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キモくて上等!(有栖》

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それから兄がずっと私のそばにいて温かい飲み物を入れてくれたり頭をなでたりしてくれた。

私はなぜか1人では眠れない。
だから竜之介と眠ってもらっていた。
竜之介はニコニコ微笑んでいつも嫌がらず私をベッドに招いてくれた。
私は甘えて丸くなって竜之介とこどものように眠った。
夢を見て目覚めても竜之介の顔が近くにあると、ほっとしてまた眠れた。
だって私たちは双子だから。
《双子だから》



「有栖…」
何かを思い出せそうで思い出せない靄のかかったようか頭をあげるといつのまにか、竜之介が帰ってきて、目の前に立っていた。
「万が一キモイとして…それはシスコンの俺だけがキモイってことで手を打たないか?」
兄から今日の顛末を聞いたのだろう、バツが悪そうに頭をボリボリかいている。
「有栖は甘えん坊だとしても、キモくはないだろ?」
「リュウだってキモくない!」
私は慌てて言った。
「そうだよ!
俺だってちょい過保護なだけでキモくない!
でもキモくてもキモくなくてもどうでもいい。女子高生はなんでもキモがるから、好き勝手言わせておけ」
自分も男子高校生なのに、竜之介はそんなふうにいう。
でも凛とそう言う竜之介は少しかっこよかった。
「有栖の寝顔……赤ちゃんみたいでかわいんだよ、ふにゃふにゃで癒されるし!」
なんとか私を庇ってくれようとしている。
「それじゃだめなのか?……その奈緒って子に、俺らはキモくねーよっていえば、有栖は気がすむの? ナラ、明日すぐ言うし。それとも俺は今夜から奈緒って子と寝たら有栖は納得?」
「ち、ちがうちがう…!」
私は慌てて竜之介を制した。
竜之介がこんな風に憤慨するのは珍しい気がする。
私のことを思って言ってくれてるのはよくわかるから、切なくなる。
「ひとまず…今夜は兄貴もいるし、兄貴のとこで寝たら?俺んとこより広いし。布団でも敷いてさ…有栖ひとりだと眠れないだろ…たまには兄貴の部屋もいいかもよ?」
ちらりと竜之介が兄に視線を映す。
隣で話を聞いていた兄もふんふんと頷く。
「どうせ有栖は俺の体温が恋しくなってすぐ戻ってくるって!キモくても俺はは何も間違ってない!」
変なところで自信たっぷりにそんな風に言っている。

私を肯定するために、軽口を叩いてくれる竜之介の優しさに救われて、私はちょっと笑った。


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