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四章
五十一話 格の違い
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渇いた口を潤すために、お茶をひと口だけ飲み込む。
所作はなるべく優雅に。緊張していることなんて絶対に悟らせない。
私はカップをソーサラーに置いてから、ゆったりと口を開いた。
「では……お話します。私と夫がどのようにして出会い、愛するようになったのか」
そう言うと、貴婦人達の目が一斉に輝いたのがわかった。
女性はやっぱり、こういう恋の話や噂話が大好きなのよね。
こうなったらもう、母には止められない。
特に貴族社会なんて……一見なんてことないような情報が役に立つことだってあるんだもの。
この話を止めるなんて、自らやましいことがあると表明してるようなものだ。
私は少し恥ずかしそうな表情を浮かべながら、内緒話をするように話し始めた。
「皆様、ここだけの内緒にしてくださいね? 実は……私には婚約者がいたのですが、妹との浮気が発覚して破談になってしまいまして……」
「まぁ! なんてこと……」
ざわっ……と貴婦人達が険しい表情になる。
当たり前よね。
妹との浮気なんて、倫理観や貞操観念が疑われますもの。
私は、今度は悲しそうな表情をして、口をゆっくり開いた。
「……それで、お忍びで街の酒屋に行ったんです。気晴らしになるかと思いまして……そこで、同じく気分転換で酒屋に来ていた夫と出会ったのですわ。それで意気投合いたしまして……翌日に結婚の申し込みをされたのです」
「なんてロマンチック…!!」
「まさしく運命の出会いですわね……!」
貴婦人達は一転、ニコニコとした表情で相槌を打つ。
……まぁ、この国でもかなりの力を持つグレンウィル公爵夫人に、失礼な態度なんてとれないものね。
「これが本当の夫との出会いですわ。なので、夫との結婚に実家は一切関係ありませんし、訳あって援助も行っておりません」
私はハッキリと宣言した。
グレンウィル公爵家と、レインフォード伯爵家は友好関係にないということを。
お母様が私を睨んでいるのがわかる。
悔しいでしょうね。でも、あなたの思う通りにはさせないわ。
そして貴婦人達は、当然『訳あって』の部分に反応してソワソワしている。
____貴族たるもの、期待には答えてあげなくちゃね?
「ここだけの話ですが……実は、元婚約者のモールディング侯爵子息と、実妹に誘拐をされまして……。無事夫の助けで帰ってくることが出来たのですが、その事件がきっかけで夫は両家との関わりを絶っているのです。身内のお恥ずかしい話ではありますが……」
少しだけフェイクを混ぜながら話しているけれど……大筋は間違っていないから、問題ないわよね。
そしてこの話は、母が尤もされたくなかった話のはず。
そう思って母を見ると、ものすごい形相でこちらを睨んでいる……が、その顔は真っ青だ。
貴婦人達も、あまりの事実に言葉を失っている。
「……ですから、先程レインフォード伯爵夫人が仰っていたことは真っ赤な嘘ですわ。……場の空気をこれ以上乱してしまうのは申し訳ないので、私はそろそろお暇いたします」
これ以上この場にいるのは得策ではない。
そう判断して、私は席を立ってお辞儀をした。
____ヒヒーンッ……。
丁度このタイミングで、グレンウィル公爵家の馬車が到着したようだし、退散するなら今しかないわね。
……やっぱり、クラウド様がいらっしゃると安心感が段違いだわ。
そう思いながら馬車の方へ歩き出した時のこと。
「あなた……よくもっ……!!」
____私を追いかけてきたらしい母が、私の腕を強く掴んできた。
所作はなるべく優雅に。緊張していることなんて絶対に悟らせない。
私はカップをソーサラーに置いてから、ゆったりと口を開いた。
「では……お話します。私と夫がどのようにして出会い、愛するようになったのか」
そう言うと、貴婦人達の目が一斉に輝いたのがわかった。
女性はやっぱり、こういう恋の話や噂話が大好きなのよね。
こうなったらもう、母には止められない。
特に貴族社会なんて……一見なんてことないような情報が役に立つことだってあるんだもの。
この話を止めるなんて、自らやましいことがあると表明してるようなものだ。
私は少し恥ずかしそうな表情を浮かべながら、内緒話をするように話し始めた。
「皆様、ここだけの内緒にしてくださいね? 実は……私には婚約者がいたのですが、妹との浮気が発覚して破談になってしまいまして……」
「まぁ! なんてこと……」
ざわっ……と貴婦人達が険しい表情になる。
当たり前よね。
妹との浮気なんて、倫理観や貞操観念が疑われますもの。
私は、今度は悲しそうな表情をして、口をゆっくり開いた。
「……それで、お忍びで街の酒屋に行ったんです。気晴らしになるかと思いまして……そこで、同じく気分転換で酒屋に来ていた夫と出会ったのですわ。それで意気投合いたしまして……翌日に結婚の申し込みをされたのです」
「なんてロマンチック…!!」
「まさしく運命の出会いですわね……!」
貴婦人達は一転、ニコニコとした表情で相槌を打つ。
……まぁ、この国でもかなりの力を持つグレンウィル公爵夫人に、失礼な態度なんてとれないものね。
「これが本当の夫との出会いですわ。なので、夫との結婚に実家は一切関係ありませんし、訳あって援助も行っておりません」
私はハッキリと宣言した。
グレンウィル公爵家と、レインフォード伯爵家は友好関係にないということを。
お母様が私を睨んでいるのがわかる。
悔しいでしょうね。でも、あなたの思う通りにはさせないわ。
そして貴婦人達は、当然『訳あって』の部分に反応してソワソワしている。
____貴族たるもの、期待には答えてあげなくちゃね?
「ここだけの話ですが……実は、元婚約者のモールディング侯爵子息と、実妹に誘拐をされまして……。無事夫の助けで帰ってくることが出来たのですが、その事件がきっかけで夫は両家との関わりを絶っているのです。身内のお恥ずかしい話ではありますが……」
少しだけフェイクを混ぜながら話しているけれど……大筋は間違っていないから、問題ないわよね。
そしてこの話は、母が尤もされたくなかった話のはず。
そう思って母を見ると、ものすごい形相でこちらを睨んでいる……が、その顔は真っ青だ。
貴婦人達も、あまりの事実に言葉を失っている。
「……ですから、先程レインフォード伯爵夫人が仰っていたことは真っ赤な嘘ですわ。……場の空気をこれ以上乱してしまうのは申し訳ないので、私はそろそろお暇いたします」
これ以上この場にいるのは得策ではない。
そう判断して、私は席を立ってお辞儀をした。
____ヒヒーンッ……。
丁度このタイミングで、グレンウィル公爵家の馬車が到着したようだし、退散するなら今しかないわね。
……やっぱり、クラウド様がいらっしゃると安心感が段違いだわ。
そう思いながら馬車の方へ歩き出した時のこと。
「あなた……よくもっ……!!」
____私を追いかけてきたらしい母が、私の腕を強く掴んできた。
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