笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

唯一の対抗手段

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 地面から飛び出した死肉と遺骨の柱が、エジタス一ヶ所に集まる。それによって、再び巨大な姿へと戻りつつあった。



 「不味い!!あのまま放っておいたら、また巨大化されてしまう!!」



 「そうなったら、倒すのが非常に困難になる!!今すぐ止めるぞ!!」



 このまま、エジタスが巨大化してしまったら、最早勝ち目は無い。真緒達、サタニア達は慌てて、倒れているエジタスの側へと駆け寄る。



 「…………こ、これは!!?」



 しかし、そこにエジタスの姿は無かった。否、正確には姿はあるのだが白目を向いており、まるで生気を感じられなかった。そして決定的だったのが、倒れているエジタスの頭側に、穴が掘られていた。地面から飛び出て来た柱は、その穴目掛けて流れ込んでいたのだ。



 「そ、そうか!!これは、中身の無いダミーの人形だ!!」



 「ぢょ、ぢょっど待っでぐれぇ!!い、いっだいどう言う事なんだぁ!?」



 「このエジタス、姿こそ似ているけど……真っ赤な偽物って事だよ!!」



 「じゃ、じゃあ……本物のエジタスは……今…………」



 シーラがゆっくりと下を見る。それに合わせて、他の八人も下に目線を下ろす。その時だった。地面が大きく揺れ始める。



 「ま、まさか!?」



 「くそっ!!飛べる者は、空へ避難しろ!!その他の者達は、急いでその場から離れるんだ!!」



 「は、はい!!」



 「分かったよ!!」



 そう言うと、空を飛ぶ事の出来る真緒、サタニア、フォルス、シーラの四人は即座に空中へと舞い上がった。また、残りの五人も出来る限りの場所へと離れて行った。



 「遅すぎたのか…………」



 地面の揺れは更に激しさを増し、一同がいる地面の箇所にヒビが入る。次第にヒビは全体に広がり、遂にはヒビの入った地面が割れて地中から巨大な腕が、勢い良く飛び出した。



 「これは、かなり厄介な展開になって来たぞ……」



 九人が呆然と眺める中、巨大な腕の肘が曲がり手が地面に触れる。そして、起き上がる様に力を加え始める。



 「……残念だったな……お前達の力など、所詮はこの程度……だが、誇っていいぞ……一時とは言え、この俺にダメージを与えたのだからな」



 地中から響き渡る声。右腕に続き、右肩、頭、左肩、左腕、上半身と順々に飛び出して来た。そんな光景に、シーラが声を張り上げる。



 「そ、そうだ!!今なら、上半身しか飛び出していない!!今だったら、何とか倒せるんじゃないか!?」

 「「「「「「「「…………」」」」」」」」



 卑怯。そう言われても仕方の無い発言。しかし、シーラの発言も一方的に無下には出来なかった。何故なら、これがエジタスを止められる最後のチャンスかもしれないからだ。



 「……行こう……皆!!」



 「今なら、エジタスを止められるかもしれない!!一気に攻撃を畳み掛けるんだ!!」

 「「「「「「「…………」」」」」」」



 覚悟を決めた。真緒とサタニアの言葉に対して、残りの七人は静かに頷いた。そして、未だ上半身しか出て来ていないエジタス目掛けて、一斉突撃を開始する。例え、卑怯者と言われようとも構わない。この絶好の機会を逃す訳には行かないのだ。



 「“エンチャント・ホーリー”!!」



 「スキル“闇からの一撃”!!」



 「“三連弓”!!」



 「スキル“バハムート”!!」



 先に攻撃を仕掛けたのは、空へと舞い上がった四人。エジタス目掛けて魔法とスキルが放たれる。



 「……そんなに勝利が欲しいか……まぁ、そうだろうな……敗北の後には何も残らない……お前達の気持ちも分からなくはない……」



 「あたし達も、魔王ちゃん達の後に続くわよ!!スキル“大炎熱地獄”!!」



 「センセイ……オカクゴヲ……ウォオオオオオ!!」



 「これが……私の放てる最高の魔法!!“ダークブラスト”!!」



 「アーメイデさんの敵……ここで晴らさせて貰います!!“炎の槍”!!」



 「エジタスざん……済まないだぁ……オラ達は勝利を勝ぢ取るだぁ!!」



 空中から攻撃を仕掛けた真緒、サタニア、フォルス、シーラの四人に続いて、アルシア、ゴルガ、クロウト、リーマ、ハナコの五人が地上から攻撃を仕掛ける。未だ上半身しか出ていないエジタス目掛けて、スキルと魔法を放った。



