笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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最終章 少女と道化師の物語

闇に差し込む一筋の光

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 永遠と先が見えない闇の世界。そこに主人格のエジタスは立っていた。しかしその姿は何故か、真・変化の指輪で変化していた時の魔族になっていた。



 何処までも続く真っ黒な景色を、只呆然と眺めていると、背後から声を掛けられた。



 『おぅ』



 「ん? あぁ、君か……何か用かい?」



 振り返るとそこには、爛れた皮膚の素顔を晒した化物のエジタスが立っていた。光の無い暗闇にも関わらず、二人の姿はハッキリと確認する事が出来た。



 「用が無かったら、話し掛けちゃいけないのか?」



 「いや、そう言う訳じゃ無いけど……蘇ってからは会話らしい会話をしていなかったらね」



 「まぁ、何かと忙しかったからな……」



 「確かに……あれだけ大量に作っていたら、ゆっくり腰を下ろして話をするなんて事、出来なかっただろうね」



 「ふっ、それも今となっては水の泡だけどな」



 そう言いながら化物のエジタスは、重い腰をゆっくりと下ろし、その場に座り込んだ。



 「所であいつは?」



 「あいつ?」



 「第四の人格だよ。先輩として挨拶位してやろうと思ってな」



 「あぁ、彼なら“消滅”したよ」



 「は?」



 「あの子達に負けたのが、相当信じられなかったんだろうね。最後は精神崩壊を起こして、存在自体が消えちゃったよ」



 「……何だ、つまんねぇの……結局元の三人になった訳か……漸くお前にも後輩が出来たのに、残念だったな?」



 そう言うと化物のエジタスは、背後に立っている人物に声を掛ける。そこに立っていたのは、道化師のエジタスだった。しかし、その様子はいつもの陽気な姿とは打って変わって、完全に意気消沈していた。



 「それで? どうだった? 自分の生きる目的を見つける為に、俺達を出し抜いた結果は?」



 「…………」



 化物のエジタスによる問い掛けに対して、道化師のエジタスは一言も喋らずに顔を反らした。



 「生きる目的は見つけられたか?」



 「…………せんよ……」



 「はぁ? 何だってよく聞こえないな?」



 「見つけられませんでしたよ!! あなた達と一体化して、エジタスとなりましたが、結局何も見つけられませんでした!!」



 感情的になる道化師のエジタス。化物のエジタスの方に顔を向け、声を荒げた。



 「……所詮、私は心の無いからっぽの道化師……そんなのが生きる目的を見つけようだなんて……無理な話だった……それだけです」



 「……そもそも、本当に生きる目的って必要だったの?」



 「え?」



 俯く道化師のエジタスに、主人格のエジタスが話し掛けて来た。



 「いや、僕達もう二千年以上生きて来た訳だから、今更生きる目的を見つけるのは必要な事なのかなって?」



 「確かにな、俺の骨肉魔法で延命させていた訳だが、本来ならとっくの昔に死んでるからな。二千年も生きたんなら、大往生……ってやつ?」



 「そ、そう言うあなた達には、生きる目的があるじゃないですか!? 説得力に欠けるんですよ!! 三人の中で私だけが生きる目的が無い、だから私は二人の様に生きる目的を見つけたかった!!」



 「何で僕達みたいになりたいの?」



 「何ですって?」



 「君は君だろう? わざわざ僕達に合わせる必要が無いと思うんだ。生きる目的が無いなら無いで、それで良いんじゃないかな」



 「そんなの……そんなの生き物としての定義を成しているとは言えませんよ!!」



 「じゃあ君は新しい人類って訳だ。生きる目的が無くても楽しく過ごせる生き物……あれ、僕なんか可笑しい事言ってるかな?」



 ふと我に返り、自分の発言に首を傾げる主人格のエジタス。その様子に道化師のエジタスは呆気に取られていた。



 「ふっ、ふふふ……ふはははははは!!!」



 そんな中、間に挟まれていた化物のエジタスが大声で笑い始めた。



 「言いたい事は分かるぞ。それでどうだった、今の話を聞いて?」



 「っ!! 今更そんな事を言ったとしても、全てが遅過ぎるんですよ!! 最早、この暴走は誰にも止められない!! 私達は一生この闇の中で過ごすしかないんです!!」



 「「…………」」



 反論する事が出来ず、現状を嘆く道化師のエジタス。そんな言葉とは裏腹に、主人格のエジタスと化物のエジタスの表情は明るかった。



 「な、何ですかその顔は……?」



 「まさか本気でこのままだと思ってる訳じゃないよな」



 「だ、だって誰がどう見たって絶望的状況じゃないですか!? 暴走したこの体は一切のコントロールを受け付けない!! 本能に赴くまま、破壊を繰り返すでしょう!! 恐らく一日もあれば、世界を五回以上は軽く滅ぼす事だって出来る!! こんな化物に誰が勝てるって言うんですか!?」



