笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第十章 冒険編 反撃の狼煙

生物界の頂点

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 サタニアを目覚めさせた真緒達一向は、最終目標であるエジタス討伐を目指しながら、部屋を歩き回っていた。



 「そう言えば、シーラはどうしたんだい?」



 「それが何か大事な物を取りに戻るから、先に行ってて欲しいと言われて……」



 「大事な? そっか……それじゃあまだここには来ていないのかな?」



 「もしくは既に屋敷内へ足を踏み入れていて、まだ合流出来ていないだけかもしれません」



 「成る程、所でフォルスの姿が見えないけど、はぐれてしまったのかい?」



 「「「…………」」」



 「どうしたの?」



 「フォルスさんは……ここに来る途中で……私達を守る為……自らを犠牲に……」



 「!!!」



 今にも泣き出してしまいそうな震えた声で語る真緒。その様子にサタニアは、不味い事を聞いてしまったと焦る。



 「あっ、えっと……そ、そうだ!! 八英雄って、どれくらい残っているんだろうね!?」



 気まずい雰囲気を修正しようと、話題を切り替えるサタニア。真緒達もそれに合わせて乗っかる。



 「確か、残る八英雄は四人。マントン、フェニクス、カルド王……」



 「そして私達が取り逃がしてしまったヘゼンルーテ……」



 外のやり取りを知らない真緒達は、残りの英雄がまだ四人残っていると思っている。幾分か気まずい雰囲気が緩和されたと思った矢先、リーマが重たい口を開いた。



 「けどそれも、エジタスが死者復活の紙を使ったら、全てが無意味となってしまう……」



 「「「…………」」」



 再び重たい空気が流れる。あれだけ苦労して倒した相手と、また戦わなければいけない事に、真緒達は軽い絶望を感じていた。



 「……やっぱりまた戦わないといけないんでしょうか……?」



 「うん、きっと避けられないと思う。私達と同じ様に、あっちにも譲れない想いがある筈だから……」



 「勝でるだがぁ?」



 「……正直、無理だと思う。倒しても倒しても復活してしまう事を考えると、いつかはこっちが力尽きちゃう。だけど、それでもやらないと……」



 賽は投げられた。もう止まる事も、引き返す事も許されない。どちらかが力尽きるまで、戦い続けるしか道は残されていない。



 その事実にハナコとリーマが落ち込んでいると、様子を見かねた真緒が元気付けて来た。



 「皆、そんなに気を落とさないで。きっと何とかなるよ」



 「そう……ですかね?」



 「そうに決まってるよ。それに今の私達にはサタニアっていう強力な味方が付いているんだよ。サタニアがいれば、戦いも幾分か楽になるよ。ね、そうでしょ?」



 「う、うん!! 僕に任せて!! 操られて手伝えなかった分、これからの戦いで頑張るよ!!」



 重たく気まずい雰囲気だったのが、真緒のお陰で少しだけ緩和された。これ以上、空気を悪くしない様、やる気を見せて率先して先を歩くサタニア。真緒達もその後に続いて、次の部屋へと足を踏み入れる。







***







 「ここは……訓練所ですかね?」



 真緒達が辿り着いたのは、兵士を育成する為の訓練所だった。人の形を模した人形や、ありとあらゆる武器が立て掛けられていた。が、それよりも先に真緒達の目に飛び込んで来た物があった。それは……。



