僕とソラの幸せだった日々

柏葉 結月

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Kitty編

2. 男の子

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「え?は?誰ぇーっ?!」


僕の悲鳴に目を擦りながら起き上がった男の子は、四つん這いで大きく伸びをするとニッコリと笑った。


"ふふふっ!スッゴくげんきなひとだぁ!"


昨夜、夢の中で頭に響いていた高い声。

この子だったのか!


「いやいやいやいや、元気な人だ~じゃなくてね?いつの間に?どうやってこの部屋入りました?玄関の鍵閉まってたでしょ?」


"え?え?だっこで…そっちがつれてきたんじゃんか!"


狭いベッドの上、きゃっきゃと寝転がっている男の子に頭を抱える。
『昨夜は合コンのような飲み会で、目が覚めたら隣に見知らぬ女性』、というシチュエーションは聞いたことがあっても、10代しかもおそらく前半の男の子を連れ込んだなんて、完全に犯罪……。



「抱っこって…えぇえ?」


"きのうこうえんでたすけてくれたでしょ!"


「助けたのは三毛猫ですけど?」


"ぼくがそのみけねこなの!"


シーツの上にたしっ!と前肢?を突っ張り、ぷんすか!してる男の子を改めてじっと見つめた。

色素の薄い瞳は、パンプキンシードのような綺麗なグリーン。ミルクティー色の薄茶とブラックが、まだらになった髪色。

肌は透き通るように真っ白で、綺麗なピンク色の唇と子どものくせに扇情的に色付いた乳首。

徐々に視線を下にずらした所で、我に返った。


"たすけてもらったおれいがしたかったのに。そんなにイヤならもういいよ!"


素早い身のこなしでベッドから飛び降り、一瞬で小さくなって現れたのは、確かに昨日連れて帰ってきた仔猫だった。


だだだーっと玄関まで走って行ったが、猫の姿ではドアを開けられなかった。ゆっくりと追い着いて、仔猫の脇を掬い上げた。


"おろして!おろしてよぉ!"


「お礼がまだなんだよね?どうやってお礼するつもりだったの?」


後ろ足をじたばたと懸命に動かして逃れようとしていたけれど、観念したのかぶらーんとなった。素直な子は好きだ。


"きもちぃこと、してあげよっておもったの"


「気持ちイイこと?」


"にんげんはせっくすがすきでしょ?"


「セッ…!は、はぁあ?」


とんでもない仔猫を拾ってしまった。
もしかして、僕はまだ眠ってる?これは夢?
『ふふん』とでも言いたそうな不敵な笑みを浮かべている仔猫。
人間に変身してしまう不思議な存在に、意外と嫌悪感は無い。それどころか、僕の腕に収まる仔猫はとても可愛いと思う。


捕まえた仔猫をベッドに降ろし、まだ温もりが残る毛布にくるむ。隙間から顔を出した仔猫の額を、指の背で撫でる。


「君に名前を付けたんだ。『ソラ』っていうんだけどどうかな?」


"にゃ?"


今度は下から手を差し入れて、お腹から全身を優しくこしょこしょする。ソラは瞳をトロンとさせて、僕の手に小さな前肢を絡めた。


"んん…あぁん!ぽかぽかしてきもちぃよぉ"


そのうち、僕の指に小さな歯をあてて、身体をくねらせる。


"あっあっ!どうしてこんなに…んんっ!"


仔猫を可愛がってるだけなのに、頭の中に響くソラの声は、とてもセクシー。


「そんなに気持ちイイ?」


"うんっ!……あなたのなまえは?"


「ケイ、だよ」


"ケイ…、もっと…さわって…? ”


「いいよ…。沢山、さわってあげる」


"んっんっ!ケイぃ……"


実際のソラは「ニャンニャン」鳴いてるだけなのに、僕はドキドキして…。

僕の指をちゅ…ちゅ…なんて吸いながら、
寝落ちする姿はあまりにも可愛くて…。

「せっくす」なんて言い出した時はびっくりしたけれど、こんな調子では経験なんてないだろう。僕は静かに寝息をたてて眠ってしまった仔猫を、しばらく眺めていた。


「……なんだか、凄くおなかが減った」


自分がとても空腹である事に気がついて、ソラからそうっと手を離し、朝食の米をいつもの倍の量炊いてしまった。










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