8 / 8
Kitty編
8. キティ
しおりを挟む
同じビルの居住区にある、ソラさんの部屋へ行くことになった。エレベーターで上って行く間、僕を口説いてるって言って酔ってもいないのに頬がピンクに染まった、ソラさんの顔を思い出した。
口説いてるっていうのは、つまり?僕と親密になりたいっていう意味で合ってるのだろうか。
そして部屋に行くって事は、それを了承して付いてきたって事で……。
「こ、この部屋です。い、今開けますね!」
ソラさんはなんだか緊張していて、それが僕にも伝染してお互いそわそわしてるのがわかる。部屋に入って抱きつかれでもしたら、僕の理性だって粉々になって……ドアに押しつけてしまうかもしれない。
けれど、そんな心配は杞憂に終わった。
ドアを開けた瞬間奥の方から、黒い塊が床を滑るように走って来たからだ。
「ただいま~キティ!お客さんだよ」
「今…なんて?」
僕は耳を疑った。
「キティです。このコの名前」
黒い塊は、黒猫だった。ニャ~と鳴いて、ソラさんの脚に擦り寄っている。
「もしかしてソラさんはキティと『キティ』なんですか?」
「キティとキティ?」
「いえ、何でも…ないです」
どうかしている。
猫の魔族が、そうそういる訳ない。
ソラさんはキティを抱き上げ、おでこにキスをしている。キティは、うっとりしていた。
留守番をしていた猫が、今、一心に主人からの愛を吸収していて、寂しかった時間を埋めている。
僕も『ソラ』に同じことをしたから…。
………なんとなく、わかった。
というか推測の範囲内だけれど…。
『ソラ』は、ソラさんが大好きだったのかもしれない。好きな人に擬態して、好きな人が飼っている猫と同じ関係を、誰かと築きたかった。
『キティ』になる、というのは言葉のあやで、ソラさんと黒猫のキティのような信頼関係を結んだ姿を、理想としていたのだろう。
『ソラ』にとって、保護した僕との相性が良すぎたのは予定外だった?
……その結果、招いてしまった交通事故?
僕は『ソラ』にとても愛されていた…。
『あの日』の朝、『ソラ』は僕との関係を、解消しようとしていたようだった。
僕の健康を気にして、距離を置こうとしたけれど、もしかしたら…ソラさんのもとへ帰ろうとしたのかな…。
僕がぼんやりしていると、ソラさんがキティを抱かせてくれた。三毛猫のソラより大きくて、ずっしり。けれど、この柔らかさと温もりは久し振りで、また涙腺が緩んできてしまう。
キティはそんな僕を見上げて……、
“アタシの息子を保護してくれてありがと”
「……………………え?しゃべっ……?」
「キティがありがとう、だって」
「わかるの?!」
ソラさんが背伸びをして、僕の頬に触れるだけのキスをした。
「公園であなたを見かけた時、何故か胸が熱くなりました。あなたと逢うのは、初めてなのに目が離せなくて……。猫を見ている振りをしてあなたを見ていました。
そうしたらあなたが僕の名前を囁いたんです。
信じられなかった。『運命』というものは、存在するんですね……ケイ?」
その名前は、まだ教えていなかったのに……。
口説いてるっていうのは、つまり?僕と親密になりたいっていう意味で合ってるのだろうか。
そして部屋に行くって事は、それを了承して付いてきたって事で……。
「こ、この部屋です。い、今開けますね!」
ソラさんはなんだか緊張していて、それが僕にも伝染してお互いそわそわしてるのがわかる。部屋に入って抱きつかれでもしたら、僕の理性だって粉々になって……ドアに押しつけてしまうかもしれない。
けれど、そんな心配は杞憂に終わった。
ドアを開けた瞬間奥の方から、黒い塊が床を滑るように走って来たからだ。
「ただいま~キティ!お客さんだよ」
「今…なんて?」
僕は耳を疑った。
「キティです。このコの名前」
黒い塊は、黒猫だった。ニャ~と鳴いて、ソラさんの脚に擦り寄っている。
「もしかしてソラさんはキティと『キティ』なんですか?」
「キティとキティ?」
「いえ、何でも…ないです」
どうかしている。
猫の魔族が、そうそういる訳ない。
ソラさんはキティを抱き上げ、おでこにキスをしている。キティは、うっとりしていた。
留守番をしていた猫が、今、一心に主人からの愛を吸収していて、寂しかった時間を埋めている。
僕も『ソラ』に同じことをしたから…。
………なんとなく、わかった。
というか推測の範囲内だけれど…。
『ソラ』は、ソラさんが大好きだったのかもしれない。好きな人に擬態して、好きな人が飼っている猫と同じ関係を、誰かと築きたかった。
『キティ』になる、というのは言葉のあやで、ソラさんと黒猫のキティのような信頼関係を結んだ姿を、理想としていたのだろう。
『ソラ』にとって、保護した僕との相性が良すぎたのは予定外だった?
……その結果、招いてしまった交通事故?
僕は『ソラ』にとても愛されていた…。
『あの日』の朝、『ソラ』は僕との関係を、解消しようとしていたようだった。
僕の健康を気にして、距離を置こうとしたけれど、もしかしたら…ソラさんのもとへ帰ろうとしたのかな…。
僕がぼんやりしていると、ソラさんがキティを抱かせてくれた。三毛猫のソラより大きくて、ずっしり。けれど、この柔らかさと温もりは久し振りで、また涙腺が緩んできてしまう。
キティはそんな僕を見上げて……、
“アタシの息子を保護してくれてありがと”
「……………………え?しゃべっ……?」
「キティがありがとう、だって」
「わかるの?!」
ソラさんが背伸びをして、僕の頬に触れるだけのキスをした。
「公園であなたを見かけた時、何故か胸が熱くなりました。あなたと逢うのは、初めてなのに目が離せなくて……。猫を見ている振りをしてあなたを見ていました。
そうしたらあなたが僕の名前を囁いたんです。
信じられなかった。『運命』というものは、存在するんですね……ケイ?」
その名前は、まだ教えていなかったのに……。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
130
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(16件)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
結月さん、こんばんは!
キティがまた読めるようになって嬉しいです。
前回は涙涙で大変でしたが、少し設定が変わっていて気持ちが救われました。
また楽しみにしています😌💜
感想ありがとうございます😄るみ7さんいらっしゃいませ💕
私も読み返す度に悲しい気持ちになるので、少し違った展開にすることにしたんです。だいぶ楽になりました😅
三毛猫のソラくんが可愛くて時々読み返したくなりますね🎵読んで下さってありがとう🍀
やっと、やっと落ち着いて拝読できるようになりました。
自然と溢れ出た表現は格別ですね。
こちらのアイコンが宝箱の蓋のようです。
感想ありがとうございます😄
女将さん、いらっしゃいませ✨お疲れ様でした~忙しかったんですね💦そんな中思い出して読みに来てくれて嬉しいです~✨
宝箱だなんて💦恐縮です😅宝石💎が沢山詰まってるようなお話に出来るようにこれからも精進いたします😆💕
キティをまた読み返せて幸せです💜
承認して頂きありがとうございます✨
私の日々の癒しです🐈️🐈️
感想ありがとうございます😄
また読み返して下さって嬉しいです!このお話を読むと三毛猫を飼いたくなってしまいます~✨皆さまに愛されて幸せなソラくんですね💕