笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第四章 冒険編 殺人犯サトウマオ

アイラ村殺人事件~照合~

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 「どうしたの皆? そんな面食らった表情して?」



 ベッドから起き上がった真緒は、驚きの表情を浮かべながら見つめている五人に対してその理由を問い掛ける。



 「い、いやその……マオさん……し、下を見て下さい」



 「どうしたの急に? あっ、もしかしてサプライズを仕掛けているとか?」



 「「「「「…………」」」」」



 まだ起きたばかりで、脳が正常に働いていない。真緒は下を見ずにベッドから足を下ろして立ち上がる。



           ピチャッ……



 「“ピチャッ”? えっ……な、何これ……?」



 足下には血の海が広がっていた。水よりも温かく、お湯よりも生温い。気分が悪くなる感触と臭いで、真緒の意識がハッキリとする。



 「ち……血!? いやぁああああああああああああ!!?」



 現状を完全に理解し、悲鳴を上げながらその場を離れ、部屋を勢い良く飛び出した。



 「えっ!!? 何で!!? どうして!!? 嘘!!? こんな……どうして!!?」



 「マオさん!! 落ち着いて下さい!!」



 「落ち着けマオ」



 「マオぢゃん、大丈夫だぁ。ゆっぐりど深呼吸ずるだぁ」



 仲間達に支えられながら、パニックに陥る。言われた通り、何度も深呼吸を繰り返す。しかしそれでも震えの方は収まらなかった。



 「はぁ……はぁ……あ、あれって……“アージ”さんですよね……本当に死んでいるんですか?」



 「……あぁ、残念だが……」



 「そんな……いったい誰が……」



 「それは…………『リューゲさん!! リューゲさん!!』……っ!!?」



 フォルスが話そうとしたその瞬間、玄関の扉が激しくノックされる。



 『リューゲさん!! 大丈夫か!!? 今さっき物凄い悲鳴が聞こえたが、何かあったのか!!?』



 「む、向かいの家に住む友人です。どうしましょう!?」



 向かいに住む住人に、先程の悲鳴を聞かれてしまっていた。それを心配して玄関まで押し寄せて来てしまったのだ。



 「と、取り敢えず事情を説明するしかないだろう。下手に隠したら、無駄に怪しまれてしまう」



 「そ、そうですね……じゃあ出ます」



 そう言うとリューゲは階段を降りて、一階にある玄関の扉を開けた。



 『や、やぁ、遅くなってごめん』



 『凄い悲鳴だったぞ!? いったい何があった!?』



 一階から二人の会話が聞こえて来る。



 『い、いや実は………………』



 『はぁ!!? 殺された!!?』



 『しっ!! 声が大きい!! 他の人に聞かれたらどうするんだ!!?』



 『いや、それは大声にもなるだろう!!? だって殺人だぞ!!? いったい誰が殺されたんだよ!!?』



 『しーっ!! しーっ!!』



 『どうかしましたか?』



 すると突然、二人ではない第三者の声が加入して来た。



 『あっ、兵士さん。聞いて下さい、今こいつの家で人が殺されたんですよ!!』



 『ちょ、お前!!?』



 『詳しく聞かせて頂けますか?』



 『あっ……はい……実は……』



 リューゲは観念して、兵士と呼ばれる男性に事の顛末を全て話した。



 『成る程……ではまず、そのアージさんという方が亡くなった部屋まで案内して頂けますか?』



 『えっ、あっ、はい……こちらです……』



 コツコツと二人の足音が階段を上り、近付いて来る。そして徐々にその姿を認識する。一人はリューゲ、先程よりも青ざめた顔をしていた。もう一人は兵士と呼ばれる男性、全身鎧に身を包み、左手には盾、右手には槍を持っていた。



