試したかったが……こうなったら仕方ない!!魔法使い、しっかり頼むぞ!!」
「私の名前はリーマです!!“ネームドチェンジ”!!」
突如現れたエジタスに驚きながらも、シーラは即座にエジタスの前へと飛び出した。そして、槍を片手に勢い良くエジタスに飛び掛かった。それと同時に、リーマが“ネームドチェンジ”を唱える。
「うぉおおおおお!!!」
「(来たか……何も唱えないという事は、これは物理攻撃……本来ならコウスケの“物理無効”で防ぐが……今は“ネームドチェンジ”の影響で、別の攻撃カテゴリーに分類されている……魔法かスキル……だがここで問題なのは、何故スキルを発動しなかったのか……少しでも多くのダメージを与えたいのであれば、スキルを選ぶ筈……それをしないのは、この攻撃をスキルのカテゴリーだと思わせる為、つまりこの攻撃のカテゴリーは魔法だ!!)」
脳をフル回転させ、常人では一分掛かる考え事を、物の数秒でまとめ上げた。魔法攻撃だと結論付けたエジタスは、右側から生えている魔王サタニアの、“魔法無効”を発動する。
「……スキル“魔法無効”」
「残念だが、浅はかなお前達の考えは全てお見通しだ!!俺を止めるのなら、後二千年は知恵を付け…………!?」
その瞬間、シーラの突き出した槍がエジタスの横腹を抉り取った。
「よっしゃあああああ!!!」
「やった!!エジタスに二度目のダメージを与えた!!」
「そ、そんな馬鹿な……まさか……裏の裏を読んだスキル攻撃だったのか……!?」
エジタスは自身の予想が外れ、横腹が抉り取られた事に戸惑いを隠せず、酷く混乱していた。
「何か思い違いをしている様だが、今の私の攻撃は只の物理攻撃だぞ」
「な、何!?」
「ハナコさん!!今です!!」
「し、しまった!!シーラは囮……“ネームドチェンジ”を掛けた本命は…………!!!」
エジタスが視線を送ると、シーラの物陰からハナコが両腕を引きながら、待機していた。あの時リーマは、“ネームドチェンジ”をシーラでは無く、ハナコに掛けていたのだ。それが、エジタスの不意打ちとシーラが自信満々に飛び出して来た事で、すっかり騙されてしまった。
「今度ごぞ、当でで見ぜるだぁ!!スキル“インパクト・ベア”!!」
「くそっ!!スキル“スキル無効”……ち、違う!!今は“ネームドチェンジ”の能力で、別の攻撃カテゴリーに変わってる……っ!!!」
抉り取られた事によるダメージ。予想が外れた事によるショック。二つの出来事が、エジタスの思考回路を鈍らせた。結果、別の攻撃カテゴリーになったハナコの“インパクト・ベア”が、エジタスに直撃した。
「ぐふっ!!」
「やっだだぁ!!当だっだだぁ!!」
ハナコの“インパクト・ベア”によって、数メートル先まで吹き飛ばされたエジタスだが、そこは規格外のステータスと強靭な体格によって、倒れずに持ち堪えた。しかしそれでも、受けた傷はハッキリと付いていた。
「よし!!この調子で畳み掛けるんだ!!アルシア、行くぞ!!」
「任せないフォルスちゃん!!回復の暇は与えないわ!!リーマちゃん、よろしくね!!」
「はい!!“ネームドチェンジ”!!“ネームドチェンジ”!!」
シーラ、ハナコに続き、フォルスとアルシアがエジタスに追撃を加える。
「さぁ、行きますよエジタスさん!!スキル“一点集中”!!」
「エジタスちゃん、お仕置きよ!!スキル“等活地獄”!!」
「はぁ……はぁ……(くそっ!!くそっ!!どっちがどっちだ!?物理!?魔法!?だが、幸いなのは両方ともスキル攻撃では無いという事……それなら……!!!)」
迫り来る矢と両刀に対して、エジタスはその場で腰を屈んだ。それによって、背中から生えているコウスケと魔王サタニアが全面に押し出される。
「……スキル“物理無効”」
「……スキル“魔法無効”」
