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第一章 新たなる旅立ち
大司教
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「……遂にこの日が来ちゃったね……」
「な、何だが緊張じで来だだぁ……」
「レッマイル、ヘッラアーデの創設者……いったいどんな人物なんでしょうか?」
「どんな奴であろうと、俺達の目的は変わらない。ヘッラアーデの真の目的を探るんだ」
リップとの会話から三日後。レッマイルとヘッラアーデの創設者、大司教と呼ばれる人物の訪問日がやって来た。真緒達がレッマイルに向かうと、ヴォイス団長が出迎えた。
「やぁ、来たな。待ってたぞ。大司教様を出迎える準備は出来たか?」
「はい。こちらはバッチリです」
「それは良かった。こっちも準備万端だ。今から待ち遠しくて堪らない。さぁ、早く下に降りよう!!」
そう言うとヴォイス団長は意気揚々と、地下にあるヘッラアーデ13支部へと向かう。慌ててその後を、真緒達も追い掛けて行く。
「…………」
そんな真緒達の様子を、建物の影から伺う者がいた。しかし直ぐ様その場から消えて、その姿を眩ましてしまう。
***
「待ちに待ったこの日がやって来た!!」
「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」
ヘッラアーデ13支部。真緒達が降りて行くと、既に他の教団員達は集まっており、その向かい側にはジンクス司教が両手を大きく広げながら、演説風に呼び掛けていた。
「もう間も無く、このヘッラアーデ13支部に、大司教様がお越しになられる!! 皆、出迎えの準備は出来ているか!?」
「はい!! 床、壁、柱のありとあらゆる所を全て磨きました!!」
「便器も舐められる程、綺麗になりました!!」
「飾りなどの装飾を施して、全体的に華やかにしました!!」
周りを見渡すと、三日前よりも明るい雰囲気になっていた。埃や汚れは一切無く、代わりに飾りなどの装飾が施されていた。しかし相変わらず、“赤”のイメージは変わっていなかった。寧ろ明るくなった事で、より強調されている様に感じる。
「素晴らしい!! これなら大司教様を出迎えても、問題無いだろう!!」
そう言うとジンクス司教は、教団員達の側へと歩み寄る。そしてクルリと振り返り、背中を見せる形を取った。
「それではこれより、大司教様をここにお呼びするぞ!!」
「えっ!? ここにって……外から来られるのではないのですか!?」
「ふふふ……実はな、大司教様は……あの御方と同じ“転移魔法”をお使いになるのだ!!」
ジンクス司教の口から衝撃の事実に、辺りがざわつき始める。
「(き、聞きましたか!?)」
「(あ、あぁ……どうやら大司教は、エジタスさんと同じ“転移魔法”の使い手らしい……しかし不味いな。もし、さっきの話が本当ならリップの捕らえる作戦は無意味になってしまう……ここは一度、地上に戻って作戦を練り直そう)」
「(ぞうだなぁ……ぞの方が良い気がずるだぁ……なぁ、マオぢゃん…………マオぢゃん? マオぢゃんどうじだだぁ?)」
「(師匠と同じ……“転移魔法”……空間を操り、一度目にした場所や人に移動する事が出来る魔法……どんなに努力しても習得する事が出来なかった……)」
エジタスが亡くなってから一年。真緒は少しでもエジタスに近付こうと、“転移魔法”を習得しようとした。しかし結果は火を見るより明らか。唯一身に付いたのは、筋力と精神力の二つ。勿論、これらもエジタスに近づくのには必要不可欠な能力。しかしながら、エジタスと比較すると、劣っている様にも感じる。そんな事を考えていた為、リーマ、フォルス、ハナコの会話は頭に入って来なかった。
「さぁさぁ、こんな所で突っ立っている場合じゃ無いだろう? 大司教様のお顔を拝見する為に、もっと奥へと進もうじゃないか!!」
「えっ、ちょ、ちょっ、まっ……!?」
