生贄に向くタイプ〜閉じ込められたのは快適空間でした

鶫夜湖

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一章

第8話 どうしたらいいのだろう

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 朝起きて木々の隙間から少し見えるこの太陽をあいつは見ることはないのかと考えてしまった。
 前いた世界がどんな世界かは知らないがいつか教えて欲しいものだ。

「ロア行ってくるな。グロリアを見ててくれよ」
「わぅ」

 少し固い毛並みを撫でる。
 まだ毛布にくるまっているグロリアを横目にあの空間につながるホールを通り抜ける。


 抜けた先、ステンドグラスの空間であいつがヌッと出てきた場所をじっと眺める。何回見たって壁しかない。
 いつものようにその壁を見つつ一定時間だけ待つ。
 今日もまだ寝てるんだろうが何となく待っている。

 真剣にあいつがここに縛られなくても良いようになる方法が知りたくて本を読んでいた。
 それとは別に食材の保存方法をずっと探している。普通の方法ではなく画期的な方法だ。

 今ここに滞在しているのも食料が容易に手に入るからというのも大きい。氷魔法で冷やすのが今の所一番効果があるが、術者がかかりきりになるので戦力が減ってしまう。
 うちのパーティーでは人数的に厳しすぎる。
 それにグロリアが使える魔法も限られている。氷魔法は使えるのだが食料の保存に関して使えるかというとてんで駄目だ。加減が難しいようで魔力消費が割に合わないそうだ。

 空間を捻じ曲げて物が収納できる袋も必要な材料が見つからなくて作ることができない。
 必要な石は通称、空間石と呼ばれるものらしいが滅多に出てくるものではなく今では幻の石と言われている。
 まあその袋があったって大量に物が運べるだけで食べ物が腐らないわけではない。


 やはり出てこないので一人で向かうことにした。
 扉を開けて、いつもと違ったのは突き当たりの扉が開いたままだということ。
 何回来ても開ける気の起こらない外に続くあの扉だ。

「あいつ外にいるのか?」

 何も起こらないと言っていたがなぜ何も起こらないのかがわからない。あいつが大丈夫というから感じる殺気を気のせいと思い込むことにしたが、やはり危ないとしか思えない。
 自然と早足になり開いたままの扉をくぐる。

「……」

 しかし考えたようなことは起こっておらず、そこには大量のクッションを地面に並べて気持ち良さそうに寝転がっているあいつの姿があるだけだ。

「よくこんなところで眠れるな」
「おはよう。ここで寝れば君が来たのがわかると思ってさ。当たり~」

 眠そうな目のままふにゃと笑う。
 愕然として力が抜けた。そんな理由で外で寝るのか。

「なんでそんなことを……」
「え、なんとなく。あと本当に夜危ないのかなって思ったから」
「……どうだった?」
「うーん。サファリパークで寝てる気分だった」
「さふぁ?」
「なんていうんだろ。放し飼いの動物が見れる施設かな?」
「で、何か起こったのか?」

 何かが起こったのにここで寝ていたのならどうかと思うが一応聞いてみた。

「寝てたから分からない。唸り声も慣れれば子守歌だな!」

 寝転んだままびっと親指を立てている。

「あんたその神経どうなってんだ……」
「一周回ったんじゃないか?」
「何がどうして。どうなってそうなるんだ? 危機感とかどうやって感じてるんだ」
「そんなこと言われてもな」

 深くため息が出た。しゃがみ込んで頬杖をついて目の前の男を眺める。
 ほとんど黒に近い暗い焦げ茶の髪がクッションに埋もれている。
 似た髪の色を持つ自分が言うのもなんだか珍しい色だ。今まで生きてきた中で出会った人達は皆明るい色の髪色の人たちが多かった。明るいと言うか色があると言うか。

「そういえばあんた名前何て言うんだ? 俺はケーシャ」
「そういえば名乗ってなかったか? 瑛太って言うんだ」
「エータ?」
「大体そんな感じ」

 そう言うとエータはまだ眠そうにクッションの中にさらに沈み込む。

「ちょっと待ってくれ聞きたいことがあるんだが」
「なに?」
「ここを出たいと思うか?」

 そうするとエータはわざわざ起き上がってきょとんとした顔をして俺と目を合わせた。それから気まずそうに口を開いた。

「本当にどっちでもいい。って言うと怒るか?」
「は?」
「外に出ても楽しそうだけど別に本当にここにずっといたって構わない。まあ聞いてる限り戦闘力もない自分が外に出たら一瞬で死ぬだろうけどな!」

 はははとエータは笑う。

「別の世界から来たみたいだが帰りたいとは思わないのか?」
「帰れるなら帰りたいけどもう諦め癖がついてるって言うか。なるようにしかならないって知っているって言うか。頑張ってもどうにもならないことの方が多いしな」

 エータは太陽の映らないうすらぼんやりと曇ったような空を見上げる。
 穏やかに明るく、脅威になる魔物が飛んでくることはない。

「まあもう何ヶ月かこうしてのんびり過ごしたら考えが変わるかもしれないけど。悪いけど今のところはそんな感じだな」

 よいしょっとクッションの山にエータは座り直した。
 そして体ごと俺の方に向いた。

「だから別に俺のためにだったらもう一生懸命にならなくていいんだ。目的がないなんて言ってたがきっと目指してるところがあるんだろう? こんなとこで止まってる場合じゃないんじゃないか?」
「別に」

 無意識に眉間にシワがよった。
 そんなことを言われると余計にどんなことをしたって外に連れ出したいと思ってしまう。

「そんな怖い顔するなって。ここも意外と悪くない。住めば都っていうだろう?」

 そしてまたエータはクッションに沈み込んでしまった。
 こんなとこ都なわけあるか。
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