笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第六章 冒険編 記憶の森

吐き気を催す

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 再び目を開けると、真緒は最初の場所であるニンフェの森に立っていた。



 「戻って来た……?」



 周囲を確認する真緒の下に、複数の人影が駆け寄って来る。



 「マオぢゃん!!」



 「マオさん、ご無事ですか!?」



 「無事か、マオ!?」



 それはハナコ、リーマ、フォルスの三人だった。先程の事もあり、思わず身構える真緒だったが、慌てた様子で安否を確認する手前、偽物では無いと判断し、警戒を解いた。



 「良かった……今度は本物だ……」



 「えっ、本物? どう言う意味ですか?」



 「あっ、ううん、何でも無いよ。それより、皆の方こそ大丈夫だった!?」



 「「「…………」」」



 真緒の言葉に黙り込んでしまった。よく見ると、三人供少しやつれていた。意気消沈した様子から、精神的な苦痛の戦いを強いられたのだろう。



 「そうだよね……大丈夫な訳、無いよね……」



 「あぁ……だが、こうして全員無事に、試練を乗り越える事が出来たんだ。一先ず、良しとしよう」



 「……そう言えば、肝心のユグジィの姿が、何処にも見当たらないんですよ」



 「えっ!!?」



 改めて周囲を見回すが、確かにユグジィの姿が確認出来なかった。



 「いったい何処に……?」



 「ここにいても埒が明かない。取り敢えず一度、里の方に引き返そう」



 「そうですね、行きましょうマオさん」



 「う、うん……」



 そうして、真緒達がエルフの里に戻ろうとする中、ハナコは森の奥を見つめていた。



 「皆……何が、物音が聞ごえ……あれっ!!? み、皆!!?」



 気が付くと、三人はハナコだけを置いて先に行ってしまった。



 「ぢょ、ぢょっど待っで欲じいだぁ!!」



 慌てて、後を追い掛ける。故に気付く事は無かったが、ハナコが見つめていた森の奥では、未だにもがき苦しみながら、幼少期の自分と戦っているフェスタスの姿があった。



 「いい加減、認めろよ」



 「違う……俺は……俺はエジタスの息子……息子なんだ……」



 「はぁー、こりゃ当分の間、成長は見込めそうに無いな」



 幼少期のフェスタスは、呆れた表情を浮かべながら、フェスタスの試練を続けるのであった。







***







 「こ、これは……!!?」



 エルフの里に戻って来た真緒達。そこで目にしたのは、燃え盛る炎に包まれる里の光景だった。



 「里が……どうしてこんな……」



 「あっ!! あそこにユグジィがいるぞ!!」



 「「「!!!」」」



 フォルスが指差す方向には、真緒達と同じ様に、燃え上がる里を呆然と眺めている、ユグジィの姿があった。



 「ユグジィ!!」



 「ん? あぁ、お主達か……そうか……どうやら無事に試練はクリアした様じゃな」



 「いったい何があったんですか!? どうして里が!?」



 「わしが付けた」



 「…………え?」



 「わしが里に火を付けた。どうせ遅かれ早かれ、消す予定じゃったからな」



 「「「「!!?」」」」



 信じられなかった。自身が暮らして来た里に、自らの手で火を放つなど、狂っているとしか思えなかった。



 「な、何を考えているんですか!!? 今すぐ、火を消して下さい!!」



 「何をそんなに興奮しておる?」



 「このままじゃ、あっという間に火の手が回って、ニンフェの森は全焼する事になるぞ!!」



 「何じゃ、そんな事か。そう慌てるな、心配する必要は無いよ」



 「何、悠長な事を言ってるんですか!!? リーマ、急いで水属性魔法を唱えて!!」



 「はい、分かりました!!」



 そう言うとリーマは、慌てて魔導書のページを捲る。



 「全く……落ち着きが無いのぉ……もう種明かしは済んでいるんじゃから、少しは察するべきじゃないか? ほれ」



 「「「「!!?」」」」



 その様子に、呆れた表情を浮かべながら、ユグジィは持っていた杖を燃え盛る里に向けて、扇を描く様に振って見せた。すると、まるで元々何も無かったかの様に、里自体無くなってしまった。



