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少女

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 ホカホカと湯気の立つスープを、ひとすくい口に運ぶ。
 いつも通りの朝食だった。

「やっぱ美味い……」

 料理もやはりいつも通り、アキラの味がした。

 ただ、作った人物がいつものアキラであってアキラでない。

「ホントに? やった、ありがと!」

 その反応の仕方もいつも通りのはずなのだが。

(か、可愛い……確かにアキラなんだけど、何処をどう見ても『女の子』だ。髪結んでるのも、なんかいい――)

 ユウトは明らかにのぼせ上がっていた。


「ユウト! ユウトってば!」

 アキラの慌てた声が聞こえたが「……え?」と完全に反応が遅れている。

「服! スープこぼしてる!」

「ええ! うわ、あっちい!」

「ちょっと、もーなにやってんの? ユウトらしくない」

 アキラは屈み込んで、ユウトのズボンを拭こうとした。
 が、ユウトは慌てて逃げるように立ち上がった。

「いや! いい! 大丈夫だから!」

 こぼした場所が場所だけに、触られたくない。
 しかもこの角度からはアキラの胸元が確実に見えてしまう。
 いくら相手がアキラとはいえ――これはとにかくマズイ。

(いやいやいや! 異変が起きてる本人よりも、俺の方が取り乱してるって……おかしいだろこれ!)

 ユウトは何とか頭を切り換えようとした。

「そ、そうだ! 今日は女物の服、調達に行こう」

「でも、すぐに戻るかもしれないよ? もしかしたら夢かもなんて思ってるくらいだもん、こんなあり得ないこと」

「いいから! ついでに俺の着替えも欲しいし」

「うーん、そうだね。分かったそうする。身体に合わない服って動きにくいしね」

 それより何より、目のやり場に困って仕方がない。
 とにかくこの現状を何とかしなければ自分の身が持たない……

 すでに疲労困憊のユウトの苦悩は、まだ始まったばかりだった。 
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