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最終章 少女と道化師の物語
少女と道化師の物語
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グラフィス大森林。鬱蒼とした木々が光を遮り、一寸先は闇。葉のざわめきは人の悲鳴のように聞え、枝の一本一本が鋭利な刃物を思わせるほど尖っている。深くなればなるほど構造は複雑になっており、一度入ってしまえば二度と出られなくなってしまう。
その事から誰一人として足を踏み入れる者はいない。そして、生きとし生ける者達は子供が決して近づかないように恐怖の戒めとしてこう呼んでいる。“迷いの森”と……。
しかし、それは今や昔の話。自然と共に生きているエルフ達の知識と、人間達による大量の人手により、森の開拓が進み、最早誰も迷う事の無い穏やかな森へと変貌した。
木々の間から暖かい太陽の光が差し込み、葉のざわめきはまるで自然による綺麗な歌声の様に聞こえる。
そんな森で一人の少女が無我夢中で走っていた。
「はぁ……はぁ……」
時々、後ろを気にしながら走るその姿は、一目で何かに追われていると理解出来る。すると少女を後ろから、同じ様に走って追い掛ける男がいた。
「おいおい、まてよ。逃げても無駄だぜ、諦めな」
全身紫色の屈強な体と頭には二本の角が生えていた。男は魔族だった。魔族の男が人間の少女を捕まえようと追い掛けていた。
必死に追い掛ける男に対して、無我夢中で逃げる少女。その対格差から、距離は徐々に詰められる。そして……。
「捕まえた!!」
「きゃああああああ!!!」
遂に男が両手で少女の両肩をガッシリと掴んだ。少女は悲鳴を上げながら、めちゃくちゃに体を動かし、何とか逃れようとする。
「ふはははは、もう逃げられないぞぉ……」
「嫌だ!! 離して!!」
「大人しくするんだな……」
しかし、健闘虚しく少女は男によって空中に持ち上げられ、逃げられなくなってしまった。そしてそのまま……自分の肩に無理矢理跨がらせた。所謂、肩車という物である。
「ほら、早くお家に帰るぞ。ママが首を長くして待っているんだからな」
「でも“パパ”、もっと遊びたいよー」
二人は親子だった。用事を済ませ、帰路に付いていたのだが、遊び盛りの娘が突然鬼ごっこを始めてしまった。仕方無く、父親である男は後を追い掛け、駄々を捏ねる娘を捕まえたのであった。
「“村”に帰ったら嫌という程遊んでやるから、それまで大人しくしていなさい」
「ぶぅー」
膨れっ面になる娘を宥め、男はグラフィス大森林を抜ける。
「着いたぞ」
森を抜けた先では一つの村が存在していた。こじんまりとした小さな村だが、そこに住む村人達は全員生き生きとしていた。
親子の到着に気が付き、村にいた一人の女性が笑顔で近付いて来る。
「あなた、お帰りなさい」
「ただいま」
女性は男の妻、娘の母親だった。二人の帰りを出迎える女性。男は肩に乗せた娘を優しく地面に下ろした。
「パパ、遊んで!!」
その瞬間、娘は父親に両手を広げてねだり始めた。そんな様子を見兼ねて、母親が人差し指を立てて注意する。
「パパは帰ったばかりで疲れているのよ。少し休ませてあげてね」
「えー、だって約束したんだもん!! 帰ったら遊んでくれるって言ったんだよ!?」
「そうだとしてもね、お茶を飲む位の時間っ……」
そう言いかけた所で父親が母親の前に手を出し、言葉を遮る。
「いいよ、少し位なら付き合ってあげる」
「本当に!!? やった!!」
遊んで貰えるという事に大はしゃぎの娘。そんな姿に笑顔を浮かべる父親。すると母親は諦めたかの様に息を漏らした。
「……仕方無いわね。もうすぐ夕飯だから、それまでに終わらせるのよ」
「はーい!!」
娘の元気な返事に母親は少し口角を上げ、夕飯の支度をする為に家へと戻って行った。
「それで? 今日は何をして遊ぶんだ?」
「えーと、“勇者”ごっこ!!」
「またかい!? 昨日も勇者ごっこだったじゃないか……今日は別の遊びにしないか?」
「駄目!! 勇者ごっこが良いの!! 私が“魔王”やるから、パパは“勇者”ね!!」
「またパパが勇者なのか!? 種族的には魔王の方が合ってると思うんだけど……」
「私が魔王やるの!!」
「分かった分かった。それじゃあ……とうとう追い詰めたぞ魔王!!」
