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プロローグ
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魔物も寝静まる深夜。激しい豪雨で窓が叩かれる。薄暗い部屋、均等に並べられている蝋燭の光によって、辛うじてその構造を認識する事が出来る。そこは教会。長い廊下の左右に置かれた長椅子それぞれには、黒子の様な布を被った不気味な者達が座っていた。各々が両手を組み合わせ、頭を下げて必死に祈りを捧げる中、その一番奥では純白のローブに身を包んだ一人の女性が正座をしながら、目の前の巨大なタペストリーに向けて両手を組み合わせ、他の集団と同じく祈りを捧げていた。
しばらく祈りを捧げていると、純白のローブに身を包んだ女性がゆっくりと立ち上がり、不気味な者達の方へ振り返った。それを切っ掛けに、不気味な者達は下げていた頭を持ち上げる。そしてローブの女性は静かに口を開き始めた。
「……かつてこの世界を、笑顔の絶えない幸せで平和な世の中にしようとした、素晴らしい道化師様がいました。しかし、幸せと平和を望まないとある少年少女達の手によって、道化師様の夢は半ば潰えてしまいました……」
女性の言葉に感化され、不気味な者達は各々涙を流し始める。
「……しかし!! そんな道化師様の意思を継ぐ者達がいました!!」
すると、先程まで号泣していた不気味な者達は、まるで嘘だったかの様に一瞬で泣き止んだ。
「そう!! それが私達なのです!! 偉大なる道化師様の意思を引き継ぎ、道化師様が成し得なかった事を成し遂げようではありませんか!!」
「し、しかし……それはあまりにも不敬な事なのではないでしょうか!?」
女性の言葉に異を唱える形で、不気味な者達の中にいた一人の人物が立ち上がった。皆の視線が、立ち上がった人物に集まる。
「……確かに……あの御方の成し得なかった事を、我々が代わりに成し遂げるなど不敬に当たるのかもしれません……ですが!! あの御方は天の神と成られてしまった。成ればこそ、我々が成し得なければならないのです!! あの御方の成し得ようとした事を、我々が代わりに成し得る事が出来れば、きっとあの御方は我々の前へ、その姿をお見せになる事でしょう!!」
「「「「おぉ!!!」」」」
不気味な者達による歓喜の声が、教会全体に響き渡る。外の雨が、更に激しさを増す。
「そ、それは誠なのですか!?」
「えぇ……全ては、あの御方が生前に遺して下さった、この書物に記されているのです」
そう言うとローブの女性は、懐から古ぼけた一冊の書物を取り出し、不気味な者達に向けて見せ付けた。
「「「「おぉ!!!」」」」
再び、不気味な者達による歓喜の声が、教会全体に響き渡る。それと同時に、外で雷が鳴り響いた。雷の光が教会全体を一瞬だけ照らす。
「そ、それで!? 道化師様が成し得なかった事とはいったい!?」
「それは勿論……この世界を“笑顔の絶えない世界”にする事です!!」
ローブの女性の言葉に反応を示すかの様に、教会付近で雷が落ちた。不気味な者達は嵐の様な歓声を上げる。
「さぁ、今日も祈りを捧げるのです。あの御方が、私達の目の前に現れるその日まで!!」
ローブの女性は振り返り、タペストリーに向けて天を仰ぐ様に両手を大きく広げ、大声を発した。その瞬間、外で雷が鳴り響く。座っていた者達が一斉に立ち上がり、一心不乱に祈りを捧げ始めた。
「あぁ……早くあなた様に会いたい……我が神よ……」
外で雷が鳴り響く。それからも、まるで何かに引き寄せられたかの様に、教会の近くで雷が落ち続ける。幾度となく落ち続ける雷の光によって、タペストリーの中央に何かが供えられている事が見て取れた。
「私は……あなた様の事を……ずっとずっと前から……愛しております……」
ローブの女性が見せるその表情は、何処か悲しげで幸せそうに感じられた。矛盾に思える言い回しだが、それ程までに複雑な表情を浮かべているのだ。
「……“エジタス”様……」