真緒が物思いに耽っていると、ヴォイス団長が真緒達を、無理矢理教団員が密集する空間に押し込んだ。
「さぁ、皆で祈りを捧げるのだ!! さすれば大司教様は、お出でになられるであろう!!」
そう言いながらジンクス司教は両手を組み合わせ、顎を少し下げ、祈りの構えを取った。それに続いて、ヴォイス団長含む他の教団員達も祈りの構えを取り始めた。
「(と、取り敢えずここは、黙って祈りを捧げる事にしよう)」
周りの人達が次々と祈りの構えを取り始め、真緒達は慌てて真似をする。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙。静まり返る現場に、真緒達は緊張と不安に襲われる。また、何分祈り続ければいいのか分からず、戸惑いと困惑にも襲われていた。
「…………もうよろしいですよ。顔を上げて下さい……」
「「「「!!?」」」」
その時、真緒達の耳に聞き慣れない女性の声が聞こえて来た。穏やかで落ち着いた口調。優しく暖かみを感じる声質。聞いているだけで、先程の不安、緊張、戸惑い、困惑といった負の感情が薄れて行った。その場の全員が、一斉に顔を上げる。
「皆さん、初めまして。大司教の“エイリス”と申します。本日は訪問という事で、ヘッラアーデ本部からこのヘッラアーデ13支部に参りました。短い間ではありますが、どうぞ仲良くして下さい」
そこには“女神”がいた。整った容姿は勿論、真っ白なベールと修道服が組合わさった様な清楚な服装に、左目の泣きぼくろが特徴的なセクシーな顔立ち。相反する二つの魅力が混ざり合い、この世の者では無い美しさがあった。そしてその右側には全身を鎧で包み込み、女性顔に彫られたフルフェイスの兜で、顔を覆い隠す謎の人物が一緒に立っていた。
「この方は“ノーフェイス”、皆さんの所で言う“幹部”の一人です。主に私の警護を担ってくれています。ノーフェイス、挨拶を……」
エイリスの言葉に反応して、ノーフェイスは一歩前に歩み出る。そして軽く頭下げた後、顔を上げて一歩後ろに下がり、元の位置に戻った。
「すみません……ノーフェイスは人見知りでして……どうか仲良くしてあげて下さいね」
「「「「「「…………」」」」」」
開いた口が塞がらない。来ると分かっていても、実際目の前に現れれば思わず驚いてしまう。
「あの……どうかなさいましたか?」
「あっ、いえいえ何でもありません!! 大司教様があまりにも美しくて、つい見とれていました!!」
全く反応を示さない教団員達を心配して、エイリスが声を掛ける。その声に慌ててジンクス司教が、教団員達の素直な気持ちを代弁する。
「まぁ、美しいだなんて……お世辞だとしても嬉しいです」
「そ、そんなお世辞などではありません!! 本当に、本当に美しいです!! はい!!」
「そう言ってくれるなんて、ますます嬉しい。13支部の司教さんとは、仲良く出来そうです」
「な、仲良くだなんて!! お、恐れ多いです!!」
漸くまともな会話になると思いきや、ジンクス司教はエイリスのあまりの美しさに、頭を垂れて距離を取ってしまった。
「恐れ多いだなんて……大袈裟ですよ。私など、あの御方に比べれば平凡です……」
「あ、あの御方というのは、もしかして…………!?」
「はい……私達が崇めるこの世の救世主。この世界を笑顔の絶えない世界にしようとして下さった……“道楽の道化師”エジタス様……」
「あぁ、“エジタス”様!!」
「“エジタス”様!!」
「我らが救世主“エジタス”様!!」
エイリスの口から、エジタスの名前が告げられる。それに反応する様に、教団員達はエジタスの名を呟く。
「本日の訪問は、皆様にある重要な事をお伝えする為に参りました」
「重要な事……?」
「大司教様自らが、お伝えする事とはいったい……?」
「……司教さん、私達ヘッラアーデの目的は覚えていますか?」
「勿論です!! 我々ヘッラアーデは、あの御方が成し遂げられなかった事を代わりに成し遂げる……つまり、この世界を“笑顔の絶えない世界”にする事です!!」
「「「「!!!」」」」
この日、真緒達は偶然にもヘッラアーデの目的となる情報を手に入れた。“笑顔の絶えない世界”。エジタスは、この世界を争いの無い平和な世の中にしようとしたが、夢半ばで破れてしまった。そんなエジタスの意思を、ヘッラアーデが継いでいた。
「その通りです。その為の準備として、ヘッラアーデを組織して、ヘッラアーデの教団員を選抜する為に、レッマイルを組織しました。ゴルド帝国は既に私達の手中……最早、充分と思える位の力を手に入れました。しかし、まだ足りない……もっと決定的な力が必要です。それこそ、世界を変えてしまう程の力が…………」
「世界を変えてしまう力……そ、それはいったい!?」
エイリスの熱い演説に、ジンクス司教の問い掛けも熱くなる。するとエイリスは、懐から古ぼけた書物を取り出し、教団員達に見せ付ける。
「これは……生前エジタス様が遺して下さった“日記”です」
「「「「「「おぉ!!」」」」」」
「(師匠の……日記……)」
真緒は食い入る様に、エイリスが取り出したエジタスの日記を見つめる。周りの人を掻き分け、近付いて行く。
「(マ、マオぢゃん!?)」
「(マオさん!! それ以上近づくのは危険です!!)」
「(今すぐ戻って来い!!)」
三人の忠告を無視し、真緒はどんどん近付いて行き、ジンクス司教の側まで近付いた。
「それで、その日記には何が書かれていたのですか!?」
「お話ししましょう。その為に来たのですから……エジタス様は、この世界を“笑顔の絶えない世界”にする為、二千年という月日を掛けて、ワールドクラウンの元となる王冠の場所を探していました。しかし実際は、千年足らずでその場所を特定し終えていました」
「で、では残り千年はいったい何を!?」
「ここからが重要です。エジタス様は、万が一ワールドクラウンが揃わず、自分が亡くなってしまい、計画が頓挫してしまった時の為に、救済措置として“ロストマジックアイテム”を遺していたのです」
「“ロストマジックアイテム”……?」
「…………ふふっ」
初めて聞く単語に首を捻る真緒。そんな中、エイリスは優しく微笑むのであった。
「な、何だが緊張じで来だだぁ……」
「レッマイル、ヘッラアーデの創設者……いったいどんな人物なんでしょうか?」
「どんな奴であろうと、俺達の目的は変わらない。ヘッラアーデの真の目的を探るんだ」
リップとの会話から三日後。レッマイルとヘッラアーデの創設者、大司教と呼ばれる人物の訪問日がやって来た。真緒達がレッマイルに向かうと、ヴォイス団長が出迎えた。
「やぁ、来たな。待ってたぞ。大司教様を出迎える準備は出来たか?」
「はい。こちらはバッチリです」
「それは良かった。こっちも準備万端だ。今から待ち遠しくて堪らない。さぁ、早く下に降りよう!!」
そう言うとヴォイス団長は意気揚々と、地下にあるヘッラアーデ13支部へと向かう。慌ててその後を、真緒達も追い掛けて行く。
「…………」
そんな真緒達の様子を、建物の影から伺う者がいた。しかし直ぐ様その場から消えて、その姿を眩ましてしまう。
***
「待ちに待ったこの日がやって来た!!」
「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」
ヘッラアーデ13支部。真緒達が降りて行くと、既に他の教団員達は集まっており、その向かい側にはジンクス司教が両手を大きく広げながら、演説風に呼び掛けていた。
「もう間も無く、このヘッラアーデ13支部に、大司教様がお越しになられる!! 皆、出迎えの準備は出来ているか!?」
「はい!! 床、壁、柱のありとあらゆる所を全て磨きました!!」
「便器も舐められる程、綺麗になりました!!」
「飾りなどの装飾を施して、全体的に華やかにしました!!」
周りを見渡すと、三日前よりも明るい雰囲気になっていた。埃や汚れは一切無く、代わりに飾りなどの装飾が施されていた。しかし相変わらず、“赤”のイメージは変わっていなかった。寧ろ明るくなった事で、より強調されている様に感じる。
