笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第七章 冒険編 大戦争

真緒パーティー VS 実験体M-005(後編)

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 「可笑しいって……何が可笑しいの?」



 両者睨み合いが続く中、ハナコの可笑しいという発言が気になった真緒は、目線をずらさずに声を掛けた。



 「いや、オラが前に戦っだ奴どは、全然違うんだぁ」



 実験体M-001。かつてハナコが亡きアルシアと供に協力し合い、何とか倒す事が出来た相手。今回、同じ実験体という事から、過去で得た知識を活用しようとしたが、実験体M-005の動きは全く異なる物であり、ハナコは酷く混乱していた。



 「それは当然じゃないんですか? ハナコさんが戦ったのは“001”、私達が今戦っているのは“005”、あの時よりも強くなっていても不思議じゃありません」



 「うーん、ぞう言う訳じゃないだぁ」



 「どう言う意味?」



 「何で言うんだがなぁ……強ぐなっでいるどいうよりも、寧ろ弱ぐなっでいる気がずるんだぁ」



 「「弱く?」」



 ハナコの言う通り、実験体M-005は001と比べても、かなり弱くなっていると印象深かった。



 「触手を伸ばじだり、形を自由自在に変形ざぜだり、長所と呼べだ物を全然使っで来ないだぁ」



 「まだ使って来ていないだけじゃありませんか?」



 「だどじでも、物理攻撃が効ぐのは明らがに可笑じいだぁ」



 「そう言えばそうかもしれませんね……」



 実験体の最大の特徴。スライム状に改造された魔食は、物理攻撃を一切無効化していた。それにより、魔食の唯一の短所が無くなっていた。しかし、今回の実験体はハナコの“インパクト・ベア”をまともに食らっていた。端から見ても明らかな弱体化と言えた。



 「ぞれに死体に取り付ぐのも妙だぁ」



 「それは私も可笑しいと思った。魔食は空気中のMPを吸い取るから、死体みたいな媒体は必要無いと思うんだ」



 「もしかして、あの死体に何か意味があるのかもしれません」



 睨み合いによる膠着状態が続く最中、実験体M-005は死体の山でうにょうにょと怪しく蠢いていた。



 「……ちょっと確かめたい事があるんだけど……」



 いくら考えても疑問は膨らんでいくばかり、そんな時真緒が二人にある提案を持ち掛けた。



 「…………と思うんだけど、どう?」



 「良いですね、試してみる価値は充分あると思います」



 「オラも賛成だぁ」



 真緒の作戦に乗り気な二人。



 「それじゃあリーマは魔法でヴォイスさんの気を引いて。さっきの攻防みたいに」



 「分かりました」



 「その間に私とハナちゃんで、試してみるよ」



 「任ぜでぐれだぁ」



 双方の確認が取れた所で呼吸を整え、作戦開始の合図を叫ぶ。



 「よし、作戦開始!!」



 「おやおや、何か思い付いた様ですが、何をしようがこの兵器には敵わないのですよ」



 「そんなのやってみなければ、分からないでしょうが!! “炎の槍”!!」



 真緒の合図を切っ掛けに、一斉に走り出した三人。そんな中、リーマは右手に燃え盛る炎の槍を生成すると、一人でヴォイス司教に戦いを挑んだ。



 「くっ、またあなたですか!? いい加減、しつこいですよ!!」



 「それはお互い様という物です!! “水の盾”!!」



 「!!?」



 ヴォイス司教の攻撃が繰り出される瞬間、リーマは左手に分厚い水の盾を生成し、受け止めた。



 「武器だけでなく盾も生成するとは、ズルいですね」



 「魔法使いの魔法に、ズルいなんて言葉はありません!!」



 ヴォイスがリーマとの戦闘に夢中になっている一方、真緒とハナコの二人は実験体M-005と対峙していた。



 「スキル“ロストブレイク”!!」



 真緒が放った渾身の一撃は、見事に実験体M-005を捉えた。勢い良く吹き飛ばされ、寄せ集まった死体が再び空中分解を起こした。



 「ハナちゃん!! 今だよ!!」



 「了解だぁ!!」



 するとハナコが散らばった死体を抱き抱え、更に遠くへと投げ飛ばした。



 「まだまだ行ぐだぁ!!」



 次々と死体を抱き抱えては、遠くへ投げ飛ばした。そんな中、実験体M-005がまだ投げ飛ばされていない死体に取り付き始めていた。しかし、ハナコの行動によって先程よりも小ぶりになっていた。



