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しおりを挟むあの後、盗賊達を討伐した国王騎士団に僕は保護された
国王城に連れてこられ、風呂に入れられ、傷の手当てをされ、温かい食事も与えられた。国王騎士団は村の惨状をみて、何が起きたのか理解していたのだろう、僕に村について聞いてくることはなかった。身寄りのない僕をこの城にとどめたのは他でもない、あの時騎士達を率いていた、国王騎士団団長、この国の第一王子のレヴァール•オブシディアンだった。
この城に保護された二年間、僕は精神的に衰弱し、心のない人形の様だった。そんな僕の元に彼は頻繁にやってきた。
銀色の美しい髪に狼の獣人を表す耳、黄金色に輝く凛とした瞳を持つ彼は、僕の元にやってきては城の外、城下の事や、騎士団の事、この国の豊かさを語ってくれた。
死にたかった。苦しかった。大切な人は誰一人助からなかったのに、自分だけのうのうと生きてる事が許せなかった。
そんな自分が許されて、生きていていいのだろうか。
闇の中で、自責の念に押し潰されそうな僕の手を握り彼は言う、
レヴァール「生きろ。生きる事を諦めるな」
綺麗事かもしれない。偽善かもしれない。
でも僕は、そんな言葉に救われた。罪の意識から逃れるためにしがみついただけかもしれない、でも、それでも、生きたいと、死にたくないと… そう思った。
あの凄惨な事件から二年、僕は二十歳になった。
少しずつ立ち直り、心を修復していった。立ち直れたのも、修復できたのも、全てレヴァールのおかげだった
生きろ と、言ってくれた。
諦めるな と。
不思議と彼といる様になって、事件から失われていたいろんな感情が戻ってきた。
楽しい、嬉しい、温かい、そして……
愛おしい。
繰り返す日々の中で、僕は彼に恋をした。
城下や、色んなところに僕を連れ出してくれた。
色んな事を教えてくれた、
僕のことを、大切だと、愛していると言ってくれた。
凄惨な過去から立ち上がれたのは他でもない彼のおかげ。
優しくて、温かい…レヴァールのおかげ…
二十歳になった春の日、僕は彼に娶られた
バシャァァ!!!!
彼と出会った昔のことを、ふと思い出していたら
大きな水音と、冷たい感覚に意識が覚醒する。
何が起きたのか自分でもわからないが、ただわかる事があるとするならば、目の前にいる勝気な女性に水を浴びせられたと言う事だろうか。
「邪魔なのよ、貴方。見てくれがいいからって、レヴァール様の妻ですって?ふざけんじゃないわよ!」
またこれか。元々彼が僕に付きっきりの時から嫌がらせはちょくちょくあったが、彼に正式に娶られてから、侍女や、元々妻候補であった姫君達からの嫌がらせが絶えなくなった。一国の王子の妻になったからといってそう易々と嫌がらせはなくならなかった。
水を浴びせられたりなんてのは日常茶飯事、
ひどい時には階段から落とされた時もある。心配するレヴァールには自ら転んだと嘘をついた。護衛の騎士が突き落とされた現場を見ていたはずなのに彼に報告しないと言う事は、そう言う事なのだろう。この城で僕の味方は彼だけだった。だからこそ彼に迷惑だけはかけたくなかった。彼はこの栄える国の王子、そして騎士団長でもある。そんな彼の手をいくら妻だからといって煩わせたくなかったのが本音だ。
「なんとか言いなさいよ!この、悪魔!」
悪魔 これは僕に危害を加える人達が僕を呼ぶ時に使う言葉。あの凄惨な村の事件で一人だけ生き残るなんて、悪魔としか考えられないっと、以前、面と向かって言われてしまった。流石にその時は一週間ほど部屋から出れなかった。
レヴァールが僕を心配して付きっきりになったりして大変だった。
耐えれた。彼がいるから。
どんなにひどい事を言われても。されても、
レヴァールがそばにいて、僕の隣で笑っていてくれれば、僕は幸せだから。
ぎゅっと唇を噛み、彼女の神経を逆撫でしない様にする。
黙って耐える。それが僕に与えられた選択肢
大丈夫。今は辛くたって、後で彼に会える。愛おしい彼のそばに入れるなら、耐えなくては…
どんなに辛くなって……耐えなくてちゃ…
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