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第四章 冒険編 殺人犯サトウマオ
秘め事
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真緒は一人、リューゲの家の中を歩いていた。昨日まで賑やかだった家には誰もいない。床の板が軋む音だけが響き渡る。
「(結局一人になっちゃったな……)」
異世界との唯一の繋がりであった舞子はアージに殺されてしまった。また、そのアージもロージェによって首を切り飛ばされた。怒りの矛先がいなくなってしまい、途方もない喪失感に苛まれていた。
「舞子……安らかに眠って……」
ロージェの指示によって、舞子の遺体は兵士達が迅速に処理した。お別れすら言う暇も無かった真緒は、改めて別れの言葉を口にする。
「マオ、ちょっといいか?」
別れの干渉に浸っていると、玄関からフォルスが声を掛けて来た。
「フォルスさん、どうしたんですか?」
「話があるんだ」
「ここじゃ、駄目なんですか?」
「何処に監視の目があるか分からない。取り敢えず、人気の無い場所に向かうぞ」
「分かりました……」
普段よりも落ち着きの無い態度に疑問を浮かべながらも、フォルスの後をついていくマオ。
***
フォルスに連れられ、建物の隙間を通り抜ける。辿り着いたのは、目立たない路地裏だった。普段なら村の若者が屯しているが、村の聖女と崇められていた舞子が亡くなった事を悔やみ、葬儀に参列している。その為、今現在人は誰もいない。だがしかし、そんな路地裏に二人の人物が真緒達を待っていた。
「ハナちゃん……リーマ」
「マオぢゃん」
「マオさんも呼ばれたんですね」
どうやらハナコとリーマの二人も、フォルスに呼び出されていたらしい。
「マオさん、その大丈夫ですか?」
「何が?」
「マイコさんが亡くなって落ち込んでいるんじゃないかって……」
「……落ち込んで無いって言えば嘘になるけど……私なら大丈夫。だって私にはまだ皆がいるから」
「マオさん……」
「マオぢゃんの事は、オラが守っで見ぜるだぁ」
「ありがとうハナちゃん。私もハナちゃんの事……皆の事を守って見せるからね」
「よし、俺達以外の気配は感じられないな」
フォルスは周囲に誰もいない事を確認すると、三人の前に現れた。
「フォルスさん、急に皆を集めてどうしたって言うんですか?」
「実はな、お前達に伝えておきたい事があってな」
「伝えておきたい事?」
「何ですか?」
「リューゲの……まぁ、実際はアージだった訳だが……その処刑が行われる際、助けに入った事は覚えているな」
「はい、兵士達と戦う事になりました」
「その時俺は、アージを殺そうとした事で戦いを食い止めた。『この男を殺されて困るのはお前達の方だろう』と言ってな」
「そう言えば、ずっと引っ掛かっていたんですけど……どうして兵士達の方が困るんですか? 元々、処刑しようとしていたんですよね?」
事件が無事に解決し、改めて冷静に考えてみると、大きな矛盾がある事に気が付いた。
「それは兵士達が共犯者だと考えているからだ」
「「「共犯者!!?」」」
「まぁ、正確にはあの“ロージェ”という女の独断だと思っているがな。現に俺が殺そうとした時、あの女だけが狼狽えていたからな」
「で、でもどうしてそんな事が分かるんですか!?」
「俺は、眠ったマオをベッドごと動かしたと推理した。だがここで一つの疑問が浮かび上がる。果たして人間が寝ているベッドをたった一人で運び出す事が出来るだろうか」
「「「!!!」」」
それは至極当然の疑問だった。思い付かない方がおかしいとも言える。しかしあの時、リューゲがアージであるという衝撃の真実のせいで、誰一人として疑問を持たなかった。
「た、確かに共犯者がいれば運ぶ事も出来ると思いますが……そもそもどうしてそのロージェさんが犯行を手伝わないといけないんですか?」
「……ここは俺の推測でしかないが、恐らくあの女は“ヘッラアーデ”の人間だ」
「「「ヘッラアーデ!!?」」」
真緒達の敵にして、エジタスを神として崇めている謎の多い組織。この村でその名前を聞くとは思っていなかった。