「ふはははは!! 勇者よ、よもやここまで辿り着くとはな、敵ながらアッパレだ!!」
「……ねぇ、ちょっといい? 父親としてあれなんだけど、年いくつだっけ?」
「えー、忘れちゃったのー? 今年で6歳になったんだよ!!」
誇らしげに胸を張る娘。そんな娘を見ながら、父親は空を仰いだ。
「(子供の成長って早いんだな……)」
「いいから早く続きを……「おーい」……?」
遊びを再開しようとしたその時、何処からか娘を呼ぶ声が聞こえて来た。声のした方向に顔を向けると、そこには……。
「おーい!!」
「あっ、皆!!」
娘の友達と思われる四人の子供達が、それぞれ父親と一緒に近付いて来ていた。また、その四人の子供達は人間では無かった。一人は鳥人、一人はエルフ、一人は熊人、一人は竜人だった。更にそれぞれの父親も種族が異なっていた。鳥人の子は人間、エルフの子は魔族、熊人の子はドワーフ、竜人の子はオークだった。
「もしかして勇者ごっこしてるの?」
「そうだよ、皆も一緒に遊ぼ!!」
「「「「うん!!」」」」
子供達同士が一緒に遊ぶ事を決める一方、父親達同士は世間話に花を咲かせていた。
「最近、どうですか?」
「いやもう絶好調ですよ。それでまた一仕事終えた後の酒が上手くてね」
「分かります。僕もつい最近酒の味を覚えまして、楽しみが一つ増えました」
「おっ、それじゃあどうですか? 今夜辺り一杯?」
「「「「良いですねー」」」」
「ちょっとパパ!!」
「えっ?」
「話してないで早く続きしよう!!」
「あ、あぁ……ごめんごめん」
「それじゃあ行くよ……勇者よ、ここまで来れた事は褒めてやろう。しかし、ここで貴様は敗北するのだ!!」
「「「「魔王様!!」」」」
「むっ、そなた達は我が魔王軍四天王!!」
「微力ながら私達もお手伝いします!!」
「おぉ、それは頼もしい!! 供に勇者を倒そうぞ!!」
「…………」
いつの間にか、五対一の構図となってしまい、父親は内心焦っていた。その時、閃いた。
「くっ、さすがに五対一は分が悪い。でも全然大丈夫!! だって俺には“仲間”が付いているんだからな!!」
そう言いながら父親は、側にいた他の父親四人と無理矢理肩を組んだ。
「お、おい!!」
「何のつもりだよこれは!!?」
「見て分かるだろ? 勇者ごっこだよ」
「そんなの知ってるわ!! 俺達を巻き込むな!!」
「やるなら一人でやってくれ!!」
「そんな冷たい事、言わないでくれよ。さぁ、魔王よ!! 何処からでも掛かって来るが良い!!」
「よし、行くぞ皆!!」
「「「「おぉ!!!」」」」
その言葉と共に子供達が、父親達目掛けて突っ込んで来る。
「「「「「ぎゃああああああああ!!!」」」」」
そして村中に男達の野太い悲鳴が響き渡るのであった。
***
少女の家。日もすっかり暮れ、辺りは真っ暗だった。唯一の明かりは家の窓から漏れる暖かい光だけだった。そんな中、少女は父親と母親と一緒に食事をしていた。少女が両手を合わせ、大きく口を開く。
「ごちそうさまでした!!」
「お粗末様でした。お皿は私が片付けて置くから、部屋に行ってなさい」
「はーい!!」
母親の言う事を聞き、娘は自分の部屋へと向かう。母親は空になった皿を片付ける。
「手伝うよ」
「ありがとう」
「…………」
皿の片付けを手伝う父親。そんな中、父親が何かを考えている。そんな様子に母親が声を掛ける。
「どうかしたの?」
「ん、いや、只幸せだなって感じただけだよ」
「どうしたの急に?」
「君は人間だからあまり知らないけど、つい数百年前までは人間と魔族の間には争いが絶えなかったんだ」
「その話なら聞いたわ。確か、勇者様と仲間達、そして魔王様と四天王の人達が種族間のいざこざを解消したのよね」
「あぁ、そのお陰で俺は生涯を愛する女性と巡り合う事が出来た」
「私も、生涯を愛する男性と出会えた」
「俺達だけに限らない。近所の人達や、世界中の人達が種族の垣根を越えて互いを支え合って生きている。まさかこんな幸せな未来が待っているなんて、数百年前には想像も付かなかった」
「だからこそ、私達がこの幸せを未来へと育んでいかないといけないのよね」
「あぁ、もう二度と数百年前の様な時代にしない為にも……」
「あなた……」
「おまえ……」
良い雰囲気になった二人は、熱いキスを交わそうと互いの顔を近付ける。そして二人の唇が合わさる次の瞬間!!
