45 / 275
第三章 冒険編 私の理想郷
理想郷の真実
しおりを挟む
「“外の世界”って……あなたは?」
すると男は黙って酒場の横にある裏路地へと、足を運んで行く。
「……ここじゃなんだ、人気の無い場所で話そう……ついて来な」
そう言いながら男は、裏路地の中へと入り、姿を消してしまった。
「……どうする?」
「どうするって言ってもな……ついて行くしか無いんじゃないか?」
「罠かもしれませんよ?」
「オラもぞう思うだぁ」
突然真緒達の前に現れ、外の世界と口にする謎の男。あまりにも信用出来ない部分が多い。そんな謎多き男について行くかどうか、意見が分かれてしまった。
「確かに罠かもしれない……だけどこのまま何も分からず迷っているよりも、少しでも情報を得られるのだったら、ついて行くべきだと私は思う」
現状、ここが何処なのか全く理解出来ていない。そんな状況のまま、街の中を歩くのは危険だと判断した真緒は、少しでも情報を得る為に裏路地に入って行った謎の男について行くべきだと提案した。
「そうですね……何も情報が無い今の状況から考えても、情報を得られる機会を逃す訳にはいかないかもしれませんね……分かりました、私はマオさんの言う通りあの男について行きます」
「オラもぞうずるだぁ」
「よし……それじゃあ行こう……」
意見がまとまった真緒達は、謎の男が入って行った裏路地へと足を踏み入れて行くのであった。
***
裏路地の中は湿気で非常にじめじめとしており、建物同士の影が重なり合う事で、太陽の光を遮っていた。
「あのー、何処にいるんですか?」
返事は無い。薄暗い裏路地を覚束無い足取りで歩く真緒達は、先に入って行った謎の男に対して声を掛けるも、謎の男から返事は来なかった。
「あれ、おかしいな……先に入って行った筈なのに……っ!!?」
真緒達が不思議に思っていると待ち伏せていたのか、先程の男が突然上空から真緒達目掛けて剣を振り下ろしながら、落下して来た。
「おらぁあああああ!!!」
「あ、危ない!!」
咄嗟の出来事に驚きを隠せない真緒達だったが、持ち前の反射神経を生かして、何とか避ける事に成功した。
「ほぉー、完全な死角からの不意打ちだったんだが……やるじゃないか」
「ちょ、ちょっといきなり何をするんですか!?」
「悪いな……まずはお前達にはここで死んで貰う!!」
すると謎の男は、返事を待たずに真緒達目掛けて剣を振り下ろし、襲い掛かって来た。
「きゃあ!? こうなったら仕方がありません!! 戦いましょう!!」
襲い掛かる謎の男に対して、真緒達は各々武器を構えるのであった。
「よーし、早速クロスボウの威力を試させて貰うぜ」
武器を構える中、フォルスがクロスボウを取り出し構えていた。
「ちょっと!? そのクロスボウ、結局貰ったんですか!?」
「あぁ、これで更に強くなれるからな!! ええっと……どうやって使うんだったかな……?」
クロスボウを自慢気に語っていたが、取り扱い方が分からず、動作が遅れてしまった。
「隙だらけだぞ!!」
「ぐわぁ!!?」
「フォルスさん!!」
打つのに時間が掛かっていると、謎の男に蹴り飛ばされてしまった。
「何やっているんですかフォルスさん!! ここは私に任せて下さい!! このイヤリングによって底上げされた魔法をお見舞いします!!」
蹴り飛ばされるフォルスを他所に、リーマが懐からイヤリングを取り出し、高らかに掲げると耳に取り付けようとする。
「……痛!! ……痛!! 鏡が無いと、上手く取り付けられませんね……」
手探り状態でイヤリングを耳に取り付けようとしている為、無駄に時間が掛かってしまっていた。
「お前ら、やる気あるのか!?」
「あっ、しまっ……きゃあ!!」
イヤリングを取り付けるのに時間が掛かっていると、リーマもフォルスと同じ様に謎の男に蹴り飛ばされてしまった。
「リーマ、大丈夫!!?」
「は、はい……何とか……」
「どいつもこいつも……お前ら戦う気があるのかよ!!?」
「二人の仇……私が取るよ。はぁあああああ!!!」
「ぬっ!?」
蹴り飛ばされた二人の仇を取る為、真緒は一人謎の男目掛けて斬り掛かる。対して謎の男は、真緒の剣を自身の剣で受け止める。
