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鱗が剥がれた人魚 《海里》 (改題)

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見つけた時、有栖は腰まで海水に浸かっていた。

乱れて釦の千切れたブラウスとスカートのまま。ブラウスの中にはなんの下着もつけておらず、滑らかな白い肩が剥き出しになって闇の中に浮かんで見えた。

俺たちを認めると、微かに唇が動いたようだったが、声にはならなかった。
竜之介が慌てて、自分のパーカーを脱いで有栖の肩にかける。
かけられたパーカーの肩のあたりを有栖は焦点の合わない空虚な目で見つめている。

海の水に濡れて震えている彼女を引き寄せて抱きしめる。
有栖の反応はない。

抱き上げると彼女の身体があまりにも軽くて目眩がした。
ひどく抵抗したのだろうか…口元は切れ血が滲んでいた。首筋にも手首にも指の跡がうっすらと残っている。手首はなにかで強く縛られた痛々しい痕もあった。

そして夥しい口づけの痕。
倒錯した一方的な愛の行為の痕は、まるで血のように生々しく赤く残されていた。

俺は怒りで気が触れそうになる。怒りの行き場がなく唇がわなわなと震え、奥歯を噛み締めた。

その瞬間、有栖の固く固く縮こまっていた身体の力が俺の腕の中でだらりと抜けるのを感じた。
「有栖!!」
腕の中の彼女は、まるで消えてしまうのではないかというほど儚く、血の気の失せた顔色をしていた。

「……る」
竜之介がほぼ無意識に口のなかでなにか呟いている。
「…殺してやる…」
その声は普段の彼の穏やかな声からは想像もつかないほど低く……怒りを孕んでいた。殺意というより、どこまでも深い哀しみを感じさせる声だった。

俺は有栖の身体をぎゅっと抱きしめた。
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