「ママー!! 寝る前にご本読んでー!!」
「「!!!」」
娘が部屋から飛び出して来た。二人は慌てて皿を片付け、平静を装った。
「こ、これが終わったらすぐ行くわ!! それまで部屋で待ってなさい!!」
「はーい!!」
無邪気な笑顔を振り撒き、部屋へと戻る娘。ちゃんと戻った事を確認した二人は、ホッと胸を撫で下ろす。
「お楽しみは娘を寝かし付けてから……ね」
「そうだな……」
***
娘はベッドで横になりながら、母親が本を読むのを待っていた。そして無事に皿を片付けた母親が部屋に入って来る。
「早く!! 早くご本読んで!!」
「分かったわよ。それで今日は何を読みたいの?」
「“少女と道化師の物語”!!」
「また? 本当にあのお話が好きなのね。良いわよ」
そう言うと母親は本棚から、一冊の本を取り出した。その本だけ他の本よりも圧倒的に分厚く大きかった。それこそ、母親が両手で持たないと持ち上げられない程に。本の表紙には『少女と道化師の物語』と書かれていた。その右下には著者の名前が書かれているのだが、何回も読み込んだ為か、文字が掠れて見えなくなってしまっていた。
「それじゃあ読むわよ……」
母親は娘の横に座り、その本専用の台に乗せた。そしてゆっくりと分厚く大きいページをめくった。
『それはグラフィス大森林がまだ迷いの森と呼ばれ、人々に恐れられていた時の事です。光の届かない薄暗い森の中で少女は追われていました。そんな時、一人の“道化師”と出会ったのです…………』
そして、物語は未来へと語り付かれて行くのであった。
その事から誰一人として足を踏み入れる者はいない。そして、生きとし生ける者達は子供が決して近づかないように恐怖の戒めとしてこう呼んでいる。“迷いの森”と……。
しかし、それは今や昔の話。自然と共に生きているエルフ達の知識と、人間達による大量の人手により、森の開拓が進み、最早誰も迷う事の無い穏やかな森へと変貌した。
木々の間から暖かい太陽の光が差し込み、葉のざわめきはまるで自然による綺麗な歌声の様に聞こえる。
そんな森で一人の少女が無我夢中で走っていた。
「はぁ……はぁ……」
時々、後ろを気にしながら走るその姿は、一目で何かに追われていると理解出来る。すると少女を後ろから、同じ様に走って追い掛ける男がいた。
「おいおい、まてよ。逃げても無駄だぜ、諦めな」
全身紫色の屈強な体と頭には二本の角が生えていた。男は魔族だった。魔族の男が人間の少女を捕まえようと追い掛けていた。
必死に追い掛ける男に対して、無我夢中で逃げる少女。その対格差から、距離は徐々に詰められる。そして……。
「捕まえた!!」
「きゃああああああ!!!」
遂に男が両手で少女の両肩をガッシリと掴んだ。少女は悲鳴を上げながら、めちゃくちゃに体を動かし、何とか逃れようとする。
「ふはははは、もう逃げられないぞぉ……」
「嫌だ!! 離して!!」
「大人しくするんだな……」
しかし、健闘虚しく少女は男によって空中に持ち上げられ、逃げられなくなってしまった。そしてそのまま……自分の肩に無理矢理跨がらせた。所謂、肩車という物である。
「ほら、早くお家に帰るぞ。ママが首を長くして待っているんだからな」
「でも“パパ”、もっと遊びたいよー」
二人は親子だった。用事を済ませ、帰路に付いていたのだが、遊び盛りの娘が突然鬼ごっこを始めてしまった。仕方無く、父親である男は後を追い掛け、駄々を捏ねる娘を捕まえたのであった。
「“村”に帰ったら嫌という程遊んでやるから、それまで大人しくしていなさい」
「ぶぅー」
膨れっ面になる娘を宥め、男はグラフィス大森林を抜ける。
「着いたぞ」
森を抜けた先では一つの村が存在していた。こじんまりとした小さな村だが、そこに住む村人達は全員生き生きとしていた。
親子の到着に気が付き、村にいた一人の女性が笑顔で近付いて来る。
