笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
96 / 275
第五章 冒険編 幸運の巣窟

リベンジの時(中編)

しおりを挟む
 「さぁ、親を交代して第二ゲームだ。参加費用を払いな」



 第一ゲームでは見事ギャブラーのハッタリを見破り、一枚リード状態になる事が出来た真緒。しかし休んでいる暇は無い、参加費用を払って第二ゲームを開始する。各々、カードの束から一枚カードを引き、額に当てる。



 「(Q……かなりの強カード……ここは下手に勝負するよりもドロップアウトで被害を最小限に収めた方が良いかもしれない……)」



 Qに勝てるのはKとAの二種類のみ。更に真緒は先程の第一ゲームでAを引き当てている。そう簡単に同じ数字を引く可能性は極めて低い。真緒が被害を最小限に抑える為、ドロップアウトする事を決めた時、ギャブラーが動き出した。



 「一枚賭けよう……」



 「(一枚? 随分と消極的になった?)」



 第一ゲームの好戦的な態度から一変、やる気の無さが見て取れる程、消極的な態度に変わっていた。



 「(まさか……私の数字がA、またはK? だとしたらあの消極的な態度も納得出来る……始めから勝てない勝負に挑もうとは思わない。それなら……)」



 「どうした、お前の番だぞ?」



 「ふっ……レイズ!!」



 「な、何だと!!?」



 勝機を見出だした真緒は積極的に攻め始める。レイズを宣言し、最大枚数である十枚を賭けた。



 「(この好戦的な態度に相手が深読みして勝負に出れば、かなりの枚数を手に入れる事が出来る。勝負に出なくても、確実に一枚手に入れる事が出来る。完璧な作戦ね、もしかして私ギャンブルの才能があるのかも)」



 真緒が約束された勝利の余韻を味わっている中、ギャブラーは俯き黙り込んでしまった。



 「さぁ、どうしますか? 勝負するんですか、それとも降りるんですか?」



 「…………コール」



 「では、一斉に公開しましょう」



 結局、ギャブラーは勝負に出た。消極的な態度のギャブラーと積極的な態度の真緒。どちらが勝つかは明白であった、少なくとも真緒自身は勝利を確信していた。そう思っていた……。







 ギャブラー……Q



 真緒……2







 「…………え?」



 「マオぢゃん!!」



 「あぁ、マオさん……」



 「くそっ!!」



 「どうして勝負に出るのよ……」



 結果、真緒は負けた。端から見ていた仲間達からすれば、最弱のカードを引いた真緒が何故勝負に出たのか、理解出来なかった。真緒自身も何故負けたのか理解出来ていなかった。



 「ど、どうして……?」



 「……くくく……あっはっはっはっは!!!」



 酷く戸惑い困惑していると、それまで俯いていたギャブラーが高笑いを始めた。今まで溜め込んでいた物を一気に吐き出す様に。



 「素直にドロップアウトすれば被害を最小限に抑える事が出来た……それをお前は俺が消極的な態度を見せた途端、考えを変えた!! 全く浅はかな女だな、お前なんかにギャンブルの才能がある訳が無いだろう!? あっはっはっはっは!!!」



 「…………」



 悔しい気持ちで一杯だった。分かりやすい罠に引っ掛かり、コイン十一枚も奪われてしまった。これが常に人を信じて来た真緒と疑い続けたギャブラーの決定的な違いであり、同時に実力の差でもあった。



 「……まだ……」



 「……あっ?」



 「まだコインは残っています。第三ゲームを始めましょう」



 「……諦めの悪い女だな……だがまぁ、良いだろう。そんなに敗北の味を知りたいのなら、完膚無きまでに叩きのめしてやる」



 真緒の一枚リード状態で始まったゲームは一瞬にしてギャブラーの十枚リード状態に変わってしまった。状況は圧倒的に不利となり、積極的に動く事が出来なくなってしまった。そんな中、各々参加費用を払いカードの束からカードを一枚引き、額に当てる。



 「(……あいつの数字は6か……どちらかと言えば弱い部類の数字……あっちはコインを十枚も取られている……そこまでの枚数は賭けないだろう……)」



 ギャブラーには余裕があった。やはり十枚のリードは大きく、冷静に物事を分析する事が出来た。



 「十枚賭けます!!」



 「何だと!!?」



 しかし、ここで冷静に物事を分析する事が出来ない事態が発生する。十枚奪われ、もう後の無い真緒が残り十枚全てを賭けて来たのだ。



 「さぁ、どうしますか?」



 「(ハッタリか? いやだとしても十枚はやり過ぎだ……ここで万が一勝負に負ければ、全てが終わりなんだぞ? それだけの覚悟を背負って賭けたというのか? それとも俺のカードが2や3の最弱カードだからか? いやいや落ち着け、相手はギャンブルの素人……今までの経験から考えれば、この行動は第一ゲームの行動を真似しているんだろう。人は一度成功した手段をもう一度行いたいと考える。何故なら、再び成功するかもしれないという希望的欲求が働くからだ。となるとあいつの狙いは俺のドロップアウトで確実にコインを手に入れる事だ!! そうはさせるか!!)」