 「リューゲさん、この方は?」



 「はい、この方は警備目的で国から派遣されている兵士さんです」



 「初めまして……それで肝心の遺体は?」



 「こちらです」



 言われるがまま、リューゲはアージが亡くなっている部屋へと兵士を案内する。



 「……これは酷い……」



 兵士は片膝を付き、遺体を凝視する。そしてゆっくりと立ち上がり、真緒達の方を振り返る。



 「これは明らかな殺人事件です。現場保存の為、これ以上の入室を禁止します。いいですね?」



 兵士の言葉に、真緒達は無言で頷く。真緒は目の前に死体が転がっていた事実で、他の人達は死体の横で寝ていた真緒の事で頭が一杯だった。



 「私はこれから、応援要請を呼び掛けに行きます。それまでその場を動かず、じっとしていて下さい。いいですね?」



 再び首を縦に振る。すると兵士は部屋の扉を閉め、階段を降りて外へと飛び出した。



 「……まさか……こんな事になってしまうだなんて……」



 「アージ……どうして……どうしてだ……」



 リューゲはその場に崩れ落ち、涙を流す。流れ落ちた涙が左手の薬指に嵌められた指輪に当たり、指輪に嵌まっている深紅の宝石が輝いて見えた。



 「リューゲさん……」



 そんなリューゲに胸を痛めるアイラ。胸に手を当て心中を察する中、左手の薬指に嵌められた指輪に嵌まっている紺碧の宝石が輝いて見えた。







***







 「「「「「…………」」」」」



 兵士が応援要請を呼び掛けると言い、外へと飛び出してから約一時間が経った。五人が意気消沈していると、玄関の扉が開く音が聞こえて来た。



 『隊長、この上です』



 『そうか……第一部隊は私と供に二階へ、第二部隊は自宅周辺の警備、第三部隊は村の入口を警備しろ。分かったな?』



 『『『はい!!』』』



 『よし、では行くぞ』



 複数の足音が階段を上り、近付いて来る。そして徐々にその姿を認識する。まず先頭にいたのは先程応援要請を呼び掛ける為、外へと飛び出した兵士だった。そして次に現れたのは赤を強調した鎧を身に着け、一本に纏めたポニーテール風のブロンド髪をしており、目付きは非常に鋭い女性であった。更にその女性の後ろから数人兵士が現れた。



 「この部屋です」



 赤鎧の女性は無言で頷くと、数人の兵士を連れて部屋の中へと入った。そして最後尾の兵士二人は部屋の扉を背にして、警備し始めた。



 「あ、あの……」



 「すみませんが、これ以上先は立ち入り禁止となっています」



 「調査が終わるまで、しばらくお待ち下さい」



 「は、はい……分かりました」



 リューゲが部屋に入ろうとすると、扉の前にいる兵士二人に止められてしまった。



 「それで? 状況は?」



 「殺されたのは“アージ”18歳、家主であるリューゲの弟です」



 「ふん……死因は?」



 「胸部から腹部までの切り傷以外、目立った外傷が無い事から、鋭利な刃物による斬殺かと思われます」



 「成る程……それなら話は簡単だ」



 すると赤鎧の女性は、真緒達の目の前に歩み寄って来た。



 「私は“ロージェ”、この部隊の隊長を任されている者だ」



 「ロージェさん……」



 「見ての通り、殺人事件が発生している。犯人は鋭利な刃物で斬殺したと思われる」



 「ひ、酷い……」



 「そこでだ、お前達が持っている武器が凶器として使われた武器かどうか、刃形を確かめさせて貰う」



 「「「「「えっ!!?」」」」」



 ロージェの言葉に驚きの声を上げる。



 「俺達を疑っているって事ですか!!?」



 「あらゆる可能性を吟味した上、犯人を割り出す。それに刃型が一致すれば、そいつが犯人と確定するのだから楽だろう?」



 「いや、そうですけど……」



 「それとも何だ? 見せられない事情でもあるのか?」



 「っ……分かりましたよ」



 そう言うとリューゲは自分の部屋から、一本の剣を取り出した。



 「これが俺の剣です」



 「成る程……おい、一致するかどうか確かめろ」



 「はい、分かりました」



 リューゲの剣を受け取ったロージェは、部屋にいる兵士に傷口と一致するかどうか確めさせた。



 「さて……次はお前だ」



 「えっ、ご、ごめんなさい……私は回復魔法専門で……剣は持っていないんです」



 「そうか……なら、そこにいる四人は?」



 「オラも持っでいないだぁ。オラは拳専門だぁ」



 「私も魔法専門で持ってはいません」



 「俺も持っていない。俺の武器は弓矢だからな」



 「成る程……それで? お前はどうなんだ?」



 「えっ、えっと一応持ってます……」



 「なら、さっさと出せ」



 「わ、分かりました」



 そう言うと真緒は、素直に純白の剣をロージェに手渡した。



 「良い剣だな…………おい、この剣も確かめておけ」



 「分かりました」



 「所で……ずっと気になっていたが……そこにいる四人はいったい何者だ?」



 傷口との照合が終わるまでの間、ロージェは真緒達の素性を調査し始めた。



 「え、えっと……私達は……」



 「彼女達は旅人で、世界中を旅しているんです。そして今日たまたま、この家に宿として泊まる事になったんです」



 真緒が説明しようと口を開くが、それよりも早くリューゲが説明し終えた。



 「成る程……よく分かった」



 「隊長、傷口との照合が終わりました」



 「分かった、今行く」



 傷口との照合が終わり、その報告を聞く為にロージェは部屋へと入る。



 「……すみません、マオさん。余計な口出ししてしまって……酷く緊張していらっしゃったから……つい……」



 「いいんですよ、お陰で助かりました」



 「待たせたな、照合の結果が分かったぞ」



 リューゲと真緒がこそこそと会話する中、ロージェが部屋から戻って来た。



 「照合の結果…………」



 六人それぞれを見回す。不安と緊張が高まる中、ロージェはある一人の人物を睨み付ける。



 「女……お前が持っていた剣の刃型と傷口が一致したぞ」



 「「「「「「!!?」」」」」」



 その人物は誰であろう紛れもない佐藤真緒であった。真緒はあまりのショックに驚きの表情を隠せなかった。



 「懺悔の言葉を述べるなら今の内だぞ?」
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