笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第六章 冒険編 記憶の森

火災の真実

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 「ユグジィ……? 何を……言っているんですか……?」



 リーマはユグジィの言っている事が理解出来ず、混乱していた。



 「だからのぉ、火を放ったのは実はわしなんじゃよ」



 リーマだけに留まらず、その場にいる真緒達やエルフ達、そしてフェスタスまでもが戸惑いの表情を浮かべていた。



 「う、嘘ですよね?」



 「いや、本当じゃよ」



 「どうしてそんな……」



 「うーん、何て言えば良いのかのぉ。敢えて一言で済ませるとすれば、“役者を揃えたかった”って所じゃな」



 「役者?」



 「フェスタス君、リーマちゃん、フォルス君、ハナコちゃん、そしてマオちゃん……君達の事じゃ」



 丁寧に体の向きを変えながら、それぞれの名前を挙げるユグジィ。



 「わしはずっと待っていた……君達の様な若者が現れるのを……」



 「待っていただと……? 何を言っていやがる!! お前はいつも俺に対して『君には相応しくない』とか言ってたじゃないか!!?」



 「あぁ、その通りだ。君には相応しくない……そしてそれは他の連中にも言える事だ」



 「はぁ!?」



 「考えても見なさい。会ったばかりでその人がどういう人物なのか、よく分からない状況で素直に大事なロストマジックアイテムを渡すと思うか? いや、渡す訳が無い。だからこそ、見極める必要があった」



 「ロストマジックアイテムを渡すのに相応しいかどうか?」



 「その通りじゃよフォルス君。しかし、対象者が一人だけでは他の者との比較が出来ない。そこでわしはフェスタス君以外の人物がこの森に来るまで待っていたのだよ」



 「それが私達……」



 「でもまさかそれがリーマちゃんだとは思わなかったのぉ……しかも、あのエジタスと関わりを持っていたとは夢にも思わなかったよ」



 「知っていたんですね……」



 最初から正体に気が付いていたユグジィ。真緒達は懐から鍵を取り出し、首に嵌められている奴隷の首輪を外した。



 「だがこれは好機だと考えた。エジタスの息子を名乗る男とエジタスの事を愛した女……どちらにこの“杖”を渡すべきか、この際ハッキリさせようと……」



 「まさか……それが森を焼いた理由ですか!!? そんな見極めるだけの下らない理由で大切な里を危険に晒したんですか!!?」



 一年間、エルフの里と交流を深めていたリーマにとって、ユグジィが取った行動は許せなかった。



 「いやいや、そんな訳無いじゃろ」



 「そ、そうですよね……良かった……」



 さすがにそんな無責任な事はしないかと、ホッと一安心するリーマ。



 「森に火を放ったのは、フェスタス君を中に誘き出す為じゃよ」



 「!!?」



 しかし残念ながら火を放った理由はもっと下らない物であった。



 「せっかくマオちゃん達が来ているのに、フェスタス君だけ来れないのは不公平だと思ってな……監視の目を反らさせ、森に入りやすくする為に森を焼いたのじゃよ」



 「俺が言うのも可笑しいが……糞爺、お前中々のクズ野郎だな」



 「確かに……お主にクズと言われるのは可笑しいのぉ。寧ろ無事に森に入れた事を感謝して欲しい位じゃ」



 そんな会話をしている中、状況が上手く飲み込めず、困惑していたエルフ達がユグジィの前まで歩み寄って来た。



 「そんな族長……嘘ですよね?」



 「ん? おぉ、お主達か。今までご苦労だった、よく働いてくれたよ」



 「嘘だと言って下さい!! どうして……里の長であるあなたが……里を危機に陥れるんですか!!?」



 代表して声を荒げているのは、真緒達が里に滞在するのを反対していたエルフだった。族長であるユグジィが火を放った事に対して、未だに信じられずにいた。



 「……お主は何歳じゃ?」



 「……え?」



 「何歳か聞いているんじゃ」



 「あっ、えっと……1025歳です」



 「そうか……1025歳か……若いのぉ……まだまだ人生これからじゃな……」



 「…………」



 突然年齢を聞き始めたユグジィに、エルフ達は酷く困惑していた。当然、真緒達やフェスタスも困惑していた。



 「エルフは長命な一族じゃ。軽く千年、二千年生きる事が出来る。多くの種族が羨ましく思っている様じゃが……わしから言わせれば、長生きなどする物では無い……」



 「族長?」



 ユグジィは物思いにふけているのか、空を見上げ、遠くを見つめ始めた。



 「永遠とも思える時の流れの中に一人取り残されれば、確実に狂ってしまう。だからこそ供に生きる者を見出だそうとする。しかしわしはエルフ……同じ種族で無ければ、また一人取り残されてしまう」



