魔族勇者の自堕落戦記

たぬまる

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四天王と人族勇者

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 翌日ウッドアークを発った魔族の軍勢は人族4000をそのまま取り込み6000の軍勢でエルフ領の別の街へと向かっていった。
 取り込まれた4000の兵は一糸乱れぬ行軍だが口は違っていた。

「止まれ、俺の身体」

「何故身体が言う事をきかない」

 意識は従いたくないのに身体が勝手に魔族の命令に従い進んでいく、中にはその恐怖で奥歯をガチガチ鳴らしている者も居る。

「これは素晴らしいですなぁ」
 
 隊長はピエロのような仮面と忍び装束を纏っており、その手に持った金色の光を放つ短剣をしげしげと眺めていた。

「そうだろう、そうだろう!俺の作ったマリオネッツの短剣と傀儡の冠は人族にのみだが確実に操ることが出来るからな」

 魔法の絨毯で空を飛んでいるジャンはそう言って貧相な身体をそらせてふんぞり返ると、ジャンの顎を木の枝が直撃した。

「ぐおお」

「だ、大丈夫ですか?」

「もんひゃいなひ(問題ない)」

 少し苦笑いをして隊長が頷くと。

「我ら魔族は闇魔法、人族は光魔法しか使えないのに、魔剣と聖剣に認められれば属性の魔法が使えるようになる。それが勇者の強みだったのに、勇者様は歴史上初めて解析をし、このような魔剣で我らにも強力な魔法が使えるようにしてくださるとは。
 流石ですな!!」

「そうだろう、そうだろう。
 これで俺以外も人族の勇者にある程度対抗できるだろう、一人でダメでも複数集まれば倒すことも出来るだろう」

 少し高度を下げて器用に木を交わしながら隊長との会話を楽しむジャン。


 次の日の朝にはエルフの第二の都市バンブーフォレストの街にたどり着いた。

「では手はず通りに」

 隊長が再び不可視の霧を放ち街中に入ると、それぞれ軍装の違う人族同士が殺し合いをしていた。
 唖然とする隊長達は思わず勇者を見つめるが、勇者は最高に悪い笑顔を浮かべて、魔族兵の半数をエルフ救出に向かわせ、人間兵を争う人族の後ろに回らせた。

「このお宝は俺達の物だ!!」

「此処はミオナ国が治めるんだ、俺達の物だ!」

「ふざけるな、指揮官が我がイワン国の将軍だぞ、我が国が治めるのが筋だ!」

 醜い争いをしている所を背後から首を一斉に切り付けさせた。

「うわぁぁぁ、俺はなんて事を!」

「やめてくれ!!誰か!」

 声も無く倒れる人族の兵、そして同族を殺したと思い込んだ人間兵は発狂寸前、その場は正に阿鼻叫喚となった。

「あははははは、安心しろ人間共。お前達の得物はパラライズのナイフだ、麻痺毒で動けなくなっているだけだぞ」

 腹を抱えて笑うジャンは人間兵に傀儡の冠を渡し、倒れた人族に着けさせていった。

 またしてもあっけなく全滅した人族の兵士を人間兵として取り込み、巨大になっていくエルフ方面解放軍は此処でエルフ族の領地解放を早めるために軍を分ける必要が出てきた。

「よし!仕方が無い。俺が人間兵4000と魔族兵1000を率いて人族の勇者が駆けつけやすい地域を解放していこう」

「は!では我らは同数を率いてそれ以外の方面を解放していきましょう」

「そうしてくれ、次は人族同士の殺し合いが見れるといいのだがな」

 そう言って笑うジャンに「そうですな」と笑う隊長を、恐ろしいものを見る目で人間兵は見つめていた。

「では、2~3日休んでから行きますか?」

「いや、情報が回ってない今がチャンスだ。明日には出るとしよう、明日には四天王が元の国境地帯で大規模な反撃戦を行なうからなおさらだ」

 その日の夕方にジャンは酒場で飯を食べながら、重症のエルフ達に回復魔法をかけていた。
 この世界には回復魔法は無かったが、ジャンが新たなコアストーンを生み出し、取り付けた事で回復魔法が生まれたのだ。
 ただし、食事をしながらの行為に最初はいぶかしんでいたエルフだったが、仲間が光を浴びると部位欠損すら回復する姿を見て、我も我もと並び始めた。

