笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第九章 冒険編 蘇る英雄達

変幻自在の槍使いマントン

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 目を覚ますとそこには、道化師が一人立っていた。戦場で華々しく散った筈の俺の体は元通りになっており、そして何よりも数十年分若返っていた。最も力を行使していたあの頃に。



 理想国家の設立。道化師が語った真なる平和を目指した計画に関して、正直俺は全く興味が湧かなかった。しかし好きに暴れ回って構わない。責任は全てこちらが持つと言われ、俺は道化師の計画に乗る事にした。



 更に道化師はこうも言った。『残念ながら、あなたが生きた時代よりも人々は弱くなりました。ですがきっと近い内に、あなたが望む血肉が踊る戦いが出来ると思いますよ』と……。



 道化師の言う通り、この時代の人々の戦闘能力は著しく低下している様だった。こんな世界で本当に血肉が踊る様な戦いが出来るのか、半信半疑だった。しかし今……俺は……。



 「(血肉が踊る戦いをしている!!!)」



 マントンは、炎を纏わせた槍を真緒目掛けて勢い良く突き出す。真緒はその突きを回避し、逆にカウンターを狙うが、マントンは凄まじい跳躍力で後方に跳び、距離を取った。



 「今だ!!!」



 「!!?」



 フォルスの掛け声と共に、マントン目掛けて一斉に攻撃が開始される。上空からはフォルスの矢、真横からはリーマの“ウォーターキャノン”、そして背後からエレットの電撃攻撃。



 「……“チェンジ”」



 すると突然、マントンが懐から“風”と刻み込まれた一枚のメダルを取り出し、槍に取り付けられている“炎”と刻み込まれたメダルと交換した。その瞬間、槍の先端を纏っていた炎が消え去り、代わりに風を纏い始めた。



 「うらぁあああああ!!!」



 「「「ぐっ……ぁああああ!!!」」」



 マントンが風を纏った槍で周囲を薙ぎ払うと、その周辺を突風が襲った。それによりフォルス、リーマ、エレットの三人は吹き飛ばされてしまう。



 「甘い甘い。そんなんでこの俺を倒そうだなんて……二百年位、早いねー」



 「くそっ、何なんだ今のは……」



 「さっきまで“炎”を纏っていたのに……今は“風”を纏っている……いったいどういう事ですか!?」



 「ぞんなのどうでも良いだぁ!! 今度はオラが相手だぁ!!」



 「あっ、ちょ、ハナコさん!! 考え無しに飛び込むのは危険です!!」



 リーマの制止を振り切り、ハナコは単身でマントンにアタックを仕掛ける。



 「うーん、バッド……たった一人で挑んで来るとは何て無謀な」



 そう言うとマントンは槍を一振りし、迫り来るハナコ目掛けて風の刃を飛ばした。



 「スキル“鋼鉄化”!!!」



 それと同時にハナコは全身を鋼鉄に変化させた。飛んで来た風の刃は、ハナコの鋼鉄の体に弾かれ、傷一つ付く事は無かった。



 「思った以上に硬いな……それなら……」



 すると今度は“水”と刻み込まれたメダルを取り出し、槍に取り付けられている“風”と刻み込まれたメダルと交換した。その瞬間、槍の先端を纏っていた風は消え去り、代わりに水の入った泡が纏わり付いた。