「やるな……だが、これならどうだ!!」
謎の男は真緒の剣を弾くと、真緒目掛けて剣を何度も振り下ろす。
「ふっ!! はっ!! やぁあああああ!!」
ぶつかり合う剣。飛び散る火花。金属同士のぶつかり合う高音が、裏路地に響き渡る。
「出来るな……」
「あなたこそ……」
命を削る敵同士の筈だが、そこには不思議と嫌悪感は感じられなかった。寧ろ好感を抱いていた。
「……そろそろ終わりにして、話して頂けませんか?」
「?」
「あなたからは全く敵意を感じ取れません。隙だらけだったフォルスさんやリーマが死んでいないのが、良い証拠です」
「…………」
真緒の言う通りだった。本気で殺す気があったのなら、既にフォルスとリーマは剣で殺されていただろう。しかし実際は生きている。それこそが、この男に殺す気が無い決定的な証拠である。
「ははは……バレてたか……」
真緒に見透かされたと言わんばかりに、謎の男は持っていた剣を鞘に収めた。
「悪かったな、お前達を試させて貰っていた」
「試ずっで……どうじでぞんな事を?」
「それは勿論……この理想郷という名の“偽りの世界”を壊せるかどうかさ」
「“偽りの世界”!? いったいどういう事なんですか!?」
「取り敢えず一旦落ち着け、まずは自己紹介からさせて貰おう。俺の名は“アレリテ”、お前達と同じ外の世界からやって来た」
「アレリテさんですか、よろしくお願いします。私は佐藤真緒って言います」
「オラの名前はハナコだぁ」
「私はリーマです。蹴り飛ばされた事は忘れませんからね」
「俺はフォルスだ。リーマ同様に蹴り飛ばされた事は忘れない」
“アレリテ”と名乗る男に、真緒達は各々自己紹介を済ませる。そんな中、蹴り飛ばされたリーマとフォルスの二人は、嫌みたらしく忘れないと宣言した。
「だから悪かったって、器が狭い連中だな……」
「何だと!!?」
「フォルスさん、落ち着いて下さい。リーマも魔導書を広げないで」
「……分かりました」
アレリテの言葉に、苛立ちを覚えるリーマとフォルスは、敵意を剥き出しにする。そんな二人を、真緒とハナコが落ち着かせる。
「それでアレリテさん……さっき外の世界からやって来たって言っていましたが……どう言う意味なんですか?」
「お前達も、異様な見た目をした生き物に追いかけ回された後、奇妙な館に足を踏み入れたんだろ?」
「そ、そうです」
「そして館を出たら、この街に辿り着いてしまった……違うか?」
「その通りです!!」
「俺もお前達と同じ様に、この街にやって来たんだ」
真緒達と全く同じ方法でやって来たと言うアレリテ。同じ方法で来たというだけあって、親近感が沸いて来る。
「この街は理想郷と呼ばれている場所だ。自分が望んだ物や人物が、全て手に入る。まさに夢の様な場所だ」
「だがお前、この世界は偽りの世界って言ってなかったか?」
「……そうだ、この世界は一見素晴らしい街に思えるかもしれない。だがそれは、この理想郷の真実を知らない場合の話だ」
「理想郷の真実?」
するとアレリテは、懐から小さな小瓶を取り出した。その中には、透明な液体が入っていた。
「ほら、この瓶越しに街の住人を観察して見な」
そう言うと取り出した小瓶を、真緒達に向けて放り投げる。アレリテから投げられた小瓶を、真緒が慌ててキャッチする。
「こ、これは……?」
「いいから見て見ろ」
「は、はぁ……」
突然小瓶を渡された真緒は、困惑しながらも瓶越しに、街を行き交う人々を観察し始める。
「えっ…………えぇえええええ!!?」
すると突然、真緒は驚きの声を上げながら尻餅をついてしまった。
「な、何だどうした!!?」
「マオさん!!?」
「マオぢゃん、どうじだだぁ!!?」
驚きの表情を浮かべる真緒に、三人が慌てて駆け寄り、声を掛ける。
「こ、こ、これを見て下さい……」
真緒は震える手で、液体の入った小瓶をリーマ達に手渡した。
「「「…………」」」
リーマ達は素直に受け取ると、そのまま瓶越しに街を行き交う人々を観察した。
「「「!!?」」」