「あなた、お帰りなさい」
「ただいま」
女性は男の妻、娘の母親だった。二人の帰りを出迎える女性。男は肩に乗せた娘を優しく地面に下ろした。
「パパ、遊んで!!」
その瞬間、娘は父親に両手を広げてねだり始めた。そんな様子を見兼ねて、母親が人差し指を立てて注意する。
「パパは帰ったばかりで疲れているのよ。少し休ませてあげてね」
「えー、だって約束したんだもん!! 帰ったら遊んでくれるって言ったんだよ!?」
「そうだとしてもね、お茶を飲む位の時間っ……」
そう言いかけた所で父親が母親の前に手を出し、言葉を遮る。
「いいよ、少し位なら付き合ってあげる」
「本当に!!? やった!!」
遊んで貰えるという事に大はしゃぎの娘。そんな姿に笑顔を浮かべる父親。すると母親は諦めたかの様に息を漏らした。
「……仕方無いわね。もうすぐ夕飯だから、それまでに終わらせるのよ」
「はーい!!」
娘の元気な返事に母親は少し口角を上げ、夕飯の支度をする為に家へと戻って行った。
「それで? 今日は何をして遊ぶんだ?」
「えーと、“勇者”ごっこ!!」
「またかい!? 昨日も勇者ごっこだったじゃないか……今日は別の遊びにしないか?」
「駄目!! 勇者ごっこが良いの!! 私が“魔王”やるから、パパは“勇者”ね!!」
「またパパが勇者なのか!? 種族的には魔王の方が合ってると思うんだけど……」
「私が魔王やるの!!」
「分かった分かった。それじゃあ……とうとう追い詰めたぞ魔王!!」
「ふはははは!! 勇者よ、よもやここまで辿り着くとはな、敵ながらアッパレだ!!」
「……ねぇ、ちょっといい? 父親としてあれなんだけど、年いくつだっけ?」
「えー、忘れちゃったのー? 今年で6歳になったんだよ!!」
誇らしげに胸を張る娘。そんな娘を見ながら、父親は空を仰いだ。
「(子供の成長って早いんだな……)」
「いいから早く続きを……「おーい」……?」
遊びを再開しようとしたその時、何処からか娘を呼ぶ声が聞こえて来た。声のした方向に顔を向けると、そこには……。
「おーい!!」
「あっ、皆!!」
娘の友達と思われる四人の子供達が、それぞれ父親と一緒に近付いて来ていた。また、その四人の子供達は人間では無かった。一人は鳥人、一人はエルフ、一人は熊人、一人は竜人だった。更にそれぞれの父親も種族が異なっていた。鳥人の子は人間、エルフの子は魔族、熊人の子はドワーフ、竜人の子はオークだった。
「もしかして勇者ごっこしてるの?」
「そうだよ、皆も一緒に遊ぼ!!」
「「「「うん!!」」」」
子供達同士が一緒に遊ぶ事を決める一方、父親達同士は世間話に花を咲かせていた。
「最近、どうですか?」
「いやもう絶好調ですよ。それでまた一仕事終えた後の酒が上手くてね」
「分かります。僕もつい最近酒の味を覚えまして、楽しみが一つ増えました」
「おっ、それじゃあどうですか? 今夜辺り一杯?」
「「「「良いですねー」」」」
「ちょっとパパ!!」
「えっ?」
「話してないで早く続きしよう!!」
「あ、あぁ……ごめんごめん」
「それじゃあ行くよ……勇者よ、ここまで来れた事は褒めてやろう。しかし、ここで貴様は敗北するのだ!!」
「「「「魔王様!!」」」」
「むっ、そなた達は我が魔王軍四天王!!」
「微力ながら私達もお手伝いします!!」
「おぉ、それは頼もしい!! 供に勇者を倒そうぞ!!」
「…………」
いつの間にか、五対一の構図となってしまい、父親は内心焦っていた。その時、閃いた。
「くっ、さすがに五対一は分が悪い。でも全然大丈夫!! だって俺には“仲間”が付いているんだからな!!」
そう言いながら父親は、側にいた他の父親四人と無理矢理肩を組んだ。
「お、おい!!」
「何のつもりだよこれは!!?」
「見て分かるだろ? 勇者ごっこだよ」
「そんなの知ってるわ!! 俺達を巻き込むな!!」
