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第十章 冒険編 反撃の狼煙
覚醒
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真緒の目の前で信じられない事が起こった。コウスケの圧倒的な実力を前に、真緒は疲弊しきっていた。最早、戦う気力さえ残されてはいなかった。
ここまでかと思ったその時、かつては味方だったが、今は敵となってしまったアーメイデが姿を現した。コウスケ一人でも手に余るというのに、もう一人の伝説的な存在とも戦わなければならない。泣きっ面に蜂とはこの事か。残酷な現実に、真緒の心は折れてしまいそうになった。
しかし、そうはならなかった。何とアーメイデは味方である筈のコウスケに向けて攻撃を仕掛けたのだ。裏切り。真緒にとってはまたと無いチャンスだが、純粋に何故という疑問が残る。
「アーメイデさん……?」
「…………」
いくら思案を巡らせても、裏切る理由が見つからない。真緒は堪らずアーメイデに声を掛ける。するとアーメイデはゆっくりとこっちを向き、倒れている真緒に向かって手をかざす。まさかここでトドメを刺すつもりか!? と、思った矢先……。
「“キュアオール”」
「え?」
何と体力を全快にしてくれたのだ。すっかり傷が癒えた真緒は半信半疑になりながらも、立ち上がる。
「どうして……?」
どうして。その言葉しか出なかった。本来ならありがとうや、助かったなどの言葉が出る筈なのだが、今回ばかりは疑問を投げ掛ける事が最優先だった。
「…………」
しかし、アーメイデは何も答えない。極力、真緒に目を合わせない様に目線を反らそうとしている。
「えっと……あの……その……」
気まずい雰囲気に、言葉が詰まる真緒。この地獄の様な時間が永遠と続くのかと思われたその時、コウスケが吹き飛ばされた先の壁で凄まじい爆音が鳴り響く。
「い、いったい何が!?」
「やっぱり……あれ位の攻撃じゃ、死なないわよね」
「いやー、まいったまいった。まさか君に攻撃されるとは、思ってもみなかったよ」
アーメイデの攻撃を食らい、腹に風穴が空いたコウスケ。だが、まるで何事も無かったかの様に平然と歩いていた。
「“キュアオール”」
そしてその傷も今や消え去った。こちらに近付いて来るコウスケに対して、アーメイデは杖を向けて、これ以上近付くなと警告する。
「ねぇ、コウスケ……さっきの話、全部本当なの?」
「さっきの話?」
「エジタスに協力してるのは、平和とか幸せとかの為じゃなくて、楽しいからって事!!」
「あぁ、何だ聞いてたのか。うん、全部本当だよ。正直、平和とか幸せとかに興味無いんだよね」
「そう……」
「まぁ、そんな事はどうでも良いからさ。悪ふざけが済んだのなら、さっさとそこのマオちゃんを倒しちゃおうよ。二人で力を合わせればきっと……」
そう言い掛けた次の瞬間、コウスケの真横を何かが物凄い速さで通り抜ける。その正体は、アーメイデが放った結晶体。鋭く尖った結晶がコウスケの頬を掠め、壁に突き刺さる。
「アーメイデ、冗談にしても度が過ぎると思うよ?」
「コウスケ……変わっちゃったね。二千年前のあんただったら、世界の平和の為、幸せの為に動いてた。なのに今のあんたは自分の私利私欲で動いてる。そんなのコウスケじゃないよ」
「…………」
「お願いだ。あの頃の……真っ直ぐだったコウスケに戻ってくれ。私が愛した誠実で勇猛果敢でお人好しだったあの頃のコウスケに……」
「アーメイデ……君は少し誤解をしている様だね」
「え……?」
「あの頃に戻って欲しいとか言ってるけど……僕は二千年前のあの頃から、何一つ変わってはいないよ」
「!!!」
アーメイデの杖を握る力が強くなる。それは当たって欲しくない予想が、当たってしまった事に対する想いの表れなのか。
「異世界で勇者と言えば、誠実で勇猛果敢でお人好しが定番。その方が感情移入がしやすいし、周りからも勇者だって言われやすいだろう? まぁ、そんな事をしなくても、打倒魔王を志す僕は紛れもない勇者なんだけどね」
「じゃああれは全部演技だったって言うのか!!?」
「演技って言うのは人聞きが悪いな。あくまでもあれは……キャラ付け? 異世界デビューとも言うのかな」
「そんな……」
「それにしても、アーメイデは僕が思った以上に“尻軽女”なんだね」