 「何て言うか……凄く傷だらけだね……」



 壁、床、天井など至る所に傷が付いていた。それも極最近に付けられたばかりの物だった。



 「壁や床は分かるけど、天井にまで傷が付いているだなんて……いったいどんな巨体の持ち主が……ん?」



 天井にも付けられた傷を眺めながら歩いていると、奥の方でモゾモゾと何かが動いたのを捉えた。



 「誰かいる……」



 そう真緒が言うまでもなく、全員の戦闘準備が完了していた。警戒しながらジリジリとゆっくり近付いて行く。



 次第に動く者の正体が明らかとなっていく。それは見覚えのある人影だった。特にサタニアは過剰に反応を示した。



 「オゴ……ガァ……」



 「そんな……まさかあれは……!!?」



 サタニアは慌てて駆け寄る。そこにいたのは何と“ゴルガ”だった。魔王軍四天王の一人であり、真緒達を逃がす為に犠牲となった筈のゴーレムであった。



 死んだと思われていたゴルガが生きていた事に、サタニアは大いに喜んだ。だが、何だか様子がおかしい。



 「ゴルガ? どうしたの僕だよ?」



 「どうかした?」



 「それが……さっきから声を掛けているのに、反応が無くて……」



 サタニアが声を掛けても、ゴルガは縮こまってブルブルと体を震わせるだけだった。まるで何かに怯えるかの様に……。



 「ゴルガ……いったいどうし……」



 「ヒィ!!?」



 サタニアがゴルガの体に触れようとしたその時、決して聞く事は無いと思われたゴルガの口から、恐怖に怯えた声が飛び出した。最早、かつての猛々しい姿は存在していなかった。よく見ると、部屋の至る所に付いていた同じ傷がゴルガの体にも刻み込まれており、酷い箇所となると体の一部が削り取られていた。



 「いったいここで何があったの?」



 「ゴルガ……」



 「…………」



 「ゴルガ!! 僕を見ろ!! 僕を見るんだ!!」



 「!!?」



 「サタニア!!?」



 すると突然、サタニアがゴルガの顔を両手で掴んで、無理矢理こちら側に振り向かせた。そしてじっとゴルガの目を見つめた。



 「……マ……オウ……サマ?」



 その効果はあったらしく、ゴルガの瞳に光が宿った。そして漸くサタニアの事を認識した様だった。



 「やっと気が付いてくれた。ずっと心配してたんだからね」



 「ナゼ、ココニ……イヤ、ソレヨリモ……イソイデココカラ、ハナレテクダサイ!!」



 が、気が付くや否や慌てた様子で、ここから離れる様に促した。このゴルガらしからぬ言動にサタニアは勿論、真緒達も混乱していた。



 「お、落ち着いて。いったい何に怯えているの?」



 「イルノデスヨ!! ココニ!!」



 「いったい何が!? 何がいるって言うんだ!?」



 「ヤツハ……アリトアラユル、セイブツノチョウテンニ、クンリンスルソンザイ……アンナ……アンナセイブツガ、コノヨニイルダナンテ……」



 「ゴルガ!! 確りして!! 何がいるって言うんだ!?」



 などと不毛な会話を繰り返していると、部屋の奥からこちらに近付いて来る足音が聞こえて来た。



 「まだ誰かいるの?」



 「マオウサマ!! オニゲクダサイ!! イクラアナタデモ、ヤツニハ……アノオトコニハ、ハガタチマセン!!」



 「あの男!? それはいったい誰なんだ!!?」



 その答えを聞くよりも早く、そいつは真緒達の目の前に姿を現した。強者故の絶対的な自信からか、それとも鍛え上げられた肉体を披露したいが為か、上半身には鎧や衣服などが一切付けられておらず、裸であった。



 唯一、下半身は鎧で覆われていたが、それには無数の傷が付けられており、戦いの生々しさが感じられた。握られた剣は刃こぼれしており、相手を仕留めるよりも、戦いを長引かせる為の武器として使っている印象が見受けられた。そして、真緒達はその男に見覚えがあった。



 「新しい獲物か。どうやらまだまだ楽しめる様だな」



 「カルド王……」



 そこに現れたのは、元カルド王国の最高権力者であり、かつて歴戦の覇者として名を轟かせた男。生物界の頂点と言うべき存在。カルド・アストラス・カルドであった。



 するとカルド王は刃こぼれした剣を構え、深く腰を落とした。それに対して、真緒達も一斉に武器を構えた。



 「さて、早速だが見せて貰おうか。お前達の中に眠る命の輝きを!!」



 襲い掛かるカルド王。こうして戦いの火蓋が切られるのであった。
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