するとそこには、奇妙な館に入る前に出会った異様な見た目をした生き物達が、我が物顔で歩いている景色が広がっていた。真緒達は慌てて小瓶を下に下げ、自身の目で直接確認する。しかしそこには、普通の人間が幸せそうに歩いている景色が広がっていた。再び、瓶越しに街の人達を観察する。するとまたしても、異様な見た目をした生き物達が歩いている景色に変わっていた。
「こ、これはいったい……?」
「これが……この理想郷の真実さ」
「ど、どうして街の人が!? それにこの小瓶はいったい!? 中に入っている液体のお陰なんですか!? それをどうしてアレリテさんが持っているんですか!?」
「と、と、取り敢えず落ち着け!! ちゃんと一から説明する!!」
「ご、ごめんなさい……」
「全く……まず、その小瓶に入っている液体は……只の水だ」
「……み、水?」
「あぁ、俺がこの街に足を踏み入れる以前から持っていた物だ」
そう言うとアレリテは、懐から給水袋を取り出し、真緒達に見せ付ける。
「そしてあの街の連中は、異様な見た目をした生き物達が、巧妙に偽装した姿なのさ」
「そんな……ここまで広範囲の魔法……見た事も聞いた事もありません」
「そりゃあそうだ、これはそんな生易しい物じゃない。もっと恐ろしい何かだ」
「アレリテさん……そんな恐ろしい何かを、あなたは何故知っているんですか?」
「……今から話すのは、俺がこの街に足を踏み入れた時の話だ……」
そう言うとアレリテは話始めた。理想郷とは名ばかりの、恐ろしい真実を…………。
すると男は黙って酒場の横にある裏路地へと、足を運んで行く。
「……ここじゃなんだ、人気の無い場所で話そう……ついて来な」
そう言いながら男は、裏路地の中へと入り、姿を消してしまった。
「……どうする?」
「どうするって言ってもな……ついて行くしか無いんじゃないか?」
「罠かもしれませんよ?」
「オラもぞう思うだぁ」
突然真緒達の前に現れ、外の世界と口にする謎の男。あまりにも信用出来ない部分が多い。そんな謎多き男について行くかどうか、意見が分かれてしまった。
「確かに罠かもしれない……だけどこのまま何も分からず迷っているよりも、少しでも情報を得られるのだったら、ついて行くべきだと私は思う」
現状、ここが何処なのか全く理解出来ていない。そんな状況のまま、街の中を歩くのは危険だと判断した真緒は、少しでも情報を得る為に裏路地に入って行った謎の男について行くべきだと提案した。
「そうですね……何も情報が無い今の状況から考えても、情報を得られる機会を逃す訳にはいかないかもしれませんね……分かりました、私はマオさんの言う通りあの男について行きます」
「オラもぞうずるだぁ」
「よし……それじゃあ行こう……」
意見がまとまった真緒達は、謎の男が入って行った裏路地へと足を踏み入れて行くのであった。
***
裏路地の中は湿気で非常にじめじめとしており、建物同士の影が重なり合う事で、太陽の光を遮っていた。
「あのー、何処にいるんですか?」
返事は無い。薄暗い裏路地を覚束無い足取りで歩く真緒達は、先に入って行った謎の男に対して声を掛けるも、謎の男から返事は来なかった。
「あれ、おかしいな……先に入って行った筈なのに……っ!!?」
真緒達が不思議に思っていると待ち伏せていたのか、先程の男が突然上空から真緒達目掛けて剣を振り下ろしながら、落下して来た。
「おらぁあああああ!!!」
「あ、危ない!!」
咄嗟の出来事に驚きを隠せない真緒達だったが、持ち前の反射神経を生かして、何とか避ける事に成功した。
「ほぉー、完全な死角からの不意打ちだったんだが……やるじゃないか」
「ちょ、ちょっといきなり何をするんですか!?」
「悪いな……まずはお前達にはここで死んで貰う!!」
すると謎の男は、返事を待たずに真緒達目掛けて剣を振り下ろし、襲い掛かって来た。
「きゃあ!? こうなったら仕方がありません!! 戦いましょう!!」
襲い掛かる謎の男に対して、真緒達は各々武器を構えるのであった。
「よーし、早速クロスボウの威力を試させて貰うぜ」
武器を構える中、フォルスがクロスボウを取り出し構えていた。
「ちょっと!? そのクロスボウ、結局貰ったんですか!?」
