笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
131 / 275
第七章 冒険編 大戦争

真緒パーティー VS 実験体M-005(前編)

しおりを挟む
 「クラウドツリーで戦ったと言えば、魔食の事だろうけど……」



 「どうしてそんな物をヴォイスさんが持っているんですか!?」



 「知りたいですか? それは遡る事、丁度一年前。我らが大司教エイリス様は、神であるエジタス様の事について調べていました。そんなある日、エイリス様はエジタス様が使っていたであろう秘密の隠れ家を発見しました。そこでエジタス様の日記……そして実験途中だった魔食のサンプルを手に入れたのです!!」



 「秘密の隠れ家……そんな所があっただなんて……」



 「そんな場所を私達よりも先に見つけた大司教エイリス……いったい師匠とは、どう言う繋がりなのでしょうか?」



 「それらを持ち帰ったエイリス様は、ヘッラアーデの魔法研究部門に魔食のサンプルを手渡し、更なる改良を施しました。結果、生まれたのがここにいる実験体M-005……という事です」



 ヴォイス司教の言葉に反応を示すかの様に、うにょうにょと怪しく蠢いた。



 「まさかあの魔食と再び相見える事になるとは、思いもしてなかったよ」



 「以前、ハナコさんが魔王城で戦ったという魔食も、あんな見た目でしたか?」



 「うーん……何だが、違う気がずるだぁ。オラが戦っだ魔食は、見境無ぐ襲い掛がっで来る狂暴な奴だぁ。ごんなに大人じぐは無がっだだぁ」



 今もうにょうにょと蠢くだけで、真緒達目掛けて襲い掛かって来る気配は感じられなかった。



 「さて、お喋りはここまで……そろそろ始めさせて頂きましょうかね。M-005、目の前にいる三人を殺しなさい!!」



 「「「!!!」」」



 ヴォイス司教が命令を下した瞬間、うにょうにょと蠢くだけだった実験体M-005は、真緒達目掛けて猛進し始めた。



 「あれに触れぢゃ、駄目だぁ!! 少じでも触れだら、MPを吸い取られでじまうだぁ!!」



 「成る程、基本的な能力は魔食と大して変わらないという事ですね。それなら……“ウインド”!!」



 そんな中、リーマが魔導書を開き、魔法を唱えると、目の前に風の渦が生成された。



 「そして……“ウォーター”!!」



 続けて、風の渦に水を流し込んだ。渦の中を水が高速で回転し始める。



 「リーマ!! 危ない!! 避けて!!」



 リーマがあれこれと準備している間、実験体M-005は目の前まで迫って来ていた。真緒が危険を知らせようと大声を上げた。



 「まだです……引き付けて……引き付けて……今です!!」



 当たる直前、真横に回避したリーマ。猛進していた実験体M-005は、リーマが生成した水入りの風の渦に勢い良く突っ込んだ。その瞬間!!



 「こ、これは!!?」



 「魔食が……“凍った”!?」



 実験体M-005の全身を巨大な氷が包み込んだ。それにより、動きが完全に停止した。



 「どうですか? 風属性魔法と水属性魔法の合体魔法。名前を付けるとするなら……“アイスロック”!!」



 「いつの間にこんな凄い魔法を!!?」



 「今回の旅で色々な事を学びました。ロストマジックアイテムという人知を越えた道具。私の中で、魔法という分野の幅が広がった様に感じました。そんな私の成長の証が、これなんです!!」



 「圧巻だぁ……あの魔食を一撃で倒じでじまうだなんで、驚ぎだぁ……」



 「ふふっ、魔食は空気中に漂っているMPの粒子を吸収し続けている限り、死ぬ事が無いと言われていますけど、こうして氷付けにしてしまえばMPを取り込む事は出来ません」



 「さて、とっておきの切り札が倒されてしまったけど……どうする? まだやる?」



 完全勝利。勝利の余韻に浸かる真緒達は、余裕の表情を浮かべながらヴォイス司教に問い掛けた。



 「全く……そうやって勝手に結論付けるのは、少々早計だと言えますよ?」



 「いったいどう言う……っ!!?」



 その時、パキッという何かが割れる音が聞こえた。嫌な予感を覚えた真緒達は、ゆっくりと音のした方向に顔を向けた。するとそこには、氷の牢獄を内側から破壊して自由になった実験体M-005がいた。



