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第五章 冒険編 幸運の巣窟
第三勢力
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聞こえるのは台の上で玉が転がる音。赤、黒、緑の三種類に色分けされた台の上を白い小さな玉が回転している。台には数字が記載されており、台を囲む人々が次々と数字の上に“金貨”を重ねる。
聞こえるのは紙が擦れる音。白い服の上に黒いベストを着た男性が何十枚物の紙を手元でシャッフルしていた。表には数字や絵柄、裏には細かな模様が描かれている。シャッフルし終わると、男性は目の前にいる人々に紙を二枚ずつ配り始める。
聞こえるのは機械音。真っ赤に彩られた機械の画面には果物の絵柄、ベルの絵柄、数字の7などが三分割に表示されていた。そんな機械の前に一人の男性が座り込む。男性は一枚の金貨を機械に入れ、先端が赤く丸いレバーを引く。すると三分割に表示された絵柄や数字が回り始める。男性は三分割それぞれに取り付けられている丸い三つのボタンをテンポ良く押していく。
そこに静寂などありはしなかった。高そうな服に身を包む男性や女性の声が永遠と響き渡る。ある者は嘆き、またある者は歓喜していた。しかしそんな者達もいつか必ず嘆く事になるだろう。ここは“オーロ”、刺激と快楽を求める者達が集まる魅惑の“カジノ”である。
「「「「…………」」」」
そんなカジノ入口に、見覚えのある四人が呆然と立ち尽くしていた。真緒、ハナコ、リーマ、フォルスの四人だが、いつもと様子が違う。常に身に付けていた鎧や武器は見当たらず、貴族や王族が着ていそうな豪華で可憐な服やドレスを着ていた。しかし四人の顔は青ざめており、酷くやつれていた。
「……全部スッちゃった……」
「所持金はゼロ……もう宿に泊まるどころか食料や水すら買う事が出来ませんよ……」
「蓄えていた食料はハナコが全部食ってしまって残っていない……水も残り僅か……これからどうするつもりだ……?」
「マオぢゃん……」
タイミング悪く四人の腹の虫が鳴く。あまりの空腹に気持ち悪くなり始めた。
「どうしよう……」
何故こんな事態に陥ったのか。それを語るにはまず一週間前に遡る必要がある。それは真緒達がアイラ村を出発した三日後の出来事であった……。
***
アイラ村での事件を無事に解決した真緒達は、リップから情報が届けられるまでの間、西の大陸を冒険していた。一年振りの自由な冒険の為か、非常に浮き足立っていた。
「うーん、気持ちの良い日ですね」
真緒は心地よい風を感じながら背伸びをして、固まった背骨を伸ばす。
「本当ですね。こんな日がずっと続いてくれると良いんですけど……」
「ぞんな事より、オラ何だかお腹が空いぢまっだだぁ」
リーマが真緒に共感している中、ハナコのお腹が大きな音を立てる。
「もうハナちゃんは相変わらず感受性が薄いんだから」
「感受性? ぞれっでどんな果物だぁ?」
「“果実”じゃなくて“感受”!! 感受性だよ!! この天気と風を感じて何か思わないの?」
「……眩しくて……ちょっと寒いだぁ」
「そうじゃなくて……」
「まぁまぁ、ハナコの食い意地は今に始まった事じゃないだろう。今日はここで野宿する事にしよう」
呆れる真緒を尻目にフォルスが宥める。
「……分かりました」
「フォルスざん!! 今日の晩御飯は何だがぁ!?」
「今日はカレーにしようと思う」
「やっだぁ!! カレーだぁ!! カレーだぁ!!」
「嬉しいのは分かったから、焚き火用の薪を拾って来てくれ」
「分がっだぁ!!」
そう言うとハナコは、一人薪を拾いに行ってしまった。
「リーマ、お前もハナコと一緒に薪を拾って来てくれ」
「分かりました」
「マオは俺と一緒に料理の支度だ」
「はい!!」
フォルスが指揮する形で、真緒達は夕食の準備に取り掛かった。
***
辺りはすっかりと暗くなり、真緒達が起こした焚き火の周りだけが明るくなっていた。
「ぷはぁ!! 食っだ食っだぁ!!」
「いつ見ても凄い食べっぷりだね」
「あれだけの食べっぷりを見ると、清々しく感じますね」
