世界は地球の手のひらで踊る

文月美森

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それぞれの試練

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 ◇◆◇


 遠くで誰かが自分に呼び掛けている――
 アキラはうっすらと目を開けた。

「ちょっとあなた、大丈夫?」

 目の前の女性が話し掛けてきた。
 さっきから自分に呼び掛けてくれていたのは、どうやらこの人のようだ。

「良かった、ずっと目を覚まさないから心配したのよ」

「え……あ、ありがとう……」

 そう言って、体を起こそうとした。

「う……!」

 あまりの痛みに声が漏れる。
 脇腹に激痛が走って、体をまた床に倒した。

(そうだった。確かあいつに蹴られた後、オレ気絶したんだ。こんなのチビが食らっていたらって思うと……良かったオレで)

 呼吸がつらい。どうやら肋骨にヒビが入っているようだ。

 チビは無事だろうか。
 そして、ユウトは―――

「起き上がれなくて……あの、こんなカッコでごめんなさい」

「あら、あたしだって似たようなものよ。こんな物はめられているんだもの」

 二人は、手錠と足枷で拘束されていた。

「あなた、早くここから逃げないと、真っ先にあいつの餌食にされちゃうわよ。基本的にあいつ、年上の女はダメみたいね。なかなか女自体が見つからないからって、私は非常食みたいな物らしいけど」

 情けない……結局自分は、あの男に連れ去られてしまったのか。

「でも、どうやって? 逃げたくても身体が言うことを聞いてくれない……」

「ずっと一人でいた訳じゃないわよね。誰かと一緒にいたんでしょ。その人とは、はぐれたの?」

「え? あ……」

 その言葉に、アキラは黙り込んでしまった。

 自分のわがままのせいでこうなった……
 ユウトは止めてくれた、何度も何度も。

 それを振り払ったのは自分――この醜い心がそうさせた。
 勝手に嫉妬して、勝手に一人になって……ユウトの言うことを全然聞こうとはしなかった。


「ねえ、あなた……もしかして本当は『男の子』?」

「……え!?」

 女性の一言にアキラは驚いて、思わず体を起こしかけた。
 またもや激痛が走ったが、今の言葉の真意を聞きたいと思う気持ちの方が勝っていた。

「なんで分かったの? そう、オレ本当は元々『男』なんだ」

「あらぁ、じゃあ私たちお仲間ね」

「お仲間って……まさか」

 女性は悪戯っぽく笑って言った。

「そうよ。ついこの間まで、私も『男』だったのよ」
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