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葛藤

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 食後のお茶を差し出され、ユウトが湯呑みに口を付けた時だった。

「で、何でちゃんと食べて来なかったの?」

 ユウトはまたしても思わず吹いてしまい、湯呑みをテーブルの上へと落とした。

「あちち!」

「だ、大丈夫!? そんなに慌てるとは思わなくて!」

 アキラはてきぱきとテーブルの上を片付けながら、台詞を続ける。

「でもホントに……水瀬さんだってユウトの為に一生懸命作ってくれた訳でしょ? だから――」

「だから? 聞かれたことにはっきり答えれば良かったのか? お前の作った料理の方が美味いって」

「え?」

 そんなアキラにユウトは苛立ちを覚え始めた。

「俺なりに気を使って答えなかったんだよ。それにお前に対抗心剥き出しで、あいつはどう考えても俺には合わなかった」

「そ、そう……」

 アキラは狼狽えた様子だった。自分が引き合いに出されるとは思っていなかったらしい。

「で、でもさ、やっぱり彼女を変えるペースがちょっと早過ぎない?」

「ほとんど来る者拒まずだからそう見えるんじゃないか。とりあえず付き合ってみないと、合う合わないなんて分からないからそうしてるだけだよ」

 ユウトはアキラを突き放すように言った。

「そうなんだ、ごめん……」

 素直に謝るアキラに更に苛立ちを募らせ、嫌みのように言葉を浴びせる。

「お前も女の子が好きって言うんなら、早く彼女作れば? 何回か告白されてんの俺知ってるけど、大した理由もないのに何で断るんだ?」 

「でもオレは、今彼女作ってる余裕無いって言うか……部活も忙しいし、時間拘束されちゃうからさ」

 おまけに、家事やバイトも全て見事にこなしている。

「ああ、そうかよ。悪かったな」

 そんな捨て台詞を吐くと、困惑するアキラを残してユウトは食堂を後にした。

 アキラの言うことはもっともらしかったが、ユウトにはそれが言い訳にしか聞こえなかった。 
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