笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第三章 冒険編 私の理想郷

真緒パーティー VS キメラ軍団

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 「コケェエエエ!!!」



 押し寄せる異様な見た目をした大群。鳥の頭に体が蟹の生物は、口から泡を吐き出しながらその巨大なハサミを使い、目の前にいる真緒目掛けて襲い掛かって来た。



 「遅い!!」



 そんなハサミの攻撃に対して真緒はバックステップを取り、華麗に避ける。



 「スキル“ロストブレイク”!!」



 「ゴゲェエエエ!!!」



 更にそのまま、流れる様にスキルを発動し、鳥の頭に体が蟹の生物を貫いた。体内は鳥と同じ肉と内蔵が入っており、血の色も赤だった。



 「いったい何なんですか、この生き物は?」







***



 「はぁー、おじさん……仕事、クビになっちゃったんだ……」



 「えっ……」



 リーマは酷く困惑していた。押し寄せる異様な見た目をした大群の中で、人間の頭に兎の体をした生物を相手にしようとしたのだが、突然深い溜め息を吐き、仕事が無くなった事を口にし始めた。



 「娘が帝国に就職したいって言っててさ……その為に金が必要なのに、突然の解雇……」



 「は、はぁ……」



 「まだ妻と娘には話していないんだ……二人には余計な心配を掛けたくないんだ……おじさんの気持ち……分かるよね?」



 「た、大変ですね……」



 顔はおじさん、体は可愛らしい兎。重たい話を一方的に聞かされるリーマは、同調する事しか出来ない。



 「君は……若いのに立派だね……だけど人生は理不尽だ……ある時突然、思いがけない事で不幸のドン底に叩き落とされるかもしれない……気を付けなさい」



 「は、はい……分かりました」



 自身の不幸話からいつの間にか、若者に向けての説教に変わっていた。おじさんの説教を素直に聞いているリーマの背後に、兎の頭に人間の体をした生物が歩み寄っていた。



 「(ぐふふ……間抜けな女だ。戦闘の最中、こんなデタラメな話を素直に聞くとは……これ程までに、俺の口が達者という訳だ)」



 嘘。まるで本物の人間を思わせるおじさん。巧みな話術で、リーマの注意を引く。



 「常に周りを気にするんだ。そうじゃないと……死んでしまうぞ?」



 「……その点については、大丈夫です」



 「……えっ?」



 その瞬間、リーマの背後に歩み寄っていた兎の頭に人間の体をした生物は、炎の槍によって体を貫かれ、焼け死んだ。



 「“炎の槍”……魔法使いが、自分の間合いを注意しない訳がありません」



 「あ、あぁ……ひぃいいいいい!!!」



 おじさんは目の前の光景に恐怖し、慌ててその場から逃げ出した。



 「あんな生き物がいるとは……油断出来ませんね」



 そう言いながらリーマは、貫いた炎の槍を引き抜いた。







***







 「ブブ……ブブブ……」



 「スキル“インパクト・ベア”!!」



 ハナコは囲まれていた。ハエの頭に蛇の体をした生物は力こそ無いものの、数が多かった。



 「ブブ……ブブブ……」



 「くぞぉ……潰しても潰しても、切りが無いだぁ……」



 「ブブ……ブブブ……」



 「ブブブ……ブブ……」



 「ブブブブ……」



 「む、虫の顔っで……間近で見るど気持ぢ悪いだぁ……」



 人間の頭サイズに巨大化しているハエの頭。虫特有の複眼が、気持ち悪さを強調している。



 「ブブブ……ブブ……」



 「うぅ……ごっぢに来るなぁ!!! スキル“鋼鉄化(腕)”!!」



 ジリジリと迫って来るハエ頭の蛇達。するとハナコは、自身の両腕を鋼鉄に変化させた。



 「うわぁあああああ!!!」



 そしてそのまま、叫び声を上げながら勢いに身を任せ、両腕を地面に叩き付けた。



 「ブ……ブ……ブブ……!!!」



 「来るな!! 来るな!! 来るな!!」



 何度も何度も地面を叩き付ける。地面にヒビが入り、衝撃波がハエ頭の蛇達に遅い掛かる。衝撃波によって体がバラバラになったり、割れた地面の隙間に落ちるなど、一網打尽に成功した。



