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第三章「魔王ちゃん、王都を救う」
第三十四話「いきなりランクアップ」
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冒険者ギルドの執務室。
フィンとクレイはソファーに座ってテーブルを挟み、ギルド長キリルと対面していた。
「なるほど、君はリーンベイル出身ですか」
そう言いながら、キリルは袂から小さな包みを取り出す。
中に入った粉薬を口に入れると、秘書が用意した水で喉に流し込んだ。
「リーンベイルをご存知なんですね」
フィンが尋ねると、キリルはハンカチで口元をぬぐって答えた。
「もちろん。〈治癒の薬草〉の有名な産地ではないですか」
自分の腹を撫でながら、キリルは言った。
「リーンベイルの〈治癒の薬草〉は〈ヌメヌメ草〉と調合することで、素晴らしい胃薬になるんです」
キリルは青白い顔でニヤリと笑う。
「私は状況に合わせて数種類の胃薬を使い分けています。今のは“冒険者に謝罪するとき用”の胃薬です。久々に飲みましたよ」
「それはどうも……」
フィンはなんだか、逆にこちらが謝らなければいけないような気がしてくる。
キリルはもういちど、頭を下げた。
「本当に申し訳ございませんでした。モルデン侯爵の推薦とあらば無碍には致しませんでしたものを……失敬。早速ですが本題に入りましょう」
そうして、書類をテーブルに広げる。
「手紙には、バーチボルトさんの功績について詳しく書かれていました。それらを勘案致しますと……」
キリルは羽ペンで、書類に書き込んだ。
「冒険者ランクはCからのスタートが妥当でしょう」
「いきなりCですか!?」
フィンは目を見開いた。
リーンベイルではあまり用いられない冒険者ランクだが、フィンとクレイは便宜上“F”ということになっている。
それがフィンだけ、一足飛びに“C”だ。
「シーってすごいんですか? 旦那さま」
「ちょっとめまいがするくらいにはね……」
フィンは王都に来てから、驚いてばかりだ。
まさかモルデン侯爵の推薦が、これほど力を発揮するとは。
「地域を悩ませていた賊をひとりで一掃し、連続殺人犯の逮捕に大きく貢献……あなたをただの狩人と評価するのは間違いでしょう」
「よくわかってるじゃないですか! 寿命が短そうな人間だなと思って見てましたけれど、判断力はあるんですね!」
クレイは無邪気な笑顔を見せる。
キリルは黙って、新しい胃薬を取り出した。
「これは“冒険者に侮辱されたとき用”の胃薬です」
「いろいろ持ってますね! やはり長生きしたいんですか?」
「長生きよりも、今の痛みをどうにかしたいんですよ。我々“胃薬の民”は」
はかない顔で微笑むキリルに、フィンは謝るタイミングを完全に見失った。
キリルは腹をさすりながら、それでも真剣な目をフィンに向ける。
「王都の冒険者ギルドは実力主義です、フィン・バーチボルトさん。活躍を期待していますよ」
「……ええ、力を尽くします」
キリルとの手続きを済ませて、フィンたちは執務室から出た。
再びホールに戻ると“Cランク”と書かれた掲示板から、クエストを見繕う。
「着いていきなりハードなのは、避けたいな……となると」
本来、狩人の受けるクエストというのは、ちょっとした弱い魔物の狩猟や調査がメインだ。
戦術面においても、戦略面においても、サポート役としての立ち回りを求められるのが狩人である。
だから冒険者ランクにおいて、Cまでたどり着く狩人は、基本的にいない。
つまりフィンが弓矢を背負って、Cランクのクエストを選んでいる姿は目立つのだ。
あちこちから声が聞こえた。
「リーンベイルとかいう街の英雄らしいぜ……」
「あのモルデン侯爵に気に入られたとか……」
「だから狩人のくせにCランクなのか……」
そんなフィンの背後を、イスに座って睨みつけている男がいた。
フィンは当然、その視線に気づいている。
(田舎者が嫌いなやつもいるんだろうな)
そんなことを思いながら、フィンはクエストを掲示板からはがした。
再び列に並ぼうとした矢先、さっきの男がフィンの足をひっかけようと、つま先を前に突き出した。
「………………」
そんなものに引っかかるほど、フィンは抜けてはいない。
やれやれとばかりに足を軽くまたぐと、男が難癖をつけてきた。
「そこのお前、俺の前を黙って横切ったな?」
見れば、筋骨隆々の大男だ。
巨大な盾と頑丈そうな鎧を見るに“タンク”の役割を負っている戦士だろう。
「誰もあんたに頭を下げて通っちゃいないようだけど」
「新入りは別なんだよ」
そう言って、男は立ち上がる。
「リーンベイルの英雄だかなんだか知らねえが、ずいぶんとラクに出世してるみたいじゃねえか……だがなあ」
男は胸にぶら下げた“冒険者の証”をかざして言った。
「俺の名はダブーン・オーガスタ。冒険者ランクは……Bだ!」
ガン、と、これもまた巨大なメイスの柄で床を叩いた。
「冒険者には冒険者の秩序ってもんがあるだろうが。CランクごときがBランク様に口答えするんじゃねえ、特に俺にはな! わかるかァ?」
「………………」
フィンがなんとも答えられずにいると、ダブーンは大声で怒鳴った。
「俺がこの冒険者ギルドのルールだ! Aランクを超えるとも言われる耐久力と攻撃力、それらを兼ね備えた俺には、ふさわしい態度で接してもらわないとなァ」
「それはすまなかった」
ただでも目立っているらしいのに、来て早々に問題は起こしたくない。
軽く頭を下げて列に並ぼうとするが、ダブーンはまだ文句が言い足りないらしい。
「ポッと出の田舎者がさらすには、それなりのツラってもんがあるだろうが?」
完全にいいがかりだ。
「なんだその反抗的な顔は? 俺はお前みたいな田舎者が俺はいちばん嫌いなんだよ!」
メイスをガンガン鳴らしながら、ダブーンは続ける。
「知ってるぜ? リーンベイルとかいう田舎じゃあ、狩人は戦士の靴をなめて生きてるんだろ? 俺の靴もなめてみろよ。お?」
「悪いが、俺の故郷じゃそんな習慣はなかったよ」
「だったら改めて命令してやるよ! 俺の靴をなめろ! Bランク様に反抗して、このギルドで生きていけるわけねえんだよ! わかってんのか!?」
場を収めるためだとはいえ、さすがに靴をなめるわけにはいかない。
さてどう対処したものかとフィンが考えていると、クレイがとんでもないことを言い出した。
「Bランクって、ヒマなんですね」
場の空気が、凍りついた。
フィンとクレイはソファーに座ってテーブルを挟み、ギルド長キリルと対面していた。
「なるほど、君はリーンベイル出身ですか」
そう言いながら、キリルは袂から小さな包みを取り出す。
中に入った粉薬を口に入れると、秘書が用意した水で喉に流し込んだ。
「リーンベイルをご存知なんですね」
フィンが尋ねると、キリルはハンカチで口元をぬぐって答えた。
「もちろん。〈治癒の薬草〉の有名な産地ではないですか」
自分の腹を撫でながら、キリルは言った。
「リーンベイルの〈治癒の薬草〉は〈ヌメヌメ草〉と調合することで、素晴らしい胃薬になるんです」
キリルは青白い顔でニヤリと笑う。
「私は状況に合わせて数種類の胃薬を使い分けています。今のは“冒険者に謝罪するとき用”の胃薬です。久々に飲みましたよ」
「それはどうも……」
フィンはなんだか、逆にこちらが謝らなければいけないような気がしてくる。
キリルはもういちど、頭を下げた。
「本当に申し訳ございませんでした。モルデン侯爵の推薦とあらば無碍には致しませんでしたものを……失敬。早速ですが本題に入りましょう」
そうして、書類をテーブルに広げる。
「手紙には、バーチボルトさんの功績について詳しく書かれていました。それらを勘案致しますと……」
キリルは羽ペンで、書類に書き込んだ。
「冒険者ランクはCからのスタートが妥当でしょう」
「いきなりCですか!?」
フィンは目を見開いた。
リーンベイルではあまり用いられない冒険者ランクだが、フィンとクレイは便宜上“F”ということになっている。
それがフィンだけ、一足飛びに“C”だ。
「シーってすごいんですか? 旦那さま」
「ちょっとめまいがするくらいにはね……」
フィンは王都に来てから、驚いてばかりだ。
まさかモルデン侯爵の推薦が、これほど力を発揮するとは。
「地域を悩ませていた賊をひとりで一掃し、連続殺人犯の逮捕に大きく貢献……あなたをただの狩人と評価するのは間違いでしょう」
「よくわかってるじゃないですか! 寿命が短そうな人間だなと思って見てましたけれど、判断力はあるんですね!」
クレイは無邪気な笑顔を見せる。
キリルは黙って、新しい胃薬を取り出した。
「これは“冒険者に侮辱されたとき用”の胃薬です」
「いろいろ持ってますね! やはり長生きしたいんですか?」
「長生きよりも、今の痛みをどうにかしたいんですよ。我々“胃薬の民”は」
はかない顔で微笑むキリルに、フィンは謝るタイミングを完全に見失った。
キリルは腹をさすりながら、それでも真剣な目をフィンに向ける。
「王都の冒険者ギルドは実力主義です、フィン・バーチボルトさん。活躍を期待していますよ」
「……ええ、力を尽くします」
キリルとの手続きを済ませて、フィンたちは執務室から出た。
再びホールに戻ると“Cランク”と書かれた掲示板から、クエストを見繕う。
「着いていきなりハードなのは、避けたいな……となると」
本来、狩人の受けるクエストというのは、ちょっとした弱い魔物の狩猟や調査がメインだ。
戦術面においても、戦略面においても、サポート役としての立ち回りを求められるのが狩人である。
だから冒険者ランクにおいて、Cまでたどり着く狩人は、基本的にいない。
つまりフィンが弓矢を背負って、Cランクのクエストを選んでいる姿は目立つのだ。
あちこちから声が聞こえた。
「リーンベイルとかいう街の英雄らしいぜ……」
「あのモルデン侯爵に気に入られたとか……」
「だから狩人のくせにCランクなのか……」
そんなフィンの背後を、イスに座って睨みつけている男がいた。
フィンは当然、その視線に気づいている。
(田舎者が嫌いなやつもいるんだろうな)
そんなことを思いながら、フィンはクエストを掲示板からはがした。
再び列に並ぼうとした矢先、さっきの男がフィンの足をひっかけようと、つま先を前に突き出した。
「………………」
そんなものに引っかかるほど、フィンは抜けてはいない。
やれやれとばかりに足を軽くまたぐと、男が難癖をつけてきた。
「そこのお前、俺の前を黙って横切ったな?」
見れば、筋骨隆々の大男だ。
巨大な盾と頑丈そうな鎧を見るに“タンク”の役割を負っている戦士だろう。
「誰もあんたに頭を下げて通っちゃいないようだけど」
「新入りは別なんだよ」
そう言って、男は立ち上がる。
「リーンベイルの英雄だかなんだか知らねえが、ずいぶんとラクに出世してるみたいじゃねえか……だがなあ」
男は胸にぶら下げた“冒険者の証”をかざして言った。
「俺の名はダブーン・オーガスタ。冒険者ランクは……Bだ!」
ガン、と、これもまた巨大なメイスの柄で床を叩いた。
「冒険者には冒険者の秩序ってもんがあるだろうが。CランクごときがBランク様に口答えするんじゃねえ、特に俺にはな! わかるかァ?」
「………………」
フィンがなんとも答えられずにいると、ダブーンは大声で怒鳴った。
「俺がこの冒険者ギルドのルールだ! Aランクを超えるとも言われる耐久力と攻撃力、それらを兼ね備えた俺には、ふさわしい態度で接してもらわないとなァ」
「それはすまなかった」
ただでも目立っているらしいのに、来て早々に問題は起こしたくない。
軽く頭を下げて列に並ぼうとするが、ダブーンはまだ文句が言い足りないらしい。
「ポッと出の田舎者がさらすには、それなりのツラってもんがあるだろうが?」
完全にいいがかりだ。
「なんだその反抗的な顔は? 俺はお前みたいな田舎者が俺はいちばん嫌いなんだよ!」
メイスをガンガン鳴らしながら、ダブーンは続ける。
「知ってるぜ? リーンベイルとかいう田舎じゃあ、狩人は戦士の靴をなめて生きてるんだろ? 俺の靴もなめてみろよ。お?」
「悪いが、俺の故郷じゃそんな習慣はなかったよ」
「だったら改めて命令してやるよ! 俺の靴をなめろ! Bランク様に反抗して、このギルドで生きていけるわけねえんだよ! わかってんのか!?」
場を収めるためだとはいえ、さすがに靴をなめるわけにはいかない。
さてどう対処したものかとフィンが考えていると、クレイがとんでもないことを言い出した。
「Bランクって、ヒマなんですね」
場の空気が、凍りついた。
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