 「……だが……だからこそ、お前達に何も残らない敗北を与えよう!!」

 「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」



 その瞬間、九人が放ったスキルと魔法は、地面から飛び出して来た無数の触手によって防がれてしまった。



 「な、何だあれ!?」



 その触手は蔓の様な見た目で、赤と薄いピンクが混ざり合った色をしており、赤と薄いピンクの間から白い物体が見え隠れしていた。そして何よりも、まるで生き物の様に動いていた。



 「見せてやろう……骨肉魔法の真骨頂を!!」



 すると、地面から飛び出して来た無数の触手は空中、そして地上にいる一同目掛けて襲い掛かって来た。



 「ヤ、ヤバい!!一旦、体制を立て直………げはぁ!?」



 「フォルスさ……ぐっ……きゃあああああ!!」



 迫り来る無数の触手に一旦、体制を立て直そうと試みるフォルスだったが、そう言い掛けた時には、既に触手の攻撃を食らってしまっていた。そして、フォルスの安否を心配して注意を反らしてしまった真緒も、触手の攻撃を食らってしまった。



 「くそったれ!!あんな触手、私の“バハムート”で焼き尽くしてやる!!スキル“バハムート”!!」



 迫り来る触手に対して、シーラは迎え撃とうとスキルを放った。槍先から生成された巨大な火の玉が、迫り来る触手とぶつかり合う。



 「…………何!?」



 しかし、ぶつかり合って間も無く、触手は巨大な火の玉を貫通して、シーラ目掛けて襲い掛かって来た。



 「ぐぁあああああ!!!」



 「シーラ!!それなら……“ダーク・イリュージョン”!!」



 触手の攻撃を食らったシーラを見て、サタニアは“ダーク・イリュージョン”を用いて、四体の分身を作り出した。そして、蜘蛛の子を散らす様に各々別の方向へと分かれ出した。



 「これなら、少しは時間稼ぎが出来る筈…………」



 そう思っていると、分身したサタニア達目掛けて、より多くの触手が襲い掛かって来た。



 「一体目……二体目……三体目……四体目……そ、そんな!?……うっ……うわぁあああああ!!!」



 作り出した分身四体が、次々に消されてしまい、残った本体も触手に追い付かれて、攻撃を食らってしまった。







***







 「な、何あれ!?植物!?……だけど、そっちから攻めて来るのなら受けて立つわ!!スキル“大炎熱地獄”!!」



 一方、地上の方でも無数の触手が五人に襲い掛かって来ていた。そんな中、アルシアは迫り来る触手に対して、“大炎熱地獄”を放ち燃やし始めた。



 「やったわ!!効いてる効いてる!!この触手も、骨肉魔法で生成された物……それはつまりMPがあるという事……それだったら、あたしの“大炎熱地獄”に負けは無いわ!!」



 アルシアのスキルを食らった触手は、悶え苦しむ様にその場でのたうち回った。そして操り人形の糸が切れた様に、突然動かなくなった。



 「ウォオオオオオ!!!」



 するとその隣では、ゴルガが襲い掛かって来た触手を、体で受け止めていた。



 「グッ……ゴーレムノオレガ、ココマデオサレルトハ……マ、マズイ……コノママデハ……」



 「ゴルガちゃん!!そのまま押さえ付けてなさい!!」



 「ア、アルシア!?……ワカッタ!!」



 アルシアに言われるがまま、触手を押さえ付けるゴルガ。するとアルシアは両刀を構えて、ゴルガが押さえ付ける触手目掛けてスキルを放った。



 「スキル“大炎熱地獄”!!」



 「オッ?……オォ……これは……」



 アルシアのスキルによって、ゴルガが押さえ付けていた触手も同様に、悶え苦しむ様にその場でのたうち回った。そしてまたも、操り人形の糸が切れた様に、突然動かなくなった。



 「スマン……タスカッタ……」



 「お礼するのは、全てが終わってから……まずは残りの三人も助けましょう!!」



 「ソウダナ!!」



 地上にいる残り三人を助ける為、アルシアとゴルガは走り出した。







***







 「はぁ……はぁ……はぁ……」



 クロウトは疲労していた。迫り来る触手に対して、全身を使って避ける。しかし、それも最早限界に近づいていた。元々、非戦闘系であるクロウトが長時間の戦闘など、最初から無理な話だったのだ。極度の疲労から、その場に倒れ伏してしまうクロウト。そんなクロウト目掛けて触手が容赦無く、襲い掛かって来た。



 「はぁ……はぁ……サタニア様……お役に立てず……申し訳ありませんでした…………」



 「あらあら、諦めるのは早過ぎるんじゃなぁい?」



 「ソウダ、オマエハジュウブン、マオウサマノヤクニタッテイルゾ」



 「ア、アルシア様……それに……ゴルガ様……」



 倒れ伏してしまったクロウトを守る為、アルシアとゴルガが前に立った。



 「ゴルガちゃん、受け止められるかしら?」



 「フン……タヤスイワ!!」



 そう言うとゴルガは、迫り来る触手を体で受け止めた。



 「イマダ!!ヤレ!!」



 「えぇ!!スキル“大炎熱地獄”!!」



 アルシアのスキルが、ゴルガが受け止めた触手を燃やし始める。触手は悶え苦しむ様に、その場でのたうち回った。そして同様に操り人形の糸が切れた様に、突然動かなくなった。



