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剣を抜かない勇者 《竜之介》
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剣を抜かない傷ついた真の勇者にはお姫様との甘い時間がお約束である。
2人きりの時間くらい作ってやるさ。
有栖がひとりで介抱したいと言うので、殴れた兄にサービスタイムをくれてやった。
僕には殴られるだけで帰ってくるなんてとてもできそうにない。
でも兄のやり方のが賢明に決まっている。
殴り返すなんて火に油を注ぐだけ。
兄の戦い方がきっと正しい。
***
その日…つまり父と対峙した日から、兄は少し変わった。
いや、いつもどおりだ。
余裕のある笑みも、ユーモアを交えた話術も、有栖に注がれる優しい眼差しも変わらない。
ただ、有栖に触れる時、一瞬躊躇うような仕草をしたり、笑った後に、苦しそうな……傷ついたような翳りのある表情をしてさっと隠す。
父になにか言われたのだろうか。
鉄心石腸の兄を痛めつけるなんてさすがというか、父の恐ろしさを改めて感じた。
父は人の弱いところ、脆いところを瞬時に見抜き、そこをえぐるようにして人を自分の思い通りにする。
兄だってそれはよくわかっていて、父のペースに持っていかれないように、言葉を選んで会話していたはずだろうけど。父のが一枚上手だったのだろうか。
***
僕たちは、兄の準備してくれていたこの部屋で生活をはじめて2週間ほど過ぎた。
2.3日は僕も学校を休んで、有栖のそばにいたが、長く2人とも休むと学校から父に連絡がいくなどの心配もあったため、有栖を1人残して登校している。有栖を1人にすることは心配だったが、また父が学校にこないかも気になっていた。
兄が時々自宅に戻り、必要なものを持ってきてくれたが(兄は、自宅から直接この部屋に戻ることは絶対せず、必ず仕事場を挟み、それでも父からつけられていないか周囲を気にしながら戻ってきた)あれから父が自宅に戻った形跡はないようだった。
僕も学校から帰る時は、念入りにまわりを警戒して、父だけでなく怪しい車がいないか気にしながらバスに乗り帰宅した。
姿をみせない父の考えが読めず、不気味だった。
有栖は思いのほか元気にしてくれていて、部屋の中で勉強したり、料理をしたりして僕らの帰りを待っていてくれた。
とは言え、ずっと有栖をこの部屋に閉じ込めて置くわけにはいかない。
(僕はひどく安心だけど)
1人でいるといろいろなことを考えてしまうだろうし…。
これからのことを考えていかなければいけない。
父が有栖を諦めたという確証がつかめたらいいのだけれど…それか、また仕事で海外赴任になり僕らから遠いところに行ってくれたら一番いいのだが……。
2人きりの時間くらい作ってやるさ。
有栖がひとりで介抱したいと言うので、殴れた兄にサービスタイムをくれてやった。
僕には殴られるだけで帰ってくるなんてとてもできそうにない。
でも兄のやり方のが賢明に決まっている。
殴り返すなんて火に油を注ぐだけ。
兄の戦い方がきっと正しい。
***
その日…つまり父と対峙した日から、兄は少し変わった。
いや、いつもどおりだ。
余裕のある笑みも、ユーモアを交えた話術も、有栖に注がれる優しい眼差しも変わらない。
ただ、有栖に触れる時、一瞬躊躇うような仕草をしたり、笑った後に、苦しそうな……傷ついたような翳りのある表情をしてさっと隠す。
父になにか言われたのだろうか。
鉄心石腸の兄を痛めつけるなんてさすがというか、父の恐ろしさを改めて感じた。
父は人の弱いところ、脆いところを瞬時に見抜き、そこをえぐるようにして人を自分の思い通りにする。
兄だってそれはよくわかっていて、父のペースに持っていかれないように、言葉を選んで会話していたはずだろうけど。父のが一枚上手だったのだろうか。
***
僕たちは、兄の準備してくれていたこの部屋で生活をはじめて2週間ほど過ぎた。
2.3日は僕も学校を休んで、有栖のそばにいたが、長く2人とも休むと学校から父に連絡がいくなどの心配もあったため、有栖を1人残して登校している。有栖を1人にすることは心配だったが、また父が学校にこないかも気になっていた。
兄が時々自宅に戻り、必要なものを持ってきてくれたが(兄は、自宅から直接この部屋に戻ることは絶対せず、必ず仕事場を挟み、それでも父からつけられていないか周囲を気にしながら戻ってきた)あれから父が自宅に戻った形跡はないようだった。
僕も学校から帰る時は、念入りにまわりを警戒して、父だけでなく怪しい車がいないか気にしながらバスに乗り帰宅した。
姿をみせない父の考えが読めず、不気味だった。
有栖は思いのほか元気にしてくれていて、部屋の中で勉強したり、料理をしたりして僕らの帰りを待っていてくれた。
とは言え、ずっと有栖をこの部屋に閉じ込めて置くわけにはいかない。
(僕はひどく安心だけど)
1人でいるといろいろなことを考えてしまうだろうし…。
これからのことを考えていかなければいけない。
父が有栖を諦めたという確証がつかめたらいいのだけれど…それか、また仕事で海外赴任になり僕らから遠いところに行ってくれたら一番いいのだが……。
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