聞かなかったのは、どちらだったのか

アレクは夢を見た。
幼いエミリアが泣いている。
お気に入りのガゼボのベンチに座って。

不意に顔を上げたエミリア。
さっきよりも大人びている。

泣いていたはずの目は、乾いていた。
表情はない。

なんで、そんな目で俺を見る?

これは夢だ。
そう分かっているのに、目を覚ます方法が分からない。

多分、婚約者であるエミリアのことだ。
彼女のことで、何かを忘れている。
ーー大切な何かを。

起きて、思い出さなければ。

大切な何かが、壊れてしまう。

早く、思い出さなければーー。

そうしなければ、
きっと取り返しがつかなくなる。

不安を胸に、アレクの朝は始まった。




※本作は、カクヨム、なろう、noteにも掲載しております。


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