 「アルシア様……ゴルガ様……ありがとう……ございます……」



 「クロウトちゃん、無事……では無さそうね……ゴルガちゃん、クロウトちゃんを安全な場所へ」



 「マカセロ」



 そう言うとゴルガは、倒れ伏しているクロウトを抱き抱える。



 「す、すみません……私のせいでお二人には、ご迷惑をお掛けしてしまって…………」



 「そんな、自分を責める物じゃ無いわよ。今は体を休める事だけに集中しなさい。エジタスちゃんの事は、私達で何とかするから」



 「……アルシアさん……ありがとうございます……」



 「…………イクゾ」



 アルシアに優しい言葉を掛けられたクロウトは、頬を涙で濡らしながら戦いから離脱するのであった。



 「……さて、残りはあの二人……急がないと……」



 クロウトとゴルガを見送ったアルシアは、急いで残りの二人を助ける為、駆け寄って行くのだった。







***







 「“スネークフレイム”!!」



 一方、残りの二人であるリーマとハナコは、協同で触手との戦闘を繰り広げていた。リーマの魔導書から炎の蛇が生成され、迫り来る触手目掛けて勢い良く放った。



 「…………きゃあ!!」



 しかし、健闘虚しくリーマの放った炎の蛇は触手によって、打ち消されてしまった。



 「リーマぢゃん!!大丈夫だがぁ!?」



 ハナコがリーマの安否を心配して、側へと駆け寄る。



 「……わ、私の事よりも、ハナコさんは……ハナコさん自身の身を守って下さい……」



 「ぞう言う訳には行がないだぁ!!ごごで仲間を見捨でだら、命よりも大切な何がが折れでじまうだぁ!!」



 しかし、現実は残酷な物である。庇い合う二人目掛けて触手が襲い掛かる。



 「リーマぢゃんは殺らぜないだぁ!!スキル“鋼鉄化”!!」



 二人に迫り来る触手。ハナコはリーマを背にすると、全身を鋼鉄に変化させて触手を受け止めようと試みる。



 「……ぐぅ!!」



 「ハナコさん!!」



 全身を鋼鉄に変化させ、真正面から触手を受け止めたハナコ。しかし表情は苦しく、長くは持ちそうになかった。



 「全くハナコちゃんったら……ゴルガちゃんじゃないんだから、あまり無理しちゃ駄目よ?」



 「「!!!」」



 その時だった。命の危機が迫る二人の元へ、アルシアが駆け付けて来た。



 「でも、その触手を押さえ付けてくれたのは、助かったわ。スキル“大炎熱地獄”!!」



 やって来るなりアルシアは、両刀を構えてハナコが押さえ付けている触手目掛けてスキルを放った。



 「どわわわ!?」



 アルシアのスキルによって、触手は燃え始めた。押さえ付けていたハナコは、慌てて触手から手を離した。そして、今までと同じ様にのたうち回り、糸が切れた様に突然動かなくなった。



 「よし、これで地上にいる仲間は、全員助ける事が出来たわね」



 「アルシアざん……助がっだだぁ!!」



 「本当に……ありがとうございます!!」



 「ちょっ、ちょっとそんな頭を下げないで、あたしは人として当たり前の事をしたまでよ……あたし、“スケルトン”だけどね!!」



 「「……ぷっ、あははははは!!」」



 助かった事で気が抜けたのか、いつもより笑いのツボが浅かった。その為、アルシアの何気無いジョークも、心の底から笑える事が出来るのであった。







***







 「…………」



 空中、地上と一連のやり取りを見ていたエジタスは、深く考え込んでいた。



 「(効率を考えて、下半身を無数の触手に変形させたが……これは悪手だったかもしれない……空中戦においては何も問題無かった……だが、地上戦は……)」



 そう思いながら、エジタスはアルシアの事を睨み付ける。



 「(効率を考えたのは良かったが、それに伴う威力が足りない……誰一人殺す事が出来ないとは……全く情けない話だ……いや、これ以上考えても仕方無いな……取り敢えず、行動に移さなければ……まずは“あいつ”を最優先に殺すとしよう……)」



 するとエジタスは、地面を両手で強く押し、変形させた下半身を露にする。しかし、その下半身は腹部から下全てが無数の触手で構成されていた。下半身を露にしたのにも関わらず、無数の触手は未だ地面の中に続いていた。外見から分かる無数の触手は、触手同士で絡み合っており、その姿はまるで巨大な大樹の根を思わせた。
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