「墓穴を掘ったな!!物理攻撃と魔法攻撃なら同時に発動する事が出来る!!決着を急ぎ過ぎた……な……!!?」
フォルスの放った矢と、アルシアの両刀は、“物理無効”と“魔法無効”の膜を通り抜け、フォルスの矢はコウスケの額に突き刺さり、アルシアの両刀は魔王サタニアの体を斬り付けた。
「エジタスさん、同じ手に二度も引っ掛かるだなんて……」
「注意力が散漫しているんじゃいないの?」
「……同じ手……二度……ま、まさか!?」
リーマが“ネームドチェンジ”を二回唱えたのを見て、攻撃して来るのは二人だと判断した。そして実際、フォルスとアルシアの二人が攻撃を仕掛けて来た。しかし、エジタスは失念していた。あちらには後二人、攻撃を仕掛ける人物が残っている事を。
「……さてと、前座の役目は終わった」
「最後の仕上げ……頼んだわよ」
片方は首を絞められ、死に掛けていた。しばらくは動けないと思い、気に留めていなかった。しかし、その行動こそがエジタスの今世紀最大の失敗に繋がった。いや、それよりも潰すターゲットをリーマに変えてしまった時点で、失敗していたのかもしれない。当初の計画通り、先に二人を潰せば良かったのだ。
「「はぁあああああ!!!」」
リーマが“ネームドチェンジ”を掛けた、真緒とサタニアの二人がエジタスの元まで駆け寄る。そして手前まで来ると一斉に跳び上がり、それぞれが剣を振り上げる。
「だ、だが今度こそ、“物理無効”と“魔法無効”を同時に発動して、その攻撃を防いで……!!?」
エジタスが、コウスケと魔王サタニアを動かそうとするが、まともにダメージを受けてしまった事で、動きが鈍くなっていた。
「し、しまった!!!」
「師匠!!これで最後です!!」
「エジタス!!この一撃で、君を止めて見せる!!」
「「はぁあああああ!!!」」
「こんな……こんな……結末……」
真緒の純白の剣と、サタニアのティルスレイブが光輝き始める。
「スキル“ロストブレイク”!!」
「スキル“ブラックアウト”!!」
「…………あり得ない」
偶然か必然か、真緒のスキルは左側に生えている魔王サタニア。サタニアのスキルは右側に生えている勇者コウスケ。それぞれが宿命の相手に突き刺さった。
「ぐわぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
渾身のスキルが当たった事で、エジタスに突き刺さっていたコウスケ、魔王サタニアの媒体である、左腕の骨と右腕の骨が見事に砕け散った。そしてコウスケ、魔王サタニアの両方を同時に失ったエジタスはその場に倒れ込む。
「「「「「「「…………」」」」」」」
その光景に一同、夢でも見ているかの様にしばらく声も出さずに見つめていた。しかし次第に現実だと実感して来ると、その嬉しさが全身を駆け巡った。
「「「「「「「や……やったぁああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」」」」」
歓喜。遂に、遂にあのエジタスを倒す事が出来た。そのあまりの嬉しさに、ある者は跳び跳ね、ある者は近くの者と抱き合い、またある者は嬉しさから涙を流していた。
「わ、私達……やったんですよね!?師匠を止められたんですよね!?」
「そうだよ!!あのエジタスを止める事が出来たんだ!!」
「オラ……オラ……嬉じぐで涙が出るだぁあああああ!!!」
「私の魔法で……エジタスさんを止める事が出来た……私の魔法で……やった!!」
「エジタスさん……俺が今まで戦った中でも、文句無しに一番強かった……だが、何とか勝つ事が出来た……勝てたんだ……」
「全く……エジタスを倒した如きで、あんなに喜んじゃって……みっともない…………へへっ、エジタスに勝てたんだ……」
「エジタスちゃん……あたし個人、エジタスちゃんに勝っただなんて思っていない……皆がいたからこそ、勝つ事が出来た。だからこれは、皆の勝利よ」