 「ハナちゃん!! そっちに向かってるよ!!」



 死体の処理に夢中になっているハナコ目掛けて、実験体M-005が猛進していた。



 「スキル“鋼鉄化”!!」



 当たる瞬間、ハナコは自身の体を鋼鉄に変化させた。それにより実験体M-005は、鋼鉄にその身を突撃させ、文字通り体がバラバラとなってしまった。



 「ナイス!! 今の内に手分けして投げ捨てちゃおう!!」



 ハナコの機転のお陰で、死体が四方八方に飛び散った。それを好機と判断した真緒はハナコと一緒に、次々と死体を抱き抱えては遠くに投げ捨てた。



 「はぁ……はぁ……結構重労働だね」



 「……後、何体残っでいるだぁ?」



 「えっと……残り二体だけみたいだよ」



 気が付けば、死体は残り二体まで減っていた。そしてその二体は、既に実験体M-005が取り付いている状態であった。しかしその動きは非常に遅く、乳児の移動と大差無かった。



 「思った通り、あの魔食は死体のMPを吸い取って活動してるみたいだね」



 「代わりに、空気中のMPが吸えなぐなっでいだんだぁ」



 これまでの不可解な行動から、真緒達は実験体M-005が死体を媒体に動いているのではないかと仮説を立てた。その真意を確かめる為、真緒とハナコの二人は取り付いていた大量の死体を引き剥がしていたのだ。そして結果はご覧の通り、最早使い物にならない兵器が目の前にあった。



 「この事実にもっと早く気付いていれば、無駄足を踏まずに済んだのにね」



 「オラが思い出ずのが遅がっだがら……」



 「何言ってるの、ハナちゃんのせいじゃないよ。寧ろ、思い出してくれたお陰で、こうして逸早く対処出来たんだよ」



 「マオぢゃん……ぞう言っでぐれるど、嬉じいだぁ」



 真緒とハナコが談笑している中、未だに二人を倒そうと近付いて来る実験体M-005だが、勢いの無い動きでは倒すどころか、かすり傷一つも与えられない。



 「さて、向こうでリーマも待っているだろうし、決着を付けようか」



 「ぞうだなぁ、どうぜなら最後は二人一緒に叩ぎ込むだぁ」



 「良いね、久し振りの合体攻撃だね」



 ノロノロと近付いて来る実験体目掛けて、攻撃の構えを取る真緒とハナコ。



 「いつでも良いよ」



 「行ぐだよぉ、マオぢゃん……スキル“インパクト・ベア”!!」



 「!!!」



 ハナコの強烈な一撃は、真緒の背中へと放たれた。勢い良く吹き飛ばされた真緒は、その勢いのまま目の前の実験体に攻撃を仕掛ける。



 「はぁあああああ!!! スキル“ロストブレイク”!!」



 放たれた一撃は、死体ごと実験体M-005を貫通した。風穴が空いた状態になりながらも、うにょうにょと怪しく蠢いていたが、やがて静かにその動きを止めた。



 「やっだだぁ!! マオぢゃん!! オラ達の大勝利だぁ!!」



 「ふぅ……久し振りのハナちゃんの一撃にはビックリしたけど、無事に倒せて良かった」



 「ぞれにじでも、ごんな敵がゴルド帝国に何体もいるのがなぁ?」



 「(言われてみれば確かに……ヴォイスさんの話では、この実験体も元々は師匠が改造した物を更に改造した物だって言うし、量産されていても可笑しくはない)」



 魔食の大量生産。これからゴルド帝国に乗り込もうとしている真緒達にとっては、最大の障害になると言える。



 「よし、今すぐ聞きに行こう」



 万が一この予想が事実だとしても、事前に情報を手に入れていれば、対策はいくらでも可能だ。真緒達はヴォイス司教と戦っているリーマの元へと急いだ。







***







 「ふぅ……中々しぶとかったですけど、これで一安心です。マオさん達の方は大丈夫でしょうか?」



 「リーマ!!」



 「リーマぢゃん!!」



 リーマが真緒とハナコの安否を心配していると、丁度二人が戻って来た。



 「あっ、マオさん、ハナコさん!! どうでしたか!? 上手く行きましたか!?」



 「うん、バッチリだよ!!」



 「作戦成功だぁ!!」



 「それは良かったです。こっちも丁度終わった所です」



 「そうそう、ヴォイスさんに聞きたい事があるんだけ……どぉ!!?」



 二人は目を疑った。丁度終わったと豪語するリーマの目の前には、“氷付け”のヴォイス司教がいたのだ。



 「リーマ……これは?」



 「やはりヘッラアーデの司教だけあって、中々粘りまして。動きを封じようと“アイスロック”を唱えたんですけど……思った以上に効いてしまいまして……」



 「これじゃあ、今すぐ聞き出すのは難しそうだね……仕方無い、大量生産されていない事を願いつつ、フォルスさんの後を追い掛けよう」



 「ぞうだなぁ……」



 「うぅ……すみません……」



 リーマが頑張り過ぎた結果、何も聞き出す事が出来なくなってしまった真緒達は、先にゴルド帝国へと向かったフォルスの後を追い掛けるのであった。
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