笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
125 / 275
第七章 冒険編 大戦争

避難誘導

しおりを挟む
 誰もが目を覆いたくなる様な、絶望的状況下の中、真緒はカルド王国という国その物を犠牲にする事で、この戦争に勝利すると述べた。



 「カルド王国を犠牲にするって……本気で言っているんですか!!?」



 「本気だよ、この状況をひっくり返すには、国自体を引き合いに出すしか方法が無い」



 「正気の沙汰とは思えません!! 国民を失いたくないからと言って、国民が住む場所を失っては本末転倒じゃありませんか!!?」



 リップの意見は至極当然だった。真緒の言葉があまりにも酷かったのか、さすがのハナコ、リーマ、フォルスの三人も引いていた。



 「マオ、お前の意見にはいつも驚かされて来たが、今回ばかりはリップの言う事が正しい」



 「大切な人が失くなるのは嫌ですが、思い出の場所が失くなるのも嫌ですよ」



 「マオぢゃん、考え直じでぐれだぁ」



 しかし、真緒は三人の言葉に首を横に振り、否定して見せた。



 「もう選択肢は残されていないんだ。覚悟を決めないといけないんだよ」



 「だからって……いくら何でも、自分が育った国を捨てる事なんて出来ませんよ」



 「じゃあ、他に方法があるって言うの?」



 「そ、それは……」



 「私だって考え無しに、国を犠牲にしようと言ってる訳じゃない。勝つ為に必要だから言ってるんだよ」



 「なら聞かせて下さい。勝つ為に国を犠牲にするその作戦を!!」



 冷静に諭す真緒。しかしリップも簡単には引き下がらない。作戦内容を聞くまでは、納得したく無かった。



 「悪いけど、ゆっくり説明している暇は無い。一秒でも早く、国民を安全な場所に避難させないと」



 「いやいや、ちょっと待って下さい!! 作戦内容も聞かされていないのに、国民を避難させる!!? つまりこう言う事ですか? 今はまだ作戦は言えないけど、私を信じて受け入れて、先に国民の避難をさせようって? ふざけるな!!!」



 リップは真緒の横暴な態度に対して、遂に我慢の限界が達し、言葉遣いを忘れて暴言を吐いた。



 「怒る気持ちは分かる。でも、今は一刻も早く国民が戦争に巻き込まれない様、行動するべきじゃないの?」



 「……っ!!!」



 正論だった。リップはその意見を否定する事が出来ず、口籠ってしまった。すると代わりにフォルスが口を開いた。



 「そうは言うが、いったい何処に避難させるつもりだ? カルド王国には約百万人の一般市民が暮らしているんだぞ?」



 「その人達を全員安全な場所に避難させるのに、良い所があるんでしょうか?」



 百万人という規模になれば、それ相応な場所が必要となる。そんな場所に当てはあるのか、当然の疑問だった。



 「あるにはある……だけどその前に国民の人達の前で説明して、納得して貰わないと……」



 「……分かりました。城の前に集まる様、全国民に呼び掛けます」



 「リップ……ありがとう」



 「勘違いしないで下さい。まだ、マオさんの作戦を納得した訳じゃありません。国民の安全が第一優先なだけです」



 そう言いながら、リップはその場に残っていた兵士達に指示を送るのであった。







***







 それから数十分後、城の前には約百万人の国民が詰め掛けていた。



 “犯罪者達が突然暴れ出しているのよ!!?”



 “リリヤ女王が裏切ったというのは、本当なのか!!?”



 “いったい何がどうなってんだ!!?”