 「コールだ」



 「……そうですか……私はこれ以上、賭ける事が出来ませんのでこのまま一斉に公開しましょう」



 「(声のトーンが明らかに下がった。これは狙いが外れてしまったという事に対しての絶望の声。つまりあの女は確実に俺のドロップアウトを狙っていたという事だ。勝った!! この勝負、俺の勝ちだ!!)」



 真緒の声から勝利を確信したギャブラー。結果を待たずして唇から笑みが溢れ出す。そして額に当てていたカードが一斉に公開される。結果は…………。







 ギャブラー……5



 真緒……6







 「「!!?」」



 「マオぢゃん、やっだだぁ!!」



 「やりましたねマオさん!!」



 「まんまと騙されたな」



 「浅はかなのはどっちなのかしら?」



 真緒の勝利。その結果に仲間達は喜び合っていた。一方、負けた事実にギャブラーは酷く戸惑っていた。



 「(ど、どう言う事だ!!? ドロップアウトを狙っていたんじゃないのか!? まさか最初から俺が勝負に乗って来る事を計算に入れて、わざとそう思わせたと言うのか!? い、いやだとしてもやはりリスクが高過ぎる!! 残りのコインを全て賭けるなど自殺行為に等しい!! 逃げ道としてコインを三枚、二枚残しておくべきだ!! それを何故……)」



 いくら考えても答えは見つからない。それもその筈、何故なら……。



 「(か、勝っちゃった……負けたと思ったのに……)」



 真緒自身もこの結果に酷く戸惑っていたのだから。実はギャブラーの予想通り、真緒はドロップアウトを狙っていた。第一ゲームで成功していた為、もう一度成功するのではないかという浅い考えから仕掛けた。しかし狙いを大きく外れ、ギャブラーは勝負に乗って来てしまった。終わった……ここまでの努力が全て水の泡となってしまった。そう声のトーンが低くなったあの時、真緒は全てを諦めていたのだ。それがどうした事か、結果は真緒の勝利。



 「(ギャブラーも驚いている……そりゃそうだよね……私だって負けたと思っていたんだから……ちょっと待って!! もしかしてこれは使えるんじゃない!?)」



 その時、真緒の頭にあるアイデアが思い浮かんだ。ギャンブル素人の真緒がこのアイデアにたどり着いたのは、これまでの旅から影響した事なのか。それとも本当にギャンブルの才能があったのか。何にしてもこれから真緒が行う事は、ギャブラーにとって衝撃的な事であった。



 「(くそっ!! この俺とした事があんな小娘に出し抜かれるとは!! 問題はこれらの出来事が計算の内なのかどうかだが……)」



 そう言いながらギャブラーは、真緒の表情を読み解こうと目線を真緒のいる方向に向ける。



 「…………ふふっ」



 「!!!」



 真緒は笑っていた。不適な笑みを浮かべ、負けたギャブラーを嘲笑うかの様に冷ややかな目線を送っていた。



 「(こ、この女……計算の内だった!! だがなんだあの笑みは? まるで大人に弄ばれる子供に送る様な……ま、まさか!!? この第三ゲームまでに至るゲーム結果全てが計算の内だと言うのか!!?)」



 真緒が見せた不適な笑みと冷ややかな目線は、ギャブラーの深読みを更に加速させた。



 「(そうだとしたらあの度々行っていた十枚賭けも納得出来る。ゲームを手っ取り早く終わらせようとする素人行動を敢えて取る事で相手の油断を誘っていたという事だ……すっかり騙されたぜ……あの女、素人なんかじゃない。数多くの修羅場を潜り抜けた歴戦のギャンブラーだ!!)」



 こうしてギャブラーの中で真緒という人物はギャンブル素人から、数多くの修羅場を潜り抜けた歴戦のギャンブラーという認識に置き換わった。



 「やるじゃねぇか小娘……いや、サトウマオ。だがもう油断はしねぇ、第四ゲームを始めようじゃないか」



 「…………ふふっ」



 敢えて何も言わず第四ゲームを始めようとする真緒。これによりギャブラーは真緒をギャンブルの強者として更に勘違いするのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ 主人公はあまり戦ったりはしません。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする

楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。 ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。 涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。 女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。 ◇表紙イラスト/知さま ◇鯉のぼりについては諸説あります。 ◇小説家になろうさまでも連載しています。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

処理中です...