 「はぁ……はぁ……気持ぢ悪がっだだぁ……」



 額から冷や汗を流しながら、ホッと胸を撫で下ろすハナコ。







***







 「パクパクパク」



 「…………」



 「パクパクパク」



 「…………」



 「パクパクパク」



 「……これは何の冗談だ……魚が空を飛んでいる……」



 目の前の光景を疑った。フォルスの周りを魚の頭に鳥の体をした生物が旋回していた。



 「危険性は……無さそうだな……」



 「パクパクパク」



 魚頭の鳥は旋回するだけで、フォルスに襲い掛かって来る様子は見受けられなかった。



 「パクパクパク……ギラ!!」



 と、思っていた矢先に魚の口から鋭い牙が生えた。



 「……まぁ、そうなるよな……」



 魚頭の鳥は、生やした牙で噛み付こうと、フォルス目掛けて襲い掛かる。



 「“ウィンド”……」



 フォルスが弓を構えると、矢に風がまとわりつく。強い力に、カタカタと震える弓矢を確りと指で押さえる。



 「ギシャアアアアア!!!」



 「貫け……“ブースト”!!」



 大きく口を開け、牙を剥き出しにしながら襲い掛かって来る魚頭の鳥目掛けて、勢い良く矢を放った。



 「ギジャ!!?」



 放たれた矢が、肉眼では捉えきれない速度で魚頭の鳥の口に入ると、体の中を傷付けながら通り、そして貫通した。



 「空なのか海なのか、どちらかに統一してから出直して来い」



 魚にも鳥にもなれない出来損ない。事切れてしまった魚頭の鳥は、垂直に落下していく。そんな光景を静かに眺めるフォルスだった。







***







 「はぁ……はぁ……」



 「コケェエエエ!!!」



 「はぁ……はぁ……」



 「おじさんさ……今年で40歳になるんだよ……」



 「はぁ……はぁ……」



 「ブブブ……ブブ……」



 「はぁ……はぁ……」



 「パクパクパク」



 戦闘開始してから約一時間、最初こそ優勢だった筈の真緒達だったが、今では互いに肩を預ける程まで追い詰められていた。



 「か、数が全然減らない……」



 「それどころか、増えていないか?」



 「一体、一体はぞごまででも無いのに……」



 「長期戦になると厳しいですね……」



 追い詰められた理由。それは、圧倒的な数の多さだった。倒しても倒しても減らない、寧ろ増えている。延々と続く戦いに、真緒達は疲労し始めた。



 「くそっ!! こいつらはいったい何処からやって来るんだ!!?」



 「こんなに数が多く、奇妙な見た目をしているのに、噂にすらなっていないだなんて……」



 「はぁ……はぁ……も、もう駄目だぁ……オラ、限界だぁ……」



 「そんなハナコさん!! 諦めないで下さい!!」



 無限に湧いて来る異様な見た目をした生物達。真緒達を中心に、取り囲もうとする。



 「不味いな……皆、一先ず逃げよう!! このままじゃ、全滅してしまう!!」



 「わ、分かりました!!」



 「仕方が無いか……」



 「分がっだだぁ……」



 これ以上の戦闘は、パーティーの全滅を招くと考えた真緒達は、一目散にその場から逃げ出した。



 「コケェエエエ!!!」



 「おい、何処に行く!! 全く最近の若いのは人の話を聞かない……」



 「ブブ……ブブブ……」



 「ギシャアアアアア!!!」



 一目散にその場から逃げ出した真緒達の後を追い掛ける、異様な見た目の生物達。



 「お、追い掛けて来ますよ!!?」



 「取り敢えず今は、全力で走るんだ!!」



 「でもこのままじゃ……何処かに隠れないと……フォルスさん!! 空から何か見えませんか!!?」



 「何か!? そんな事、突然言われたって…………ん?」



 フォルスが空中から辺りを見回していると、真緒達が走っている先に巨大な館があるのが見えた。



 「おい、皆!! この先に大きな館があるのが見えるぞ!!」



 「……何とかその館で匿って貰えないかな?」



 「考えている暇はありません!! 無理矢理でも、入れて貰いましょう!!」



 「はぁ……はぁ……オ、オラも賛成だぁ!!」



 息を切らしながら、全力疾走で先にあるであろう館に向かう真緒達。その後を追い掛ける異様な見た目をした生物達。



 「あ、あれじゃありませんか!!?」



 リーマが指差す方向には、フォルスが言った通り、巨大な館が建っていた。



 「そうだ!! あれだ!!」



 「フォルスさん!! 先に行って、家主の人に匿って貰える様、説得して来て下さい!!」



 「はぁ……はぁ……頼むだぁ!!」



 「分かった!!」



 空を飛んでいるフォルスは、地上を走っている真緒達よりも先に、館の玄関へと辿り着いた。館の玄関は豪華な両開きになっており、黄金色をしたライオンのドアベルが取り付けられていた。フォルスは慌てて、黄金色をしたライオンのドアベルを鳴らした。しばらくして片方の扉が開き、中から水色の髪をした非常に落ち着きのある優しそうな大人の女性が現れた。



 「はい? どちら様ですか?」



 「すまない!! しばらくの間、俺達を匿ってくれないか!?」



 「えっ? 匿う? 何を仰っているのですか?」



 「兎に角、説明は後だ!! 頼む!! この通りだ!!」



 説明している余裕の無いフォルスは、頭を地面に擦り付けて、匿って貰える様に頼み込んだ。



 「えっ、ちょ、何を!?」



 「頼む!!」



 「…………分かりました」



 「本当か!?」



 フォルスは慌てて頭を上げ、再確認する。



 「困っている人を放っておく訳にはいきません。どうぞ、中に……」



 「あ、ありがとう!! 皆、急いで中に入るんだ!!」



 フォルスの声に答える間も無く、真緒達は慌てて館の中へと駆け込んだ。そして急いで扉を閉める。



 「コケェエエエ……」



 「…………ちぃ」



 「ブブ……ブブブ……」



 「パクパクパク……」



 異様な見た目をした生物達は、館には近付こうとはせず、何かから逃げる様に散り散りに離れて行った。後に残ったのは、大きく聳え立つ館だけだった。
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