 国民は答えを求めていた。突然の犯罪者達による暴動、リリヤ女王が裏切ったという噂。場は混乱を極めていた。



 「どうする? 下手すれば、全国民からリンチを受ける事になるぞ?」



 その様子を、門の隙間から伺っていた真緒達。



 「その時はその時です。力ずくで、納得して貰います」



 「力ずくって……勇者ともあろう人がそんな事、言って大丈夫なんですか?」



 「まるでハナコみたいだな」



 「分がりやずぐで良いだぁ」



 「あはは……じゃあ行こうか」



 覚悟を決め、真緒は門を開いて国民の前に出た。すると、騒がしかった国民が一瞬で静かになった。



 「……皆さん、聞いて下さい!!」



 約百万人の国民に注目され、緊張する真緒。発した声が震えていないのが、奇跡だった。



 「今、この国で何が起こっているのか。皆さん、気になっている事だと思います。それをご説明させて頂きます!!」



 心臓の鼓動が早い。早過ぎて痛いとすら感じる。自分の説明が、全国民の今後を左右するのかと思うと、不安と緊張から吐き気すら覚えた。



 「結論から申し上げるに、皆さんが耳にしている噂は全て事実です!!」



 その言葉によって、再び場が騒がしくなり始めた。



 「リリヤ女王はカルド王国を裏切りました!! そして今現在、約三十万人のゴルド帝国の軍隊がこちらに向かって進軍して来ています!!」



 火に油を注いだ。不安と恐怖に駆られた国民が、今にも暴れ出しそうだった。



 「皆さん、落ち着いて下さい!!」



 “おいおい、どうする!!? どうするんだよ!!?”



 “カルド様も、シーリャ様も、リリヤ様もいない。もうこの国はおしまいだ!!”



 “皆、皆、死ぬのよ!!!”



 最早、真緒の言葉は国民にはとどいていなかった。国の終わりに嘆き悲しみ、死ぬ運命に絶望していた。



 「……ハナちゃん、お願い」



 そんな国民の様子に、真緒はハナコに目配せする。するとハナコは両手を鋼鉄に変化させ、勢い良く両手を叩いた。







         カーン!!!







 高音で無機質な音が鳴り響いた。その音に反応する様に、それまで泣き喚いてた国民が静まり返った。



 「皆さん、落ち着いて下さい。私達が今すべき行動はたった一つ、安全な場所に避難する事です」



 “安全な場所? 戦わないのか!?”



 「勿論、戦います。ですが、その前に皆さんを安全な場所に避難させないといけません」



 “そんなの必要無い!! 俺達も一緒に戦うぞ!!”



 「心遣いは嬉しいですが、皆さんの助けは要りません。無駄死には、なるべく少ない方が良い」



 “無駄死にだと!? 私達では役に立たないと言うのか!?”



 その時、一緒に戦うぞと述べた者の足元に一本の矢が打ち込まれる。



 “ひぃ!!?”



 打ち込まれた矢を見て、小さな悲鳴を上げながら尻餅を付いた。空を見上げると、フォルスが空中を飛びながら弓を構えていた。



 「今の攻撃が見えない様なら、話になりません。素直に避難して下さい」



 “わ、分かった……”



 “でも、いったい何処に避難すると言うのですか!?”



 「皆さんが避難する場所は……“魔王城”です」



 その言葉に、全国民が息を飲んだ。



 “魔王城だって……ふざけるな!!”



 「ふざけていません。私は本気です。本気で皆さんを魔王城に避難させるつもりです」



 “そんなの無理に決まってるだろ!!”



 「何故? 何故無理だと思うんですか?」



 “魔族は人間の敵なんだぞ!! 避難なんかしたら、逆に殺されちまう!!”



 「確かについ最近まで、魔族は人間の敵だと言われていました。ですが、そんな認識はもう過去の物です。今は互いに協定を結び、手を取り合うと約束しています。皆さんもご存知の筈です」



 “それはそうだが……魔族達が約束を守る訳無い”



 「どうしてそう頭から決めつけるんですか? どうして信じようとしないんですか? 他人を信じようとしない人が、他人から信じて貰える訳がありません」



 “…………”



 「皆さん、不安なのも分かります。でも一度で良い、信じて下さい。私は魔王と親しい関係です。きっと皆さんを匿って下さるでしょう」



 “…………”



 「お願いします。どうか私を……魔族の人達を信じて下さい。一緒に避難して頂けないでしょうか!!!」



 “…………”



 全国民に深々と頭を下げて願い出る真緒。一秒、二秒、三秒と時間が過ぎて行く。失敗かと思われた次の瞬間!!







         パチパチパチ……







 「!!!」



 一人の少年が拍手を送った。少年に続くかの様に、次々と国民が真緒に拍手を送り始めた。そして遂には、全国民が真緒に対して賛成の拍手を送った。



 「ありがとう……ありがとうございます!!」



 気が付くと、真緒の目から涙が流れていた。それは安堵の涙か、はたまた嬉しさから来る涙なのか。



 「それでは皆さん、一緒に魔王城へと避難しましょう!!」



 “おぉ!!!”



 真緒の掛け声と共に、約百万人の国民が一斉に魔王城へと、避難を開始するのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ 主人公はあまり戦ったりはしません。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする

楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。 ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。 涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。 女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。 ◇表紙イラスト/知さま ◇鯉のぼりについては諸説あります。 ◇小説家になろうさまでも連載しています。

処理中です...