笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第一章 新たなる旅立ち

三日後

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 「いいか。このヘッラアーデは、1から15の支部に分かれている。そしてその上には、“本部”と呼ばれるヘッラアーデの中心核が存在する」



 ヴォイス団長の大声が教会中に響き渡った後、他の教団員達に睨み付けられた。恥ずかしさと気まずさから、真緒達はその場を離れ、一度レッマイルの方へと戻って来ていた。そして戻った途端、大司教について何も知らない真緒達の為に、ヴォイス団長は紙に組織図を書いて分かりやすく説明を始めた。



 「この本部のトップに君臨するのが、大司教様という訳だ。元々ヘッラアーデやレッマイルという団体や教団は、大司教様が創設した物……つまり大司教様がいなければ、私達はこうして出会う事が出来なかった」



 「成る程……ヘッラアーデやレッマイルからすれば、大司教様は言わば親の様な存在という訳ですか」



 「そう、その通り!! まさに大司教様は私達にとって、親の様な存在!! とても偉大な御方なんだ!!」



 「それはそうと、本部が存在すると言っていたが、いったい何処に本部があるんだ?」



 「あぁ、“ゴルド帝国”だ」



 「「「「ゴルド帝国……」」」」



 ヴォイス団長がする大司教の話は、以前真緒達がリリヤ女王から聞いた話と全く同じ内容で、目新しい情報が無いなと思っていたが、フォルスが聞いた何気無い問い掛けにより、ヘッラアーデ本部の場所が特定出来た。“ゴルド帝国”、総合的な国力ならば、カルド王国よりも勝ると言われる国。そんな国に本部を構えているという事実に、真緒達の表情は険しさを増すばかりだった。



 「大司教様って、具体的にどう言う人物なんですか?」



 「うーん……実は私も、詳しくは知らないんだ」



 「えっ、どう言う事ですか!?」



 「そもそも大司教様は、あまり人前に出ない人だと言われている。その為、その素顔を知るのは本部にいる“幹部”三人に、それぞれの支部に属する司教達15人だけなんだ」



 「幹部?」



 ヴォイス団長の言葉に、反応を示すリーマ。幹部の情報は、リリヤ女王からも聞かされていない。



 「本部には、大司教様を支える幹部が三人いると聞いている。組織図で表すと、一番上が大司教様、その下に幹部三人、その下にそれぞれの支部に属する司教15人、そしてその下にレッマイルの団長15人、後はその他大勢の団員や教団員……という様な構図になっている」



 「随分と詳しいんですね……」



 支部の事だけでは無く、本部の情報まで知っているヴォイス団長。そんなヴォイス団長に、真緒は然り気無く質問をする。



 「あぁ、今の話は全部私がレッマイルの団長に選ばれた際、ジンクス司教様から聞いた話だからね。詳しいのは当然さ」



 「そうだったんですか……それにしても、大司教様は凄い方なんですね。確かレッマイルが目立ち始めたのが一年程前から……つまり約一年という短い期間で、ヘッラアーデとレッマイルの二つの組織を築き上げたという事ですよね?」



 そんな事を考えながら真緒は、紙に書かれた組織図を手に取り、じっくりと眺める。



 「凄いなんて物じゃないよ!!」



 「「「「!!?」」」」



 感情が高ぶったのか。ヴォイス団長は、ぶつかる様な激しい勢いで、真緒達に顔を寄せる。



 「ヘッラアーデの支部は、教団員が百人に限定されている。その為、司教一人でも何とか統括する事が出来る。しかし、本部ではその五倍!! 約五百人あまりの教団員を、大司教様一人で統括しているんだ!! そのカリスマ性と言ったら、噂だけでもうお腹一杯だよ!! 中でも私が最もカリスマ性が凄いと感じた話があってね!! それは今から半年程前の話なんだけど………………」



 その時、ヴォイス団長は笑顔だった。初めて会った時の笑顔よりも、無邪気で楽しそうな笑顔。まるで憧れの人物を語る子供の様に、夢中で話していた。



 「(皆……ちょっといい?)」



 「(マオぢゃん、どうじだだぁ?)」



 夢中になって話し込むヴォイス団長を他所に、真緒が三人に小声で声を掛けて来た。



 「(一度、この話をリップに伝えた方が良いかもしれない)」



 「(確かに……私達だけで抱えるには、あまりにも大き過ぎる案件かもしれません)」



 「(そうだな。王国側であるリップの意見を聞いても、損は無いだろう。俺は賛成だ)」



 「(オラも賛成だぁ)」



 三日後。大司教と呼ばれる人物が、このヘッラアーデ13支部を訪問して来る。そのあまりに大きな内容は、真緒達四人では抱え切れない。



 「あの、ヴォイス団長」



 「その時、私は感動しました。大司教様の懐の深さに……何ですか?」



 「私達、そろそろ失礼します。三日後の訪問に備えて、色々と準備を整えたいので……」



 「そうだな。大司教様を出迎える準備は、万全にしなければいけない。私もこの三日は寝ずに準備するつもりだ」



 「あはは……お互い、頑張りましょう」



 そう言いながら、真緒はヴォイス団長に片手を差し出した。



 「あぁ、大司教様に最高の訪問だったと褒めて貰おう!!」



 ヴォイス団長は、差し出された片手を強く握り返した。この部分だけ見れば、真緒達とヴォイス団長が仲間の様に見える。しかし残念だが、真緒達の準備とヴォイス団長の準備は異なる。