 「そ、そんなあり得ません!!! まだ充分にMPを吸収出来ていない筈……それなのにどうしてあんな活発に動けるんですか!!?」



 完全に封じ込めたと思っていた分、その自信が打ち崩され、中々目の前の現実を受け入れられなかった。



 「これまでの魔食と思って貰っては困ります。実験体M-005は、他に類を見ない全く新しい兵器なのですよ」



 「くっ、それならもう一度凍らせるだけの事です!!」



 「そうはさせませんよ!!」



 再び魔法を唱えようとするリーマ目掛けて、ヴォイス司教が斬り掛かった。



 「きゃあ!!!」



 「リーマ!!」



 「今、助げるだぁ!!」



 「あなた達は実験体と遊んでいて下さい!!」



 「「!!?」」



 ヴォイス司教が手を振るうと、実験体M-005が二人目掛けて猛進し始めた。



 「ぐっ……邪魔しないで!!」



 三十人近くの死体が寄り集まった巨体が、華奢な体つきの真緒に勢い良くぶつかった。そんな中、咄嗟に剣を押し当て、吹き飛ばされない様、耐えて見せた。



 「マオぢゃん!! スキル“インパクト・ベア”!!」



 ハナコの強烈な一撃が、実験体M-005の横っ腹に直撃した。勢い良く吹き飛ばされ、そのあまりの衝撃から空中分解を起こし、空から複数の死体が落ちて来た。



 「ありがとうハナちゃん」



 「大丈夫だがぁ!? MPはどれ位吸われだだぁ!!?」



 魔食に触れられたら最後、MPを根こそぎ吸い取られてしまう。一瞬だったとはいえ、魔食に触れてしまった真緒を心配するハナコ。



 「えっ!? あっ!? えっと……何とも無いみたい……?」



 体の感覚を確かめる真緒だったが、これといって変化は見られなかった。



 「本当だがぁ? 無理じでないだがぁ?」



 「本当に大丈夫だよ。運が良かったみたい」



 「…………」



 「それよりも、早くリーマの援護に向かわないと!!」



 「わ、分がっだだぁ!!」



 体に変化は無いと分かると、二人は急いでヴォイス司教と交戦しているリーマの援護へと向かった。



 「“炎の槍”!!」



 「くっ……まさか魔法使いが接近戦にも長けているとは……驚きました」



 一方、リーマは燃え盛る槍型の炎を生成し、ヴォイス司教と真っ向から渡り歩いていた。



 「あなたも随分と戦い慣れているじゃありませんか」



 「ヘッラアーデには二種類の人材が存在します。戦闘向きと非戦闘向き、私は前者だった。それだけの話ですよ」



 「そう言えば、ヘッラアーデの人材はレッマイルから募集しているんでしたね」



 「えぇ、そもそもヘッラアーデは神であるエジタス様を崇める為の宗教国家。中には一般人だっています」



 「そんな人達を危険な事に巻き込んで……罪悪感は無いんですか」



 「罪悪感? 神に仕える事が出来るのに罪悪感などありましょうか? 寧ろ、その身を捧げられて感謝している筈ですよ」



 「あなたに聞いたのが間違いでした。これ以上、ヘッラアーデの更なる犠牲者が増えない為にも、必ず倒して見せます!!」



 「それはこちらの台詞……人々の希望を奪う背徳者め……ここで成敗してくれる!!」



 ぶつかり合うナイフと炎の槍。互角に思える攻防だったが、徐々に炎の槍がナイフを溶かし始めた事で戦況が変わり始めていた。



 「もう諦めたらどうですか? 明らかに力不足です」



 「はぁ……はぁ……煩い……私はヘッラアーデ13支部の司教なんです……例えこの命が散ろうとも、あなた達を倒さなければならないのです」



 「ヴォイスさん……」



 「リーマ!! 大丈夫!?」



 「リーマぢゃん、大丈夫だがぁ!?」



 「あっ、マオさん、ハナコさん!!」



 更にここで、真緒とハナコの二人と合流を果たした。最早、ヴォイス司教に勝ち目は無くなった。それなのに何処か涼しげな表情を浮かべていた。



 「実験体はどうしました?」



 「倒したよ、ここにいるハナちゃんがね」



 「…………」



 一方、ハナコ本人は浮かない表情を浮かべていた。



 「それはそれは……では、あなた達の後ろにいるのはきっと見間違いなのでしょうね」



 「「「!!?」」」



 真緒達が慌てて振り返ると、そこには倒した筈の実験体M-005が散らばった死体をかき集め、再び形を保ち始めていた。



 「そんな……確かに倒した筈なのに……いったいどうして!?」



 「魔食と同じ性質を持つ実験体M-005。MPがある限り、決して死ぬ事は無いんですよ!!」



 「このままじゃ、いつまで経ってもフォルスさんを追い掛けられません。どうしましょう……」



 「でもだからって、このまま無視出来る程、甘くは無いと思う……」



 「…………」



 「さて、続けるとしましょうか。先にどちらが倒れるか」



 そうして真緒達は、ヴォイス司教と実験体M-005による足止めで、思いの外時間を取られてしまうのであった。















 「……可笑じいだぁ……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

処理中です...