「この西の大陸はゴルド帝国が治めている。それにあんなに大量の兵士達を導入出来るとしたら、ゴルド帝国以外あり得ないしな。そして今現在、ゴルド帝国を支配しているのはヘッラアーデだ。つまり、あの女は高確率でヘッラアーデの関係者と考えられる」
「あの人がヘッラアーデの人間……」
「待って下さいフォルスさん!! それならどうして言わなかったんですか!?」
フォルスの言葉に、リーマが疑問を投げ掛ける。
「何をだ?」
「そのロージェという人が共犯者なら、それを指摘して捕らえれば良かったじゃないですか!? いくらヘッラアーデの人間と言っても、殺人を犯したのなら捕らえる事は出来る筈です」
「勿論、俺も最初はそうするつもりだった……だが……そうなった場合、戦闘は避けられない」
「それでも私達なら勝てますよ。実力はマオさんと同じ位でしたからね」
「あれが本気ならな」
「…………えっ?」
「忘れたのか。アージはあの女に殺されたんだ。首を切り落とされて……あの時、あの女の動きを捉える事が出来た奴はいるか?」
「「「…………」」」
誰も手を挙げない。あの時、誰一人としてロージェを肉眼で捉える事が出来なかったのだ。
「戦闘になれば、必ず本気を出して来るだろう。そうなったら、今の俺達で太刀打ち出来るかどうか……」
「「「…………」」」
肉眼で捉えきれないとなれば、感覚だけが頼りになる。真緒達四人だけで対応するのは厳しいだろう。
「で、でもやっぱり変ですよ!!」
するとリーマが再び疑問を投げ掛ける。
「もしもあのロージェという人がヘッラアーデなら、何故ロストマジックアイテムを渡して来たんですか!?」
リーマの疑問は最もだった。ヘッラアーデは真緒達と同じくエジタスの遺したロストマジックアイテムを集めている。それをみすみす手放すなど、本来なら絶対にあり得ない事であった。
「そこなんだよ……」
「何がですか?」
「何故ヘッラアーデの人間がロストマジックアイテムを手渡したのか……『重要な証拠品だ』なんだと理由を付けて持ち帰れば良い。しかしそうしなかった……」
フォルスも理解出来なかった。ロージェの不可解な行動。いくら考えても答えは出ない。
「俺が今回呼び集めたのはそれが理由だ。もし今後、あの女に接触する事があれば、警戒を怠るな。何を考えているのか分からない……不気味だ……」
「「「…………」」」
考えれば考える程、謎は深まっていく。少なくとも今回の一件により、真緒達のロージェに対する警戒度はかなり上がったと言える。
***
「……それでサトウマオを殺さずに戻って来たと……?」
場所は変わりゴルド帝国。エイリスの自室では、アイラ村から戻って来たロージェから事の顛末を報告していた。
「さっきも言っただろう。あの状況で殺せば村人達から不信がられるのは明白。そうなれば、今後の活動にも支障が出る可能性があった」
「そんな小さな村から不信がられても、大して支障はありません。万が一なるとしても、その時は村を地図上から消し去ってしまえば良いのです」
「……今の発言は聞かなかった事にする。そんな過激な発言、国を治める大司教として失格だぞ」
「勘違いされては困ります。別に村がどうなろうが、国がどうなろうが私には関係ありません。私は只、神であるエジタス様の為に動いているのです。その次いでとして村や国を救済しているだけなのです」
「……そうか……」
「それなのにあなたという人は……エジタス様の命を奪った極悪人であるあのサトウマオを見逃すなんて……前代未聞です!!」
「…………」
「あぁ、やはりあの時殺しておくべきだった……わざわざ懐まで忍び込んで来たあの時……それなのに……あぁ、もう!!」
「前々から思っていたが、サトウマオの事になると感情的になるな」
「それがどうしたと言うんですか!? 神であるエジタス様の命を奪ったのですよ!! 感情的にだってなりますよ!!」
「確かにそうだが……お前の場合、背徳感情というよりも“私怨”に近い物を感じるんだがな」
「……それはお互い様じゃないかしら……」
「悪いが私はエジタスなんて奴の事をこれっぽっちも崇めていない。あくまで目的の為に利用しているだけに過ぎない……」