「は?」
「だってそうでしょ? 一年前まではエジタスさんの敵だったのに、死者を蘇らせる方法をちらつかせた途端、コロッと掌を返して仲間になって……と、思ったら今度は自分の愛する人が理想と違ったから裏切るだなんて……もしこれがアニメやゲームだったら、君はファンから最低最悪のビッチの称号が与えられているだろうね」
「コウスケさん!! アーメイデさんに何て事を言うんですか!? アーメイデさんは二千年間、ずっとあなたの事を……「もういい!!」……えっ?」
コウスケのアーメイデに対する非道な言動に、我慢出来なくなった真緒はアーメイデがどれだけコウスケの事を想っていたのか説明しようとするが、アーメイデ本人に遮られてしまう。
「ありがとうマオ、その気持ちだけで充分だ」
「アーメイデさん……でもこんなのって……」
「お陰で目が覚めたよ。私がすべきだった事……全く、こんなハッキリと言われないと気付けないだなんて、恋心ってのは厄介な物だね。“クリスタルチェーン”!!」
「!!!」
するとアーメイデは、杖の先から結晶体の鎖を飛ばし、コウスケの体を拘束した。
「今だ!! あの男に渾身の一撃を食らわしてやりな!!」
「は、はい!! スキル“ロストブレイク”!!」
「甘い!!」
コウスケの身動きを封じたアーメイデ。攻撃のチャンスを託された真緒は、コウスケ目掛けて渾身の一撃を叩き込もうとするが、それよりも前にコウスケは鎖を破り、真緒の一撃を弾き返して見せた。
「そんな!!?」
「そしてこれでさよならだ!!」
「させないよ!! “クリスタルシールド”!!」
渾身の一撃を弾かれ、隙だらけとなってしまった真緒。そんな真緒目掛けてコウスケの剣が襲い掛かる。しかし突き刺さる瞬間、アーメイデが結晶体の盾を真緒の前に生成し、コウスケの攻撃を防いで見せた。
「た、助かりました」
「油断しない事だね。あんなのでも、かつて初代魔王と互角に渡り合った実力者なんだから」
「はぁー、味方だった筈の仲間が裏切って敵側に付いてしまう。王道ファンタジーじゃ、中々見ない展開だ。なら、この圧倒的不利な状況を乗り越え、見事勝利を掴んで見せよう。僕にはそれが出来る!! 何故かって? 僕は世界を救う勇者で、主人公だからさ!!」
「何が圧倒的不利な状況だ……明らかにあんたの方が実力は上じゃないか。それに……いつまでその剣の力を“封印”するつもりだい?」
「えっ、“封印”?」
真緒はアーメイデの言葉に耳を疑った。あまりにも予想していなかった言葉に、思わず聞き返してしまった。
「そう言えば、言った事無かったっけ? あいつとあんたが持っているその純白の剣ってのは、真の力が解放されていない言わば封印状態の事を指すんだよ」
「え、えぇえええええ!!?」
「その力を解放出来るのは、本来の持ち主であるコウスケだけ……だから一年前は教えなかったのさ。出来ない事を教えたって意味は無いし、修行に雑念が入ると思ってね」
「そ、そうだったんですか……」
「それで? まさか私達二人相手に封印状態で戦うつもりじゃ無いだろうね?」
「ははは、勿論そんなつもりは無いよ。君が相手となると、さすがの僕でも手加減出来ないからね。スキル“解放”」
その瞬間、コウスケが持つ純白の剣が光輝く。今まで見た事が無い程の目映い光。そのあまりの眩しさに直視する事が出来なかった。やがて光は収束し、肉眼でも捉えられる様になった。が、そこにあったのは純白の剣では無かった。
青と黄色で基調された柄に、天使の翼を模した鍔があり、そこから伸びる刃は透き通っていた。言葉を呑んでしまう程の美しさ。真緒は目が奪われてしまった。
「しっかりしなさい」
そんな真緒の状態を危険と判断したアーメイデは、後頭部を軽く叩いて正気に戻した。
「す、すみません。あまりに美しくてつい……」
「まぁ、その気持ち……分からなくも無いけどね。私も久し振りに見たけど、相変わらず目を引く美しさだよ。それに強さもビンビン伝わって来る……」
「た、確かに……」
美しさに目を奪われていたが、いざ正気に戻ると真の力を解放した剣からは、これまでに感じた事の無い程の力を感じた。
「この剣の本当の名前は“ブレイブソード”、直訳すると勇者の剣って訳さ。僕にピッタリだろう?」
「安直ですね」
「ふっ、所詮女にはこの名前のかっこ良さは理解出来ないさ。じゃあそろそろ始めようか」