「やるなら一人でやってくれ!!」
「そんな冷たい事、言わないでくれよ。さぁ、魔王よ!! 何処からでも掛かって来るが良い!!」
「よし、行くぞ皆!!」
「「「「おぉ!!!」」」」
その言葉と共に子供達が、父親達目掛けて突っ込んで来る。
「「「「「ぎゃああああああああ!!!」」」」」
そして村中に男達の野太い悲鳴が響き渡るのであった。
***
少女の家。日もすっかり暮れ、辺りは真っ暗だった。唯一の明かりは家の窓から漏れる暖かい光だけだった。そんな中、少女は父親と母親と一緒に食事をしていた。少女が両手を合わせ、大きく口を開く。
「ごちそうさまでした!!」
「お粗末様でした。お皿は私が片付けて置くから、部屋に行ってなさい」
「はーい!!」
母親の言う事を聞き、娘は自分の部屋へと向かう。母親は空になった皿を片付ける。
「手伝うよ」
「ありがとう」
「…………」
皿の片付けを手伝う父親。そんな中、父親が何かを考えている。そんな様子に母親が声を掛ける。
「どうかしたの?」
「ん、いや、只幸せだなって感じただけだよ」
「どうしたの急に?」
「君は人間だからあまり知らないけど、つい数百年前までは人間と魔族の間には争いが絶えなかったんだ」
「その話なら聞いたわ。確か、勇者様と仲間達、そして魔王様と四天王の人達が種族間のいざこざを解消したのよね」
「あぁ、そのお陰で俺は生涯を愛する女性と巡り合う事が出来た」
「私も、生涯を愛する男性と出会えた」
「俺達だけに限らない。近所の人達や、世界中の人達が種族の垣根を越えて互いを支え合って生きている。まさかこんな幸せな未来が待っているなんて、数百年前には想像も付かなかった」
「だからこそ、私達がこの幸せを未来へと育んでいかないといけないのよね」
「あぁ、もう二度と数百年前の様な時代にしない為にも……」
「あなた……」
「おまえ……」
良い雰囲気になった二人は、熱いキスを交わそうと互いの顔を近付ける。そして二人の唇が合わさる次の瞬間!!
「ママー!! 寝る前にご本読んでー!!」
「「!!!」」
娘が部屋から飛び出して来た。二人は慌てて皿を片付け、平静を装った。
「こ、これが終わったらすぐ行くわ!! それまで部屋で待ってなさい!!」
「はーい!!」
無邪気な笑顔を振り撒き、部屋へと戻る娘。ちゃんと戻った事を確認した二人は、ホッと胸を撫で下ろす。
「お楽しみは娘を寝かし付けてから……ね」
「そうだな……」
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娘はベッドで横になりながら、母親が本を読むのを待っていた。そして無事に皿を片付けた母親が部屋に入って来る。
「早く!! 早くご本読んで!!」
「分かったわよ。それで今日は何を読みたいの?」
「“少女と道化師の物語”!!」
「また? 本当にあのお話が好きなのね。良いわよ」
そう言うと母親は本棚から、一冊の本を取り出した。その本だけ他の本よりも圧倒的に分厚く大きかった。それこそ、母親が両手で持たないと持ち上げられない程に。本の表紙には『少女と道化師の物語』と書かれていた。その右下には著者の名前が書かれているのだが、何回も読み込んだ為か、文字が掠れて見えなくなってしまっていた。
「それじゃあ読むわよ……」
母親は娘の横に座り、その本専用の台に乗せた。そしてゆっくりと分厚く大きいページをめくった。
『それはグラフィス大森林がまだ迷いの森と呼ばれ、人々に恐れられていた時の事です。光の届かない薄暗い森の中で少女は追われていました。そんな時、一人の“道化師”と出会ったのです…………』
そして、物語は未来へと語り付かれて行くのであった。
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