「そう言えばまだ、その目的を聞いていませんでしたね。教えて頂けますか?」
「……断る。報告は以上だ。これで失礼する」
そう言うとロージェは、足早に部屋を後にした。
「ふふふ……隠し事はお互い様ね……」
ロージェとエイリス。互いに秘め事を抱く。その秘め事が明かされる日が来るのはいつになるのであろうか。
「(結局一人になっちゃったな……)」
異世界との唯一の繋がりであった舞子はアージに殺されてしまった。また、そのアージもロージェによって首を切り飛ばされた。怒りの矛先がいなくなってしまい、途方もない喪失感に苛まれていた。
「舞子……安らかに眠って……」
ロージェの指示によって、舞子の遺体は兵士達が迅速に処理した。お別れすら言う暇も無かった真緒は、改めて別れの言葉を口にする。
「マオ、ちょっといいか?」
別れの干渉に浸っていると、玄関からフォルスが声を掛けて来た。
「フォルスさん、どうしたんですか?」
「話があるんだ」
「ここじゃ、駄目なんですか?」
「何処に監視の目があるか分からない。取り敢えず、人気の無い場所に向かうぞ」
「分かりました……」
普段よりも落ち着きの無い態度に疑問を浮かべながらも、フォルスの後をついていくマオ。
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「ハナちゃん……リーマ」
「マオぢゃん」
「マオさんも呼ばれたんですね」
どうやらハナコとリーマの二人も、フォルスに呼び出されていたらしい。
「マオさん、その大丈夫ですか?」
「何が?」
「マイコさんが亡くなって落ち込んでいるんじゃないかって……」
「……落ち込んで無いって言えば嘘になるけど……私なら大丈夫。だって私にはまだ皆がいるから」
「マオさん……」
「マオぢゃんの事は、オラが守っで見ぜるだぁ」
「ありがとうハナちゃん。私もハナちゃんの事……皆の事を守って見せるからね」
「よし、俺達以外の気配は感じられないな」
フォルスは周囲に誰もいない事を確認すると、三人の前に現れた。
「フォルスさん、急に皆を集めてどうしたって言うんですか?」
「実はな、お前達に伝えておきたい事があってな」
「伝えておきたい事?」
「何ですか?」
「リューゲの……まぁ、実際はアージだった訳だが……その処刑が行われる際、助けに入った事は覚えているな」
「はい、兵士達と戦う事になりました」
「その時俺は、アージを殺そうとした事で戦いを食い止めた。『この男を殺されて困るのはお前達の方だろう』と言ってな」
「そう言えば、ずっと引っ掛かっていたんですけど……どうして兵士達の方が困るんですか? 元々、処刑しようとしていたんですよね?」
事件が無事に解決し、改めて冷静に考えてみると、大きな矛盾がある事に気が付いた。
「それは兵士達が共犯者だと考えているからだ」
「「「共犯者!!?」」」
「まぁ、正確にはあの“ロージェ”という女の独断だと思っているがな。現に俺が殺そうとした時、あの女だけが狼狽えていたからな」
「で、でもどうしてそんな事が分かるんですか!?」
「俺は、眠ったマオをベッドごと動かしたと推理した。だがここで一つの疑問が浮かび上がる。果たして人間が寝ているベッドをたった一人で運び出す事が出来るだろうか」
「「「!!!」」」
それは至極当然の疑問だった。思い付かない方がおかしいとも言える。しかしあの時、リューゲがアージであるという衝撃の真実のせいで、誰一人として疑問を持たなかった。
「た、確かに共犯者がいれば運ぶ事も出来ると思いますが……そもそもどうしてそのロージェさんが犯行を手伝わないといけないんですか?」
「……ここは俺の推測でしかないが、恐らくあの女は“ヘッラアーデ”の人間だ」
「「「ヘッラアーデ!!?」」」
真緒達の敵にして、エジタスを神として崇めている謎の多い組織。この村でその名前を聞くとは思っていなかった。
「この西の大陸はゴルド帝国が治めている。それにあんなに大量の兵士達を導入出来るとしたら、ゴルド帝国以外あり得ないしな。そして今現在、ゴルド帝国を支配しているのはヘッラアーデだ。つまり、あの女は高確率でヘッラアーデの関係者と考えられる」
「あの人がヘッラアーデの人間……」