ブレイブソードを構えるコウスケ。向かい合っているだけでも伝わる。先程までとは比べ物にならない程、強くなっている。こんな相手に勝てるのか、不安と緊張が入り交じる中、真緒は生唾をゴクリと飲み込むのであった。
ここまでかと思ったその時、かつては味方だったが、今は敵となってしまったアーメイデが姿を現した。コウスケ一人でも手に余るというのに、もう一人の伝説的な存在とも戦わなければならない。泣きっ面に蜂とはこの事か。残酷な現実に、真緒の心は折れてしまいそうになった。
しかし、そうはならなかった。何とアーメイデは味方である筈のコウスケに向けて攻撃を仕掛けたのだ。裏切り。真緒にとってはまたと無いチャンスだが、純粋に何故という疑問が残る。
「アーメイデさん……?」
「…………」
いくら思案を巡らせても、裏切る理由が見つからない。真緒は堪らずアーメイデに声を掛ける。するとアーメイデはゆっくりとこっちを向き、倒れている真緒に向かって手をかざす。まさかここでトドメを刺すつもりか!? と、思った矢先……。
「“キュアオール”」
「え?」
何と体力を全快にしてくれたのだ。すっかり傷が癒えた真緒は半信半疑になりながらも、立ち上がる。
「どうして……?」
どうして。その言葉しか出なかった。本来ならありがとうや、助かったなどの言葉が出る筈なのだが、今回ばかりは疑問を投げ掛ける事が最優先だった。
「…………」
しかし、アーメイデは何も答えない。極力、真緒に目を合わせない様に目線を反らそうとしている。
「えっと……あの……その……」
気まずい雰囲気に、言葉が詰まる真緒。この地獄の様な時間が永遠と続くのかと思われたその時、コウスケが吹き飛ばされた先の壁で凄まじい爆音が鳴り響く。
「い、いったい何が!?」
「やっぱり……あれ位の攻撃じゃ、死なないわよね」
「いやー、まいったまいった。まさか君に攻撃されるとは、思ってもみなかったよ」
アーメイデの攻撃を食らい、腹に風穴が空いたコウスケ。だが、まるで何事も無かったかの様に平然と歩いていた。
「“キュアオール”」
そしてその傷も今や消え去った。こちらに近付いて来るコウスケに対して、アーメイデは杖を向けて、これ以上近付くなと警告する。
「ねぇ、コウスケ……さっきの話、全部本当なの?」
「さっきの話?」
「エジタスに協力してるのは、平和とか幸せとかの為じゃなくて、楽しいからって事!!」
「あぁ、何だ聞いてたのか。うん、全部本当だよ。正直、平和とか幸せとかに興味無いんだよね」
「そう……」
「まぁ、そんな事はどうでも良いからさ。悪ふざけが済んだのなら、さっさとそこのマオちゃんを倒しちゃおうよ。二人で力を合わせればきっと……」
そう言い掛けた次の瞬間、コウスケの真横を何かが物凄い速さで通り抜ける。その正体は、アーメイデが放った結晶体。鋭く尖った結晶がコウスケの頬を掠め、壁に突き刺さる。
「アーメイデ、冗談にしても度が過ぎると思うよ?」
「コウスケ……変わっちゃったね。二千年前のあんただったら、世界の平和の為、幸せの為に動いてた。なのに今のあんたは自分の私利私欲で動いてる。そんなのコウスケじゃないよ」
「…………」
「お願いだ。あの頃の……真っ直ぐだったコウスケに戻ってくれ。私が愛した誠実で勇猛果敢でお人好しだったあの頃のコウスケに……」
「アーメイデ……君は少し誤解をしている様だね」
「え……?」
「あの頃に戻って欲しいとか言ってるけど……僕は二千年前のあの頃から、何一つ変わってはいないよ」
「!!!」
アーメイデの杖を握る力が強くなる。それは当たって欲しくない予想が、当たってしまった事に対する想いの表れなのか。
「異世界で勇者と言えば、誠実で勇猛果敢でお人好しが定番。その方が感情移入がしやすいし、周りからも勇者だって言われやすいだろう? まぁ、そんな事をしなくても、打倒魔王を志す僕は紛れもない勇者なんだけどね」
「じゃああれは全部演技だったって言うのか!!?」
「演技って言うのは人聞きが悪いな。あくまでもあれは……キャラ付け? 異世界デビューとも言うのかな」
「そんな……」
「それにしても、アーメイデは僕が思った以上に“尻軽女”なんだね」
「は?」
「だってそうでしょ? 一年前まではエジタスさんの敵だったのに、死者を蘇らせる方法をちらつかせた途端、コロッと掌を返して仲間になって……と、思ったら今度は自分の愛する人が理想と違ったから裏切るだなんて……もしこれがアニメやゲームだったら、君はファンから最低最悪のビッチの称号が与えられているだろうね」
「コウスケさん!! アーメイデさんに何て事を言うんですか!? アーメイデさんは二千年間、ずっとあなたの事を……「もういい!!」……えっ?」
コウスケのアーメイデに対する非道な言動に、我慢出来なくなった真緒はアーメイデがどれだけコウスケの事を想っていたのか説明しようとするが、アーメイデ本人に遮られてしまう。
「ありがとうマオ、その気持ちだけで充分だ」
「アーメイデさん……でもこんなのって……」
「お陰で目が覚めたよ。私がすべきだった事……全く、こんなハッキリと言われないと気付けないだなんて、恋心ってのは厄介な物だね。“クリスタルチェーン”!!」
「!!!」
するとアーメイデは、杖の先から結晶体の鎖を飛ばし、コウスケの体を拘束した。
「今だ!! あの男に渾身の一撃を食らわしてやりな!!」
「は、はい!! スキル“ロストブレイク”!!」
「甘い!!」
コウスケの身動きを封じたアーメイデ。攻撃のチャンスを託された真緒は、コウスケ目掛けて渾身の一撃を叩き込もうとするが、それよりも前にコウスケは鎖を破り、真緒の一撃を弾き返して見せた。
「そんな!!?」
「そしてこれでさよならだ!!」
「させないよ!! “クリスタルシールド”!!」
渾身の一撃を弾かれ、隙だらけとなってしまった真緒。そんな真緒目掛けてコウスケの剣が襲い掛かる。しかし突き刺さる瞬間、アーメイデが結晶体の盾を真緒の前に生成し、コウスケの攻撃を防いで見せた。
「た、助かりました」
「油断しない事だね。あんなのでも、かつて初代魔王と互角に渡り合った実力者なんだから」
「はぁー、味方だった筈の仲間が裏切って敵側に付いてしまう。王道ファンタジーじゃ、中々見ない展開だ。なら、この圧倒的不利な状況を乗り越え、見事勝利を掴んで見せよう。僕にはそれが出来る!! 何故かって? 僕は世界を救う勇者で、主人公だからさ!!」
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「えっ、“封印”?」
真緒はアーメイデの言葉に耳を疑った。あまりにも予想していなかった言葉に、思わず聞き返してしまった。
「そう言えば、言った事無かったっけ? あいつとあんたが持っているその純白の剣ってのは、真の力が解放されていない言わば封印状態の事を指すんだよ」
「え、えぇえええええ!!?」
「その力を解放出来るのは、本来の持ち主であるコウスケだけ……だから一年前は教えなかったのさ。出来ない事を教えたって意味は無いし、修行に雑念が入ると思ってね」
「そ、そうだったんですか……」
「それで? まさか私達二人相手に封印状態で戦うつもりじゃ無いだろうね?」
「ははは、勿論そんなつもりは無いよ。君が相手となると、さすがの僕でも手加減出来ないからね。スキル“解放”」
その瞬間、コウスケが持つ純白の剣が光輝く。今まで見た事が無い程の目映い光。そのあまりの眩しさに直視する事が出来なかった。やがて光は収束し、肉眼でも捉えられる様になった。が、そこにあったのは純白の剣では無かった。
青と黄色で基調された柄に、天使の翼を模した鍔があり、そこから伸びる刃は透き通っていた。言葉を呑んでしまう程の美しさ。真緒は目が奪われてしまった。
「しっかりしなさい」
そんな真緒の状態を危険と判断したアーメイデは、後頭部を軽く叩いて正気に戻した。
「す、すみません。あまりに美しくてつい……」
「まぁ、その気持ち……分からなくも無いけどね。私も久し振りに見たけど、相変わらず目を引く美しさだよ。それに強さもビンビン伝わって来る……」
「た、確かに……」
美しさに目を奪われていたが、いざ正気に戻ると真の力を解放した剣からは、これまでに感じた事の無い程の力を感じた。
「この剣の本当の名前は“ブレイブソード”、直訳すると勇者の剣って訳さ。僕にピッタリだろう?」
「安直ですね」
「ふっ、所詮女にはこの名前のかっこ良さは理解出来ないさ。じゃあそろそろ始めようか」
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よろしくお願いします!
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