笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第七章 冒険編 大戦争

ゴルド帝国

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 ヴォイス司教を倒した真緒達は、先に向かったフォルスの後を追い掛けた。やがて目の前には、高い塀で囲まれた巨大な入口に辿り着いた。



 「もしかして……ここが……」



 「はい、ここが西の大陸で最も巨大な国家、“ゴルド帝国”です」



 「大ぎいだぁ……」



 外界の情報を一切受け入れない姿勢を見せる高い塀と、その周りを厳重に警備する兵士達は、正に圧巻であった。



 「それで……肝心のフォルスさんは?」



 「そう言えば……姿が見えませんね……?」



 辺りを見回すが、それらしい人影は何処にも見当たらなかった。



 「もしかして、先に中に入っちゃったとか?」



 「あり得ますね。特にフォルスさんなら、空中から自由に出入り出来ますから」



 「ぞれじゃあ、オラ達も早ぐ中に入るだぁ」



 「ちょっと待って!!」



 既に中へ侵入したと思われるフォルスの後を早く追い掛けようと、先を急ぐハナコを真緒が慌てて引き留めた。



 「このまま行くのは不味いよ」



 「どうじでだぁ?」



 そんな真緒の発言にハナコは意味が分からず、首を傾げた。



 「恐らく、この国の国民は全員もれなくヘッラアーデの息が掛かった人間だと思う」



 「そうなると私達に関する情報が知れ渡っていても、可笑しくありませんね」



 「うん、もしこのまま正面から乗り込めば、十中八九全国民から袋叩きに合う」



 「ぞれなら、一体どうずるだぁ? 塀の周りには兵士がいで、登るのは不可能だ」



 「……皆、覚えてる? 前に魔族の街に潜入した時の事……」







***







 ゴルド帝国入口。巨大な門がそびえ立ち、その前には全身鎧に身を包んだ屈強な兵士二人が警備を行っていた。今日もいつも通り門の前で立っていると、フードを被った怪しい三人組がこちらに近付いて来た。



 「止まれ、貴様らは何者だ?」



 当然、兵士二人は持っていた槍を三人組の前で交差させ、通行止めをした。素性が分からない者を簡単に通す訳には行かないからだ。



 「私達は旅の者です。今晩、この国の宿で一泊しようかと寄った次第です」



 「旅の者だって? 何処から来た?」



 「東の大陸にある小さな村からでございます」



 「東の大陸だと? 東の大陸の者がわざわざこの西の大陸までやって来たのか?」



 「はい、もう東の大陸は充分巡ったので、今度はこの西の大陸を旅しようかと……」



 「……荷物は? 馬などはいないのか? まさかその身一つで旅しているなどと言わないだろうな?」



 「お恥ずかしい話、馬は野盗に奪われてしまい、荷物も馬に乗せていましたので……今はこの身一つでございます」



 「そうか……それは災難であったな」



 あり得ない話では無かった。西の大陸は東の大陸と比べて治安が悪い。積み荷が襲われたなどの話は、よく耳にする。



 「所で後ろの二人は何者だ?」



 「はい、私の連れでございます。旅するにも一人というのは寂しいので……」



 「何故、何も喋らない?」



 「疲れているのです。足を奪われ、ここまで歩き続けてきました。一秒でも早く休みたいのです」



 「成る程……」



 「どうか、中に入れては頂けませんでしょうか?」



 両手を合わせ、懇願する。そんな様子に兵士二人は顔を見合わせる。



 「……どうする?」



 「このまま見捨てて野垂れ死にされても、目覚めが悪い。それにいつもエイリス様が仰っている。『困っている者を笑顔にしなさい』っと……」



 「そうだな……よし、通って良いぞ」



 「ありがとうごさいます。ありがとうごさいます」



 通行の許可が下りた事に、何度も頭を下げる。そしてそのまま、そそくさと中に入ろうとする。



 「おっと、その前にフードを取って顔を見せて貰おうか?」



 「……えっ?」



 が、入る前に顔を見せろと迫られてしまった。



 「悪いが、今ゴルド帝国は厳重警戒体制でな。いつも以上に入国の制限が厳しくなっているんだ」



 「何でも、東の大陸のカルド王国からあの勇者達がこの国に乗り込もうとしているらしい」



 「な、何の為に?」



 「さぁ? 俺達は只、見つけたら報告しろと命じられているだけだ」



 「勇者でも無い限り大丈夫だ。だから安心してフードを外して、顔を見せて貰えるか?」



 「…………」



 振り返り、後ろ二人に目配せすると三人組は一斉に被っていたフードを外し、その顔を兵士二人に見せた。



 「「…………」」



 それは話に聞いた勇者達の顔とは、似ても似つかない顔だった。一人はかなり強い天然パーマで目元が隠れた女性で、一人は恰幅の良い中年おばさん、一人は金髪ロングヘアーの女性だった。