もう二度と味わえない程の喜びと達成感。真緒達、サタニア達の全員は笑顔に満ち溢れていた。こうして、二千年続いた長き戦いに終止符が打たれたのであった。
「…………いらない……もう……こんな世界など……いらない!!!」
「マオぢゃん!!大丈夫だがぁ!?」
真緒の首を絞め上げていたエジタスの片腕が、リーマの魔法によって吹き飛んだ事で、何とか一命を取り留めた。苦しそうに咳き込む真緒の元にハナコ、リーマ、フォルスの三人が駆け寄って来る。
「…………っ!!」
突然片腕を吹き飛ばされ、動揺を隠せないエジタスは冷静さを取り戻す為に跳躍をして、一旦その場から離れた。
「み、みん……ごほっ!!げほっ!!ごほっ!!ごほっ!!」
「マオさん、無理しないで下さい。さっきまで死にかけていたんですから…………」
「リーマの言う通りだ。落ち着いて息を整えろ」
「はぁ……はぁ……はぁ……あ、ありがとう……はぁ……はぁ……」
一命は取り留めたとは言え、先程まで首を絞め上げられ、息を吸う事が出来なかった。元の調子を取り戻すのは、しばらく時間が掛かるだろう。
「ぞれにじでも……どうじでリーマぢゃんの魔法が当だっだんだぁ?」
「えっ?」
「それは俺も気になっていた。どうしてなんだ?」
「えっ……と……それは……」
「ねぇ!!大丈夫だった!?」
三人が話合っていると、残りの三人であるサタニア、シーラ、アルシアが駆け寄って来た。
「魔王か。あぁ、命に別状は無い」
「よかった……それで、吹き飛んだエジタスの片腕の件なんだけど……」
「あぁ、それについて今聞こうとしていた所だ……」
その場にいる全員の視線が、リーマに注がれる。
「えっと……その……」
しかし言葉がハッキリとしておらず、脈絡が感じられなかった。
「…………どうなんだ?」
「……リーマぢゃん」
「「「…………」」」
「そ、その……わ、分かりません」
「な、何!?分からないだって!?」
一同の視線が集まる中、リーマは何故エジタスの片腕を吹き飛ばせたのか。全く理解していなかった。
「ほ、本当に分からないのか?」
「はい……只、マオさんを助けたいという想いで、覚えてる限りの魔法を無我夢中で唱えていました……」
「その時、唱えた魔法は覚えてる?」
「えっと……確か……」
アルシアに言われたリーマは、両腕を組みながら顔を天井に向けて、必死に思い出そうとする。
「“トルネード”、“ウィンドカッター”、“ウォーターキャノン”、“ネームドチェンジ”、“スネークフレイム”……この五つです」
「ちょっと待って!!その“ネームドチェンジ”って何!?」
「聞いた事の無い魔法ね……」
リーマが挙げた五つの魔法。その中でサタニアは、“ネームドチェンジ”という魔法に反応を示した。アルシアも初めて聞く魔法であった。
「えっと……この魔法は……私が初めてレベルアップした時に覚えた魔法で……確か主な能力が……」
***
「…………」
一方、エジタスは吹き飛ばされた自身の片腕を再生させる中、同じ様に何故吹き飛ばされたのか、考えていた。
「……“ネームドチェンジ”」
そして“ネームドチェンジ”の名前に辿り着くと、ある記憶も蘇って来た。それは真緒達と旅を始めて間もない頃、真緒とリーマの二人がレベルアップを果たした時であった。
“では、次はリーマさんの番ですね”
“はい、よろしくお願いします”
改変魔法
ネームドチェンジ
ネームドチェンジ
物理 魔法 スキル それぞれの、名称カテゴリーを変更できる。
“……えっと、つまりどういうことですか?”
“つまり、それぞれ他の枠組みに変えられる、ということです。たとえば、マオさんのスキル“ロストブレイク”をスキルの技としてではなく、魔法としての技に変えられる、そんな感じです”
“それって、何か意味があるんですか……?”
