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三章
四十一話 なぜか惹かれてしまう
マリアンヌが補佐として公爵邸に来てくれて、早いもので一週間が経っていた。
彼女は驚くほど仕事の覚えが早く、特に記憶力がずば抜けていた。
また、彼女はあの事件以来社交界に顔を出すことを控えてはいたものの、仲の良いご令嬢との交流は続けていたそうだ。
そのご令嬢が人脈に長けているということもあり、社交界に顔を出さずともある程度の情報を把握しているのだとか。
正直、俺は社交界には顔を出さないようにしているので、マリアンヌから提供される情報は本当に役に立つものばかりだった。
その一方で……少し気になることがある。
それは、マリアンヌが俺を見る目が、明らかに他者とは違う、ということだ。
「クラウド様、お疲れでしたら……この後私と、街にでも出かけませんか? たまには息抜きも必要だと思うのです」
「……悪いが、俺には妻がいるんだ。君と二人で出掛けることはできない。息抜きなら、アイリス嬢と行ってきたらどうだろうか?」
「そ、それでは意味がないのです! 私は、クラウド様と……!」
……こんな風に、彼女は一日に一度のペースで、俺と息抜き……いや、デートに誘ってくるのだ。
これではいくら恋愛経験が浅い俺でも、流石にわかってしまう。
マリアンヌは、俺に好意があるのだろう。
しかし、俺はマリアンヌを良き仕事のパートナーだとは認識していても、女性として見ることはどうしてもできなかった。
……そもそも、俺にはあの事件以来、マリアンヌに対して罪悪感を抱いているのだ。とてもじゃないが、そんな気分にはなれない。
食い下がってくるマリアンヌをどう断ろうか悩んでいたその時、ノック音が響いた。
「失礼いたします。お茶を持ってまいりました。最近お疲れのようですので、今日はハーブティーにいたしました」
____俺の妻だというアイリス嬢が、侍女の格好をして部屋に入ってきた。
彼女はマリアンヌが公爵邸に来てからというもの、このように毎日侍女として働いてくれている。
流石に初日にこの格好を見た時は驚いて、「公爵夫人である君がそんな格好をする必要は無い」と止めた。
だが、彼女は「屋敷の中でしたら、誰にも見られませんし公爵家の品格に影響はございませんでしょう?」とにこやかに笑ったのだ。
それからというものの、アイリス嬢は毎日俺とマリアンヌにお茶を持ってきてくれたり、部屋を片付けてくれたり……時には庭師と共に、花の世話をしている。
俺は、そんな彼女のことがどうにも気になって仕方がないのだ。
初対面同然のはずなのに、彼女を見てると心がざわつく。
男の使用人と話しているところを見るだけで、胸が焼けるようにジリジリと熱くなった。
そして何よりも____毎日寝る前に、彼女と話す数十分間が、今の俺にとっての何よりの楽しみになっている。
会話内容自体は、そんな派手なものじゃない。今日はどんなことがあったとか、お互いの好きなお茶だとか、ただの雑談だ。
一度、結婚生活について聞いたこともあったが……その質問をした途端、彼女が苦しそうに顔を歪めたのを見て、すぐに話題を変えた。
……確か彼女は、「政略結婚だった」と言っていた。
「クラウド様には良くしていただいていた」とも言っていたが……もしかしたら、それは彼女が気を遣ってくれただけで、実際には酷い態度をとっていたのかもしれない。
____いや、もしかしたら彼女には元々想い人がいて……そんな中、無理矢理俺との結婚が決まってしまったのかもしれないな。
だが、それでも……間違いなく一番心が安らぐ瞬間が、アイリス嬢との夜の雑談だった。
理屈ではない、本能がそう告げているのだ。
____もう、認めるしかないだろう。
俺は、アイリス嬢に惹かれ始めている。それも、心だけでなく身体がまるで彼女への想いを覚えているかのように。