 「いるじゃないか、僕達の天敵が……」



 「まさか……本気で来ると思っているんですか?」



 「勿論、だってあの子達だよ? 一年前、僕達の計画を見事に打ち破り、今回も極限状態まで追い詰めた。そんな子達がここで諦めると思う?」



 「……はぁ~、仕方ありませんね~」



 何かを諦めたかの様に、深い溜め息を漏らす道化師のエジタス。しかしその表情は先程よりも、清々しくなっていた。そして口調もいつもの陽気さが戻って来た。



 「その望み薄な賭けに乗ってあげますよ~」



 「いつもの調子が戻って来たみたいだな。それで良い、その方がお前らしい」



 「大丈夫、きっとあの子達は来てくれるよ……」



 そうしてエジタス達は闇の中で、真緒達という光が差し込むのを信じて待ち続けるのであった。







***







 一方、暴走したエジタスを追って船で海を渡る真緒達。各々、船内で回復ポーションで傷を完全に癒したり、武器や防具を整えていた。そんな中、ジェドが真緒達に声を掛ける。



 「お前達、見えて来たぞ」



 真緒達は用意していた武器を手に取ると走り出した。甲板に出ると、目線の先には四つん這いの状態で、ゆっくりと本土に向かって歩いているエジタスの姿があった。



 また、エジタスが歩いた箇所には死んだ魚やイルカなど、海の生物が次々と浮かんで来ていた。



 「な、何だあれ!?」



 浮かんでいた魚を一匹掬い上げると、サタニアがじっと見つめる。



 「魔力を感じない……全員、MPを吸い取られてる!!」



 「な、何だと!?」



 よく見ると死んで間もないにも関わらず、まるで何日も経っているかの様に腐っていた。



 「恐らく、あの化物の近くにいると無条件でMPを吸い取られるみたいだな」



 「それじゃあ不用意に近付けないじゃないですか」



 魔法使いであるリーマにとっては、正に致命的であった。するとジェドが得意気な顔をする。



 「心配するな。この船には多くの武器やポーションを積み込んである。例えMPが吸い取られたとしても、直ぐ様回復させてやる。だからお前らは遠慮せずに戦ってくれ!!」



 「ジェドさん、ありがとうございます!!」



 「よし、このまま一気に突っ込むぞ!! お前ら、準備は良いか!?」



 「「「「おぉ!!!」」」」



 「じゃあ行くぜ……突撃!!」



 ジェドの合図と共に船は、一気に加速し始める。そしてそのままエジタスの体の下へと潜り込んだ。



 「今だ、一斉攻撃!!」



 「スキル“乱激斬”!!」



 「スキル“ブラックアウト”!!」



 「“ジャイアントフレイム”!!」



 「スキル“バハムート”!!」



 「“ブースト”!!」



 真緒達、そしてその他大勢の船員達による集中砲火をエジタス目掛けて、勢い良く浴びせた。



 「撃て!! 撃ち続けろ!! 力の限り撃ち続けるんだ!!」



 「「「「うぉおおおおお!!!」」」」



 真緒達が撃ち続けていると、それまで歩みを止めなかったエジタスが急に足を止めた。そしてその体を真緒達目掛けて落として来た。



 「不味い、退避だ!!」



 迫り来る超巨大な体。押し潰されない様、真緒達は急いで船を走らせた。そのお陰でギリギリ潰されずに済んだ。



 しかし、エジタスが体を海に浸からせた事で、大きな津波が発生。船が激しく揺れ、まともに立つ事が出来なくなった。



 「ぐぅ!! 皆、振り落とされないで!!」



 やがて揺れが収まり、立つ事が出来る様になった。



 「お、おい!! あれを見ろ!!」



 ホッとしたのも束の間、全員がフォルスが指差す方向に顔を向けると、そこには海に浸かった事で覆われていた土塊の山が溶け、素肌があらわになった。



 ガラスの様に半透明。骨や内臓、血管の一本一本が鮮明に見えていた。中でも心臓が脈打つ度に血管内を血液が巡る様子は、非常に不気味であった。
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