「あぁ、でもまさか万が一に備えて蓄えていた一週間分の食料を全て平らげてしまうとは……」
ハナコの暴食に驚かされる真緒達。ハナコの皿はルーが一滴も残っていない程、綺麗に完食されていた。
『いやはや圧巻の食べっぷりだね』
「いやいや、ぞれ程でも……っ!!?」
「「「!!?」」」
その時、その場にいる全員が気が付いた。自分達以外の何者かが、この暗闇に潜んでいるという事を。
「「「「………」」」」
全員武器を構え、警戒体制を取る。互いに背中を合わせ、死角を作らない様にした。
「…………来る!!」
最初に気が付いたのは真緒だった。目の前に広がる暗闇に紛れ、黒いローブを被った何者かが斬り掛かって来た。
「……っ!!?」
咄嗟に剣で受け止めるが、常人では考えられない強さで押し切られそうになる。
「……このっ!!」
『っ!!?』
このままでは斬られると判断した真緒は、片足を使って襲撃者を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた襲撃者は再び暗闇へと姿を眩ました。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫かマオ!!」
「な、何とか……」
「フォルスざん、危ないだぁ!!」
「!!?」
真緒を気遣い目線を反らしたフォルスの隙を突いて、襲撃者が斬り掛かって来た。
「スキル“鋼鉄化”!!」
ハナコは全身を鋼鉄に変化させ、襲撃者の斬激を弾き返した。
「ハナコさん伏せて下さい!! “ウインドカッター”!!」
リーマの声に反応して、ハナコはその場に伏せた。するとその瞬間、リーマの魔導書から鋭い風の刃がハナコの頭上を通り過ぎ、その先にいる襲撃者に放たれた。襲撃者は咄嗟に回避しようとするが間に合わず、体に命中した。
「よし!! 一気に畳み掛ける!!」
襲撃者に命中した事を確認した真緒は、休む暇を与えまいと斬り掛かろうとした。
『いやー、見事な連携だね。流石は僕のライバルだ』
「……ラ、ライバル?」
突然すっとんきょうな事を言われ、攻撃の手が止まる。するとウインドカッターによって斬られた黒いローブがずり落ちる。それによって襲撃者の素顔が晒される。
「えっ……あなたは!!?」
「「「「サタニア!!!」」」」
「皆、久し振りだね」
襲撃者の正体がサタニアであると分かった途端、全員構えていた武器を下ろした。そして一斉に側まで駆け寄る。
「どうしてサタニアがこんな所に!!?」
「いやその前に、どうして俺達を襲ったりしたんだ?」
「ごめんね。皆の実力を確かめておきたかったんだ。これから話す“第三勢力”と渡り合えるかどうか……」
「「「「第三勢力?」」」」
「取り敢えず皆、腰を下ろしてゆっくり聞いて欲しい」
サタニアによる突然の襲撃。驚きを隠せない真緒達だが、言われた通り腰を下ろしてゆっくりと聞く事にした。
「それで……どうしてサタニアがどうしてこの西の大陸に?」
「うん……実は真緒達と別れた後、魔王城の再建に勤しんでいたんだけど……跡地からこんな物が出て来たんだ」
そう言うとサタニアは、懐から一枚の紙を取り出し真緒達に見せる。紙はボロボロで所々虫食いになっていた。
今日、エ■タ■様からロ■ト■■ックアイ■■の■■■をしろとご命令された。■■タス様が亡くなるなど考えられないが、あの方は自身の死までも計算に入れているという事だろう。それに■■トマ■■クア■■ムを■■■■れば■■■■■■が■■■■。■■■ス様は私に■■■下さるという事だ。あのビッチな■ピロ、糞真面目なラ■■ン、激弱なジ■■■ーでは無く、この私を選んでくれた。■ジ■■様を失望させない様、全身全霊で勤めなくては……。全ては■ジタス様が望む“笑顔の絶えない世界”の為に……。
■■■■■■■
「こ、これは……?」
「恐らく日記の切れ端……内容から察するにエジタスに属する人物の物だと思う……」
「確かに所々虫食いで読めないが……これは十中八九……」
「うん、ロストマジックアイテムに関する事だと思う」
開いた口が塞がらない。目の前の事実に驚きを隠せなかった。
