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一章
第4話 だらけられる幸せ
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ここで過ごして一週間程がすぎた。と思う。
体内時計を信じれば、なのでよく分からないのだが。
そろそろ体感夜だなってことにして七回寝たのは確かだ。
せっかくなのでのんびり過ごしていた。
本気でしようと思っていたのに――草を抜いて周りを綺麗にする。そんなことをする気にもならず、ただただだらりと過ごした。
仕事をしていて忙しく過ごしていた時に奪われていた休息を取り戻しているかのようなそんな時間だった。
辞めたからといって向こうではこんな風には過ごせなかっだろう。
これで空が曇っていなければ美しい朝焼けでも夕焼けでも見れたのだろうに。
自身の能力に変化は何もないが空間はチートなのだということが日々身にしみる。
ラーメン食べたいな、と思って部屋の扉を開けたらキッチンに熱々出来立てラーメンが乗っていて正直引いた。
上にもやしとキャベツとワカメが乗ってるあっさり醤油味のラーメン。食べたかったやつ。
もちろんいい香りに勝てるはずもなく全部食べたけども。
しっかりと寝てしっかりと食べ、ゆっくりのんびりと過ごしていればたとえ目の前の壁が黒くあろうとその先から唸り声が聞こえようとも自分には特に関わりのないことのように思えた。
人間だんだんと慣れてくるのだ。 何も起こらなければこれからも起こるはずがないと頭がきっと考えるのだろう。
たとえ獣の声がしていようともう自分には BGM のようにしか感じなくなってしまった。
自分の繊細ではない心に少し呆れる。
消えていった少女が泣いていたことを度々思い出す。
彼女は家に帰れたのだろうか。繰り返し考えている。
一人ぼっち。話し相手なし。
虫はともかく愛らしい動物もなし。
読める本もゲームもなし。
だが個人的には快適なのだ。
ずっとゆっくりと眠りたかったのだから。
今日も今日とてお気に入りのクッションを抱えて曇りの空の外で寝転ぼうと部屋から出ようと靴を履いた時だった。扉の外からいつもは聞こえない音がした。
ステンドグラスのあの部屋で誰かが歩いているような音。何かを探しているような音。
誰もいないのではなかったか?
誰も来ないのではなかったか?
ここに来て初めて心臓が強く掴まれたようにぎゅっとした痛みを味わった。どうしたって死ねないのだとしても身の危険を感じる。指を挟んで実証済み――痛みは感じるのだから。死ねないのは実証できていないのだし。
よほど獣よりも人間の方が恐ろしい。見えない獣よりも人間の方がはっきりと姿が分かるからかもしれない。
どうしたってあの部屋を通らないと今使っている部屋には戻れない。ステンドグラスがあるだけの何も置いていない部屋に隠れられる場所はない、鉢合わせるに決まっているのに確かめずにはいられなかった。
しかし何もない部屋で何を漁っているんだろうか?
そっと扉を開ける。 するとどうだろうマントを羽織った男が自分の知らない扉を開けて食料を運び出していた。
ぱちんと目が合った。
「つっ!!??」
自分よりもマントの男が驚いた。
驚きついでに男は剣を抜いた。 どう見たって真剣だ。分かるあれは切れる。カンでしかないが。
「……どうも、何してるんですか?」
その日本ではありえないマント姿を見て、ふと自分の方が客人かもしれないと思い間抜けな質問をしてしまった。もちろん敵意はありませんよと両手を上げて。
「え?」
男は剣の構えを解いて目を丸くしている。
自分が思っていた人間ではなかったのだろう。期待に添えなくて申し訳ないが戦闘力は皆無ですので侵入者め! と襲うことはありませんよ。そもそもそんなことする気がない。
「あー、食料を調達させてもらっているんだ」
意外と素直な答えが返ってきた。
カチン、剣は鞘にしまわれた。フードからちらりと見える髪の色は暗い茶色で少し親近感を覚えた。
「あんたいつからここにいた?」
「多分一週間くらい? 時計がなくてよく分からないんだ」
「一週間? そうか……」
そういえば時間の数え方は同じだろうか。
「今まで誰にも会わなかったから、驚いて悪かった」
「誰にも?」
タイミングの問題だろうか。
ここに誰もいなかったことなんてなかったようなのに。
「どこから入って来たんだ?」
「その壁にあるホールから入ってきてる。まぁ俺以外通れないホールだけどな」
「ホール……」
示された壁を見たけれど何もない。
「あーあんたにも見えないのか。仲間にも見えないんだ」
「秘密の抜け道?」
「そんな感じだな。あんたはどこから来たんだ?」
「どこからと言われても……そこ」
「どこだ?」
きょろきょろと辺りを見回す男になんと言ったものかと思案する。が伝わりやすい表現など思いつくはずもない。
部屋の床いっぱいに描かれている魔法陣を示してもう一度。
「そこ」
「え? 床?」
「自分でもよく分かってないんだけど」
「もしかして俺何か見えてないか? この床ただの白い床なんだが今入口閉じてるとか?」
「白いだけ? 魔法陣っぽいものがあるんだけど」
「ない」
「そうか……」
見えていたなら何かヒントでも分かるかと思ったのにな、と浮かんだ思考にはじめて戻りたい気持ちが自分の中にあることに気付いた。
その時ヒョウリーと高い笛の様な音がした。
「やばい。夜が来る。俺もう行くな! あんたも早く帰れよ」
「もう夜なのか? まだ昼くらいじゃ?」
「何いってんだ。そろそろ日が沈む時間だぜ? って時間が分からないのか。そりゃそうだよなここいつ来てもぼんやりと明るいもんな」
「え」
「は? 知らなかったのか?」
「知りませんでした……」
心の赴くまま過ごしてたから。いや、気にもとめなかった自分が悪い。
「そうだったのか……どーりで明るいのに眠くなるなと思ったわ」
「鈍感すぎないか」
「ははは」
返す言葉があるはずもなく笑うしかない。
二度目の高い音に急かされて男は出て行った。
明日来るからと言い残して。壁に消えていくようにしか見えない彼の後姿を見送った。
明かりを通しているステンドグラスを見上げる。
「ふ」
思わず笑ってしまった。
夜が来ないということよりそんなことにも気付かなかった自分に呆れてしまう。
お気に入りのクッションと共に部屋に戻る。
そっとリビングに置いてぽんぽんと形を整える。
そして風呂場に向かった。
「泡風呂っ!!」
何でも叶えてくれる部屋は今回も自分の要望に答えてくれた。想像の泡の三割増しくらいの泡風呂が用意されていた。
そのおいしそうな桃の香りのするもこもこで逃避することにした。
タノシーイ。
そして夜らしいからさっき起きた気もしたが寝ることにした。そして寝れてしまう俺。
体内時計を信じれば、なのでよく分からないのだが。
そろそろ体感夜だなってことにして七回寝たのは確かだ。
せっかくなのでのんびり過ごしていた。
本気でしようと思っていたのに――草を抜いて周りを綺麗にする。そんなことをする気にもならず、ただただだらりと過ごした。
仕事をしていて忙しく過ごしていた時に奪われていた休息を取り戻しているかのようなそんな時間だった。
辞めたからといって向こうではこんな風には過ごせなかっだろう。
これで空が曇っていなければ美しい朝焼けでも夕焼けでも見れたのだろうに。
自身の能力に変化は何もないが空間はチートなのだということが日々身にしみる。
ラーメン食べたいな、と思って部屋の扉を開けたらキッチンに熱々出来立てラーメンが乗っていて正直引いた。
上にもやしとキャベツとワカメが乗ってるあっさり醤油味のラーメン。食べたかったやつ。
もちろんいい香りに勝てるはずもなく全部食べたけども。
しっかりと寝てしっかりと食べ、ゆっくりのんびりと過ごしていればたとえ目の前の壁が黒くあろうとその先から唸り声が聞こえようとも自分には特に関わりのないことのように思えた。
人間だんだんと慣れてくるのだ。 何も起こらなければこれからも起こるはずがないと頭がきっと考えるのだろう。
たとえ獣の声がしていようともう自分には BGM のようにしか感じなくなってしまった。
自分の繊細ではない心に少し呆れる。
消えていった少女が泣いていたことを度々思い出す。
彼女は家に帰れたのだろうか。繰り返し考えている。
一人ぼっち。話し相手なし。
虫はともかく愛らしい動物もなし。
読める本もゲームもなし。
だが個人的には快適なのだ。
ずっとゆっくりと眠りたかったのだから。
今日も今日とてお気に入りのクッションを抱えて曇りの空の外で寝転ぼうと部屋から出ようと靴を履いた時だった。扉の外からいつもは聞こえない音がした。
ステンドグラスのあの部屋で誰かが歩いているような音。何かを探しているような音。
誰もいないのではなかったか?
誰も来ないのではなかったか?