「あぁ、これで更に強くなれるからな!! ええっと……どうやって使うんだったかな……?」
クロスボウを自慢気に語っていたが、取り扱い方が分からず、動作が遅れてしまった。
「隙だらけだぞ!!」
「ぐわぁ!!?」
「フォルスさん!!」
打つのに時間が掛かっていると、謎の男に蹴り飛ばされてしまった。
「何やっているんですかフォルスさん!! ここは私に任せて下さい!! このイヤリングによって底上げされた魔法をお見舞いします!!」
蹴り飛ばされるフォルスを他所に、リーマが懐からイヤリングを取り出し、高らかに掲げると耳に取り付けようとする。
「……痛!! ……痛!! 鏡が無いと、上手く取り付けられませんね……」
手探り状態でイヤリングを耳に取り付けようとしている為、無駄に時間が掛かってしまっていた。
「お前ら、やる気あるのか!?」
「あっ、しまっ……きゃあ!!」
イヤリングを取り付けるのに時間が掛かっていると、リーマもフォルスと同じ様に謎の男に蹴り飛ばされてしまった。
「リーマ、大丈夫!!?」
「は、はい……何とか……」
「どいつもこいつも……お前ら戦う気があるのかよ!!?」
「二人の仇……私が取るよ。はぁあああああ!!!」
「ぬっ!?」
蹴り飛ばされた二人の仇を取る為、真緒は一人謎の男目掛けて斬り掛かる。対して謎の男は、真緒の剣を自身の剣で受け止める。
「やるな……だが、これならどうだ!!」
謎の男は真緒の剣を弾くと、真緒目掛けて剣を何度も振り下ろす。
「ふっ!! はっ!! やぁあああああ!!」
ぶつかり合う剣。飛び散る火花。金属同士のぶつかり合う高音が、裏路地に響き渡る。
「出来るな……」
「あなたこそ……」
命を削る敵同士の筈だが、そこには不思議と嫌悪感は感じられなかった。寧ろ好感を抱いていた。
「……そろそろ終わりにして、話して頂けませんか?」
「?」
「あなたからは全く敵意を感じ取れません。隙だらけだったフォルスさんやリーマが死んでいないのが、良い証拠です」
「…………」
真緒の言う通りだった。本気で殺す気があったのなら、既にフォルスとリーマは剣で殺されていただろう。しかし実際は生きている。それこそが、この男に殺す気が無い決定的な証拠である。
「ははは……バレてたか……」
真緒に見透かされたと言わんばかりに、謎の男は持っていた剣を鞘に収めた。
「悪かったな、お前達を試させて貰っていた」
「試ずっで……どうじでぞんな事を?」
「それは勿論……この理想郷という名の“偽りの世界”を壊せるかどうかさ」
「“偽りの世界”!? いったいどういう事なんですか!?」
「取り敢えず一旦落ち着け、まずは自己紹介からさせて貰おう。俺の名は“アレリテ”、お前達と同じ外の世界からやって来た」
「アレリテさんですか、よろしくお願いします。私は佐藤真緒って言います」
「オラの名前はハナコだぁ」
「私はリーマです。蹴り飛ばされた事は忘れませんからね」
「俺はフォルスだ。リーマ同様に蹴り飛ばされた事は忘れない」
“アレリテ”と名乗る男に、真緒達は各々自己紹介を済ませる。そんな中、蹴り飛ばされたリーマとフォルスの二人は、嫌みたらしく忘れないと宣言した。
「だから悪かったって、器が狭い連中だな……」
「何だと!!?」
「フォルスさん、落ち着いて下さい。リーマも魔導書を広げないで」
「……分かりました」
アレリテの言葉に、苛立ちを覚えるリーマとフォルスは、敵意を剥き出しにする。そんな二人を、真緒とハナコが落ち着かせる。
「それでアレリテさん……さっき外の世界からやって来たって言っていましたが……どう言う意味なんですか?」
「お前達も、異様な見た目をした生き物に追いかけ回された後、奇妙な館に足を踏み入れたんだろ?」
「そ、そうです」
「そして館を出たら、この街に辿り着いてしまった……違うか?」
「その通りです!!」
「俺もお前達と同じ様に、この街にやって来たんだ」
真緒達と全く同じ方法でやって来たと言うアレリテ。同じ方法で来たというだけあって、親近感が沸いて来る。
「この街は理想郷と呼ばれている場所だ。自分が望んだ物や人物が、全て手に入る。まさに夢の様な場所だ」