「この殆ど虫食いになっている『■■トマ■■クア■■ムを■■■■れば■■■■■■が■■■■』……いったい何て書いてあるんでしょうか?」
「分からない……でも問題はそれだけじゃない。この『あのビッチな■ピロ、糞真面目なラ■■ン、激弱なジ■■■ーでは無く、この私を選んでくれた』……これって僕達が戦った“エピロ”“ラクウン”“ジョッカー”の事じゃないかな?」
「た、確かにそう読めなくもないが……そうなるとおかしいぞ……これを書いているのはいったい誰なんだ?」
「……エピロでもラクウンでもジョッカーでも無い……四人目の存在……」
「「「「!!!」」」」
「僕達の敵はヘッラアーデだけじゃないって事さ……」
「そ、そんな……」
自分達でもヘッラアーデでも無い“第三の勢力”、真緒達は言い知れぬ不安感に襲われていた。
「マオ、ロストマジックアイテムは何個集まってる?」
「え、えっと……三個……」
「となると残り半分か……ヘッラアーデよりも、そして第三勢力よりも早くロストマジックアイテムを集めるんだ。それしか方法は無い。ここから南に四日歩いた先に“オーロ”と呼ばれる街がある。そこにロストマジックアイテムがあるという情報を掴んだ。直ぐ様向かって欲しい」
「わ、分かった……サタニアは?」
「ごめん……僕は魔族達をまとめないといけないから一緒にはいけない……でも後で代わりの人を送るよ!!」
「そっか……ありがとう」
「それでそのオーロという街はどんな街なんだ?」
「オーロはゴルド帝国の保護下に入らなかった街なんだ。ほぼ無法地帯となっていて、毎日犯罪が絶えなかった……だけど一年前、突然カジノを経営する様になってから急激に羽振りが良くなり、今では貴族や王族が入り乱れる街に変わっている」
「たった一年で……カジノを建てただけでそこまで変わる物か?」
「あり得ないだろうね。でも実際問題、そうなっている。恐らく……」
「ロストマジックアイテムの影響……か……」
「分かったよサタニア。私達がヘッラアーデよりも、その第三勢力よりも早くロストマジックアイテムを集めて見せる!!」
「ありがとうマオ!!」
こうして真緒達はロストマジックアイテムを集める為、カジノを経営している街“オーロ”に向かうのであった。
聞こえるのは紙が擦れる音。白い服の上に黒いベストを着た男性が何十枚物の紙を手元でシャッフルしていた。表には数字や絵柄、裏には細かな模様が描かれている。シャッフルし終わると、男性は目の前にいる人々に紙を二枚ずつ配り始める。
聞こえるのは機械音。真っ赤に彩られた機械の画面には果物の絵柄、ベルの絵柄、数字の7などが三分割に表示されていた。そんな機械の前に一人の男性が座り込む。男性は一枚の金貨を機械に入れ、先端が赤く丸いレバーを引く。すると三分割に表示された絵柄や数字が回り始める。男性は三分割それぞれに取り付けられている丸い三つのボタンをテンポ良く押していく。
そこに静寂などありはしなかった。高そうな服に身を包む男性や女性の声が永遠と響き渡る。ある者は嘆き、またある者は歓喜していた。しかしそんな者達もいつか必ず嘆く事になるだろう。ここは“オーロ”、刺激と快楽を求める者達が集まる魅惑の“カジノ”である。
「「「「…………」」」」
そんなカジノ入口に、見覚えのある四人が呆然と立ち尽くしていた。真緒、ハナコ、リーマ、フォルスの四人だが、いつもと様子が違う。常に身に付けていた鎧や武器は見当たらず、貴族や王族が着ていそうな豪華で可憐な服やドレスを着ていた。しかし四人の顔は青ざめており、酷くやつれていた。
「……全部スッちゃった……」
「所持金はゼロ……もう宿に泊まるどころか食料や水すら買う事が出来ませんよ……」
「蓄えていた食料はハナコが全部食ってしまって残っていない……水も残り僅か……これからどうするつもりだ……?」
「マオぢゃん……」
タイミング悪く四人の腹の虫が鳴く。あまりの空腹に気持ち悪くなり始めた。
「どうしよう……」
何故こんな事態に陥ったのか。それを語るにはまず一週間前に遡る必要がある。それは真緒達がアイラ村を出発した三日後の出来事であった……。
