処刑された元公爵令嬢ですが、どうやら乙女ゲームの悪役令嬢に転生したみたいです 〜そもそも乙女ゲームって何ですか?〜

音芽 心

文字の大きさ
12 / 26

十二話 元公爵令嬢、自己紹介で注目を浴びる

しおりを挟む
「つ……疲れた……」

 この展開、なんだかデジャヴね……。
 でも正直、昨日の朝食会よりも何倍も疲れたわ。無事に部屋に帰って来た時の安心感がこんなにすごいとは思わなかったもの……。

 なんせ今日の入学式は、情報量が多すぎたわね。
 友人ができたのは喜ばしいことだけれど、流石にもう一人の転生者と出会うなんて、思っていなかったわけだし。

 ……しかもここが乙女ゲームの世界だなんて、小説より何倍も意味が分からない展開だわ。

 そんなことを考えながら、制服のままベッドに寝転がる。
 私は比較的学園が近いので通学組だけれど、フリージアは寮組だ。情報を交換できる場が少ないのは不便ね……。

「……学校は無理でしょうし……それなら、ここに呼べばいいのかしら?」

 ____そうよ、フリージアを伯爵邸に招待すればいいのだわ!! そうと決まれば、早速明日フリージアを誘ってみないと……!

 ***

「え、私がセシリア様の家に……!?」

 翌日、朝のHRが始まる前に早速フリージアに声をかける。すると、フリージアは大層驚いた様子で両手を口で覆った。

「えぇ、その……ゲームのことで、話したいこともあるし……ね」
「確かに! この間の説明じゃまだ全然語り切れてないもんね~、セシリア様の魅力!!」
「そこはなんでもいいのよ……。とにかく、どうかしら? 予定が合えば今日にでも」
「え、今日!?」
「だめかしら?」
「う、ううん! ちょっと推しの家に訪問イベントとか急展開過ぎて、情緒ぐっちゃぐちゃになりかけただけだから……。 行きたい! めっちゃ楽しみにしてる!」

 ……なんだかよくわからないけれど、これは快諾してくれたってことで……いいのよね?

「決まりね。なら、帰りは一緒に馬車で向かいましょう」
「お、推しの馬車……!! 気絶するかも……!」
「しないでちょうだい」

 そんな軽口を叩いていると、担任と思われる女性が教室に入ってきた。その途端、周りの生徒たちが一斉に静かになる。
 流石、貴族が集まっている学園ね。

「皆さん、ごきげんよう。今日は全員揃っておりますので、一日遅れてしまいましたが自己紹介を行いましょうか」

 あら、自己紹介? てっきり昨日終わってしまったと思っていたのに……。私とフリージアがいなかったから、延期にしてくれたのかしら。
 そうだとしたら、優しい先生ね。

 自己紹介は前世に散々経験したけれど……せっかくだもの、他の生徒の自己紹介を聞いてからが嬉しいわよね。
 何より、一人目でフォーマットが決まってしまうんだもの。伯爵令嬢には荷が重いわ。
 まぁ、後ろの端に座っているから大丈夫でしょうけど……。

「では……そうですね、一番後ろ、窓際に座っている方からお願いします」

 ____全然大丈夫じゃなかったわ。

 はぁ、とため息を吐いてしまいそうになるのを笑顔で堪える。隣に座っているフリージアが「ファイト!」と小声で応援してきた。
 この子、私の次は自分の番だってこと気付いていないのかしら……。

 そんなことを考えながら、ゆっくりと立ち上がる。もちろん、一切姿勢は崩さない。

「セシリア・ランカスターと申します。どうぞ皆様、よろしくお願いいたします」

 ざわっ、と周囲がどよめいた気配を感じた。でも、絶対に笑顔は崩さない。
 そして、最後に軽く一礼して、着席。

 ……わかっていたけど、セシリアの悪評は私が思っているよりも広まっていそうね。この先が思いやられるわ……。エドナとソフィアがにこやかに拍手をしてくれたことだけが救いね。
 一方で、担任は感心したように拍手をして満足気に笑っている。

「はい、セシリアさん、お手本のような素晴らしい自己紹介をありがとうございます。では次、お隣の方どうぞ」
「えっ!? わ、私!?」

 ……本当に気付いていなかったのね。やっぱりこの子、抜けてるわ……!!

 ***

「は~~~……朝の自己紹介、めっちゃ焦った~~!」
「私の真似をすればいいだけなんだから、簡単じゃない」
「セシリア様の真似はね、元庶民にはできないの! 教室の半分くらいはセシリア様の名前に反応してたけど……もう半分は、セシリア様の所作に驚いてたんだから!」
「そうだったの?」

 放課後、フリージアと話しながら校門までの道を歩く。
 フリージアは私の返事にやれやれと言った様子で、「これだからセシリア様は……好き!」と叫んでいた。勘弁してちょうだい。

「さて……これが、伯爵家の馬車よ」

 校門で待ってくれていた御者に手を振ってから、フリージアを馬車に誘導する。

「うわぉ……うちの馬車と豪華さが違いすぎる……」
「これでも前世に比べれば、大分落ち着いてる方だと思うけれどね。さて、乗りましょうか。……エスコートしてあげる」
「~~~~~っ! だから、ずるいって本当に……! 私はもう攻略済みだってばぁ!!」

 真っ赤になって叫ぶフリージアに手を貸しながら、私達は馬車に乗り込んだのだった。

 ____そういえば、ギルバートって攻略対象だったわよね? 本来のヒロインであるフリージアと会ったら、どうなるのかしら。

 ……まぁ、細かいことは今考えても仕方ないわよ、ね……?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

10日後に婚約破棄される公爵令嬢

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。 「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」 これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

攻略対象の王子様は放置されました

蛇娥リコ
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます

・めぐめぐ・
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。 気が付くと闇の世界にいた。 そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。 この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。 そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを―― 全てを知った彼女は決意した。 「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」 ※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪ ※よくある悪役令嬢設定です。 ※頭空っぽにして読んでね! ※ご都合主義です。 ※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)

悪役令嬢は断罪の舞台で笑う

由香
恋愛
婚約破棄の夜、「悪女」と断罪された侯爵令嬢セレーナ。 しかし涙を流す代わりに、彼女は微笑んだ――「舞台は整いましたわ」と。 聖女と呼ばれる平民の少女ミリア。 だがその奇跡は偽りに満ち、王国全体が虚構に踊らされていた。 追放されたセレーナは、裏社会を動かす商会と密偵網を解放。 冷徹な頭脳で王国を裏から掌握し、真実の舞台へと誘う。 そして戴冠式の夜、黒衣の令嬢が玉座の前に現れる――。 暴かれる真実。崩壊する虚構。 “悪女”の微笑が、すべての終幕を告げる。

処理中です...