「だがお前、この世界は偽りの世界って言ってなかったか?」
「……そうだ、この世界は一見素晴らしい街に思えるかもしれない。だがそれは、この理想郷の真実を知らない場合の話だ」
「理想郷の真実?」
するとアレリテは、懐から小さな小瓶を取り出した。その中には、透明な液体が入っていた。
「ほら、この瓶越しに街の住人を観察して見な」
そう言うと取り出した小瓶を、真緒達に向けて放り投げる。アレリテから投げられた小瓶を、真緒が慌ててキャッチする。
「こ、これは……?」
「いいから見て見ろ」
「は、はぁ……」
突然小瓶を渡された真緒は、困惑しながらも瓶越しに、街を行き交う人々を観察し始める。
「えっ…………えぇえええええ!!?」
すると突然、真緒は驚きの声を上げながら尻餅をついてしまった。
「な、何だどうした!!?」
「マオさん!!?」
「マオぢゃん、どうじだだぁ!!?」
驚きの表情を浮かべる真緒に、三人が慌てて駆け寄り、声を掛ける。
「こ、こ、これを見て下さい……」
真緒は震える手で、液体の入った小瓶をリーマ達に手渡した。
「「「…………」」」
リーマ達は素直に受け取ると、そのまま瓶越しに街を行き交う人々を観察した。
「「「!!?」」」
するとそこには、奇妙な館に入る前に出会った異様な見た目をした生き物達が、我が物顔で歩いている景色が広がっていた。真緒達は慌てて小瓶を下に下げ、自身の目で直接確認する。しかしそこには、普通の人間が幸せそうに歩いている景色が広がっていた。再び、瓶越しに街の人達を観察する。するとまたしても、異様な見た目をした生き物達が歩いている景色に変わっていた。
「こ、これはいったい……?」
「これが……この理想郷の真実さ」
「ど、どうして街の人が!? それにこの小瓶はいったい!? 中に入っている液体のお陰なんですか!? それをどうしてアレリテさんが持っているんですか!?」
「と、と、取り敢えず落ち着け!! ちゃんと一から説明する!!」
「ご、ごめんなさい……」
「全く……まず、その小瓶に入っている液体は……只の水だ」
「……み、水?」
「あぁ、俺がこの街に足を踏み入れる以前から持っていた物だ」
そう言うとアレリテは、懐から給水袋を取り出し、真緒達に見せ付ける。
「そしてあの街の連中は、異様な見た目をした生き物達が、巧妙に偽装した姿なのさ」
「そんな……ここまで広範囲の魔法……見た事も聞いた事もありません」
「そりゃあそうだ、これはそんな生易しい物じゃない。もっと恐ろしい何かだ」
「アレリテさん……そんな恐ろしい何かを、あなたは何故知っているんですか?」
「……今から話すのは、俺がこの街に足を踏み入れた時の話だ……」
そう言うとアレリテは話始めた。理想郷とは名ばかりの、恐ろしい真実を…………。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ
O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。
それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。
ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。
彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。
剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。
そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜
O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。
しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。
…無いんだったら私が作る!
そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる