僕たちのこじれた関係

柏葉 結月

文字の大きさ
33 / 54
僕たちのこじれた関係&君のPerfume(Spin-off)

君のPerfume ❷

しおりを挟む
(side スヒョン)

俺とミンジェは繁華街から急いで事務所へ移動し、何とか遅刻せずに、練習室の扉を開ける事が出来た。

「間に合ったぁーっ!」

メンバーは全員そろっていて、皆ストレッチを始めている。ミンジェの声に顔を上げるヨングの姿が、視界の端にあった。

すぐには来ようとせず、俯くがちらっと俺の方も見た。ミンジェはそんなヨングを分かってるくせに、すぐに側へ行こうとしないで俺に笑顔を向けた。

「スヒョン、今日はありがとう」

そこまで言って、俺に内緒話をするため至近距離に身を寄せてくる。今までの流れは、わざととしか思えない。ヨングへの煽りが巧い。

" 今からヨングのとこ、行ってみる! "

俺は、ミンジェの拳に自分の拳をチョンっと当てて、頑張れよと伝えた。


「……スヒョンィヒョンと2人で行ったんですか?……僕も一緒に行きたかったです」

「待ち合わせすれば良かったね。ごめん」

二人の会話が聞こえた。ミンジェの秘密の買い物。ヨングは連れて行けなかった事に優越感を持つが、結局は不毛な話だ。

ふと、ミンジェの様子を見たら、もちもちの頬どころか耳や首まで桜色に染めて、口許を萌え袖で押さえていた。

な……。ヨングのやつ。
いったいミンジェに何を言ったんだ。
あんなに可愛い反応して、女子か!

そして、ヨングの表情……。


あ~あ。

俺は、ヨングの好きな人が誰か、分かってしまった。




それから数日後。

今日の個人練習は終わりということになり、ミンジェがまだ練習しているなら一緒に帰ろうとレッスン室へ向かった。
そしてドアをそっと開けた瞬間、聴こえてしまったのだ。

「ミンジェヒョン、可愛い!ははっ唇が尖っちゃって……」

ヨングの声、だった。
俺は、先日の杞憂が時間の猶予もなく襲ってきたのかと、焦って中を覗いてしまった。ドアの近くの壁にヨングが座って寄りかかり、練習に疲れて床で眠るミンジェを、膝に乗せていた。

これは数日前にも見た光景だ。もしかしたら、あの時からずっと……?
俺は動揺して、聴こえなかった振りをしながら二人の所まで歩み寄った。

「ミンジェ、連れて帰るけど?」

ヨングは、さすがにびっくりした顔をしているが、ミンジェを渡す気はないようだ。ミンジェの手を握って、離そうとしない。

「……………ミンジェヒョンは、今日も僕が連れて帰るので大丈夫です」

「じゃあ、先に帰ってる。お疲れ様」

「お疲れ様です」



なんだ、今の。
俺の天使は、あいつの物になったのか?

練習室の外に出て、茫然としたまま一人で宿舎に帰った。





俺のルーティンは、ミンジェに朝起こされて一緒に学校へ行き、事務所に行って一緒に練習してから宿舎に帰る。ご飯を食べて俺の部屋でゲームしたり、本を読んだり。
同じベッドで眠って、朝ミンジェに起こされて……。
俺たちは、学校の授業中以外ほぼ一緒に過ごしていた。

だからこんな風に宿舎に一人で帰ってきて、一人でベッドに寝転んだら、ミンジェの声も温もりも無い事に気付いて寂しさを感じているなんて。

いつからミンジェにそこまで依存を?

恋人のように別れた訳じゃない。けれど、もう何かが違う。

ミンジェがヨングに思いを遂げたら、こんな日が来るだろうと、漠然と理解していたじゃないか。

俺は眠りに落ちながら、夜中にミンジェがいつの間にか隣で寝ている夢をみていた。


「ただいま、スヒョナ……」

「……おかえり」

俺は、布団の中に入ってきたミンジェに腕と足を巻きつけ、いつものように、眠った、はず。

夢か、現実か、分からなかった。




ミンジェの匂いを嗅ぐヨングを、何度か見たことがある。俺と目が合うと、口許に人差し指を当て、" 内緒ですよ?" とでも言うかのように、微笑む。

ミンジェの匂いを好ましく思うのは、何もお前だけじゃない。
俺だってずっと一緒に過ごしていて、同じベッドで眠っていたから、ミンジェの匂いを嗅いで落ち着いた気持ちになるし。

それが、香水によって匂いが変わったばかりか、そこはかとなくヨングの匂いも混ざって、とてもイライラする。

そして、……その事実に、寂しくなる。

でもまぁ、ヨングにしたって?ミンジェの匂いに俺の匂いが混ざってて、イライラしただろうからお互い様な?


その日はSNSに上げる写真を撮るため、ヨングとミンジェ三人で交互に撮影していた。そして、気がついてしまった。二人が、同じ香水を使っている事に。

俺の認識では、交際中のカップルが……。

無言でミンジェを見つめた。
ミンジェは、不思議そうに俺を見た。

「なに?何で僕を見るの?」

「お前ら、同じ匂いがする。もしかして……」

思わず呟いてしまった一言に、ミンジェは赤くなった後、小さく頷いた。嬉しそうな糸目の笑顔になった。

「後でちゃんと話すね。……スヒョン?どうかした?」


多分俺は泣きそうな気持ちを堪える余り、複雑な表情になっていたんだと思う。

声は出せず、ただ、首を横に振った……。





しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

処理中です...