旦那様に「どうでもいい」と言われました。それなら私も、自由にさせていただきます。

音芽 心

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二話 ご対面

 求婚を受け入れてからの数週間は、本当にあっという間だった。もちろん準備の段取りも私がしたのだけれど。

 出発の日なんか、侍女たちがわんわん泣いて見送ってくれるものだから……。
 私って戦地にでも行くのかしら?なんて思ったりもしたわ。

 それからしばらく馬車に揺られて着いた伯爵邸は……もう、マガーリッジ子爵邸とは比べ物にならないほど多くて立派なお屋敷だった。

 私、本当に今日からこの家で住むのよね、と思わず息を呑んだくらい。

 そうしたら伯爵家の侍女らしき方が迎えに来てくださって、荒れ果てている庭を突っ切ってから、立派な玄関扉の前に立つ。

 ギィィ……と音を立ててゆっくりと開いた扉の向こうには、それはそれは広い玄関ロビーが見えたのだけれど……。

 それより気になったのは、なぜか私の目の前で仁王立ちしているイケメンだった。

 ____間違いない、この人がクランドール伯爵だわ。

 正直イケメンだとか美青年だとか、あまり興味がなかったけれど……。
 なるほど、たしかにとんでもない美形ね。

 キラキラと輝くブロンドの髪に、吸い込まれそうな空色の瞳。薄くて艶のある唇に、影を落とすほどながいまつ毛……。

 神様がこの方の造形だけ特別気合を入れて生み出したような……そんなオーラがある。

 これは令嬢達も必死になるわけだわ……と思いながらも、私は少し困惑していた。

 なぜって、クランドール伯爵が何も仰らないから。

 マナーとして、クランドール伯爵の方から挨拶をするのが筋ってものだと思うのだけれど……。

 そんな風に思いながら、クランドール伯爵の顔を見つめる。


 すると何を勘違いなさったのか、彼は鬱陶しそうに眉間に皺を寄せながら、冷たくこう言い放ったのである。

「お前が何を期待してここに来たのかは知らないが、俺はこの結婚に一切興味がない」

 ……???

「……え?」
「よって、形式上妻となるお前のこともどうでもいい。悪女は悪女らしく、贅沢でもなんでもしたらどうだ。金は自由に使って構わない。好きに暮らせ」
「……は、はぁ……」

 …………そして、現在に至る、というわけよ。

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