「素晴らしい!! これなら大司教様を出迎えても、問題無いだろう!!」
そう言うとジンクス司教は、教団員達の側へと歩み寄る。そしてクルリと振り返り、背中を見せる形を取った。
「それではこれより、大司教様をここにお呼びするぞ!!」
「えっ!? ここにって……外から来られるのではないのですか!?」
「ふふふ……実はな、大司教様は……あの御方と同じ“転移魔法”をお使いになるのだ!!」
ジンクス司教の口から衝撃の事実に、辺りがざわつき始める。
「(き、聞きましたか!?)」
「(あ、あぁ……どうやら大司教は、エジタスさんと同じ“転移魔法”の使い手らしい……しかし不味いな。もし、さっきの話が本当ならリップの捕らえる作戦は無意味になってしまう……ここは一度、地上に戻って作戦を練り直そう)」
「(ぞうだなぁ……ぞの方が良い気がずるだぁ……なぁ、マオぢゃん…………マオぢゃん? マオぢゃんどうじだだぁ?)」
「(師匠と同じ……“転移魔法”……空間を操り、一度目にした場所や人に移動する事が出来る魔法……どんなに努力しても習得する事が出来なかった……)」
エジタスが亡くなってから一年。真緒は少しでもエジタスに近付こうと、“転移魔法”を習得しようとした。しかし結果は火を見るより明らか。唯一身に付いたのは、筋力と精神力の二つ。勿論、これらもエジタスに近づくのには必要不可欠な能力。しかしながら、エジタスと比較すると、劣っている様にも感じる。そんな事を考えていた為、リーマ、フォルス、ハナコの会話は頭に入って来なかった。
「さぁさぁ、こんな所で突っ立っている場合じゃ無いだろう? 大司教様のお顔を拝見する為に、もっと奥へと進もうじゃないか!!」
「えっ、ちょ、ちょっ、まっ……!?」
真緒が物思いに耽っていると、ヴォイス団長が真緒達を、無理矢理教団員が密集する空間に押し込んだ。
「さぁ、皆で祈りを捧げるのだ!! さすれば大司教様は、お出でになられるであろう!!」
そう言いながらジンクス司教は両手を組み合わせ、顎を少し下げ、祈りの構えを取った。それに続いて、ヴォイス団長含む他の教団員達も祈りの構えを取り始めた。
「(と、取り敢えずここは、黙って祈りを捧げる事にしよう)」
周りの人達が次々と祈りの構えを取り始め、真緒達は慌てて真似をする。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙。静まり返る現場に、真緒達は緊張と不安に襲われる。また、何分祈り続ければいいのか分からず、戸惑いと困惑にも襲われていた。
「…………もうよろしいですよ。顔を上げて下さい……」
「「「「!!?」」」」
その時、真緒達の耳に聞き慣れない女性の声が聞こえて来た。穏やかで落ち着いた口調。優しく暖かみを感じる声質。聞いているだけで、先程の不安、緊張、戸惑い、困惑といった負の感情が薄れて行った。その場の全員が、一斉に顔を上げる。
「皆さん、初めまして。大司教の“エイリス”と申します。本日は訪問という事で、ヘッラアーデ本部からこのヘッラアーデ13支部に参りました。短い間ではありますが、どうぞ仲良くして下さい」
そこには“女神”がいた。整った容姿は勿論、真っ白なベールと修道服が組合わさった様な清楚な服装に、左目の泣きぼくろが特徴的なセクシーな顔立ち。相反する二つの魅力が混ざり合い、この世の者では無い美しさがあった。そしてその右側には全身を鎧で包み込み、女性顔に彫られたフルフェイスの兜で、顔を覆い隠す謎の人物が一緒に立っていた。
「この方は“ノーフェイス”、皆さんの所で言う“幹部”の一人です。主に私の警護を担ってくれています。ノーフェイス、挨拶を……」
エイリスの言葉に反応して、ノーフェイスは一歩前に歩み出る。そして軽く頭下げた後、顔を上げて一歩後ろに下がり、元の位置に戻った。
「すみません……ノーフェイスは人見知りでして……どうか仲良くしてあげて下さいね」
「「「「「「…………」」」」」」
開いた口が塞がらない。来ると分かっていても、実際目の前に現れれば思わず驚いてしまう。