「待って下さいフォルスさん!! それならどうして言わなかったんですか!?」
フォルスの言葉に、リーマが疑問を投げ掛ける。
「何をだ?」
「そのロージェという人が共犯者なら、それを指摘して捕らえれば良かったじゃないですか!? いくらヘッラアーデの人間と言っても、殺人を犯したのなら捕らえる事は出来る筈です」
「勿論、俺も最初はそうするつもりだった……だが……そうなった場合、戦闘は避けられない」
「それでも私達なら勝てますよ。実力はマオさんと同じ位でしたからね」
「あれが本気ならな」
「…………えっ?」
「忘れたのか。アージはあの女に殺されたんだ。首を切り落とされて……あの時、あの女の動きを捉える事が出来た奴はいるか?」
「「「…………」」」
誰も手を挙げない。あの時、誰一人としてロージェを肉眼で捉える事が出来なかったのだ。
「戦闘になれば、必ず本気を出して来るだろう。そうなったら、今の俺達で太刀打ち出来るかどうか……」
「「「…………」」」
肉眼で捉えきれないとなれば、感覚だけが頼りになる。真緒達四人だけで対応するのは厳しいだろう。
「で、でもやっぱり変ですよ!!」
するとリーマが再び疑問を投げ掛ける。
「もしもあのロージェという人がヘッラアーデなら、何故ロストマジックアイテムを渡して来たんですか!?」
リーマの疑問は最もだった。ヘッラアーデは真緒達と同じくエジタスの遺したロストマジックアイテムを集めている。それをみすみす手放すなど、本来なら絶対にあり得ない事であった。
「そこなんだよ……」
「何がですか?」
「何故ヘッラアーデの人間がロストマジックアイテムを手渡したのか……『重要な証拠品だ』なんだと理由を付けて持ち帰れば良い。しかしそうしなかった……」
フォルスも理解出来なかった。ロージェの不可解な行動。いくら考えても答えは出ない。
「俺が今回呼び集めたのはそれが理由だ。もし今後、あの女に接触する事があれば、警戒を怠るな。何を考えているのか分からない……不気味だ……」
「「「…………」」」
考えれば考える程、謎は深まっていく。少なくとも今回の一件により、真緒達のロージェに対する警戒度はかなり上がったと言える。
***
「……それでサトウマオを殺さずに戻って来たと……?」
場所は変わりゴルド帝国。エイリスの自室では、アイラ村から戻って来たロージェから事の顛末を報告していた。
「さっきも言っただろう。あの状況で殺せば村人達から不信がられるのは明白。そうなれば、今後の活動にも支障が出る可能性があった」
「そんな小さな村から不信がられても、大して支障はありません。万が一なるとしても、その時は村を地図上から消し去ってしまえば良いのです」
「……今の発言は聞かなかった事にする。そんな過激な発言、国を治める大司教として失格だぞ」
「勘違いされては困ります。別に村がどうなろうが、国がどうなろうが私には関係ありません。私は只、神であるエジタス様の為に動いているのです。その次いでとして村や国を救済しているだけなのです」
「……そうか……」
「それなのにあなたという人は……エジタス様の命を奪った極悪人であるあのサトウマオを見逃すなんて……前代未聞です!!」
「…………」
「あぁ、やはりあの時殺しておくべきだった……わざわざ懐まで忍び込んで来たあの時……それなのに……あぁ、もう!!」
「前々から思っていたが、サトウマオの事になると感情的になるな」
「それがどうしたと言うんですか!? 神であるエジタス様の命を奪ったのですよ!! 感情的にだってなりますよ!!」
「確かにそうだが……お前の場合、背徳感情というよりも“私怨”に近い物を感じるんだがな」
「……それはお互い様じゃないかしら……」
「悪いが私はエジタスなんて奴の事をこれっぽっちも崇めていない。あくまで目的の為に利用しているだけに過ぎない……」
「そう言えばまだ、その目的を聞いていませんでしたね。教えて頂けますか?」
「……断る。報告は以上だ。これで失礼する」
そう言うとロージェは、足早に部屋を後にした。
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