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恋 《海里》
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懺悔。
俺は彼女に恋をしてしまった。
いけないとわかっていた。
でも、彼女しか見えなかった。
まだ彼女は幼かった。
いけないことだとわかっていた、ましてや彼女は妹だった。
そう、彼女は僕にできたたった1人の妹だった。
彼女がうちに来たのは、まだ彼女が小学2年生の頃だった。俺はもうすぐ中学生だった。
もちろん、はじめから恋をしていたわけではない。かわいい妹ができて嬉しかったし、家族が増えることが単純に嬉しかった。
父と竜之介と俺との殺伐とした我が家は一気に色づいた。
新しい母親も分け隔てなく俺たちを可愛がってくれて、俺たちは紛れもなく幸せだった。
幸せな家族。
束の間の、幸せな家族。
俺が彼女を異性として意識するようになったのは、彼女が中学1年になった頃だったと思う。
彼女にしたら俺は頼もしい兄貴に思えたのだろう。よく慕ってくれていた。
最初は、思春期特有の悪い想像をしているのだと思った。
あるとき家に来た友だちたちが、お前の妹、めちゃくちゃかわいいな、見てるとムラムラするなど、下衆なジョークで盛り上がっていた時、下品な想像をして笑っている思春期の友人たちを笑い飛ばせず、憤りとともに彼らの健全さに対する微かな嫉妬に気づいてしまった。
そして。自分が、男として彼女を想っているのだと気付いた。
もう戻れなくなっていた。
彼女への想いは日に日に膨れ上がるばかりだった。
誰にも渡したくないと思った。
同時に彼女を汚すようで罪悪感にかられた。
だから、高校生に入ってすぐ彼女も作ったし、女性とも寝た。とにかく有栖から意識を逸せていたかった。
それでよかった。
それで兄でいられるのならば。
彼女は俺の目の前で、するすると成長し、ちいさな子どもだったのが、あっという間に、手足が細く、栗毛色の柔らかな髪と長いまつ毛を持った、大きな潤んだ瞳をした年頃の少女になっていった。
中でも、彼女の柔らかな澄んだ声が好きだった。微かな甘やかな響きを持っていた。それが、何度も何度も俺を誘惑するように俺を呼んだ。その声を聞くたびに、胸が高鳴った。
可憐な容姿でまわりを惹きつけるくせに、
恥ずかしがりで、少し甘えっ子で、健気で控えめな優しい性格。
彼女を意識しないでおこうと努力も虚しく、俺は彼女に惹かれていった。
高校を卒業したら必ず家を出ると決意した。
そんな俺だから気づいたのかもしれない。
そんなのはおかしいと理性ではわかる。
でもそれならば俺だって同じだ。彼女を求めてやまないのだから。
俺と同じようにこの家の中にもう1人、彼女を異性としてみている者がいることに。
彼女は小柄であどけない顔をしているくせに、どこか色香が漂うような、不思議な少女だった。
慈愛に満ちた無垢な笑顔、はにかむとバラ色に染まる頬、色素の薄い髪と瞳は母親譲りだった。潤んだ大きな瞳の奥が、いつも揺れていた。
彼女を見ていたのは竜之介ではない。
俺の父親だった。
俺は彼女に恋をしてしまった。
いけないとわかっていた。
でも、彼女しか見えなかった。
まだ彼女は幼かった。
いけないことだとわかっていた、ましてや彼女は妹だった。
そう、彼女は僕にできたたった1人の妹だった。
彼女がうちに来たのは、まだ彼女が小学2年生の頃だった。俺はもうすぐ中学生だった。
もちろん、はじめから恋をしていたわけではない。かわいい妹ができて嬉しかったし、家族が増えることが単純に嬉しかった。
父と竜之介と俺との殺伐とした我が家は一気に色づいた。
新しい母親も分け隔てなく俺たちを可愛がってくれて、俺たちは紛れもなく幸せだった。
幸せな家族。
束の間の、幸せな家族。
俺が彼女を異性として意識するようになったのは、彼女が中学1年になった頃だったと思う。
彼女にしたら俺は頼もしい兄貴に思えたのだろう。よく慕ってくれていた。
最初は、思春期特有の悪い想像をしているのだと思った。
あるとき家に来た友だちたちが、お前の妹、めちゃくちゃかわいいな、見てるとムラムラするなど、下衆なジョークで盛り上がっていた時、下品な想像をして笑っている思春期の友人たちを笑い飛ばせず、憤りとともに彼らの健全さに対する微かな嫉妬に気づいてしまった。
そして。自分が、男として彼女を想っているのだと気付いた。
もう戻れなくなっていた。
彼女への想いは日に日に膨れ上がるばかりだった。
誰にも渡したくないと思った。
同時に彼女を汚すようで罪悪感にかられた。
だから、高校生に入ってすぐ彼女も作ったし、女性とも寝た。とにかく有栖から意識を逸せていたかった。
それでよかった。
それで兄でいられるのならば。
彼女は俺の目の前で、するすると成長し、ちいさな子どもだったのが、あっという間に、手足が細く、栗毛色の柔らかな髪と長いまつ毛を持った、大きな潤んだ瞳をした年頃の少女になっていった。
中でも、彼女の柔らかな澄んだ声が好きだった。微かな甘やかな響きを持っていた。それが、何度も何度も俺を誘惑するように俺を呼んだ。その声を聞くたびに、胸が高鳴った。
可憐な容姿でまわりを惹きつけるくせに、
恥ずかしがりで、少し甘えっ子で、健気で控えめな優しい性格。
彼女を意識しないでおこうと努力も虚しく、俺は彼女に惹かれていった。
高校を卒業したら必ず家を出ると決意した。
そんな俺だから気づいたのかもしれない。
そんなのはおかしいと理性ではわかる。
でもそれならば俺だって同じだ。彼女を求めてやまないのだから。
俺と同じようにこの家の中にもう1人、彼女を異性としてみている者がいることに。
彼女は小柄であどけない顔をしているくせに、どこか色香が漂うような、不思議な少女だった。
慈愛に満ちた無垢な笑顔、はにかむとバラ色に染まる頬、色素の薄い髪と瞳は母親譲りだった。潤んだ大きな瞳の奥が、いつも揺れていた。
彼女を見ていたのは竜之介ではない。
俺の父親だった。
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