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暗闇からの脱出

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 ◇◆◇


 あれからレイが何かを仕掛けて来るということは無かった。
 あの様子は、諦めたと言うより呆れたと言う感じだったか。

「おっ……と」

 歩き出したユウトの背中から、アキラは何度かずり落ちそうになった。
 その度に、ユウトは何とか体勢を立て直す。

 自分もくたくただったが、どうやらアキラにはもう、気力も体力も全くと言っていいほど残っていないようだった。
 こんな状態のアキラにあんな形で助けられるとは……

(それにしてもこいつ……あの時確かに言ったよな。『オレのユウト』って――)

 無意識から出た台詞だと分かってはいても、とにかく嬉しかった。
 そしてアキラに早く問い詰めてみたい、そう思った。


「ああ! ユウちゃーん!」

「おおーい、無事だったか少年!」

 通路の先からキャシーたちの呼び掛ける声がする。
 その姿を見つけて、ユウトはようやくほっと胸を撫で下ろした。

「もーっ、急にいなくなるから心配したわよー! 今から探しに行こうかと思ってたんだから!」

「今からって……」

 キャシーたちと合流できたのは、ほとんど出口に近い場所。

(おい……もう少し早く気付いてくれよ)

 苦笑いを浮かべながら、ユウトは心中で文句を言った。

 
 ゾロゾロと少し歩くと、念願の出口が見えて来た。
 眩い光が外への階段を照らしている。

「おお! 出口だ!」

「うおお! ま、眩しい!」

 外へ出た途端、久しぶりに出くわした太陽に一同は思わず目を庇った。

 この感覚は、前にも経験した覚えがある。
 あの時は『男』のアキラと二人、暗い穴蔵から初めて変わり果てた外の世界を見て驚愕した。

 久しぶりに会った『男』のアキラは……
 あの光景を思い出し、ユウトの胸が改めてズキリと痛みを感じる。


 とりあえずは、全員が無事に外へと逃げ出せた。
 今はそれだけでも運が良かったと思える。

 ユウトは適当な木陰を見つけると、慎重に背中のアキラを下ろしてそっと地面に寝かせた。
 アキラは酷い汗をかいて、ぐったりとしている。

「どう、大丈夫?」

 キャシーが心配そうに顔を覗かせる。

「アキラちゃん『女』に戻っていたのね」

「ええ、途中で気が付いてはいたんですけど……」

 本当に突然だった。
 一体何が引き金になっているのか、ユウトにはよく分からない。 
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