「あの……どうかなさいましたか?」
「あっ、いえいえ何でもありません!! 大司教様があまりにも美しくて、つい見とれていました!!」
全く反応を示さない教団員達を心配して、エイリスが声を掛ける。その声に慌ててジンクス司教が、教団員達の素直な気持ちを代弁する。
「まぁ、美しいだなんて……お世辞だとしても嬉しいです」
「そ、そんなお世辞などではありません!! 本当に、本当に美しいです!! はい!!」
「そう言ってくれるなんて、ますます嬉しい。13支部の司教さんとは、仲良く出来そうです」
「な、仲良くだなんて!! お、恐れ多いです!!」
漸くまともな会話になると思いきや、ジンクス司教はエイリスのあまりの美しさに、頭を垂れて距離を取ってしまった。
「恐れ多いだなんて……大袈裟ですよ。私など、あの御方に比べれば平凡です……」
「あ、あの御方というのは、もしかして…………!?」
「はい……私達が崇めるこの世の救世主。この世界を笑顔の絶えない世界にしようとして下さった……“道楽の道化師”エジタス様……」
「あぁ、“エジタス”様!!」
「“エジタス”様!!」
「我らが救世主“エジタス”様!!」
エイリスの口から、エジタスの名前が告げられる。それに反応する様に、教団員達はエジタスの名を呟く。
「本日の訪問は、皆様にある重要な事をお伝えする為に参りました」
「重要な事……?」
「大司教様自らが、お伝えする事とはいったい……?」
「……司教さん、私達ヘッラアーデの目的は覚えていますか?」
「勿論です!! 我々ヘッラアーデは、あの御方が成し遂げられなかった事を代わりに成し遂げる……つまり、この世界を“笑顔の絶えない世界”にする事です!!」
「「「「!!!」」」」
この日、真緒達は偶然にもヘッラアーデの目的となる情報を手に入れた。“笑顔の絶えない世界”。エジタスは、この世界を争いの無い平和な世の中にしようとしたが、夢半ばで破れてしまった。そんなエジタスの意思を、ヘッラアーデが継いでいた。
「その通りです。その為の準備として、ヘッラアーデを組織して、ヘッラアーデの教団員を選抜する為に、レッマイルを組織しました。ゴルド帝国は既に私達の手中……最早、充分と思える位の力を手に入れました。しかし、まだ足りない……もっと決定的な力が必要です。それこそ、世界を変えてしまう程の力が…………」
「世界を変えてしまう力……そ、それはいったい!?」
エイリスの熱い演説に、ジンクス司教の問い掛けも熱くなる。するとエイリスは、懐から古ぼけた書物を取り出し、教団員達に見せ付ける。
「これは……生前エジタス様が遺して下さった“日記”です」
「「「「「「おぉ!!」」」」」」
「(師匠の……日記……)」
真緒は食い入る様に、エイリスが取り出したエジタスの日記を見つめる。周りの人を掻き分け、近付いて行く。
「(マ、マオぢゃん!?)」
「(マオさん!! それ以上近づくのは危険です!!)」
「(今すぐ戻って来い!!)」
三人の忠告を無視し、真緒はどんどん近付いて行き、ジンクス司教の側まで近付いた。
「それで、その日記には何が書かれていたのですか!?」
「お話ししましょう。その為に来たのですから……エジタス様は、この世界を“笑顔の絶えない世界”にする為、二千年という月日を掛けて、ワールドクラウンの元となる王冠の場所を探していました。しかし実際は、千年足らずでその場所を特定し終えていました」
「で、では残り千年はいったい何を!?」
「ここからが重要です。エジタス様は、万が一ワールドクラウンが揃わず、自分が亡くなってしまい、計画が頓挫してしまった時の為に、救済措置として“ロストマジックアイテム”を遺していたのです」
「“ロストマジックアイテム”……?」
「…………ふふっ」
初めて聞く単語に首を捻る真緒。そんな中、エイリスは優しく微笑むのであった。
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