49 / 81
迎えに行く 《竜之介》
しおりを挟む
電話の向こうは無言だったけれど、確かに有栖の気配を感じた。
息を押し殺しているのまで感じられるような、空気が震えているのすら伝わってくるようだった。
だから僕は短く叫んだ。
「有栖、逃げろ!」
有栖に届いただろうか。
彼女の携帯電話にGPS機能をつけておかなかったことが心の底から悔やまれた。まさか彼女の電話番号を父が入手して、有栖を呼び出すなんて…。
考えが甘かった。
僕と兄は携帯電話を鳴らし続けながら、有栖が再び電話を取ってくれることを祈りながら、父が向かいそうな場所を片っ端から探すくらいしかできなかった。
いつ父親に気づかれて、有栖の携帯を切ったり叩き壊してしまわないか、鳴らし続けるのは生きた心地がしない。
父親と娘がどこへ行ったって警察は取り合ってくれるはずもない。
なにも出来ない無力な自分が憎かった。
時刻は午前3時を回っていた。
どこにいるんだ、有栖……
有栖、有栖……有栖……祈るような気持ちと胸騒ぎが交錯する。
有栖、もう一度、電話にでて……
その時、ふいに着信音が途切れた。
「有栖!」
電話口から風の音が聞こえるような気がする…
いや、これは風の音ではない。…波…??
「有栖…?今、どこにいるの…っ!?」
電話の向こうで有栖が息を飲んだような気がした。
「有栖、お願い……答えて……」
僕は絞り出すような声で問いかける。
これで電話が切れてしまったら、もう二度と有栖に会えないような気がした。
「お願い…答えて…なんでもいいから。必ず迎えに行く」
僕は繰り返す。
ためらう気配が感じられるような気がした。
有栖、切らないで。
電話口の向こうで聞き取れないほど小さな声がする。声は震えていた。
「……N埠頭…」
僕は安堵と、何か言い知れぬ不安が入り交じったような気持ちになる。
「わかった!すぐ行く!
そこにいて……お願い……!!」
僕が言い終わるか終わらないかのうちに、電話は切れてしまった。
息を押し殺しているのまで感じられるような、空気が震えているのすら伝わってくるようだった。
だから僕は短く叫んだ。
「有栖、逃げろ!」
有栖に届いただろうか。
彼女の携帯電話にGPS機能をつけておかなかったことが心の底から悔やまれた。まさか彼女の電話番号を父が入手して、有栖を呼び出すなんて…。
考えが甘かった。
僕と兄は携帯電話を鳴らし続けながら、有栖が再び電話を取ってくれることを祈りながら、父が向かいそうな場所を片っ端から探すくらいしかできなかった。
いつ父親に気づかれて、有栖の携帯を切ったり叩き壊してしまわないか、鳴らし続けるのは生きた心地がしない。
父親と娘がどこへ行ったって警察は取り合ってくれるはずもない。
なにも出来ない無力な自分が憎かった。
時刻は午前3時を回っていた。
どこにいるんだ、有栖……
有栖、有栖……有栖……祈るような気持ちと胸騒ぎが交錯する。
有栖、もう一度、電話にでて……
その時、ふいに着信音が途切れた。
「有栖!」
電話口から風の音が聞こえるような気がする…
いや、これは風の音ではない。…波…??
「有栖…?今、どこにいるの…っ!?」
電話の向こうで有栖が息を飲んだような気がした。
「有栖、お願い……答えて……」
僕は絞り出すような声で問いかける。
これで電話が切れてしまったら、もう二度と有栖に会えないような気がした。
「お願い…答えて…なんでもいいから。必ず迎えに行く」
僕は繰り返す。
ためらう気配が感じられるような気がした。
有栖、切らないで。
電話口の向こうで聞き取れないほど小さな声がする。声は震えていた。
「……N埠頭…」
僕は安堵と、何か言い知れぬ不安が入り交じったような気持ちになる。
「わかった!すぐ行く!
そこにいて……お願い……!!」
僕が言い終わるか終わらないかのうちに、電話は切れてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
記憶をなくしても君は忘れない
水城ひさぎ
恋愛
本田光莉(ほんだひかり)、アメリカ・ロサンゼルス在住フォトグラファー、28歳。光莉には、松村理乃(まつむらりの)という同い年の異母姉がいる。行方不明になった理乃を探すため、日本へやってきた光莉は、高校時代の元カレ、月島拓海(つきしまたくみ)と再会する。しかし、彼は高校時代以降の記憶を喪失していた……。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~
世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。
──え……この方、誰?
相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。
けれど私は、自分の名前すら思い出せない。
訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。
「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」
……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!?
しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。
もしかして、そのせいで私は命を狙われている?
公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。
全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね!
※本作品はR18表現があります、ご注意ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】
藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。
そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。
記憶を抱えたまま、幼い頃に――。
どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、
結末は変わらない。
何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。
それでも私は今日も微笑む。
過去を知るのは、私だけ。
もう一度、大切な人たちと過ごすために。
もう一度、恋をするために。
「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」
十一度目の人生。
これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる