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博識なる芋虫
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ヘトヘトの体に鞭打って、黒いネズミは極彩色の景色の中を駆け抜けていた。
「まだ先なのか?」
「もっと、もぉっと先だ」
地を走るネズミを見下ろす頭上の木に、鑑賞でもするように時折気まぐれにチェシャ猫は姿を現した。
「方向は合ってるのか?」
「大体合ってれば大丈夫だ」
「適当なことを言うなって!」
「そこそこ広いんだあそこは。辿り着きさえすれば後は早い。ネズミのお前なら大体の方向へ向かえば外れることは無い」
ふわぁ~ぁと気の抜けたあくびと共に返ってきてやや苛立ちながら黒いネズミは四足歩行で走っていく。
黙っていると先程の裁判もどきのことを思い出してただでさえ胸がムカムカとして苛立ってくる。とはいえ話し相手は消えては現れるような猫だけだ。
気を紛らわせるように脚に力を込めて地を駆けていると唐突に光が目に入って木に覆われた森の暗がりを抜けたことが分かった。
「おや、思ったより速かったなぁ。ネズミの走る速度は分からないもんだ」
「はぁっ、はぁっ、着いたのか?」
呑気なチェシャ猫が姿を現して横でスンスンと鼻を鳴らしている。
そうしていると本当の猫のようだな、と思いながら辺りを見回す。開けた先が丘のようになっていて降り注ぐ日を浴びて緑がキラキラと輝いている。目が眩みそうな程に眩しい景色だった。
「どうした?急に俯いて。体が痛むのか?走っている時にどこか引っかけたか?」
「……いや。なんでもない」
黒いネズミの様子を訝りながら、チェシャ猫は丘の向こうを指差した。
「あの先に目的の奴がいる。もうすぐ目の前だ」
丘の裏手に回ると、木々の合間に水たまりのようなものができていた。
それを水草が囲いテラリウムのように彩られている。
「この辺りに誰かが居るのか?」
ぐるりと見回しても一見人影は見えない。頭上を見上げても特に目につくものはない。
「ああ、とっくに目の前に居るぜ」
「……実はお前だったとかいうオチじゃないよな?」
「お前、ネズミのくせに分からないのか?お前の方が近くに居るのに」
そう言われてネズミは眉を潜めて辺りを再度見渡した。今度は自分の近くを重点的に見ていると、水たまりのほとり、ウチワのように広がった水草の上に蠢く影が目に止まる。
「……なんだってここに黒いネズミを連れてきたんだ?チェシャ猫」
「…………」
葉の上で横たわっていた胴体がを捩って、頭が僅かに持ち上がる。緑の体に黒とオレンジの幾何学的な模様を纏った芋虫がチェシャ猫に話しかけていた。
「黒いネズミ自身があんたに会いたがったからさ」
「なるほど。君は何で私に会いたがったんだ?」
小さな体が首を傾げるような動きをする。この世界に来てからおかしなことは嫌というほど目にしてきた。目の前の小さな芋虫に知識を借りようとすることだってアホらしいと笑う余裕も今の黒いネズミには無かった。
「ハートの女王が罪人帳というのを持っていて、それに俺の名前が載っているんだ。でも俺はそんな罪を犯した記憶は無いんだ。でも女王だけじゃなくて、まともそうだったハートのJもチェシャ猫も罪人帳は正しいようなことを言う。あれは本当に正しいんですか?」
「……罪人帳に名が載るということは、この世界が罪ありと判断したということだ」
「世界が?じゃあ、女王が正しいっていうんですか?」
「女王と罪人帳は関係ない。女王が罪人帳を操っているわけではない。ただ彼女がこの世界にとって裁くものであるだけだ」
黒いネズミは頭の中で芋虫の言うことを咀嚼しようとする。芋虫は黙ってこちらを伺っていたが、黒いネズミは混乱が増していくようだった。
「……この世界っていうのは何ですか?俺は、本当は違う世界で生活している、筈なんです。初めここに来た時、夢でも見てるんだと思った。でもいつまでたっても覚めることがない」
「それでは……どうやってここに来たかは覚えているのか?」
「え?」
別の世界のことを肯定するような物言いに、一瞬戸惑う。しかし言われてみれば、どうやって、いつ、この夢の中に迷い込んだのか。
なんとなく普段のように寝ている間に夢を見ている気がしていた。ではその前は。
眠る直前まで何をしていたか。
最新の記憶は、大学に居た気がする。冬季の課題を終わらせるために後輩と同期と共に図書館に籠もっていた記憶がある。
遅くなってきたので区切りをつけて、先に夕飯を済ませようと外に出て、イルミネーションが光っているのが、目に、ついて、
「………………」
「おい、大丈夫かネズミ。またどこか痛むのか?」
「……それを思い出せば或いはヒントになるかもしれない」
芋虫の言葉で、割れるような頭痛と激しい動悸に持っていかれそうな意識が浮上する。何故こうなるのか分からない。ただどうやら、この世界で目を覚ます直前に本来の人間の世界で何をしていたかよく思い出せないことが分かった。何気ない日常の中で迷い込んだと思っていたが、自分の身に何かあったかもしれない。
ともすれば事故にでも巻き込まれて、昏睡状態で見ている夢なのだろうか。
「君が聞きたいことはそれだけか?」
芋虫は淡々と問いかける。黙って質問をただ待っているその姿が、ふと先程も頭をよぎった大学の教授と重なった。
そのイメージに引きずられたのかもしれないが、黒いネズミは芋虫が信頼できるような気がした。
「あの、気になっていることが」
「何かな」
「アリスが……アリスと初めてあった時、ひどい頭痛がして……」
「アリスか。頭痛がしただけかね?」
「……今、思えば……あの服……」
「服?」
「あの服、見覚えがある気がする……」
あの白いジャケット、身の丈に合わないブーツ。
「偶然な気がする。全然関係ない気がする。でもあれは、俺が昔、小学生の時に創作劇で着た衣装、か……?」
「ふーん。どんな劇なんだ?」
「別に普通の。攫われたお姫様を王子様が助けるみたいな。俺は確か、騎士の役で……」
「つまらないほどに王道だな」
「まあ、そんなもんだろ子供の劇なんて」
「ふーん。それに似てるのか、アリスの服が」
「……ああ、なんでかは、分からないけど……たまたまかも……俺の記憶も朧気だし」
チェシャ猫と芋虫は黙って聞いていた。こうして考えると、黒いネズミは自分にある種の不調があることを感じ始めていた。
「ごめん。変な話をして」
「……君は、これからどうしたいんだ?」
「……夢から覚めたい。思い出せば目が覚めるのか?本当は何か俺が罪を犯していて、その断罪のためにここに来たのなら、思い出したらそのまま死ぬのか」
「さて。見当がつかない。……もし死ぬとしたら、君は思い出したくはないか?女王の手を逃れて暮らす方法なら手助けすることができる。そうすればそのうちふと目が覚めて元の生活に戻ることがあるかもしれない。罪人帳のことも、この世界のことも忘れて目が覚めるのを待つんだ」
「忘れて……目が覚めるのを待つ……」
頭痛がする。
ずっと、頭痛がしている。アリスに会った時から。
女王の前に押し出された時から。
チカチカと明滅する記憶をたぐろうとする度に頭痛がする。
胸がざわめいて悪夢の蓋に手をかけるような寒気がする。
それを開けばこのちっぽけな体など吹き飛んでしまいそうな嫌な予感が止まない。
芋虫の諭すような言葉が正解のような気がする。
それが自分のためのような気がする。
「……いや」
チェシャ猫が貼り付けたような笑みでこちらを伺っている。芋虫は変わらず無言で答えを待っているようだった。
「女王が、俺の母親にそっくりだった」
丘を越えた辺りから、ここが見覚えのある場所によく似ていることに気づいていた。この木々の匂いを感じて不思議と暖かな気持ちになった。
「声も、顔も、性格も、よく似ていた。家を出て久しいから、これまで記憶も曖昧だったけど」
「ふーん。お前の母親か」
チェシャ猫は興味があるような無いような声で相槌を打った。芋虫は黙ったままだった。
「あの人とは正直夢の中でもあまり関わりたくない。ただアリスを罪人として処刑させようとしているのは止めさせたい。アリスがこの世界で暴れ回っているのも止めてほしい」
「ふーん。アリスを止めて女王も止めるか。割と無茶なことを言うなぁ」
チェシャ猫はニヤニヤと笑った。芋虫は体を揺らしていたかと思うと、間を開いて口を開いた。
「そういうことなら助言しよう。アリスを守る騎士たちの倒し方が分かるまでアリスに会ってはいけない」
「えっ」
黒いネズミは目を瞬いた。まずはアリスに会って話をしたいと思っていたので、真逆とも言える芋虫の意見に戸惑う。
「あの、別にアリスと戦う気はなくて。騎士を倒すとかも別に」
「君にその気がなくてもあちらがそうとは限らない」
「いや、前に一度会った時にアリスは剣を下ろして引いたんです。誰でも斬りつけようとしてる訳じゃない」
「……だが、斬りつけてこないとも言い切れない」
予想外に芋虫が頑ななことに黒いネズミは面食らった。更にチェシャ猫が後を追うように口を開く。
「たまたまあの時は白ウサギを殺せてご機嫌だったのかもしれない。次に会う時はネズミを串刺しにしたい気分かもしれない」
「そんなことは無いだろ」
そう言いつつ断言できるほどアリスのことを知っている訳ではない。
「ていうか、白ウサギは死んでないだろ」
「そうだ、生きてる生きてる」
チェシャ猫がてきとうな相槌を打つ。黒いネズミは呆れてチェシャ猫を見た。チェシャ猫は目を細めて楽しげに笑っている。
「じゃあ俺からもアドバイスだ。お前の罪だが、なんで罪人かが分かればお前は罪人じゃなくなるぜ」
「なんだそれは?そんなことあるか?大体、なんで罪人かなんて俺が一番知りたいよ」
「だろうな」
「罪を知るには、やっぱり俺がここに来る前の記憶を取り戻すしか無いのか」
「さあな。そんなの俺が知るわけないだろう」
無頓着な言い草に肩を落とす。チェシャ猫はニヤニヤと笑うばかりでそれ以上を語る気は無さそうだった。
助けを求めるように芋虫に視線をやると、ゆらり、と首を傾けた。
「君の罪について私から語ることは無い」
「そう、ですか……」
落胆する黒いネズミをチェシャ猫と芋虫が見守っていた。
「聞きたいことはそれで全てかな?」
「そうですね……そういえば、パンジーが女王が夢を叶える方法を知っているって、あれは結局嘘だったのかな」
そもそも女王に会おうと思った切欠を思い出す。
「パンジー達は嘘をつかないだろう。だが真実が君に語られる訳でもないだろう」
「それは……矛盾していないですか?嘘をつかないということは、それは真実なのでは?」
「私はただ知っていることを語るだけだ」
禅問答だろうか。そういえば現実の教授にもこういうところがあった。いや、この芋虫を教授というのは若干憚られるが。
「あの時は大蛇を追って慌ただしく別れたけど、もう一回会いに行こうかな。アリスの騎士についても何か知っていそうだったし」
「ここからだとそこそこ遠いぜ。女王の城には近づかない方が良いだろうしな」
「うん、パンジー達に会うなら森を南に進むと良いだろう。森の中で一夜を明かすことになるが、地面を掘って穴の中で眠れば安全だ」
「そうか……大丈夫かな、変な病気になったりしないかな」
「へっへっへ!」
チェシャ猫が心底面白そうに笑った。
「ネズミが病気の心配してら」
「なんだよ……良いだろ別に」
「大体お前、もう尻尾が欠けてるだろ。余計なことを気にするなって」
「尻尾……?」
慣れない部位で常に目につくわけでもないので今まで気がつかなかったが、自分の尾を手繰り寄せると、確かに途中で千切れたように短くなっている。
「本当だ……」
「鈍感なやつだな。ちゃんと自分の姿を見たらどうだ?」
チェシャ猫に面白がられて、不服な思いで黒いネズミは目の前の水たまりに近寄っていった。
水面に影が落ち、光が反射して黒いネズミの姿が鏡のようにこちらを覗いている。
自分の姿を認識した時、またしても黒いネズミはあの頭痛に襲われた。
頭の中で記憶の断片がフラッシュバックする。
小さな掌の中に収まる黒いネズミのぬいぐるみ。
尾の長いそれの手触りまで蘇ってくる。
そして、
そして、
地面を伝う赤い線
尾の千切れた黒いネズミが、
遠くで何かが声を上げている。
慟哭が聞こえる。
身を裂かれるような痛みが襲ってくる。
自分に何が起きているのかが分からない。
この世の悲しみを詰め込んだような、悲痛な慟哭は段々と近づいてきて、
その音が自分の喉から溢れていることに気がついた。
「ぁあ……ぁ……」
「……おい、もう終わったか?」
「……大丈夫か?」
耳を塞いでいた手を外してチェシャ猫が口は笑っていたが忌々しげな声で吐き捨てる。
芋虫は丸めていた身を解いてこちらを案じていたがその声は弱々しかった。
「お、おれ………」
「びっくりしたぞ。驚かすなら前もって言ってくれ」
「…………」
ドクドクと心臓が早鐘を打っている。汗が吹き出して寒気がする。
何か致命的な記憶の蓋を開きかけた気がする。それを開けば全てが終わるような、地獄の蓋のようなものが。
「具合が悪そうだ。」
「……いえ、」
黒いネズミは立ち上がった。今の記憶の断片は何だったのか。恐る恐るもう一度水面を覗いてみる。覗き返す黒いネズミの姿を目にしても、今度は先程のようなフラッシュバックは起こらなかった。
「今日はもう休んでいったらどうだ」
気遣わしげに芋虫が提案したが、少し迷ってから首を振って答えた。
「いえ、もう行きます。ありがとうございました。色々教えてもらって」
目的は終わったのだ。ここに居座れば、それこそ芋虫の助けに乗りたくなってしまいそうだった。
「今まで、俺はただ巻き込まれた無関係な人間だと思ってた。でも自分に何か欠けていることが分かった。多分それを埋めるために俺はここに居るんだ。誰かが俺にそれを埋めて欲しくてここに呼んだんだ。だから逃げてはいけない気がする」
自分の口から出てきた言葉が自分の存在を、進む道を確かにしたような感覚がした。どこに行けば良いか分からずグルグルと回っていた羅針盤の方向がようやく定まった気になった。
顔を上げるとチェシャ猫は真顔でこちらをじっと見ていた。
「うわっ、怖っ!」
「へっへっへ、プリティで可愛いって?」
「お前が真顔ってめちゃくちゃ怖いよ。プリティも可愛いも同じ意味だし」
ニタニタ笑いに戻ったチェシャ猫を見て揶揄われてるなと顔を顰めた。助けられてはいるが何とも薄気味悪い猫だと改めて思う。
チェシャ猫を胡乱げに見ていると下の方から「はぁ」とため息が聞こえてきた。
「……君の罪だが、チェシャ猫の言うことは概ね正しい」
「……!」
芋虫は頭を葉の上に伏せた。熟考しているようにも項垂れているようにも見えたが芋虫の感情はいまいち読めない。
「いつか分かるだろう。何故アリスが、黒いネズミが罪人帳に名を連ねたのか。ただその罪は、この世界を生み出した者が定めたに過ぎない。この世界の『罪』が君の想像する『罪』と同じとは限らない」
「……この世界を……生み出した者が定めた……俺が想像する罪とは違う……それは、誰ですか。誰が何を罪にしたって言うんですか」
「……それは君が探すんだ。誰かがこの世界を創り出した。誰かがこの夢のような世界を見ているんだ」
「へっ!博識なだけはある。よく弁が立つなぁ」
「……」
チェシャ猫はニヤニヤと笑っていたが黒いネズミにはそれが苛ついているようにも見えた。芋虫の言葉をどのように解釈していいかは分からない。ただ覚えておくべきヒントのような気がした。
それにアリスと黒いネズミを罪人と決めつけない存在がいることは崩れそうな心を持ち直させる。
「ありがとうございます……俺、行きます」
「ああ。道は分かるのか?」
「チェシャ猫、案内してくれないか?」
「別に構わないが、今回は途中までだぜ。俺はお前の専属ガイドじゃないからな」
「そっか……まあ仕方ないか。分かるところまで頼む」
黒いネズミとチェシャ猫は芋虫の棲家を後にして南へ向かっていった。
芋虫は1人丸い葉の上でそれを見送った。
「君が蓋をしている記憶が開く時、全て分かるだろう。それこそが救いであり、罰なのだ。
その時に後悔してももう遅い。……全てが手遅れになったとしても、どうか上手くいくことを祈っている」
芋虫の呟きは誰に聞かれることもなく風に流されて消えていった。
緑の丘を照らす太陽は傾き始め、世界は夕暮れに近づいていた。
「まだ先なのか?」
「もっと、もぉっと先だ」
地を走るネズミを見下ろす頭上の木に、鑑賞でもするように時折気まぐれにチェシャ猫は姿を現した。
「方向は合ってるのか?」
「大体合ってれば大丈夫だ」
「適当なことを言うなって!」
「そこそこ広いんだあそこは。辿り着きさえすれば後は早い。ネズミのお前なら大体の方向へ向かえば外れることは無い」
ふわぁ~ぁと気の抜けたあくびと共に返ってきてやや苛立ちながら黒いネズミは四足歩行で走っていく。
黙っていると先程の裁判もどきのことを思い出してただでさえ胸がムカムカとして苛立ってくる。とはいえ話し相手は消えては現れるような猫だけだ。
気を紛らわせるように脚に力を込めて地を駆けていると唐突に光が目に入って木に覆われた森の暗がりを抜けたことが分かった。
「おや、思ったより速かったなぁ。ネズミの走る速度は分からないもんだ」
「はぁっ、はぁっ、着いたのか?」
呑気なチェシャ猫が姿を現して横でスンスンと鼻を鳴らしている。
そうしていると本当の猫のようだな、と思いながら辺りを見回す。開けた先が丘のようになっていて降り注ぐ日を浴びて緑がキラキラと輝いている。目が眩みそうな程に眩しい景色だった。
「どうした?急に俯いて。体が痛むのか?走っている時にどこか引っかけたか?」
「……いや。なんでもない」
黒いネズミの様子を訝りながら、チェシャ猫は丘の向こうを指差した。
「あの先に目的の奴がいる。もうすぐ目の前だ」
丘の裏手に回ると、木々の合間に水たまりのようなものができていた。
それを水草が囲いテラリウムのように彩られている。
「この辺りに誰かが居るのか?」
ぐるりと見回しても一見人影は見えない。頭上を見上げても特に目につくものはない。
「ああ、とっくに目の前に居るぜ」
「……実はお前だったとかいうオチじゃないよな?」
「お前、ネズミのくせに分からないのか?お前の方が近くに居るのに」
そう言われてネズミは眉を潜めて辺りを再度見渡した。今度は自分の近くを重点的に見ていると、水たまりのほとり、ウチワのように広がった水草の上に蠢く影が目に止まる。
「……なんだってここに黒いネズミを連れてきたんだ?チェシャ猫」
「…………」
葉の上で横たわっていた胴体がを捩って、頭が僅かに持ち上がる。緑の体に黒とオレンジの幾何学的な模様を纏った芋虫がチェシャ猫に話しかけていた。
「黒いネズミ自身があんたに会いたがったからさ」
「なるほど。君は何で私に会いたがったんだ?」
小さな体が首を傾げるような動きをする。この世界に来てからおかしなことは嫌というほど目にしてきた。目の前の小さな芋虫に知識を借りようとすることだってアホらしいと笑う余裕も今の黒いネズミには無かった。
「ハートの女王が罪人帳というのを持っていて、それに俺の名前が載っているんだ。でも俺はそんな罪を犯した記憶は無いんだ。でも女王だけじゃなくて、まともそうだったハートのJもチェシャ猫も罪人帳は正しいようなことを言う。あれは本当に正しいんですか?」
「……罪人帳に名が載るということは、この世界が罪ありと判断したということだ」
「世界が?じゃあ、女王が正しいっていうんですか?」
「女王と罪人帳は関係ない。女王が罪人帳を操っているわけではない。ただ彼女がこの世界にとって裁くものであるだけだ」
黒いネズミは頭の中で芋虫の言うことを咀嚼しようとする。芋虫は黙ってこちらを伺っていたが、黒いネズミは混乱が増していくようだった。
「……この世界っていうのは何ですか?俺は、本当は違う世界で生活している、筈なんです。初めここに来た時、夢でも見てるんだと思った。でもいつまでたっても覚めることがない」
「それでは……どうやってここに来たかは覚えているのか?」
「え?」
別の世界のことを肯定するような物言いに、一瞬戸惑う。しかし言われてみれば、どうやって、いつ、この夢の中に迷い込んだのか。
なんとなく普段のように寝ている間に夢を見ている気がしていた。ではその前は。
眠る直前まで何をしていたか。
最新の記憶は、大学に居た気がする。冬季の課題を終わらせるために後輩と同期と共に図書館に籠もっていた記憶がある。
遅くなってきたので区切りをつけて、先に夕飯を済ませようと外に出て、イルミネーションが光っているのが、目に、ついて、
「………………」
「おい、大丈夫かネズミ。またどこか痛むのか?」
「……それを思い出せば或いはヒントになるかもしれない」
芋虫の言葉で、割れるような頭痛と激しい動悸に持っていかれそうな意識が浮上する。何故こうなるのか分からない。ただどうやら、この世界で目を覚ます直前に本来の人間の世界で何をしていたかよく思い出せないことが分かった。何気ない日常の中で迷い込んだと思っていたが、自分の身に何かあったかもしれない。
ともすれば事故にでも巻き込まれて、昏睡状態で見ている夢なのだろうか。
「君が聞きたいことはそれだけか?」
芋虫は淡々と問いかける。黙って質問をただ待っているその姿が、ふと先程も頭をよぎった大学の教授と重なった。
そのイメージに引きずられたのかもしれないが、黒いネズミは芋虫が信頼できるような気がした。
「あの、気になっていることが」
「何かな」
「アリスが……アリスと初めてあった時、ひどい頭痛がして……」
「アリスか。頭痛がしただけかね?」
「……今、思えば……あの服……」
「服?」
「あの服、見覚えがある気がする……」
あの白いジャケット、身の丈に合わないブーツ。
「偶然な気がする。全然関係ない気がする。でもあれは、俺が昔、小学生の時に創作劇で着た衣装、か……?」
「ふーん。どんな劇なんだ?」
「別に普通の。攫われたお姫様を王子様が助けるみたいな。俺は確か、騎士の役で……」
「つまらないほどに王道だな」
「まあ、そんなもんだろ子供の劇なんて」
「ふーん。それに似てるのか、アリスの服が」
「……ああ、なんでかは、分からないけど……たまたまかも……俺の記憶も朧気だし」
チェシャ猫と芋虫は黙って聞いていた。こうして考えると、黒いネズミは自分にある種の不調があることを感じ始めていた。
「ごめん。変な話をして」
「……君は、これからどうしたいんだ?」
「……夢から覚めたい。思い出せば目が覚めるのか?本当は何か俺が罪を犯していて、その断罪のためにここに来たのなら、思い出したらそのまま死ぬのか」
「さて。見当がつかない。……もし死ぬとしたら、君は思い出したくはないか?女王の手を逃れて暮らす方法なら手助けすることができる。そうすればそのうちふと目が覚めて元の生活に戻ることがあるかもしれない。罪人帳のことも、この世界のことも忘れて目が覚めるのを待つんだ」
「忘れて……目が覚めるのを待つ……」
頭痛がする。
ずっと、頭痛がしている。アリスに会った時から。
女王の前に押し出された時から。
チカチカと明滅する記憶をたぐろうとする度に頭痛がする。
胸がざわめいて悪夢の蓋に手をかけるような寒気がする。
それを開けばこのちっぽけな体など吹き飛んでしまいそうな嫌な予感が止まない。
芋虫の諭すような言葉が正解のような気がする。
それが自分のためのような気がする。
「……いや」
チェシャ猫が貼り付けたような笑みでこちらを伺っている。芋虫は変わらず無言で答えを待っているようだった。
「女王が、俺の母親にそっくりだった」
丘を越えた辺りから、ここが見覚えのある場所によく似ていることに気づいていた。この木々の匂いを感じて不思議と暖かな気持ちになった。
「声も、顔も、性格も、よく似ていた。家を出て久しいから、これまで記憶も曖昧だったけど」
「ふーん。お前の母親か」
チェシャ猫は興味があるような無いような声で相槌を打った。芋虫は黙ったままだった。
「あの人とは正直夢の中でもあまり関わりたくない。ただアリスを罪人として処刑させようとしているのは止めさせたい。アリスがこの世界で暴れ回っているのも止めてほしい」
「ふーん。アリスを止めて女王も止めるか。割と無茶なことを言うなぁ」
チェシャ猫はニヤニヤと笑った。芋虫は体を揺らしていたかと思うと、間を開いて口を開いた。
「そういうことなら助言しよう。アリスを守る騎士たちの倒し方が分かるまでアリスに会ってはいけない」
「えっ」
黒いネズミは目を瞬いた。まずはアリスに会って話をしたいと思っていたので、真逆とも言える芋虫の意見に戸惑う。
「あの、別にアリスと戦う気はなくて。騎士を倒すとかも別に」
「君にその気がなくてもあちらがそうとは限らない」
「いや、前に一度会った時にアリスは剣を下ろして引いたんです。誰でも斬りつけようとしてる訳じゃない」
「……だが、斬りつけてこないとも言い切れない」
予想外に芋虫が頑ななことに黒いネズミは面食らった。更にチェシャ猫が後を追うように口を開く。
「たまたまあの時は白ウサギを殺せてご機嫌だったのかもしれない。次に会う時はネズミを串刺しにしたい気分かもしれない」
「そんなことは無いだろ」
そう言いつつ断言できるほどアリスのことを知っている訳ではない。
「ていうか、白ウサギは死んでないだろ」
「そうだ、生きてる生きてる」
チェシャ猫がてきとうな相槌を打つ。黒いネズミは呆れてチェシャ猫を見た。チェシャ猫は目を細めて楽しげに笑っている。
「じゃあ俺からもアドバイスだ。お前の罪だが、なんで罪人かが分かればお前は罪人じゃなくなるぜ」
「なんだそれは?そんなことあるか?大体、なんで罪人かなんて俺が一番知りたいよ」
「だろうな」
「罪を知るには、やっぱり俺がここに来る前の記憶を取り戻すしか無いのか」
「さあな。そんなの俺が知るわけないだろう」
無頓着な言い草に肩を落とす。チェシャ猫はニヤニヤと笑うばかりでそれ以上を語る気は無さそうだった。
助けを求めるように芋虫に視線をやると、ゆらり、と首を傾けた。
「君の罪について私から語ることは無い」
「そう、ですか……」
落胆する黒いネズミをチェシャ猫と芋虫が見守っていた。
「聞きたいことはそれで全てかな?」
「そうですね……そういえば、パンジーが女王が夢を叶える方法を知っているって、あれは結局嘘だったのかな」
そもそも女王に会おうと思った切欠を思い出す。
「パンジー達は嘘をつかないだろう。だが真実が君に語られる訳でもないだろう」
「それは……矛盾していないですか?嘘をつかないということは、それは真実なのでは?」
「私はただ知っていることを語るだけだ」
禅問答だろうか。そういえば現実の教授にもこういうところがあった。いや、この芋虫を教授というのは若干憚られるが。
「あの時は大蛇を追って慌ただしく別れたけど、もう一回会いに行こうかな。アリスの騎士についても何か知っていそうだったし」
「ここからだとそこそこ遠いぜ。女王の城には近づかない方が良いだろうしな」
「うん、パンジー達に会うなら森を南に進むと良いだろう。森の中で一夜を明かすことになるが、地面を掘って穴の中で眠れば安全だ」
「そうか……大丈夫かな、変な病気になったりしないかな」
「へっへっへ!」
チェシャ猫が心底面白そうに笑った。
「ネズミが病気の心配してら」
「なんだよ……良いだろ別に」
「大体お前、もう尻尾が欠けてるだろ。余計なことを気にするなって」
「尻尾……?」
慣れない部位で常に目につくわけでもないので今まで気がつかなかったが、自分の尾を手繰り寄せると、確かに途中で千切れたように短くなっている。
「本当だ……」
「鈍感なやつだな。ちゃんと自分の姿を見たらどうだ?」
チェシャ猫に面白がられて、不服な思いで黒いネズミは目の前の水たまりに近寄っていった。
水面に影が落ち、光が反射して黒いネズミの姿が鏡のようにこちらを覗いている。
自分の姿を認識した時、またしても黒いネズミはあの頭痛に襲われた。
頭の中で記憶の断片がフラッシュバックする。
小さな掌の中に収まる黒いネズミのぬいぐるみ。
尾の長いそれの手触りまで蘇ってくる。
そして、
そして、
地面を伝う赤い線
尾の千切れた黒いネズミが、
遠くで何かが声を上げている。
慟哭が聞こえる。
身を裂かれるような痛みが襲ってくる。
自分に何が起きているのかが分からない。
この世の悲しみを詰め込んだような、悲痛な慟哭は段々と近づいてきて、
その音が自分の喉から溢れていることに気がついた。
「ぁあ……ぁ……」
「……おい、もう終わったか?」
「……大丈夫か?」
耳を塞いでいた手を外してチェシャ猫が口は笑っていたが忌々しげな声で吐き捨てる。
芋虫は丸めていた身を解いてこちらを案じていたがその声は弱々しかった。
「お、おれ………」
「びっくりしたぞ。驚かすなら前もって言ってくれ」
「…………」
ドクドクと心臓が早鐘を打っている。汗が吹き出して寒気がする。
何か致命的な記憶の蓋を開きかけた気がする。それを開けば全てが終わるような、地獄の蓋のようなものが。
「具合が悪そうだ。」
「……いえ、」
黒いネズミは立ち上がった。今の記憶の断片は何だったのか。恐る恐るもう一度水面を覗いてみる。覗き返す黒いネズミの姿を目にしても、今度は先程のようなフラッシュバックは起こらなかった。
「今日はもう休んでいったらどうだ」
気遣わしげに芋虫が提案したが、少し迷ってから首を振って答えた。
「いえ、もう行きます。ありがとうございました。色々教えてもらって」
目的は終わったのだ。ここに居座れば、それこそ芋虫の助けに乗りたくなってしまいそうだった。
「今まで、俺はただ巻き込まれた無関係な人間だと思ってた。でも自分に何か欠けていることが分かった。多分それを埋めるために俺はここに居るんだ。誰かが俺にそれを埋めて欲しくてここに呼んだんだ。だから逃げてはいけない気がする」
自分の口から出てきた言葉が自分の存在を、進む道を確かにしたような感覚がした。どこに行けば良いか分からずグルグルと回っていた羅針盤の方向がようやく定まった気になった。
顔を上げるとチェシャ猫は真顔でこちらをじっと見ていた。
「うわっ、怖っ!」
「へっへっへ、プリティで可愛いって?」
「お前が真顔ってめちゃくちゃ怖いよ。プリティも可愛いも同じ意味だし」
ニタニタ笑いに戻ったチェシャ猫を見て揶揄われてるなと顔を顰めた。助けられてはいるが何とも薄気味悪い猫だと改めて思う。
チェシャ猫を胡乱げに見ていると下の方から「はぁ」とため息が聞こえてきた。
「……君の罪だが、チェシャ猫の言うことは概ね正しい」
「……!」
芋虫は頭を葉の上に伏せた。熟考しているようにも項垂れているようにも見えたが芋虫の感情はいまいち読めない。
「いつか分かるだろう。何故アリスが、黒いネズミが罪人帳に名を連ねたのか。ただその罪は、この世界を生み出した者が定めたに過ぎない。この世界の『罪』が君の想像する『罪』と同じとは限らない」
「……この世界を……生み出した者が定めた……俺が想像する罪とは違う……それは、誰ですか。誰が何を罪にしたって言うんですか」
「……それは君が探すんだ。誰かがこの世界を創り出した。誰かがこの夢のような世界を見ているんだ」
「へっ!博識なだけはある。よく弁が立つなぁ」
「……」
チェシャ猫はニヤニヤと笑っていたが黒いネズミにはそれが苛ついているようにも見えた。芋虫の言葉をどのように解釈していいかは分からない。ただ覚えておくべきヒントのような気がした。
それにアリスと黒いネズミを罪人と決めつけない存在がいることは崩れそうな心を持ち直させる。
「ありがとうございます……俺、行きます」
「ああ。道は分かるのか?」
「チェシャ猫、案内してくれないか?」
「別に構わないが、今回は途中までだぜ。俺はお前の専属ガイドじゃないからな」
「そっか……まあ仕方ないか。分かるところまで頼む」
黒いネズミとチェシャ猫は芋虫の棲家を後にして南へ向かっていった。
芋虫は1人丸い葉の上でそれを見送った。
「君が蓋をしている記憶が開く時、全て分かるだろう。それこそが救いであり、罰なのだ。
その時に後悔してももう遅い。……全てが手遅れになったとしても、どうか上手くいくことを祈っている」
芋虫の呟きは誰に聞かれることもなく風に流されて消えていった。
緑の丘を照らす太陽は傾き始め、世界は夕暮れに近づいていた。
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