ここに来て初めて心臓が強く掴まれたようにぎゅっとした痛みを味わった。どうしたって死ねないのだとしても身の危険を感じる。指を挟んで実証済み――痛みは感じるのだから。死ねないのは実証できていないのだし。
よほど獣よりも人間の方が恐ろしい。見えない獣よりも人間の方がはっきりと姿が分かるからかもしれない。
どうしたってあの部屋を通らないと今使っている部屋には戻れない。ステンドグラスがあるだけの何も置いていない部屋に隠れられる場所はない、鉢合わせるに決まっているのに確かめずにはいられなかった。
しかし何もない部屋で何を漁っているんだろうか?
そっと扉を開ける。 するとどうだろうマントを羽織った男が自分の知らない扉を開けて食料を運び出していた。
ぱちんと目が合った。
「つっ!!??」
自分よりもマントの男が驚いた。
驚きついでに男は剣を抜いた。 どう見たって真剣だ。分かるあれは切れる。カンでしかないが。
「……どうも、何してるんですか?」
その日本ではありえないマント姿を見て、ふと自分の方が客人かもしれないと思い間抜けな質問をしてしまった。もちろん敵意はありませんよと両手を上げて。
「え?」
男は剣の構えを解いて目を丸くしている。
自分が思っていた人間ではなかったのだろう。期待に添えなくて申し訳ないが戦闘力は皆無ですので侵入者め! と襲うことはありませんよ。そもそもそんなことする気がない。
「あー、食料を調達させてもらっているんだ」
意外と素直な答えが返ってきた。
カチン、剣は鞘にしまわれた。フードからちらりと見える髪の色は暗い茶色で少し親近感を覚えた。
「あんたいつからここにいた?」
「多分一週間くらい? 時計がなくてよく分からないんだ」
「一週間? そうか……」
そういえば時間の数え方は同じだろうか。
「今まで誰にも会わなかったから、驚いて悪かった」
「誰にも?」
タイミングの問題だろうか。
ここに誰もいなかったことなんてなかったようなのに。
「どこから入って来たんだ?」
「その壁にあるホールから入ってきてる。まぁ俺以外通れないホールだけどな」
「ホール……」
示された壁を見たけれど何もない。
「あーあんたにも見えないのか。仲間にも見えないんだ」
「秘密の抜け道?」
「そんな感じだな。あんたはどこから来たんだ?」
「どこからと言われても……そこ」
「どこだ?」
きょろきょろと辺りを見回す男になんと言ったものかと思案する。が伝わりやすい表現など思いつくはずもない。
部屋の床いっぱいに描かれている魔法陣を示してもう一度。
「そこ」
「え? 床?」
「自分でもよく分かってないんだけど」
「もしかして俺何か見えてないか? この床ただの白い床なんだが今入口閉じてるとか?」
「白いだけ? 魔法陣っぽいものがあるんだけど」
「ない」
「そうか……」
見えていたなら何かヒントでも分かるかと思ったのにな、と浮かんだ思考にはじめて戻りたい気持ちが自分の中にあることに気付いた。
その時ヒョウリーと高い笛の様な音がした。
「やばい。夜が来る。俺もう行くな! あんたも早く帰れよ」
「もう夜なのか? まだ昼くらいじゃ?」
「何いってんだ。そろそろ日が沈む時間だぜ? って時間が分からないのか。そりゃそうだよなここいつ来てもぼんやりと明るいもんな」
「え」
「は? 知らなかったのか?」
「知りませんでした……」
心の赴くまま過ごしてたから。いや、気にもとめなかった自分が悪い。
「そうだったのか……どーりで明るいのに眠くなるなと思ったわ」
「鈍感すぎないか」
「ははは」
返す言葉があるはずもなく笑うしかない。
二度目の高い音に急かされて男は出て行った。
明日来るからと言い残して。壁に消えていくようにしか見えない彼の後姿を見送った。
明かりを通しているステンドグラスを見上げる。
「ふ」
思わず笑ってしまった。
夜が来ないということよりそんなことにも気付かなかった自分に呆れてしまう。
お気に入りのクッションと共に部屋に戻る。
そっとリビングに置いてぽんぽんと形を整える。
そして風呂場に向かった。
「泡風呂っ!!」
何でも叶えてくれる部屋は今回も自分の要望に答えてくれた。想像の泡の三割増しくらいの泡風呂が用意されていた。
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タノシーイ。
そして夜らしいからさっき起きた気もしたが寝ることにした。そして寝れてしまう俺。
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