***
アイラ村での事件を無事に解決した真緒達は、リップから情報が届けられるまでの間、西の大陸を冒険していた。一年振りの自由な冒険の為か、非常に浮き足立っていた。
「うーん、気持ちの良い日ですね」
真緒は心地よい風を感じながら背伸びをして、固まった背骨を伸ばす。
「本当ですね。こんな日がずっと続いてくれると良いんですけど……」
「ぞんな事より、オラ何だかお腹が空いぢまっだだぁ」
リーマが真緒に共感している中、ハナコのお腹が大きな音を立てる。
「もうハナちゃんは相変わらず感受性が薄いんだから」
「感受性? ぞれっでどんな果物だぁ?」
「“果実”じゃなくて“感受”!! 感受性だよ!! この天気と風を感じて何か思わないの?」
「……眩しくて……ちょっと寒いだぁ」
「そうじゃなくて……」
「まぁまぁ、ハナコの食い意地は今に始まった事じゃないだろう。今日はここで野宿する事にしよう」
呆れる真緒を尻目にフォルスが宥める。
「……分かりました」
「フォルスざん!! 今日の晩御飯は何だがぁ!?」
「今日はカレーにしようと思う」
「やっだぁ!! カレーだぁ!! カレーだぁ!!」
「嬉しいのは分かったから、焚き火用の薪を拾って来てくれ」
「分がっだぁ!!」
そう言うとハナコは、一人薪を拾いに行ってしまった。
「リーマ、お前もハナコと一緒に薪を拾って来てくれ」
「分かりました」
「マオは俺と一緒に料理の支度だ」
「はい!!」
フォルスが指揮する形で、真緒達は夕食の準備に取り掛かった。
***
辺りはすっかりと暗くなり、真緒達が起こした焚き火の周りだけが明るくなっていた。
「ぷはぁ!! 食っだ食っだぁ!!」
「いつ見ても凄い食べっぷりだね」
「あれだけの食べっぷりを見ると、清々しく感じますね」
「あぁ、でもまさか万が一に備えて蓄えていた一週間分の食料を全て平らげてしまうとは……」
ハナコの暴食に驚かされる真緒達。ハナコの皿はルーが一滴も残っていない程、綺麗に完食されていた。
『いやはや圧巻の食べっぷりだね』
「いやいや、ぞれ程でも……っ!!?」
「「「!!?」」」
その時、その場にいる全員が気が付いた。自分達以外の何者かが、この暗闇に潜んでいるという事を。
「「「「………」」」」
全員武器を構え、警戒体制を取る。互いに背中を合わせ、死角を作らない様にした。
「…………来る!!」
最初に気が付いたのは真緒だった。目の前に広がる暗闇に紛れ、黒いローブを被った何者かが斬り掛かって来た。
「……っ!!?」
咄嗟に剣で受け止めるが、常人では考えられない強さで押し切られそうになる。
「……このっ!!」
『っ!!?』
このままでは斬られると判断した真緒は、片足を使って襲撃者を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた襲撃者は再び暗闇へと姿を眩ました。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫かマオ!!」
「な、何とか……」
「フォルスざん、危ないだぁ!!」
「!!?」
真緒を気遣い目線を反らしたフォルスの隙を突いて、襲撃者が斬り掛かって来た。
「スキル“鋼鉄化”!!」
ハナコは全身を鋼鉄に変化させ、襲撃者の斬激を弾き返した。
「ハナコさん伏せて下さい!! “ウインドカッター”!!」
リーマの声に反応して、ハナコはその場に伏せた。するとその瞬間、リーマの魔導書から鋭い風の刃がハナコの頭上を通り過ぎ、その先にいる襲撃者に放たれた。襲撃者は咄嗟に回避しようとするが間に合わず、体に命中した。
「よし!! 一気に畳み掛ける!!」
襲撃者に命中した事を確認した真緒は、休む暇を与えまいと斬り掛かろうとした。
『いやー、見事な連携だね。流石は僕のライバルだ』
「……ラ、ライバル?」
突然すっとんきょうな事を言われ、攻撃の手が止まる。するとウインドカッターによって斬られた黒いローブがずり落ちる。それによって襲撃者の素顔が晒される。
「えっ……あなたは!!?」
「「「「サタニア!!!」」」」
「皆、久し振りだね」
