生贄に向くタイプ〜閉じ込められたのは快適空間でした

鶫夜湖

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一章

第9話 なぜかまうのか

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 今日も今日とて風を感じつつクッションに沈むことに勤しんでいたのだが。
 今日もやってきたケーシャにそれは中断させられてしまった。

「おい。エータ俺は決めたぞ」

 そしてケーシャが手渡してきたのは木を削って先を尖らせたものと軽い玩具のような弓と菜箸の片方だった。いや菜箸ではないだろうけれど……もしかしてこれ杖か? 魔法を使う時に振るあれに使えそうだ。

「何を決めたんだこれで何をしろって?」
「何もできない、自分は弱いって言ってるから稽古をつけてやる」
「は! い??!?」

 急に突拍子もないことを言わないでほしい。確かにそんなこと言った気がするけれども!

「いやだから旅を続けてくれって言っただろう!?」
「仲間がまだこの辺の植物で薬を山ほど作るって言って聞かないからどうせいいんだ」
「それ本当か?」
「嘘は言わない」

 あまりにもまっすぐ自分の目を見てくるので逆に怪しい。

「どうだか……」

 そしてなんだかうやむやなまま流されるように戦闘基礎訓練らしきものをすることになってしまった。
 くつろごうとあれから更に草を抜いてしまったのでいい感じに広い場所ができてしまっている。
 草があればこんなことには……!!

 運動なんて学生の頃にしたきりで縁がなく、時間がないとウォーキングどころか散歩をすることもなく、駅の近くに住んで会社に泊まり込んで机に向かい続けたのを思えば。
 個人的にまず体力がいるような気がするんだが。

 削られた木を渡されて振ってみるように促される。片手で持って斜めに振ってみる。傘よりも重い木だった。
 ケーシャは隣に立つと鞘にしまったままの剣を持ち構える。

「こう上げてこう下ろす」
「素振り?」
「いきなり俺と戦えっていうのは無理だろう?」

 戦いたかったか? と丸い目をしてこっちを見ないでほしい。そういうことで聞いたんじゃないからな。

「そうですね!」

 いったい何がどうしてこんなことに。
 振り方が違うと腕を取られて共に振ってくれたり、腰が入っていないと足の踏み込みをし込まれ同じ動作を繰り返す。
 もう何回振ったかわからないくらい振って腕はもうプルプルしてるし疲れてなんだかフラフラになってきた。

「……体力なさすぎないか? 今までどうやって生きてきたんだ?」
「平和だったんだよ!!」

 木の棒を杖のの代わりに地面に立てて座り込みたいの我慢して息を整える。
 ケーシャの顔が真剣に心配していていたたまれない。

「最初から無理をしても駄目だからな今日はやめるか」
「え」
「まだ頑張るか?」
「いややめよう」

 しかし意外だった。まだまだ倒れるまで動けと言われること思っていたがそんなことはなかった。
 ケーシャはスパルタをする気はないらしい。朗報だ。俺に優しい。いや、すでに体は限界なので議論が必要だが。

「座り込みたいけど起き上がれる気がしないな」
「運んでやろうか?」
「それは、ちょっと。……結構です」

 一瞬、いいかなと思ってしまった。だめだ、いくら自分より体力も力も勝っているからって多分年下にそんなことさせられない。
 なんとか根性で建物の方へ歩く。さっき並べていたクッションは汚れるかな? って仕舞ってしまった。俺のばか、今度から倒れ込む用のクッションを置いておくことにしよう。

 建物の中に入ったが、いつも寝ているあの部屋までたどり着ける気がしないのですぐ脇にある扉を開いた。そこは何もないあの空部屋である。
 そしてめんどくさくなって床にそのまま寝転んだ。

「もう動けない……」
「こんなところに寝転ぶな。選んで入っていったからここにも寝具があるのかと思ったのに床そこの廊下と材質変わらないじゃないか」
「あの部屋を見つける前はここを寝室にしようと思ったんだけどな。あの部屋を見つけたから放置された」
「それでここからっぽなのか」

 適度な大きさの窓が一つ。そこにカーテンが一組。それだけだ。カーテンがあるだけ良い気もする。
 床はきっと好きな床にするといいというずれた優しさなんだろう。
 しかしそんなもの今はどうでもいい。
 疲れ果てている。

「とりあえず寝るわ」

 急に酷使された体が重く、まぶたも重い。
 ケーシャが何か言っているような気がしたが眠気が圧勝した。
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