“いや~、それはちょっと分かりませんね~、私も初めて見る魔法ですから……”
“そんなー、せっかく覚えたのに……”
“まぁ、まだ覚えたばかりの魔法ですからね、今後のレベルアップの際に、新しく追加されるのを期待しましょう”
“…………はい”
「まさか……あんな糞の役にも立たなそうな魔法が…………!!」
攻撃系でも、補助系でも無い。何故存在するのかさえ不明であった魔法。そんな魔法が今現在、エジタス最大の天敵になろうとしている。
「……なら、先に潰すまでだ……」
そう言いながらエジタスは、治った片腕の手を開いたり閉じたりするのであった。
***
「行ける!!その“ネームドチェンジ”を上手く扱えば、エジタスを止められる!!」
希望の光。絶望的だった状況に、一筋の光が差し込んで来た。
「ここが正念場よ。絶対にエジタスちゃんを止めるわよ……例え手足が千切れ様とも……諦めるんじゃねぇぞぉおおおおおおおおおおおお!!!」
「「「「「おぉ!!」」」」」
「……いや、お前達はここで諦める事となるんだよ」
「「「「「「「!!!」」」」」」」
見えて来た勝利の可能性。その可能性を胸に戦おうとしたその時、いつの間にかリーマの背後を取っていたエジタス。一同は、言葉にもならない驚きの表情を浮かべた。
「くそっ!!出来ればもう一度試したかったが……こうなったら仕方ない!!魔法使い、しっかり頼むぞ!!」
「私の名前はリーマです!!“ネームドチェンジ”!!」
突如現れたエジタスに驚きながらも、シーラは即座にエジタスの前へと飛び出した。そして、槍を片手に勢い良くエジタスに飛び掛かった。それと同時に、リーマが“ネームドチェンジ”を唱える。
「うぉおおおおお!!!」
「(来たか……何も唱えないという事は、これは物理攻撃……本来ならコウスケの“物理無効”で防ぐが……今は“ネームドチェンジ”の影響で、別の攻撃カテゴリーに分類されている……魔法かスキル……だがここで問題なのは、何故スキルを発動しなかったのか……少しでも多くのダメージを与えたいのであれば、スキルを選ぶ筈……それをしないのは、この攻撃をスキルのカテゴリーだと思わせる為、つまりこの攻撃のカテゴリーは魔法だ!!)」
脳をフル回転させ、常人では一分掛かる考え事を、物の数秒でまとめ上げた。魔法攻撃だと結論付けたエジタスは、右側から生えている魔王サタニアの、“魔法無効”を発動する。
「……スキル“魔法無効”」
「残念だが、浅はかなお前達の考えは全てお見通しだ!!俺を止めるのなら、後二千年は知恵を付け…………!?」
その瞬間、シーラの突き出した槍がエジタスの横腹を抉り取った。
「よっしゃあああああ!!!」
「やった!!エジタスに二度目のダメージを与えた!!」
「そ、そんな馬鹿な……まさか……裏の裏を読んだスキル攻撃だったのか……!?」
エジタスは自身の予想が外れ、横腹が抉り取られた事に戸惑いを隠せず、酷く混乱していた。
「何か思い違いをしている様だが、今の私の攻撃は只の物理攻撃だぞ」
「な、何!?」
「ハナコさん!!今です!!」
「し、しまった!!シーラは囮……“ネームドチェンジ”を掛けた本命は…………!!!」
エジタスが視線を送ると、シーラの物陰からハナコが両腕を引きながら、待機していた。あの時リーマは、“ネームドチェンジ”をシーラでは無く、ハナコに掛けていたのだ。それが、エジタスの不意打ちとシーラが自信満々に飛び出して来た事で、すっかり騙されてしまった。
「今度ごぞ、当でで見ぜるだぁ!!スキル“インパクト・ベア”!!」
「くそっ!!スキル“スキル無効”……ち、違う!!今は“ネームドチェンジ”の能力で、別の攻撃カテゴリーに変わってる……っ!!!」
抉り取られた事によるダメージ。予想が外れた事によるショック。二つの出来事が、エジタスの思考回路を鈍らせた。結果、別の攻撃カテゴリーになったハナコの“インパクト・ベア”が、エジタスに直撃した。
「ぐふっ!!」
「やっだだぁ!!当だっだだぁ!!」
ハナコの“インパクト・ベア”によって、数メートル先まで吹き飛ばされたエジタスだが、そこは規格外のステータスと強靭な体格によって、倒れずに持ち堪えた。しかしそれでも、受けた傷はハッキリと付いていた。
「よし!!この調子で畳み掛けるんだ!!アルシア、行くぞ!!」
「任せないフォルスちゃん!!回復の暇は与えないわ!!リーマちゃん、よろしくね!!」
「はい!!“ネームドチェンジ”!!“ネームドチェンジ”!!」
シーラ、ハナコに続き、フォルスとアルシアがエジタスに追撃を加える。
「さぁ、行きますよエジタスさん!!スキル“一点集中”!!」
「エジタスちゃん、お仕置きよ!!スキル“等活地獄”!!」
「はぁ……はぁ……(くそっ!!くそっ!!どっちがどっちだ!?物理!?魔法!?だが、幸いなのは両方ともスキル攻撃では無いという事……それなら……!!!)」