 「族長……族長は一人じゃありませんよ!! 俺達がいるじゃありませんか!!」



 分かりやすく落ち込むユグジィに、エルフ達が元気付けようとする。そんな彼らを見ながらユグジィは鼻で笑った。



 「ふっ……所詮“記憶”の存在であるお主達にそんな言葉を掛けられても、何も心に響かん……」



 「えっ、“記憶”の存在……?」



 「おっと……つい口が滑ってしまった……まぁ、いいか。どの道、消すのには変わり無かったからのぉ……」



 「ぞ、族長? いったいどう言う……」



 「今までお疲れ様……ゆっくりお休み……」



 そう言うとユグジィは持っていた杖をエルフ達に向けた。すると杖の頂点に嵌め込まれている水晶玉の様な玉が光を放ち始めた。



 「えっ、な、何だこれ!!?」



 「「「「「!!?」」」」」



 それと同時にエルフ達の体が透け始めた。密集していたエルフ達の体を通り越して、向こう側が見えていた。



 「いや!!? 何なの!!?」



 「す、透けてるのか!!? 嫌だ!! 死にたくない!!」



 「いったい何がどうなっているんだ!!?」



 「族長!! これはいったいどう言う事なんですか!!?」



 「どうもこうも無い……君達は消える。只それだけの事じゃよ」



 「ふ、ふ、ふざけるなぁあああああ!!!」



 理不尽な言葉に堪忍袋の緒が切れたエルフは、ユグジィ目掛けて襲い掛かる。



 「“アクアスプラッシュ”!!」



 エルフの魔法によって生み出された複数の小さな水の塊が、ユグジィ目掛けて放たれる。



 「本当に……お主は人一倍真面目だったからのぉ……怒るのも当然じゃ……」



 「!!?」



 しかし、放たれた水の塊は全てユグジィの体をすり抜けた。



 「また気が向いたら呼び出すかもしれん。それまでゆっくり休んでくれ」



 「くっ……くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」



 「「「「「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」」」」



 そして遂にエルフ達の体は、完全に消えて無くなってしまった。まるで元からいなかったかの様に……。



 「「「「「…………」」」」」



 真緒達とフェスタスは、目の前で起こった出来事に唖然としていた。いったい何がどうなっているのか、全く理解出来なかった。



 「さてと、待たせてしまってすまなかったのぉ。そろそろ始めるとするか」



 「は、始めるって……何を?」



 その言葉にユグジィは、ニヤリと歯を見せながら不適な笑みを浮かべた。



 「試練じゃよ。このロストマジックアイテムをどちらに渡すか、見極めさせて貰う」



 「っ!!!」



 すると突然、フェスタスがその場から逃走した。



 「(不味い……あの糞爺の笑みを見た瞬間、背筋が凍り付いた。これは本能が危険を察知しているという事……不本意だが、ここは一旦退却させて貰う!!)」



 逃走を図るフェスタスだが、ユグジィは慌てる素振りは見せず、落ち着いた様子で持っていた杖を掲げた。



 「もう遅いよ。既にお主も参加者の一人じゃ」



 「「「「「!!!」」」」」



 その瞬間、再びユグジィが持っている杖の頂点に嵌め込まれている水晶玉の様な玉が光を放ち始めた。



 「きゃあああああ!!!」



 「な、何だぁ!!?」



 「ユグジィ……どうして……」



 「何がどうなっているんだ!!?」



 「くそっ!! まさかこの俺が!!?」



 目の前が真っ白になる。真緒達とフェスタスは、ユグジィの杖から放たれた眩い光に包まれるのであった。
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