 「あ、あれ!? さ、里は!?」



 「そんな物、“初めから”無かったよ」



 「ど、どう言う事だぁ……?」



 「そんな……まさか……里の人達だけじゃ無く、里その物が記憶の存在だった……?」



 「嘘だろ……」



 それまであった筈の物が、綺麗サッパリ無くなってしまった事に、驚きの表情を隠せない真緒達。



 「わしはな、あの試練で少なくとも、二人は脱落すると思っていた……だが、結果は誰一人脱落していない……特にサトウマオ……何故、お前が残っているんだ……」



 「わ、私……?」



 「お前の試練は、絶対に乗り越えられない様に、そこの三人を倒すべき敵として配置した筈……それなのに、何故クリア出来ているんだ?」



 真緒が、自分達と同じ姿の存在と戦っていた事を知った三人。どうして倒す事が出来たのか。その理由に耳を傾ける。



 「何て事はありません。私は只、仲間達の事を考えただけです」



 「?」



 「確かにあなたの作り出した記憶の存在は、とても厄介でした。でも所詮は記憶に自我を持たせただけの紛い物。本当の絆で繋がれた仲間達には、敵いません」



 「マオぢゃん……」



 「マオさん……」



 「マオ……」



 真緒の言葉に胸打たれる三人。そんな中、ユグジィは大きな溜め息を吐く。



 「……はぁー、お主達を見ていると……何と言うか……非常に……“吐き気を催す”のぉ……」



 「な、何ですか急に……」



 「いや何、わしは昔から“仲間”という言葉が、大嫌いなんじゃよ……気の合う者同士が喋ったり、遊んだり、お互いを尊重し合ったり、時には競い合ったり。供に成長して行く仲間というのが、心底嫌いだ」



 「そ、それが何だと言うんですか!? あなたがどう思っていようと、私の仲間達を否定する事は出来ません!!」



 「ふん!! まぁ、今更どうでもいい事だからの。さてと、試練をクリアしたお主達には、わしの持つこの杖……“記憶の杖”を得る“権利”がある訳じゃな」



 「“記憶の杖”……やっぱりそれが、師匠の遺したロストマジックアイテムなんですね」



 「いやその前に……今、“権利”って言ったか?」



 「そうじゃよ。まだお主達は権利を得ただけで、託すまでには至っていない」



 「そんな!? これ以上、いったい誰と戦えばいいって言うんですか!?」



 「そんなの……決まっているじゃろ?」



 「……まさか……ユグジィ?」



 「…………」(ニヤリ)



 「“三連弓”!!!」



 「「「!!?」」」



 「おや?」



 その瞬間、フォルスはユグジィ目掛けて三連続の矢を発射した。しかし、ユグジィは杖を回転させ、それらを全て弾いた。



 「くそっ!! やはり一筋縄では行かないか!!」



 「フォルスさん!! いきなり何やっているんですか!!?」



 「そうですよ!! まだ話し合いで済むかもしれないじゃないですか!!」



 「本気でそう思ってるのか!? 相手は老人とはいえ、あのエジタスさんが素顔を見せてまで、ロストマジックアイテムを託した人物だ。話し合いで済むとは思えない……」



 「そ、それは……」



 「うんうん、お主の言う通りじゃ、鳥人の若いの」



 ユグジィは、首を縦に振りながら感心の意を示す。そして静かに持っていた杖を真緒達に構える。



 「最早、言葉は不要。ここから先、語るのは口では無く、拳のみ。さぁ、遠慮せず、掛かって来るがいい」



 そしてユグジィとの戦いが、幕を開けるのであった。
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