僕とソラの幸せだった日々

柏葉 結月

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Kitty編

1. 三毛猫を拾いました

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晩秋になると、あっという間に日が暮れてしまい、アルバイトの帰り道は、季節の変り目を知らせる木枯らしが吹いていた。昼間とは違う肌寒さに肩を竦めながら、自宅への近道に利用している公園にさしかかる。


「ミャア…ミャア…」


何処からか、仔猫の鳴き声が聴こえてきた。その、必死な聲を頼りに公園内を歩いていると、ちょうどライトアップされた1本の大きな銀杏の木のうろに、仔猫がしがみついていた。


この辺りでは、見かけない三毛猫。


「降りられなくなったの?」


助けてと言わんばかりに、いっそう激しく鳴き始める仔猫。公園内を縄張りにしている野良猫が、新入り苛めでもしたのか。散歩中の大型の犬に吠えられ、ビックリして登ってしまったのか。


太い枝を探して腕を伸ばし、懸垂の要領で身体を引き上げ仔猫のいる所まで移動する。枝が折れないことを祈りながら、しがみついている仔猫の頸を摘まんで剥がし、ブルゾンの懐に押し込む。


「イテ!イテテッ!」


よほど怖かったのか、Tシャツ越しに爪を立てられた。





助けた三毛猫は幻のオス猫で、僕はこの仔猫を連れて帰る事にした。猫を飼いたかったかというと、今の今までそんな気はなく…むしろカッコイイ大型犬を飼うのが夢だったのに。


僕の胸にしがみついた仔猫が、あまりにも可愛かった所為もあるけど…、抱いた瞬間、もう『君は僕のもの』だと確信してしまったのだ。




仔猫を懐に入れたまま、コンビニで弁当とキャットフードを買い家路を急いだ。さっきまであんなに鳴いていたのに、今は大人しくて元気がない。


家に着くと、まず風呂場に行き洗面器にお湯を張る。ボディソープを数滴垂らして泡立てると、不穏な気配を察したのか仔猫が再び胸にしがみつく。仔猫を宥めながら、ゆっくりと洗面器に入れた。


猫は本能的に濡れるのを嫌がると言うが、首根っこを掴んでいれば、観念したのか暴れることはなかった。それとも、お風呂慣れしている飼い猫なのだろうか。


「名前はどうしようか…う~ん、そうだ!秋だから秋空のソラにしよう」


タオルで拭きあげ、ドライヤーで丁寧に乾かす。ふわふわになった背中に顔を埋めると、日溜まりの匂いとボディソープの香り。
胸の奥がキュンとして「ミャン…」と鳴くソラが可愛くて、破顔した。


ソラは、ふやかしたキャットフードには見向きもせず、猫用のミルクは少ししか舐めなかった。


「大きくなれないぞ~?」








寒いから、布団の中にソラを入れてくすぐると、ゴロゴロと小さく喉を鳴らし、僕の胸をふみふみと前肢で押し始めた。このまま眠ってくれたらいいなと思い、明日は動物病院とソラの身の回りの物を買いに行こうと考えながら、僕もいつしか眠ってしまった。




夜中に、唇をサリサリと舐められる感触。



"おいしい…もっとたべたい…おきちゃう?"



頭の中に、鈴が鳴るような可愛い声が響く。




"たくさんたべたい…おいしかった…ヒトガタになれそう…びっくりするかな…"



そのうち、やわらかくて温かい小さな熱が、口内に入ってくる。



無意識に…、応えていた。




"おなかいっぱい…ねむい…あん、もうたべられないよぅ"




???






翌朝、腕が痺れて動かない。


ソラが腕に乗っているのだろうと思ったら、隣にいたのは素っ裸の男の子だった…。





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