迫り来る矢と両刀に対して、エジタスはその場で腰を屈んだ。それによって、背中から生えているコウスケと魔王サタニアが全面に押し出される。
「……スキル“物理無効”」
「……スキル“魔法無効”」
「墓穴を掘ったな!!物理攻撃と魔法攻撃なら同時に発動する事が出来る!!決着を急ぎ過ぎた……な……!!?」
フォルスの放った矢と、アルシアの両刀は、“物理無効”と“魔法無効”の膜を通り抜け、フォルスの矢はコウスケの額に突き刺さり、アルシアの両刀は魔王サタニアの体を斬り付けた。
「エジタスさん、同じ手に二度も引っ掛かるだなんて……」
「注意力が散漫しているんじゃいないの?」
「……同じ手……二度……ま、まさか!?」
リーマが“ネームドチェンジ”を二回唱えたのを見て、攻撃して来るのは二人だと判断した。そして実際、フォルスとアルシアの二人が攻撃を仕掛けて来た。しかし、エジタスは失念していた。あちらには後二人、攻撃を仕掛ける人物が残っている事を。
「……さてと、前座の役目は終わった」
「最後の仕上げ……頼んだわよ」
片方は首を絞められ、死に掛けていた。しばらくは動けないと思い、気に留めていなかった。しかし、その行動こそがエジタスの今世紀最大の失敗に繋がった。いや、それよりも潰すターゲットをリーマに変えてしまった時点で、失敗していたのかもしれない。当初の計画通り、先に二人を潰せば良かったのだ。
「「はぁあああああ!!!」」
リーマが“ネームドチェンジ”を掛けた、真緒とサタニアの二人がエジタスの元まで駆け寄る。そして手前まで来ると一斉に跳び上がり、それぞれが剣を振り上げる。
「だ、だが今度こそ、“物理無効”と“魔法無効”を同時に発動して、その攻撃を防いで……!!?」
エジタスが、コウスケと魔王サタニアを動かそうとするが、まともにダメージを受けてしまった事で、動きが鈍くなっていた。
「し、しまった!!!」
「師匠!!これで最後です!!」
「エジタス!!この一撃で、君を止めて見せる!!」
「「はぁあああああ!!!」」
「こんな……こんな……結末……」
真緒の純白の剣と、サタニアのティルスレイブが光輝き始める。
「スキル“ロストブレイク”!!」
「スキル“ブラックアウト”!!」
「…………あり得ない」
偶然か必然か、真緒のスキルは左側に生えている魔王サタニア。サタニアのスキルは右側に生えている勇者コウスケ。それぞれが宿命の相手に突き刺さった。
「ぐわぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
渾身のスキルが当たった事で、エジタスに突き刺さっていたコウスケ、魔王サタニアの媒体である、左腕の骨と右腕の骨が見事に砕け散った。そしてコウスケ、魔王サタニアの両方を同時に失ったエジタスはその場に倒れ込む。
「「「「「「「…………」」」」」」」
その光景に一同、夢でも見ているかの様にしばらく声も出さずに見つめていた。しかし次第に現実だと実感して来ると、その嬉しさが全身を駆け巡った。
「「「「「「「や……やったぁああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」」」」」
歓喜。遂に、遂にあのエジタスを倒す事が出来た。そのあまりの嬉しさに、ある者は跳び跳ね、ある者は近くの者と抱き合い、またある者は嬉しさから涙を流していた。
「わ、私達……やったんですよね!?師匠を止められたんですよね!?」
「そうだよ!!あのエジタスを止める事が出来たんだ!!」
「オラ……オラ……嬉じぐで涙が出るだぁあああああ!!!」
「私の魔法で……エジタスさんを止める事が出来た……私の魔法で……やった!!」
「エジタスさん……俺が今まで戦った中でも、文句無しに一番強かった……だが、何とか勝つ事が出来た……勝てたんだ……」
「全く……エジタスを倒した如きで、あんなに喜んじゃって……みっともない…………へへっ、エジタスに勝てたんだ……」
「エジタスちゃん……あたし個人、エジタスちゃんに勝っただなんて思っていない……皆がいたからこそ、勝つ事が出来た。だからこれは、皆の勝利よ」
もう二度と味わえない程の喜びと達成感。真緒達、サタニア達の全員は笑顔に満ち溢れていた。こうして、二千年続いた長き戦いに終止符が打たれたのであった。
「…………いらない……もう……こんな世界など……いらない!!!」
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仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
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世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
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