目線の先、タペストリーの中央に供えられた何か、それは“仮面”だった。いや、仮面と呼ぶにはあまりにも歪な形をしていた。粉々に砕かれた破片を無理矢理繋ぎ合わせた仮面は笑っているのか、それとも怒っているのか、はたまた悲しんでいるのか、その表情を読み取る事が出来なかった。そんな歪な仮面をタペストリーの中央に供えて、一心不乱に祈りを捧げている集団。彼らの祈りは、今日も人知れず行われるのであった。
しばらく祈りを捧げていると、純白のローブに身を包んだ女性がゆっくりと立ち上がり、不気味な者達の方へ振り返った。それを切っ掛けに、不気味な者達は下げていた頭を持ち上げる。そしてローブの女性は静かに口を開き始めた。
「……かつてこの世界を、笑顔の絶えない幸せで平和な世の中にしようとした、素晴らしい道化師様がいました。しかし、幸せと平和を望まないとある少年少女達の手によって、道化師様の夢は半ば潰えてしまいました……」
女性の言葉に感化され、不気味な者達は各々涙を流し始める。
「……しかし!! そんな道化師様の意思を継ぐ者達がいました!!」
すると、先程まで号泣していた不気味な者達は、まるで嘘だったかの様に一瞬で泣き止んだ。
「そう!! それが私達なのです!! 偉大なる道化師様の意思を引き継ぎ、道化師様が成し得なかった事を成し遂げようではありませんか!!」
「し、しかし……それはあまりにも不敬な事なのではないでしょうか!?」
女性の言葉に異を唱える形で、不気味な者達の中にいた一人の人物が立ち上がった。皆の視線が、立ち上がった人物に集まる。
「……確かに……あの御方の成し得なかった事を、我々が代わりに成し遂げるなど不敬に当たるのかもしれません……ですが!! あの御方は天の神と成られてしまった。成ればこそ、我々が成し得なければならないのです!! あの御方の成し得ようとした事を、我々が代わりに成し得る事が出来れば、きっとあの御方は我々の前へ、その姿をお見せになる事でしょう!!」
「「「「おぉ!!!」」」」
不気味な者達による歓喜の声が、教会全体に響き渡る。外の雨が、更に激しさを増す。
「そ、それは誠なのですか!?」
「えぇ……全ては、あの御方が生前に遺して下さった、この書物に記されているのです」
そう言うとローブの女性は、懐から古ぼけた一冊の書物を取り出し、不気味な者達に向けて見せ付けた。
「「「「おぉ!!!」」」」
再び、不気味な者達による歓喜の声が、教会全体に響き渡る。それと同時に、外で雷が鳴り響いた。雷の光が教会全体を一瞬だけ照らす。
「そ、それで!? 道化師様が成し得なかった事とはいったい!?」
「それは勿論……この世界を“笑顔の絶えない世界”にする事です!!」
ローブの女性の言葉に反応を示すかの様に、教会付近で雷が落ちた。不気味な者達は嵐の様な歓声を上げる。
「さぁ、今日も祈りを捧げるのです。あの御方が、私達の目の前に現れるその日まで!!」
ローブの女性は振り返り、タペストリーに向けて天を仰ぐ様に両手を大きく広げ、大声を発した。その瞬間、外で雷が鳴り響く。座っていた者達が一斉に立ち上がり、一心不乱に祈りを捧げ始めた。
「あぁ……早くあなた様に会いたい……我が神よ……」
外で雷が鳴り響く。それからも、まるで何かに引き寄せられたかの様に、教会の近くで雷が落ち続ける。幾度となく落ち続ける雷の光によって、タペストリーの中央に何かが供えられている事が見て取れた。
「私は……あなた様の事を……ずっとずっと前から……愛しております……」
ローブの女性が見せるその表情は、何処か悲しげで幸せそうに感じられた。矛盾に思える言い回しだが、それ程までに複雑な表情を浮かべているのだ。
「……“エジタス”様……」
目線の先、タペストリーの中央に供えられた何か、それは“仮面”だった。いや、仮面と呼ぶにはあまりにも歪な形をしていた。粉々に砕かれた破片を無理矢理繋ぎ合わせた仮面は笑っているのか、それとも怒っているのか、はたまた悲しんでいるのか、その表情を読み取る事が出来なかった。そんな歪な仮面をタペストリーの中央に供えて、一心不乱に祈りを捧げている集団。彼らの祈りは、今日も人知れず行われるのであった。
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