 「……開門!!」



 兵士の一人が声を張り上げたかと思うと、巨大な門がゆっくりとひとりでに開き始めた。



 「通って良いぞ」



 「ありがとうごさいます。それでは失礼します」



 そう言いながら、三人組は足早に中へと入った。







***







 無事にゴルド帝国に入った三人組。入るや否や、建物の物陰に身を隠した。そして指に嵌めていた指輪を外すと、忽ち三人組は真緒、ハナコ、リーマの三人へと変わった。



 「やった、上手く侵入出来た」



 「やっだだなぁ、マオぢゃん」



 「リーマが念の為、指輪も嵌めておこうって言ってくれたお陰だよ」



 「バレないかひやひやしましたよ」



 真緒達が変化した姿は、一度ヘッラアーデに知られている。もし、その情報までも知れ渡っていたとしたら、真緒達はゴルド帝国に侵入する事は出来なかっただろう。



 「でも、ここからは更に気を引き締めて挑まないと」



 「ですね。指輪の効果時間も頭に入れながら、進みましょう」



 「分がっだだぁ」



 再び指輪を嵌め、先程の姿に変化する。そして怪しまれない様、真ん中の道を歩いて行く。



 「取り敢えず、まずは先にフォルスさんと合流しよう」



 「そうですね、でも一体何処に……?」



 フォルスの行方を探す真緒達。そんな時、国民の様子が慌ただしい事に気が付いた。



 「何やら騒がしいですけど、何かあったんでしょうか?」



 よく見ると、全員同じ方向に走っていた。



 「向こうで何かあるんでしょうか?」



 「もしかしたら、そこでフォルスさんと会えるかもしれない。行ってみよう!!」



 人が集まれば、フォルスとも再会しやすい。真緒達も他の国民と同じ方向に走り始めた。







***







 「ここは……広場なのかな?」



 真緒達が向かうと、既にかなりの人だかりが出来上がっていた。円形状に作られたその場所はかなり広く、あらゆる方向に行ける様、道が分かれていた。



 「それにしても凄い人……何か祭りでもあるのかな?」



 「何だい、あんた達知らないのかい? これから催しが執り行われるのさ」



 想像以上の人数に圧倒されていると、国民の一人が声を掛けて来た。



 「催しって一体何ですか?」



 「処刑さ」



 「「「しょ、処刑!!?」」」



 まさかの言葉に、真緒達は思わず大声を上げてしまった。



 「この国では、罪を犯した大罪人が民衆の前で懺悔しながら首を斬られるのさ。そうする事で、これまでの罪を洗い流し、心置き無く天国に旅立てるのさ」



 「そ、そうなんですか……」



 あまりに恐ろしい風習に、真緒達は引いていた。罪人とはいえ同じ人間が目の前で死ぬ光景に、これだけの見物人が集まるとは。しかし、だからと言って可笑しいと思ってはいけない。世界中を旅して来た真緒達だからこそ、この国にとってはそれが当たり前の事なのだと理解しており、決して否定はしない。



 「特に今回の処刑は今までとは違って、大物が処刑されるらしい」



 「大物……何処かの貴族とか王族ですか?」



 「いや、どうやら勇者一行の一人らしい」



 「「「!!?」」」



 今度は最早、言葉にすらなら無かった。勇者一行の一人となれば、それはフォルス以外あり得なかった。



 「何でも勇者一行は、大司教様の命を狙っているらしい。それでついさっき、その内の一人を捕らえたらしいんだ」



 「そ、それでその人は今何処に!!?」



 「そりゃあ今頃、城の牢屋だろう」



 「ありがとうごさいます!!」



 「あっ、おい、ちょっと!!」



 フォルスの居場所を聞き出した真緒達は、引き留める声を振り切り、大慌てでゴルド城へと向かうのであった。
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