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村長の驚愕

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 村にキャラバンが着くと子供たちが集まってくる、そんな光景も良いなと
ブラウンはノンビリとした光景を楽しんでいた。

「兄貴、村長の所に行くんで着いて来てほしいっす」

「了解、しかしのどかだな」

 土の香りがする道をノンビリと進んでいく、まさに田舎の空気がブラウンの
疲れた心を癒していくような気がして、思わず笑みがこぼれてしまう
 
 そんなブラウンの様子にトッポは嬉しくてつい子供のようにアチラこちらの
説明を子供のようにはしゃいでしていった。

 村の家は殆どが木製がほとんどで、所々斜面を利用した穴の住居も見受けられた。
 小さな鍛冶場や調合場もあるが、ハンターギルドや商業ギルドは無く宿も無い
まさに寒村だった。

 自分の望んだ環境であることにブラウンは心の底から嬉しくなり、肺の空気を
全部吐き出すほど息を吐いて、大きく深呼吸をする。
 それはまるで、今までの自分を吐き出し、新しい自分を吸い込むような行動だった

「あれが、村長の家っす」

 少し上の所にある石作りの家の外に筋骨隆々のドワーフが手を振って待っていた。

「おお、トッポ殿今日は急なお越しですな」

「村長今日は新たな領主様を連れてきたっす」

「領主って俺のことか?」

「そうっすよ、兄貴・・・こちらのブラウン様がこの龍天山の新たな持ち主になったんで
領主になったんす」

 村長はもちろんブラウンすら初耳なので驚くしかないが、トッポは当たり前のように
説明をしていくがまるで耳に入ってこない

 大まかに言うと、この地域の辺境伯が王国に払う税金を下げたくて、焦げ付きの原因
だった龍天山をトッポの領地として無理やり売りつけた、で形的に領主の位も付いて来た
ということだった。

「はぁ、まあ、仕方ない村の運営は村長がしていたんだろう?これからも頼む」

「わかりました、今まで道りでよければ、大丈夫です」

 こうしてブラウンは気がつけば龍天山を含む回りの森林一帯の領主になっていた
のだがトッポがわざと範囲を教えていなかったばかりに、気がつかないままであった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

村長 サニエルの場合

 予定よりも二ヶ月も早くキャラバンが来たことを聞いた俺は
家の外からキャラバンを見ていると、領主のトッポ殿と確りと鍛えられた
男がこちらに向かってきているのが見えた。

 トッポ殿はこの村にも色々と支援をしてくれるし、俺たちドワーフの夢である
ドラゴニックメタルの探査にも力を貸してくれる話せる領主だ、無碍に出来ない

 そんな、トッポ殿からブラウン殿に領主が代わることを告げられ、この先の
心配をしていると、察したのかトッポ殿がこっそりと、支援も今まで通りだと
告げてくれた。
 
 しかし、このブラウン殿はなんとも風格のある方である、最近魔物も増えてきた
事だし、村を守ってもらえそうでもある。
 
 そう思いつつブラウン殿を見上げると、なんとも穏やかな顔をされている

「ところで、何処に居を構えられますか?」

「そうだな、あの辺りにしよう」

 ブラウン殿の指を指された先はドラゴニックメタルを探して掘り返して
荒れてしまった地帯だった。

「あそこは掘り返して、土もゆるいので他がよいのでは?」

「なに、地均しをすれば何処も同じだよ、ここは見晴らしがいいし
ここにするよ」

 人懐っこい笑顔を浮かべてブラウン殿は総鋼鉄製のハンマーを片手で持ち上げて
いた、
 いつの間に出したんだ?ハンターバックから?
 ではブラウン殿は元ハンターなのだろう、トッポ殿が昔言っていたハンターの地均し
か、なら安心だな

「わかりました、くれぐれも無理されないように」

 新たな住人、いや領主様が住まわれることに楽しみが増えたような気がして
足取りも軽く、家に戻って行く

 その日の夜そろそろ寝ようと寝じたくを始めた頃、トッポ殿が尋ねてきた

「珍しいですな、このような時間に」

「すまないっす、実はこれなんっすけど」

 ハンターバックからにび色の金属片を取り出すと、俺のほうへ見せてきた
手にとって見るとアダマンタイトータルの甲羅の一部だった、珍しい
このクラスの甲羅なんてほとんど出回っていないはず

「トッポ殿これはどうしたんで?」

「ここに来る時に居たやつを兄貴が倒してくれたんすよ」

「な、この近くに奴がでたんですか?」

 アダマンタイトータルは絶対数が少ない、子供のうちはミスリルタートルといって
希少金属が取れる上にアダマンタイトータルよりもはるかに弱い
 ミスリルタートルはD級、アダマンタイトータルはS級、明確な差があるために
乱獲されて大人になることが少ない
 
「それで、これはどのぐらい量があるんです?」

「5メートルクラスだから5トンぐらいすね」

「5・・・これを打たせてもらえるんで?」

「もちろんす、それで代わりという訳じゃ無いんすけど、この村に
商業、冒険者各ギルドを置かせてほしんす」

「へ?」

 我ながら間抜けな声を上げてしまった、しかしこの条件を拒否する理由はないし

「大丈夫ですが、この村を街にでもするつもりですか?」

「そうっすね、少しでも発展してくれたら嬉しいっすね」

 今日は遅くまで二人で村の発展のための計画を話し合う事になった。

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