襲撃者の正体がサタニアであると分かった途端、全員構えていた武器を下ろした。そして一斉に側まで駆け寄る。
「どうしてサタニアがこんな所に!!?」
「いやその前に、どうして俺達を襲ったりしたんだ?」
「ごめんね。皆の実力を確かめておきたかったんだ。これから話す“第三勢力”と渡り合えるかどうか……」
「「「「第三勢力?」」」」
「取り敢えず皆、腰を下ろしてゆっくり聞いて欲しい」
サタニアによる突然の襲撃。驚きを隠せない真緒達だが、言われた通り腰を下ろしてゆっくりと聞く事にした。
「それで……どうしてサタニアがどうしてこの西の大陸に?」
「うん……実は真緒達と別れた後、魔王城の再建に勤しんでいたんだけど……跡地からこんな物が出て来たんだ」
そう言うとサタニアは、懐から一枚の紙を取り出し真緒達に見せる。紙はボロボロで所々虫食いになっていた。
今日、エ■タ■様からロ■ト■■ックアイ■■の■■■をしろとご命令された。■■タス様が亡くなるなど考えられないが、あの方は自身の死までも計算に入れているという事だろう。それに■■トマ■■クア■■ムを■■■■れば■■■■■■が■■■■。■■■ス様は私に■■■下さるという事だ。あのビッチな■ピロ、糞真面目なラ■■ン、激弱なジ■■■ーでは無く、この私を選んでくれた。■ジ■■様を失望させない様、全身全霊で勤めなくては……。全ては■ジタス様が望む“笑顔の絶えない世界”の為に……。
■■■■■■■
「こ、これは……?」
「恐らく日記の切れ端……内容から察するにエジタスに属する人物の物だと思う……」
「確かに所々虫食いで読めないが……これは十中八九……」
「うん、ロストマジックアイテムに関する事だと思う」
開いた口が塞がらない。目の前の事実に驚きを隠せなかった。
「この殆ど虫食いになっている『■■トマ■■クア■■ムを■■■■れば■■■■■■が■■■■』……いったい何て書いてあるんでしょうか?」
「分からない……でも問題はそれだけじゃない。この『あのビッチな■ピロ、糞真面目なラ■■ン、激弱なジ■■■ーでは無く、この私を選んでくれた』……これって僕達が戦った“エピロ”“ラクウン”“ジョッカー”の事じゃないかな?」
「た、確かにそう読めなくもないが……そうなるとおかしいぞ……これを書いているのはいったい誰なんだ?」
「……エピロでもラクウンでもジョッカーでも無い……四人目の存在……」
「「「「!!!」」」」
「僕達の敵はヘッラアーデだけじゃないって事さ……」
「そ、そんな……」
自分達でもヘッラアーデでも無い“第三の勢力”、真緒達は言い知れぬ不安感に襲われていた。
「マオ、ロストマジックアイテムは何個集まってる?」
「え、えっと……三個……」
「となると残り半分か……ヘッラアーデよりも、そして第三勢力よりも早くロストマジックアイテムを集めるんだ。それしか方法は無い。ここから南に四日歩いた先に“オーロ”と呼ばれる街がある。そこにロストマジックアイテムがあるという情報を掴んだ。直ぐ様向かって欲しい」
「わ、分かった……サタニアは?」
「ごめん……僕は魔族達をまとめないといけないから一緒にはいけない……でも後で代わりの人を送るよ!!」
「そっか……ありがとう」
「それでそのオーロという街はどんな街なんだ?」
「オーロはゴルド帝国の保護下に入らなかった街なんだ。ほぼ無法地帯となっていて、毎日犯罪が絶えなかった……だけど一年前、突然カジノを経営する様になってから急激に羽振りが良くなり、今では貴族や王族が入り乱れる街に変わっている」
「たった一年で……カジノを建てただけでそこまで変わる物か?」
「あり得ないだろうね。でも実際問題、そうなっている。恐らく……」
「ロストマジックアイテムの影響……か……」
「分かったよサタニア。私達がヘッラアーデよりも、その第三勢力よりも早くロストマジックアイテムを集めて見せる!!」
「ありがとうマオ!!」
こうして真緒達はロストマジックアイテムを集める為、カジノを経営している街“オーロ”に向かうのであった。
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