 「それでは三日後に……」



 「あぁ、三日後に……」



 ヴォイス団長と別れを告げた真緒達は、ここまでの話をリップに伝える為、足早にその場を離れて行った。







***







 「はぁー、どうしていきなりそんな展開になっているんですか……」



 真緒の部屋。ヴォイス団長と別れてから四人は、近況報告で集まったリップにこれまでの事を伝えた。話を聞き終えたリップは、頭を抱えながら深い溜め息を吐いた。



 「す、すみません……」



 「いえ、マオさんが謝る事じゃありません。取り敢えず今は、この緊急案件をどうにかする必要があります」



 「ぶっちゃけた話、カルド王国はヘッラアーデについて、何処まで情報を得ているんだ?」



 「……正直、大司教という人物がいるという情報しか手に入れていません」



 「マジか……」



 「……普段は、他国との情報伝達を上手く取り入ってくれるベテランの人がいるんですが……リリヤ様の方針である若い世代と古くから城に仕えている世代の全入れ替えが、未だに響いていまして……新しく入った若い人は、情報のやり取りがまだ上手く出来ていない様です……」



 リリヤ女王の若い世代にチャンスを与える方針。この急な方針によって、古くから仕えている有能な人材が左遷され、新しく入った未熟な人材が担当する事になってしまった。そのせいで国の中枢は麻痺し、上手く機能しなくなった。



 「そんな危険な状態に、リリヤ女王は何か対策は考えているのか?」



 「い、いやそれがその……リリヤ様曰く、慈愛の精神で接していれば、正直に話してくれると……」



 「そ、そんな能天気な事を言っている場合か!? このまま国が上手く機能しなければゴルド帝国だけじゃ無く、他の国からも狙われるぞ!?」



 「それだけじゃありません!! 下手をすれば、国民から反感を買ってしまい、暴動が起きるかもしれませんよ!?」



 頭がお花畑のリリヤ女王。そんなリリヤ女王の考えに、フォルスとリーマが声を荒げる。



 「えっ、えっと他国に関しては、まだ何とも言えませんが、国民の反感は絶対に買っていないと言えます」



 「どう言う事ですか?」



 「実は一度、リーマさんの言う通り暴動が起き掛けまして……」



 「何だと!?」



 「古くから仕えていた兵士達の家族が“横暴だ”と言って、城まで押し掛けて来た時がありました。その時、追い返そうとしたのですが、リリヤ様が止めに入られまして、じっくりと話し合いましょうと、自身の部屋へと押し掛けた人達を招き入れたんですよ。それから十分後、怒りの顔だった人達が、笑顔で帰って行ってくれたんです」



 「そ、そんな事があり得るのか?」



 「何が起こったのか。僕にも分かりません。でもこれだけは言えます。リリヤ様は、底知れない慈愛の心を持っています」



 「へ、へぇー、凄いですね……」



 次元が違う。話し合いだけで、怒りを静めるリリヤ女王の慈愛。真緒達は、苦笑いを浮かべるしか無い。



 「話がずれてしまいましたね……取り敢えず、このチャンスを逃す手はありません。カルド王国に属している全兵士を総動員させ、大司教を捕らえましょう!!」



 「大丈夫なのか? あんまり目立った動きをすれば、感付かれて逃げられてしまうかもしれないぞ?」



 「心配ありません。当日は、兵士達をスラム街の人達の中に紛れ込ませます。スラム街には数え切れない程の人数がいます。数十人位増えても、バレないと思います」



 「……本当にそんな作戦で大丈夫なのかな?」



 「大丈夫ですよ!! 大司教だか何だか知りませんが、一度このカルド王国に足を踏み入れてしまえば、捕らえるのは容易い!! まぁ、大船に乗ったつもりで任せて下さい!! げほっ、げほっ、げほっ!! 強く叩き過ぎた……」



 胸を強く叩き、自信に満ち溢れた言葉を口にするリップだったが、強く胸を叩き過ぎてしまい、苦しくなってしまった。そんな様子に、真緒達は不安を募らせるのであった。

































 「…………」



 そんな真緒達の様子を、扉の隙間から伺う者がいた。
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