……だが、この結婚を続けていいのかと思う出来事が、この日の晩に起きてしまったのだった。
彼女は驚くほど仕事の覚えが早く、特に記憶力がずば抜けていた。
また、彼女はあの事件以来社交界に顔を出すことを控えてはいたものの、仲の良いご令嬢との交流は続けていたそうだ。
そのご令嬢が人脈に長けているということもあり、社交界に顔を出さずともある程度の情報を把握しているのだとか。
正直、俺は社交界には顔を出さないようにしているので、マリアンヌから提供される情報は本当に役に立つものばかりだった。
その一方で……少し気になることがある。
それは、マリアンヌが俺を見る目が、明らかに他者とは違う、ということだ。
「クラウド様、お疲れでしたら……この後私と、街にでも出かけませんか? たまには息抜きも必要だと思うのです」
「……悪いが、俺には妻がいるんだ。君と二人で出掛けることはできない。息抜きなら、アイリス嬢と行ってきたらどうだろうか?」
「そ、それでは意味がないのです! 私は、クラウド様と……!」
……こんな風に、彼女は一日に一度のペースで、俺と息抜き……いや、デートに誘ってくるのだ。
これではいくら恋愛経験が浅い俺でも、流石にわかってしまう。
マリアンヌは、俺に好意があるのだろう。
しかし、俺はマリアンヌを良き仕事のパートナーだとは認識していても、女性として見ることはどうしてもできなかった。
……そもそも、俺にはあの事件以来、マリアンヌに対して罪悪感を抱いているのだ。とてもじゃないが、そんな気分にはなれない。
食い下がってくるマリアンヌをどう断ろうか悩んでいたその時、ノック音が響いた。
「失礼いたします。お茶を持ってまいりました。最近お疲れのようですので、今日はハーブティーにいたしました」
____俺の妻だというアイリス嬢が、侍女の格好をして部屋に入ってきた。
彼女はマリアンヌが公爵邸に来てからというもの、このように毎日侍女として働いてくれている。
流石に初日にこの格好を見た時は驚いて、「公爵夫人である君がそんな格好をする必要は無い」と止めた。
だが、彼女は「屋敷の中でしたら、誰にも見られませんし公爵家の品格に影響はございませんでしょう?」とにこやかに笑ったのだ。
それからというものの、アイリス嬢は毎日俺とマリアンヌにお茶を持ってきてくれたり、部屋を片付けてくれたり……時には庭師と共に、花の世話をしている。
俺は、そんな彼女のことがどうにも気になって仕方がないのだ。
初対面同然のはずなのに、彼女を見てると心がざわつく。
男の使用人と話しているところを見るだけで、胸が焼けるようにジリジリと熱くなった。
そして何よりも____毎日寝る前に、彼女と話す数十分間が、今の俺にとっての何よりの楽しみになっている。
会話内容自体は、そんな派手なものじゃない。今日はどんなことがあったとか、お互いの好きなお茶だとか、ただの雑談だ。
一度、結婚生活について聞いたこともあったが……その質問をした途端、彼女が苦しそうに顔を歪めたのを見て、すぐに話題を変えた。
……確か彼女は、「政略結婚だった」と言っていた。
「クラウド様には良くしていただいていた」とも言っていたが……もしかしたら、それは彼女が気を遣ってくれただけで、実際には酷い態度をとっていたのかもしれない。
____いや、もしかしたら彼女には元々想い人がいて……そんな中、無理矢理俺との結婚が決まってしまったのかもしれないな。
だが、それでも……間違いなく一番心が安らぐ瞬間が、アイリス嬢との夜の雑談だった。
理屈ではない、本能がそう告げているのだ。
____もう、認めるしかないだろう。
俺は、アイリス嬢に惹かれ始めている。それも、心だけでなく身体がまるで彼女への想いを覚えているかのように。
……だが、この結婚を続けていいのかと思う出来事が、この日の晩に起きてしまったのだった。
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