「勇者様は何故お食事をしながらなんですか?」

 ふと疑問に思ったエルフがジャンに問いかけると、ジャンは意地の悪い笑顔で

「うむ、俺が食べた物がお前達の傷を治すのだ。つまり食べてもお前達を回復させるとドンドン減っていき腹が減るのだ。
 つまり、ゲロで貴様らは治っているのだ」

「ゲロって・・・」

「まぁ、正確には食うた物の生命になるエネルギーを使っているのだがな」

 そう聞いて、何処かホッとしたような顔になる若いエルフに「ひひひ」と笑って

「そんなに素直に反応されるとからかいがいがあるなぁ」

 嬉しそうに笑うジャンを少し恥ずかしそうに上目遣いで見上げた。

「意地悪です」

「魔族だからな」
 
 こうしてバンブーフォレストの夜は過ぎていった。


次の日、魔族の元国境回復戦が朝から始まった。

「我らが勇敢なる魔族兵よ!国境を取り戻し、今こそ人族に目にものを見せる時ぞ!」

 魔族四天王を中心に量産型魔剣を配備された兵士5000と一般魔族兵5000が人族兵が集結する城塞都市イッコウへと攻撃をしかけた。

「ふふん、この僕が居る時に攻め込んできた魔族には同情するよ」

 白銀の剣を携えた勇者がパーティメンバーを率いて先陣を切り突撃してきた。

「勇者は我らが相手をする。量産型魔剣兵長は勇者パーティを相手、量産型魔剣兵は魔族兵の支援しつつ奴らをつぶせ!!」

 各陣営は激しく衝突すると、魔族側が圧倒的に戦線を押し込んだ。

「ヘイ!君達が魔族四天王だな!」

 勇者は長い金髪を靡かせながら、四天王筆頭のレッドオーガのカズマに切りかかったが巨大な金棒にあっさりと受け止められてしまった。

「聖剣の一撃を受け止めるとは・・・やるね
 では、これならどうかな?」

”ファイア、アース、フォームチェンジ”

 無機質な声が聞こえると同時に、勇者ツイの身体が光鎧は炎を象った形になり、下鎧は茶色に変化した。

「炎と大地の勇者モードさ、さぁ吹き飛びたまえ”ファイアストーンキャノン”」

 掌を突き出したとたん炎を纏った巨石がカズマに向かって飛び出した。

”フレイム、メタル、ビルドアップ、スカーレットメタルグレイトオーガ”

 再び無機質な声が聞こえ、ツイが打ち出した炎の巨石をカズマが打ち返した。

「ぐふぉ、何がおきたんだ」

 跳ね返された炎の巨石が直撃したツイは、自慢の長髪が所々焦げ、片足をついて顔を上げた。

「その姿は!君が魔族の勇者だったのか、ならば」

”ライト、マッスル、ハイフォーム”

 光と共に筋肉質な姿に変わり大剣に姿を変えた聖剣を構えた。

「いや、俺は勇者殿ではない」

 否定するもツイはカズマに肉薄すると大剣を振り下ろすが、カズマは金棒で受け止め、鍔迫り合いになる。

「その姿が何よりの証拠だよ!」

「なら、周りを見てみることだな」

 そう言われツイが周りを見ようと顔を上げた瞬間、右腕に鋭い痛みが走った。バックステップで距離を取ろうとしたが、更に足元が沼地に変わり、足を取られて仰向けに倒れると、そこに無数の氷の刃が振り注いだ。

「ぐわ!」

 傷だらけになり、フォームチェンジが解けたツイを見下ろすように、三人の魔族が現れた。

「もうカズマさん先に始めちゃうなんて酷いんだから」

 闇のような獣の皮を被った姿の巨乳の女性がカズマの腕に抱きつく。

「シズカ、此処は戦場だ。抱きつくのはよせ」

 冷静に突っ込みを入れるカズマの肩をポンと叩く小柄な斧を持った土くれのような見た目の髭男が

「てめぇシズカちゃんに何抜かしてやがる、後俺にもふっ飛ばさせろや」

「はいはい、クラたんはカズマ様に絡まないの。勇者なんて今からイタブれば良いんだから」

 そう言ってグラの間に入るスレンダーな氷の妖精のような白髪の少女はそう言ってウインクをする。

「遅いぞ。とりあえず、勇者をボコボコにして追い返せば俺達の勝ちは揺るがなくなる」

「は~い」

「やるか」

「さくっとね☆」

 その異常な光景にツイは這うように泥の池を逃げようとする。

「き、君たちズルクない?何で勇者がそんなに居るんだい?」

「だから、俺達は勇者殿では無いと言っている」

「話がつうじねぇからやっちまおうぜ」

 流石の人族の勇者も、四人の総攻撃にボロボロになり、急ぎ神殿のある街へ運ばれた。

 こうして、城塞都市イッコウが落とされ、歴史上初の人族の領地に魔族の街が出来たのだった。
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