 「そら、溺れ死ぬが良い!!」



 「!!?」



 マントンが槍を鋼鉄に変化したハナコ目掛けて突き出すと、槍の先端を纏っていた水の入った泡が、瞬く間にハナコの全身を包み込んでしまった。



 「……!!! ……!!!」



 慌てて鋼鉄化を解除するも、抜け出す事が出来ない。空気の無い水の中。ハナコはもがき苦しむ。



 「ハナちゃん!!!」



 「待ってろ、今助ける!!」



 フォルスが水の入った泡を割ろうと矢を数本放つが、泡は割れる事無く放たれた矢を優しく包み込んでしまった。



 「な、何!!?」



 「無駄だ。この泡はちょっとやそっとの衝撃じゃ割れない」



 「そんな!!? ハナちゃん!!」



 「……!!! ……!!!」



 呼吸が出来ず、もがき苦しむハナコ。必死に暴れるが、体力の無駄遣い。意識が朦朧とし、段々と動きが遅くなり始める。



 「だったら私が直接!!!」



 ハナコを助けようと真緒が走り出す。間合いを詰めて、マントン目掛けて剣を振るうが、既に太刀筋を見切られてしまっているのか、意図も簡単に避けられてしまう。



 「この!!! この!!!」



 「おぉ、怖いねー。けど、そんな怒り任せの剣さばきでこの俺を捉えられると思ったら大間違いだ……ぞ!!!」



 「ぐっ!!!」



 剣を振ったタイミングに合わせて、マントンは真緒の顔面にカウンターのキックを叩き込む。真緒は鼻血を流しながら、仰向けに倒れる。



 「くそっ!!!」



 「何度来ても無駄だよ。お前らと俺じゃあ、実力も経験も格が違うのさ」



 「それはどうかな?」



 「何っ!!?」



 するといつの間にか、マントンの背後からサタニアが姿を現す。



 「“シャドウロック”」



 「こ、これは!!?」



 サタニアが手から黒い針の様な物を生成したかと思うと、マントンの影に突き刺した。するとマントンは、その場から一歩も動けなくなってしまった。



 「これでもう君は動けない」



 「ふざけるな!!!」



 マントンは苦し紛れに槍を持っていない左手でサタニアを殴ろうとするが、勿論当たる訳が無い。



 「マオ、いつまで寝っ転がってるつもり? 仲間を助けるんでしょ」



 「……サタニア、ありがとう……今度は外さない」



 リーマの肩を借りて、ゆっくりと立ち上がる真緒。鼻血を拭き取り、剣を片手に走り出す。



 「あ、ありえない!!! こんな小僧達なんかに、この俺が負ける筈が無いんだ!!!」



 「はぁあああああ!!!」



 「俺は英雄だ!!! 人が成し得ない事を成し遂げた偉大な存在なんだ!!! こんな……こんなあっさり終わる筈がねぇんだ!!!」



 喚き散らすマントンは懐から“闇”と刻み込まれたメダルを取り出し、槍に取り付けられている“水”と刻み込まれたメダルと交換した。その瞬間、ハナコを捕らえていた水の入った泡は消え去り、ハナコが解放される。



 「げぼっ!!! ごぼっ!!! はぁ!!! はぁ!!! はぁ!!!」



 「ハナコ、大丈夫か!!?」



 代わりに槍の先端を黒いもやの様な物が纏わり付いた。



 「死ねぇえええええ!!! サトウマオォオオオオオ!!!」



 迫り来る真緒目掛けて槍を勢い良く突き出すが、怒りに任せて突き出された魂無き一撃。その軌道は用意に読み取れた。真緒はマントンの攻撃をあっさりと避け、超至近距離から渾身の一撃を放つ。



 「このっ!!! くそがっ!!!」



 「スキル“フィーリングストライク”!!!」



 フィーリングストライクは、感情によって威力が変化する技。ハナコが殺されかけ、怒りで一杯だった真緒から放たれた一撃は、確実にマントンの顔を消し飛ばした。



 槍から手を離し、仰向けに倒れるマントン。消し飛ばされた頭部からは血が止めどなく溢れ出ていた。



 「ふぅ……終わった……」



 「よくやったね、マオ」



 「うぅん、全部サタニアのお陰だよ。サタニアがいなかったら、きっと勝てなかったと思う……ありがとう」



 「そう言う事なら、素直に喜んでおこうかな」



 「……あっ、そうだハナちゃんは!!? ハナちゃんは無事!!?」



 ハナコの安否を確認する真緒。視線の先では既にハナコはフォルスとリーマによって介抱されていた。



 「何とか大丈夫だ」



 「マオぢゃん……心配がげでごめんだぁ……」



 「良かった……ハナちゃんが無事で本当に良かった」



 「それより真緒、奴は倒したのか?」



 「うん、多分……」



 「一応、生死は確かめておけ。一度生き返っているんだ。もしかしたら、その場でもう一度蘇るかもしれない」



 真緒は頷くとマントンの生死を確かめる。体を揺すってみたり、足で蹴ってみたりなど色々と試してみるが、それらしい反応はどれも見られなかった。



 「大丈夫、ちゃんと死んでます」



 「そうか……なら安心だな」



 「ねぇ、ちょっといい?」



 マントンとの決着が付き、一安心しているとエレットが声を掛けて来た。



 「どうかしましたか?」



 「あいつが持っていた槍なんだけど……明らかに普通じゃなかったよね?」



 「確かに……幾つもの魔法を付与させていて……あんな武器、今まで見た事がありません」



 「恐らくあの槍が、“変幻自在”と呼ばれていた理由なんだろう。あれだけの属性変化を使いこなせれば、そりゃあ英雄と呼ばれても不思議じゃない」



 「なら、さっさと回収した方が良さそうだね。遅かれ早かれ、マントンが死んだ事はエジタス達にバレてしまうだろうし……」



 「そうだね。それじゃあえっと……槍は……っ!!?」



 マントンが落とした特殊な槍を探す一同。しかし既に別の人物が拾い上げていた。その人物は何の前触れも無く、突然姿を現した。入り口から入った様子は無い。気が付いたらその場にいたというレベルで、突然現れたのだ。



 「まさかマントン君が殺られてしまうとはね……エジタス君が言った通りになってしまったよ……やれやれ」



 ほっそりとした体型にオールバックの髪型。眼鏡を掛けており、そこから伺える瞳は細目で、とても優しそうな印象の男性だった。



 「だ、誰だお前は!!?」



 慌てて真緒達が武器を構える一方、何故かサタニアだけが武器を構えず、呆然とその男性を眺めていた。



 「サタニア? どうしたの?」



 「あ……あぁ……そんな……嘘……」



 「でも良かった。こうなる事を見越してエジタス君が僕に槍の回収を命じてくれて……そのお陰でまたこうして君の元気な姿を見る事が出来た……そうだろう? サタニア」



 「お、お父さん……」



 「「「「「!!?」」」」」



 突如、真緒達の前に現れた謎の男性は亡くなったサタニアの父親であった。
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